嫌われ松子の一生
以下はWikipediaより引用
要約
『嫌われ松子の一生』(きらわれまつこのいっしょう)は、山田宗樹の小説。後に映画、テレビドラマ、舞台化された。本項では原作について説明する。
概要
ある事件で中学教師の職を追われた女性が、過酷な運命に翻弄されながらも愛を求め、まっすぐに生きた人生を描いたミステリー。小説では女性の甥が、彼女の知り合いである元殺人犯の男やかつての友人に出会い、女性の生涯を炙り出しており、二人の視点から見た物語が交互に進められている。
2003年に幻冬舎より発表され、文庫も含め発行部数は公称120万部。
2006年には、原作を読み感銘を受けたという中島哲也監督によって映画化。原作とは異なる視点からの物語を描いた。2006年10月から内山理名主演でテレビドラマ化されている。
2010年4月には葛木英の脚本・演出により長谷部優主演で舞台化、2016年には乃木坂46の桜井玲香と若月佑美のダブルキャストによる主演で舞台化作品が上演された。2019年には森岡利行の脚本・演出により階戸瑠李主演で舞台化した。また、2012年に学生演劇も行われている。
あらすじ
東京で生活している大学生・川尻笙は、突然上京してきた父・紀夫から、三十年前に家を飛び出した伯母・川尻松子が、最近東京で殺害されたことを聞かされる。父からの依頼で松子が住んでいたアパートに出向き、部屋の後始末をすることになった笙と恋人の渡辺明日香は、松子がどのような生活をしていたのかに興味を持つ。そして、警察が松子殺しの犯人として追いかけていた、元殺人犯の男と出会うことから、松子が歩んできた壮絶な人生を知ることになる。
登場人物
年齢は原作の舞台になっている2001年7月現在のもので、映画およびテレビドラマでは設定が異なる個所がある。
主要人物
川尻 松子(かわじり・まつこ)
川尻 笙(かわじり・しょう)
松子の甥。19歳。東京で大学生活を送っている。伯母の存在を知らず、他人同然と思っていたが、警察が松子殺しの犯人として追いかけていた男と遭遇したことから、松子が歩んできた人生をたどることになる。松子の人生を知るうちに、彼女に対する気持ちの変化が起き、自分の人生を見つめなおしていく。最終章では被告人の初公判を傍聴。被告人の発言に逆上し、退廷を命じられた。実は5歳の時、松子が15年ぶりに帰郷したときに一度だけ会ったことがある。
なお、小説では松子の人生をたどる現在シーンの語り部で、もう一人の主人公として描かれているが、映画やテレビドラマでは松子の人生にスポットライトを当てている関係で、存在が薄くなっている。
龍 洋一(りゅう・よういち)
45歳。松子が中学校の教師をしていたころの教え子であり、最後の恋人。松子を不幸と転落の人生へと導いた元凶の一人。笙にとっては中学校の先輩にあたる。現在は教会で牧師の手伝いをしている。松子殺しの容疑で追いかけられており取調べを受けたが、アリバイが成立して釈放されている。松子が死んだことにとてもショックを受けていて、最期を遂げたアパートの中で慟哭していた。
幼い頃に父親が不審な死を遂げていて、母の手ひとつで育てられた。血の繋がりがない妹がいる。人となじめない性格で仲間から外れて行動していた。中学生のころには、問題児の烙印をおされて、修学旅行のときに、松子が教師の座を追われる原因となった窃盗事件を起こす。家にきて白状するよう促した松子に対してシラをきり、松子が脅迫してきたと学校に通報する(これが原因で松子は職を追われる)。その後は傷害事件を起こして少年院に入り、出所後は東京で覚醒剤の密売をするなど、極道を歩む。一方で密売の現場を押さえられたことから、スパイとして厚生省の麻薬取締役官(池谷)に報告を入れ、自らも覚せい剤を使用していた。組長の愛人が行きつけていた美容室「あかね」で松子と偶然再会、自分が松子をとても愛していることを告げ同棲生活をはじめるが、松子に覚醒剤の密売をしていることを突き止められ、気絶するまで暴力をふるってしまう。それでも自分と過ごすことを選んだ松子に心を動かされ、密売から足を洗う決意をするが、スパイであることが組織にばれて、追われる身となる。殺される寸前で警察につかまることで組織からは逃れられたが、出所を待っていた松子の一途さに恐ろしさを感じて、松子から離れる。心の弱さから再び覚醒剤に手を染めて、妄想の中、人生を狂わせた張本人である田所文夫を殺害、14年間服役する。面会に訪れた田所の孫娘の言葉に戸惑いを覚えるも、聖書に書かれていた言葉の真意を、教誨(刑務所の宗教教育)の牧師に諭されて、田所の孫娘や松子に神が宿っていたことを悟る。出所後は松子を探して人生を狂わせたことへ謝罪をするために、内田あかねを通して、沢村めぐみに会うが、松子が住んでいる場所は突き止められなかった。最終章では被告人の初公判を笙とともに傍聴している。
渡辺 明日香(わたなべ・あすか)
笙の恋人。19歳。長野出身。笙の話では、声がそっくりの姉がいる。生化学の講義でメモを英語でとっていたのを笙に見られ、そのころからの付き合い。半同棲生活を送っている。松子の存在を知って以降、松子の人生を知りたいと思うようになり、笙に対する態度が変わってしまう。しかし、洋一が落としていった聖書を教会に届けにいって、お祈りを捧げたあとで、突然帰郷する。
実は幼少のときに母親が蒸発しているので、自然に松子と自分の母親をダブらせて考えていた。数日後に東京に戻って来るが、そこで自分の夢である医者になるために、今の大学をやめて医学部を受け直して、笙と別れることにした。
洋一とは最初に遭遇して以来、一度も会っていない。
沢村 めぐみ(さわむら・めぐみ)
49歳。旧姓は東(あずま)。アダルトビデオに出演するタレントを抱える芸能事務所「サワムラ企画」の取締役社長。2児の母親でもある。見た目は30歳くらいに見えるという。20代に傷害の罪で和歌山の女子刑務所に服役。松子とは同じ雑居房にいたことがあり、そのころからの親友。刑務所では男役として人気があり、ラブレターを多くもらっていた。看守に見つかっても誰からもらったかを決して語らなかったため、懲罰房行きになることもあった。
出所後はモデルおよびダンサーとして活動し、タレント事務所と契約。この事務所の社長と結婚する。事務所が軌道に乗るまでは、秘書としてマネージメントをする一方、水沢葵(みずさわ・あおい)の芸名でAV女優として破格のギャランティをもらう。夫を病気で亡くした後は自らが社長となり、辣腕を振るっている。出所後の松子とは「あかね」で再会。松子を美容師として高く評価していたが、洋一に暴力をふるわれ、美容院を休みがちになった松子のアパートを訪れた際に、喧嘩別れしてしまう。松子が死んだ当日、病院で18年ぶりに偶然再会した時に専属の美容師として雇おうと名刺を渡す。松子を最後まで信じていた人物である。
内田 あかね(うちだ・あかね)
美容室「ルージュ」オーナーで創業者。60歳は超えていると思われる「大先生」。以前は「あかね」という名前の店名で、松子を雇っていたことがある。受刑者が職業訓練に使っている美容室と同じ名前であったため、受刑者がよく訪れていたという。
親会社の方針が気に入らず、一人パリで修行を積む。カットコンテストの常連で何度も優勝したことがある。松子が店にきた当時はスタッフの募集はしていなかったが、松子の熱意に押され、テストを行い採用した。前科持ちであったことで断ろうとは決して思っていなかった。美容室を休みがちになった松子を訪ねにアパートを訪れ、部屋が荒らされているのを発見、その後松子が逮捕されてしまい、以降関係は切れている。その後、松子を捜していた龍洋一を不憫に思い、沢村めぐみに連絡していた。
川尻 紀夫(かわじり・のりお)
笙の父親。51歳。松子の弟。現在も大野島で生活している。若い頃は違ったが、現在は笙や兄弟、両親と異なり、筑後弁を使用している。松子の事に関しては、「どうしようもない姉」と語ったきり、多くを話そうとはしなかった。
松子が家を出た後、家庭が崩壊していくのを目の当たりにしており、結婚して家庭を作り直そうとする。松子が八女川と生活していた当時、金を工面するためデパートの屋上で再会するが、そこで父・恒造が亡くなったことを話し、手切れ金を渡し、松子との縁を切る。また、松子が40歳の時にアパートを追われ大野島に戻ってきた際は、佐賀駅に車を飛ばし、冷たく追い返してしまう。家族の誰にも松子の存在をいないことにしていた(紀夫の妻・つまり笙の母は、雄琴に行く前の松子に会っている)。
川尻家
川尻 恒造(かわじり・こうぞう)
川尻 多恵(かわじり・たえ)
松子と関係を持った男たち
八女川 徹也(やめかわ・てつや)
岡野 健夫(おかの・たけお)
八女川の親友かつライバル。会社員。婿養子に入っており、旧姓は菅野(すがの)。二浪していたため八女川よりは年上。八女川とは大学時代に文学を通じて知り合う。三島由紀夫の作品にのめりこんでいた。仕事をしながら執筆を行っていたが、八女川に負けていると感じ嫉妬する。定職につかず、松子を働かせようとする八女川と別れるよう松子に忠告していた。八女川の死後、後追い自殺も考えていた松子の心の支えとなるが、やがて不倫関係となる。しかし、松子が約束を破り岡野の家に行ったことから、関係が妻にばれてしまい、松子に金を渡し一切の縁を切る。実際には松子を愛していたのではなく、八女川への嫉妬から、八女川を愛した松子を自分の物にしようと考えていただけだった。
小野寺 保(おのでら・たもつ)
「白夜」の人物
中洲の南新地にあるソープランドの店。マネージャーの方針で基本的に素人は雇わず、お眼鏡にかなった人物だけが働くことができた。
赤木(あかぎ)
「白夜」マネージャー。昭和一ケタうまれ。かつて結婚していたが、妻に先立たれている。ソープランドを究極のサービス業と考える男。松子の新人研修で練習相手を務めたが、そこで思わず射精してしまう(練習相手が射精するのは御法度とされている)。後に経営方針の違いで社長と争い、店をやめ、北海道の八雲で地味に過ごす。風俗の世界で働いていた人間の割にかたくななところがあり、松子のことを気にかけていたが、口に出せずにいた。松子に、スミ子が刺し殺されたことを話した際に連絡先を知らせていたが、松子が小野寺を殺害後、メモを捨ててしまい、連絡は取れずじまいになった。スピンオフ短編作『八雲にて』では、「白夜」での松子との出会いと別れを回想しながら語る赤木の晩年の様子が描かれている。
斉藤スミ子(さいとう・すみこ)
レイコ
女子刑務所の人物
牧野 みどり(まきの・みどり)
遠藤 和子(えんどう・かずこ)
真行寺 るり子(しんぎょうじ・るりこ)
大川第二中学の人物
田所 文夫(たどころ・ふみお)
杉下(すぎした)
佐伯 俊二(さえき・しゅんじ)
その他
大倉 脩二(おおくら・しゅうじ)
書籍
- 嫌われ松子の一生(2003年1月16日、幻冬舎、ISBN 4344002857)
- 嫌われ松子の一生(2003年6月30日、幻冬舎新書、ISBN 4344009142)
- 嫌われ松子の一生 上・下(2004年8月2日、幻冬舎文庫、ISBN 4344405617 / ISBN 4344405625)
- ゴールデンタイム -続・嫌われ松子の一生(2006年5月17日、幻冬舎、ISBN 4344011538)
- ゴールデンタイム -続・嫌われ松子の一生(2008年10月10日、幻冬舎文庫、ISBN 978-4344412163)- 「白夜」のマネージャー赤木の晩年を描いた「八雲にて」を追加収録。
漫画
- 幻冬舎コミックス(2006年3月24日、ISBN 978-4-344-80720-4)
- 幻冬舎コミックス漫画文庫(2007年12月21日、ISBN 978-4-344-81186-7)
映画
テレビドラマ
舞台
葛木英版
脚本・演出は葛木英が担当。
- 嫌われ松子の一生(初演)
- 2010年4月に青山円形劇場で上演。主催:日本テレビ、ネルケプランニング、フォーピース。
- 主演は長谷部優。
- 2010年4月に青山円形劇場で上演。主催:日本テレビ、ネルケプランニング、フォーピース。
- 主演は長谷部優。
- 嫌われ松子の一生(再演)
- 2016年9月 - 10月に品川プリンスホテル クラブexで上演。主催:ネルケプランニング。
- 主役の川尻松子 役を当時乃木坂46の桜井玲香と若月佑美がダブルキャストで主演。
- 同じ脚本を2つのバージョンで上演し、「赤い熱情篇」を桜井が、「黒い孤独篇」を若月がそれぞれ務める。
- 2016年9月 - 10月に品川プリンスホテル クラブexで上演。主催:ネルケプランニング。
- 主役の川尻松子 役を当時乃木坂46の桜井玲香と若月佑美がダブルキャストで主演。
- 同じ脚本を2つのバージョンで上演し、「赤い熱情篇」を桜井が、「黒い孤独篇」を若月がそれぞれ務める。
入谷梨香版
脚本・演出は入谷梨香が担当。2012年11月に人間座スタジオで上演。京都の学生劇団による公演。本公演のキャストは記載しない。
森岡利行版
STRAYDOGの主催で、森岡利行が脚本・演出を担当。2019年2月にシアターグリーン BIG TREE THEATERで上演。キャストの2名記載の場合はダブルキャスト。また、アンサンブルを兼ねている者もいる。
2023年11月にシアターグリーンBIG TREE THEATERで再演された。主演のキャスト以外の役名は不明。