喰いタン
以下はWikipediaより引用
要約
『喰いタン』(くいタン)は、寺沢大介による日本の漫画。講談社の刊行する青年向け漫画雑誌『イブニング』にて連載された。単行本は、韓国や台湾でも出版されている。
概要
青年漫画雑誌『イブニング』において、2002年6月号(当時月刊誌)から2009年15号(隅週刊)まで連載された。2004年から同作者の『ミスター味っ子II』の連載開始に伴い、2作品の不定期併載(同時連載)が行われたが、作者や編集部の都合で両作品とも掲載される号は決まっていなかった。2005年12月下旬以降は本作の単独連載が標準となる。後述のテレビドラマ化との兼ね合いから、2006年の後半頃の放映前後からは『味っ子II』が長期休載状態となり、2007年8号において一部完結として連載終了となった。その後、本作が終了したことで2009年17号より『味っ子II』の連載が再開されることになった。
作品内容
物語の流れは、喰いしん坊探偵・通称「喰いタン」の高野聖也が、知識と味覚を駆使して事件を解決していくというもの。作者の本作以前の代表作品は、食に関しての勝負や成長ドラマが多い。それに対し、本作は食がテーマの(一風変わった)推理物となっている。これは作者が本作以外で少し控えていた「笑い」を前面に出して、新境地を開拓しようとした試みといえるだろう。基本的にはコメディータッチの作品。食品にまつわる科学的特性や、さまざまな料理の豆知識に関連した推理がメインとなっている。
テレビドラマとの関係
主人公の設定やトリックの一部分はテレビドラマ版にも踏襲されているが、原作漫画とテレビドラマ版はまったく別の作品である。
ドラマ版は日テレ土曜ドラマ枠における放映とされ、企画時の仮想視聴対象者が『イブニング』読者層とは全く異なる ため、人物設定や作品の方向性などに多大なる改変が加わっており、ストーリーや演出についても原作に沿っていない。
作者自身も作中で高野の口を借りて「自分の作品ではない気がする」「マンガとドラマでは見せ方も違うし違う作品だ」という旨の発言をしている。後に作内では、この高野の言葉を受けた後のさらなる周囲の反応から「(改変に関して)スタッフが謝りに来た」「どちらも面白いので、両方ともよろしく」という旨の発言を高野にさせている。
あらすじ
閑静な住宅地に『高野探偵事務所』の看板を掲げて居を構える高野聖也は、自他共に認める強烈な大食いである。大学の後輩である緒方警部の依頼で、様々な事件にその推理力を奮っている。一見クールな高野には、現場の証拠品である様々な食品類を食らうという困った癖があった。頭を痛める緒方警部。だが、それは事件解決のための高野独自の行動でもあった。かくして高野は様々な事件を解決に導いていく。
一方、そんな高野につき従う1人の女性がいた。名は出水京子。高野の本業は歴史関係の小説家であるが、彼女は(探偵と小説家の二足のわらじを履く)高野の秘書であり助手であった。緒方警部をはじめ様々な人物とともに、京子は高野の暴走に苦悩する毎日を送っている。京子や緒方の白い視線に対しても、喰いタン・高野はどこ吹く風。今日も必ず何かを喰い尽くし事件を解決する。
登場人物
高野 聖也(たかの せいや)
主人公。探偵を営みつつも、歴史小説家の顔も持つ人物。稀代の美食家にして大食漢。彼が食事をした後には、いつも使用済みの食器が山をなす。グルメではあるが、庶民的なコロッケやインスタントラーメン、牛丼などファストフードも大好物。事件現場の毒が混入された可能性のある食べ物でさえ、彼は平気で食べてしまう。料理を食べたときに「旨味ーっ!」と叫ぶのが口癖。
学生の頃に両親が亡くなり、相続した莫大な遺産で半ば道楽のように探偵と小説家の仕事をしている。小説家としては成功しており、大学生から大使に至るまで幅広いファンを獲得している。他にも、持ち前の食欲を生かして様々な料理関係の雑誌に記事やルポを書いており、透明性の高いその内容から読者の人気も高い。そのお陰か、格式の高いレストランからは歓迎される事もある。いつも小言を言う父親代わりの大田原を煙たがっているが、内心ではかなり恩義を感じている。その大田原によれば、子供の頃から非常に食い意地が張っていたらしい。「大賢は大愚に似たり」という諺を地で行くような人物で、彼の食への執着は ある意味常軌を逸している。実際、食事を邪魔された際には大抵邪魔した相手に何かしらの形で報復している。自分を怨む人間に京子が拉致された際は食事の誘惑に抗いつつ罠だと知りながら彼女を助け、犯人の顔面が変形するまでボコボコにした。また麻薬密造の秘密を知ったためヤクザたちに追われ、京子と一緒に殺され掛けた時は機転を利かせて一網打尽にし、その気になれば殺すことも出来たことをヤクザたちに告げ怯懦の情を抱かせた(京子まで手にかけようとしたため容赦はしないという旨を述べた)。
しかし探偵としての能力は、こと食べ物が絡む限り研ぎ澄まされる。 食の探偵を自負するだけあって、その頭脳には古今東西あらゆる料理や食材に関しての知識が詰まっている。また、悪事に対しては一貫して冷徹。その時の様子は普段の性格とは全く異なり、時には畏怖の念を起こさせるほどの鋭い目を見せ、卑怯な手段や暴力に訴えることにも全く躊躇いがない(ある事件では犯人に顔面陥没の重傷を負わせたこともある)。大田原が殺されそうになった時は、(警察にこそ引き渡さなかったものの)決して犯人を許さなかった。のちに黒瓜や狩野などのプロ犯罪者集団 “仕事屋”と、思いがけず敵対することになるが物語に絡まないまま連載が終了した。なお、中期頃から上手いものを食べた際「じわわわぁ~ん」("わ"の数は話により違う)という効果音と共に頬を赤らめるようになった。
出水 京子(いずみ きょうこ)
高野の秘書兼助手。初期の頃は感情に乏しく事務的な秘書だったが、話が進むにつれ秘書というよりは世話役・女房役になった。常に高野につき従い、高野にツッコミを入れてストーリーを円滑に進める解説者。また彼が奇行に走ると呆れた眼差しになるのが特徴。傷害罪の適用の有無を高野から聞かれたり、商標権に関して意見するなど、法律に関しては知識があり、菓子に関しても知識を披露したことがある。いくら食べても太らない高野とは違い、自分の体重の増加を非常に気にしている。作中でセミヌードを披露した事もあるが、小栗からは「貧乳の秘書」と呼ばれている。
最終話では高野の小説連載が突然打ち切られたため、高野は長らく夢であった外国に向かうことを決意。その際、高野から告白にも似た台詞を告げられ、彼の秘書として旅立っていった。
緒方(おがた)
大田原 巌(おおたわら いわお)
高野の父の親友で、貿易商を営む大柄な初老の男性。トレードマークは白髪ともみ上げ。高野の後見人であり、高野も「小父さん」と呼んで幼い頃から付き合いがあった。大田原によると高野は学生の頃に両親を亡くしたが、遺された莫大な遺産で大学まで卒業できたとの事。探偵と歴史小説家である高野の2つの顔を知っている数少ない人物であり、いつも高野の将来を心配して小言を並べている。かつては健啖家だったが、過ぎた暴飲暴食のせいで一時期身体を壊してしまった。その事を教訓にして、以後は人一倍健康と食べ物に気を使うようになった。それでも最近尿酸値が高くなってきていて、痛風一歩手前の状態である。高野は彼の還暦祝いの席で、健康オタクで高野のことを怒ってばかりのくせに自分の健康管理もできない人とウィキペディアに書き込むよう出水京子に指示していた。自他ともに頑固な性格ではあり一度長年の友人に暗殺されかけたことがあった(高野が気づき阻止して、真相を胸の内に仕舞い込んだので本人は気づいていない)。
三枝夫人(さえぐさふじん)
高村 耕司(たかむら こうじ)
小栗 伴雄(おぐり ともお)
白木 佳代(しらき かよ)
中田 可奈(なかた かな)
寺田(てらだ)
武田(たけだ)
講談社の新人編集者。高野の担当。背は低いが声はでかい。既婚者。寺田同様、締め切りを平気でスッポかす高野に苦労させられている。編集部内で有名になるほどの熟女系のAV好きで、高野にそのことを奥さんの前でバラされてしまい入院するほど奥さんに激しく折檻された。だが、基本的には浮気もしない、暴力も振るわない真面目な人間らしい(高野談)。帝都大学のミステリー同好会の出身で後輩達の前では威張ってばかり。
鹿島(かしま)
清原(きよはら)
清原夫人(きよはらふじん)
滝川 伊平(たきがわ いへい)
黒瓜 邪鬼(くろうり じゃき)
狩野 光子(かのう みつこ)
渡守 加路(ともり かろ)
島 耕作
番外・関連作品
くいしんぼうたんてい せいやくん
児童雑誌『たのしい幼稚園』に掲載の漫画作品。読み切りとして掲載された後に、2007年5月号より連載開始。食べ物には異常に意地汚いが頭は切れる小学生「たかのせいや」と、そのクラスメイト「いずみきょうこ」が登場する。フキダシの文字は全て平仮名か片仮名の、子供向けの『くいタン』である。『喰いタン』本編の単行本8巻の巻末に第1話と第2話、10巻の巻末に第3話と第4話が収録されている。
名探偵聖也くん ボクとパンチの物語
本作の主人公である高野聖也の小学生時代を描いた漫画作品。両親を亡くし大田原のおじさんのもとに引き取られてすぐの頃の挿話で、悲しみに押しつぶされそうな心を無理に耐え「作った笑顔」で過ごす聖也と、ふとしたきっかけで彼についてくるようになった野良犬・バンチの交友の物語であり、その中で彼らが巻き込まれた事件とそれを解決する聖也とバンチの姿を描いた作品。雑誌発表されなかった単行本書き下ろし作品で、後述する『これがプロのうまさのひみつ』と共に書籍化されている。
喰いタンがあばく! これがプロのうまさのひみつ
幼児向け雑誌『おともだち』の保護者用別冊『OTOMODACHI PLAZA』に2008年2月号から2009年12月号まで連載された食レポ漫画。高野聖也が『おともだち』編集部と共に様々な名店を渡り歩き家庭でもできる料理のレシピを教えてもらう、という設定の企画連載作品。のちに単行本『名探偵聖也くん ボクとパンチの物語』に再編集の上で収録された。
喰いタン 水戸光圀
『モーニング食』vol.1およびvol.2に掲載の漫画作品。食い意地が張った徳川光圀が食の知識で事件を解決していく。『ミスター味っ子 幕末編』の単行本1巻と3巻に収録。
備考
- もともと喰いタンとは麻雀のあがり役のひとつで、「喰ったタンヤオ」を意味する。タンヤオはチーやポンなどすることによって作りやすく早くあがれるが、その分点数は低い(「喰いタン」の役をルールとして認めていない地域もある)。
- 編集者・寺田は、講談社で寺沢の担当を務めていた実在の編集者がモデル。寺田以外にも、たまに「シャレにならない楽屋落ちネタ」で実在の担当編集等が登場することがある。
- 初期の頃の各話のタイトルは、「食う」の言葉で締めくくられていることが多かった。中盤以降はその傾向が薄れてきている。
注釈
書誌情報
寺沢大介 『喰いタン』 講談社(イブニングKC)、全16巻
寺沢大介『喰いタン 名探偵聖也くん ~ボクとバンチの物語~』講談社(KCDX)、全1巻(『喰いタンがあばく! これがプロのうまさのひみつ』併録)
- 2011年6月23日発行、ISBN 978-4-06-376090-3
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