小説

夜の神話




以下はWikipediaより引用

要約

『夜の神話』(よるのしんわ)は、たつみや章による日本の小説・ファンタジー作品。

原子力発電所の事故を防ぐために奮闘する神、人間の姿を描く。

ファンタジーではあるが、『原発は安全です』という当時の安全神話、人間の奢りと現代社会を痛烈に批判した内容になっている。

文庫判 

あらすじ

上昇志向が強く、競争社会の中で、子供らしさや思いやりを失いかけているマサミチ少年。

古ぼけた神社で出会った若者からまんじゅうを貰って食べるが、それにより、虫や動物、神様や精霊と会話ができる不思議な能力を身につけてしまう……

実はその神社は月読神社の末社で、まんじゅうをくれた若者は、アマテラスの弟で、夜を司る神・ツクヨミ様だった。

そしてマサミチはツクヨミ様や、家霊であるヨネハラさんとの交流の中で、傲慢な考え方を改め、自然の摂理や思いやりの大切さを学んでゆく……

ある時、マサミチの住む母の生家に、原子力発電所で働く父親の部下・スイッチョさんが、壊した体を静養するためにやってきた。とても具合が悪そうな彼は、その体に青い炎を纏っていた……

実はスイッチョさんは発電所の原子炉の不具合を直すために、危険を顧みず行った作業が元で、放射能を含んだ水蒸気を浴び、被曝していたのだ……

マサミチだけに見える青い炎。兄のように慕うスイッチョさんを助けるために、マサミチは神に仕える”月のうさぎ”と取引をするが、人間になりたかったうさぎに騙され、人間の体を騙し取られて、うさぎの姿になってしまう……

その頃、ツクヨミ様の元には”青い火の炉”の不具合が報告され、発電所でも父を含め運転員らが、原因が不明な原子炉の不具合の対処法に苦慮し、にわかに緊張感が高まってゆく……

スイッチョさんを助けたかっただけのマサミチの想いは、原発事故を阻止するために、神や精霊そして人間が手を取り合って協力する、日本の命運を握る大冒険へ発展してゆく……

人間の登場人物

鈴木 正道(すずき・まさみち)

小学6年生。マサミチ。スイッチョさんからはマサミッチャンと呼ばれ可愛がられている。将来は大学の理工学部に進学し、ゆくゆくは原子力発電所で働く父親のような技術者になりたいと思っているが、パパは競争社会のなかで子供らしさを失ってゆくマサミチを心配し、自然が残るママの生家である米原家で生活させている。
パパ(ぱぱ)

原子力発電所の主任技師。小さなトラブルが頻発する現実と、安全神話の虚実に頭を悩ませている。普段は単身赴任で家族とは離れて暮らしている。
須賀 清(すが・きよし)

スイッチョさん。原子力発電所の技師でパパの部下。被曝し、マサミチの住む米原家の離れで静養している。
朝子おねえちゃん(あさこおねえちゃん)

正道のいとこ。町の農協で働く。マサミチが轢いたカエルのお墓を作ってあげるなど、都会育ちのマサミチとは違う生命観の持ち主。

神・精霊の登場人物

ツクヨミ(つくよみ)

月読命。夜の神様。ツクヨミ様と呼ばれる。マサミチと神社の境内で出会う。姿は美しい若者で、瞳は黒目も白目も無い銀色。ムーの滅亡などにも深く関係している。
月うさぎ(つきうさぎ)

ツクヨミ様に仕える。月うさぎは人間の姿を手に入れるために、被ばく治療に効果が無いまんじゅうとマサミチの体を交換する嘘をつく。
ヨネハラさん(よねはらさん)

マサミチの住む家の家霊様、座敷ぼっこなどと呼ばれる存在。
フランケンさん(ふらんけんさん)

発電所の家霊様。フランケン・シュタインに似た風貌から、マサミチからフランケンさんと呼ばれる。天津方の力の使い方に不満がある。
存在。
アケボシ(あけぼし)

金星・明星の神。ツクヨミや小波彦と連携する。お酒が好き。
サヤギメ(さやぎめ)

国津風の神。風の女神。ツクヨミ様が好き。
ワダツミの小波彦さん(わだつみのこなみひこ)

水の神様。海の色をした髪の若い神様。

用語

闇鬼(あんき)
思いやりがなく自分の慾を満たすだけの人間。
サトリ草(さとりそう)
マサミチが食べたまんじゅうに練り込まれた草。十五夜の日のほんのひとときにしか咲かない。まんじゅうは闇鬼対策の解毒剤として作られたが、これを食したことにより、マサミチには不思議な能力が備わる。
月弓丸(つきゆみまる)
ツクヨミ様が地球と月の間を行き来する時に使う三日月型の宇宙船。
青い火の炉(あおいひのろ)
マサミチのパパが勤める原子力発電所の原子炉。小さなトラブルが絶えない。
ECCS(イーシーシーエス)
非常用炉心冷却装置。燃料棒の溶融を防ぐために炉心に冷却水を注入する装置。