夢の島で逢いましょう
以下はWikipediaより引用
要約
『夢の島で逢いましょう』(ゆめのしまであいましょう)は、山野一の初期作品集である。1985年2月に青林堂より初版刊行。2000年6月に同社より改訂版が刊行されるが現在絶版。
キャッチコピーは「奇妙キテレツ荒唐無稽 おいでませ“夢の島”へ」。
概要
1984年から1985年にかけて『月刊漫画ガロ』に掲載された初期作品を中心に収録している。
精神世界や知覚神経をテーマに、現実認識の変調あるいは幻覚体験を題材とする作品のほか、カニバリズムやフリークスなど人間という存在を徹底的に弄り倒す作品が目立つ。
またSFアクションやバイオホラーなど後には見られなくなるタイプの作品も収録されており、次作『四丁目の夕日』とは作風が大きく異なる。後に山野は改訂版のあとがきで「自分の技量もわきまえず、妙にはりきったSFなど描いていて、穴があったら入りたい」と収録作品に対しては自嘲気味のコメントを寄せている。一方で青山正明やねこぢるなどサブカル界の重要人物に多大な影響を与えた一冊でもある。
収録作品
蓄膿三代/月刊漫画ガロ 1985年1月号掲載
祖母の娘、つまり彼の母親も胎(はら)に彼を宿している時、大層な畜濃を患った。あまりの酷さに島のズボラな医者はサジを投げた。彼女の容体は悪化し、本土の病院で畜濃の大手術を受け、ついでに彼を産んだ。この時の経緯を彼の父親は、恩着せがましく何度も何度も彼に語って聞かせた。そして無神経な彼の母親は「オメが胎さいる時チクノさ病んだば、胎教によーながったがね」と何かにつけ言うのであった。なるべくして彼も畜濃を患った。常に鈍い頭痛に悩まされ、友人からも嫌われた。彼は15歳の時に手術を受け、今日に至る。しかし、畜濃の傾向は治らず、風邪などをひくと直ちに鼻に来て、アラビアノリほども粘度があるかと思われる濃厚な青バナが、湯飲み茶碗に半分ぐらい出るという。このような話を彼は実に嬉しそうに実に熱心に、何度も何度も聞かせてくれるのだった…。
食の探求者/月刊漫画ガロ 1984年12月号掲載
アホウドリ/月刊漫画ガロ 1984年11月号掲載
白鳥の湖/月刊漫画ガロ 1985年2・3月号掲載
タブー/月刊漫画ガロ 1984年2・3月号掲載
探偵は「何故そんな事が起こるのか」と教授に問いただす。すると教授は「それは人間が知ってはいけないことだからでしょう。もし人間が自分の中に無数の独立した意志があり、自分はそれらに奉仕するための存在に過ぎないことを知ったら、人々は無力感にとらわれ、社会は恐慌状態に陥るでしょう。人間が安定した状態であることは細胞にとって都合がいいのです。だから秘密を知った人の人格を破壊したのでしょう」と探偵に理由を説明する。この教授も最後のページだけは読めずにいたというが、「私はもう今にも精神が崩壊してしまいかねない。今から最後のページを開けるので、事の成り行きをあなたに見届けて欲しい」と探偵に告げ、教授は最後のページを読み終える。すると、教授は狂ったように笑い出して得体の知れない畸形の姿に分裂する。
DREAM ISLAND/月刊漫画ガロ 1984年8月号~1984年10月号連載
聖歌隊を救うため死刑囚をベースにロボトミー加工を施したテロ鎮圧用兵器「D-4」の4機が夢の島に投入されるが、夢の島を治める国防隊と正面衝突し、3機は完全に破壊されてしまう。生き残ったD-4は畸形集団の襲撃を受けながらも、人質が囚われている夢の島中央の宮殿に潜入する。しかし、聖歌隊は完全に畸形と化していた。畸形の正体について警視庁のモニター室に呼び出された学者は「夢の島という極限状態に置かれた生命が高濃度の化学汚染によって遺伝子を無差別に破壊され、人間という仮の姿を打ち破り、表にあふれ出した地球上で最も優秀かもしれない画期的な生物」と分析するが、作戦の役に立たない理屈として学者は部屋を追い出される。入れ替わりに人質の父親である国会議員が部屋に駆け付けて来るが、あまりにも変わり果てた娘の姿に「あれは娘じゃない」とうそぶき、夢の島の爆破命令を長官に下す。
一方、夢の島の国王は造反しかかったD-4と同化し、テレパシーで意思疎通を図る。国王はD-4に「お前はここに来るまでに数々の不思議な生物を見ただろう。あれはすべて私の体だ。君と一体となったこの私は夢の島に棲息する全ての、そして一つの生物の中核である。我々は大樹の様な体を持っており、その葉や根は独自の生命を持つ。その生命は大樹という一つの大きな生命に統合されている。我々の生命は連綿と循環し絶えることがない。体の一部が損なうことがあっても生命に別条はない。仮に中核である私が…」と語りかけた瞬間、D-4に搭載された自爆装置が起動し、聖歌隊もろとも夢の島は爆破される。
たん壺劇場/マガジン・バン 1997年1月号~1999年8月号連載
単行本
※いずれも絶版のため入手困難
青林堂版
青林堂改訂版
関連作品
- 夢の島で逢いましょう(第1作)
- 四丁目の夕日(第2作)
- 貧困魔境伝ヒヤパカ(第3作)
- 混沌大陸パンゲア(第4作)
- どぶさらい劇場(第5作)