子連れ狼
以下はWikipediaより引用
要約
『子連れ狼』(こづれおおかみ)は、小池一夫原作・小島剛夕画の日本の時代劇漫画(劇画)。1970年9月から1976年4月まで『漫画アクション』(双葉社)に連載された。
概要
烈堂率いる柳生一族の手により妻の命と職を失った、水鴎流剣術の達人で胴太貫を携える元・公儀介錯人拝一刀と息子・大五郎の、さすらいと復讐の旅物語。
原作・作画者とも本作で作家としての地位を不動のものにした。その後、若山富三郎主演による映画版や萬屋錦之介主演によるテレビドラマ版をはじめ、数多く映像作品も制作された。
1987年、日本の漫画としては最も早い段階に北米に輸出され、ダークホースコミックス社 (en:Dark Horse Comics) により『Lone Wolf and Cub』として英語版が出版され、日本を代表する漫画として高い評価を受けている(なお表紙絵は『子連れ狼』の大ファンであるフランク・ミラーが担当)。2006年10月時点で単行本の国内累計部数は830万部を、全世界累計部数は1180万部をそれぞれ記録している。
後に、大五郎を主人公にした続編『新・子連れ狼』や『そして - 子連れ狼 刺客の子』が制作された。原作は小池、作画は森秀樹が担当。
登場人物
拝一族
柳生一族
柳生兵庫(やぎゅう ひょうご)
柳生蔵人(やぎゅう くらんど)
柳生軍兵衛(やぎゅう ぐんべえ)
出淵庄兵衛(いでぶち しょうべい)
烈堂の妾腹の長男。柳生兵庫・蔵人・軍兵衛は異母弟、出淵鞘香は同腹の妹にあたる。
妾腹の子であることから、柳生一門の別派にあたり、その実力は柳生一門を上回るともいわれる喰代(ほおじろ)柳生の頭領を任され、大和国喰代にて鞘香らとともに暮らしていた。口唇に障害を持ついわゆる"みつくち"であり、これによる劣等感から自分は容姿の醜いために父・烈堂に冷遇されていると思い込み、憤懣を抱いていた。
烈堂が柳生封廻状を拝一刀から奪回するのに失敗し病に倒れると、江戸の柳生屋敷に鞘香及び配下とともに呼び出され、封廻状の奪回を命じられる。しかし、その際に烈堂から3人の弟よりも格下に扱われ、庄兵衛兄妹も自分の子とは思っておらず、鞘香を江戸に呼んだのは柳生一門の総帥を継ぐ子を産ませるためといわれる。これに憤慨し幼時からの父に対する不満も爆発させながらも、配下とともに拝父子を襲撃するが敗れる。その後、瀕死の身で柳生屋敷に帰り、自分こそが柳生本家の総領であり、死ぬ前に鞘香に我が子を産ませて総領にするためとして鞘香を強姦しそのまま死亡。騒ぎを聞いて駆けつけた烈堂は落涙し、不憫な子だからこそ最も愛していたと真情を吐露していた。
江戸幕府
阿部頼母(あべ たのも)
代々公儀御口唇役を務める旗本阿部家当主。別名を怪異(かいい)。性格は残虐かつ保身的。物事に熱中すると「毒屋の子」なる独自の歌を口ずさむ癖がある。
母の不義密通によって生まれたため、父の監物から疎まれ、御口唇役の育成の名目の下、日夜その食事に毒を盛られ虐待に近い育て方をされる。そのような中で独自に毒薬の調合法を編み出し、それを使って両親を毒殺、阿部家を相続した。以降、公方の深い信任を得て毒薬の大家となった。
その後、柳生烈堂に代わり拝父子の抹殺を命じられると、烈堂を追い落として幕政の実権を握る好機と考え、阿片漬けにした夜鷹を使うだけでなく、自ら変装して直々に一刀らの毒殺を図るがことごとく失敗。さらに、頼母ら阿部一族の抹殺を狙う烈堂の毒殺にも失敗し、逆に烈堂に弱みを握られる結果となる。そんな中「柳生封廻状」を手に入れ、これを公方に差し出し「柳生に謀反の企てあり」と訴え出る。これにより、烈堂は江戸城で監禁されるが、烈堂は「草」と呼ばれる密偵を招集し、頼母の担当である江戸城内の御膳所を放火。これが失火と断定され、加えて当日は公方が紅葉山東照宮に参詣する重要な日であったため、御膳所の責任者である頼母は責任を追及され切腹を命じられる。頼母はこれを嫌がり抵抗するが、江戸城に潜入していた一刀から諫められると、全てを諦めたかのように一刀の介錯によって死亡した。なお、萬屋版のドラマでは、切腹の場での騒ぎを聞いて訪れた一刀の姿を仰ぎ見ながら、「あんたや烈堂よりも先に死ぬとは」と恨みのような言葉を最後に残し、一刀によって斬り殺される描写に変更されている。
『子連れ狼』の続編漫画『そして - 子連れ狼 刺客の子』では、頼母の子である秋田高星が登場している。
阿部監物(あべ けんもつ)
石根小角(いしね おずぬ)
松平周防(まつだいらすおう)
板倉重昌(いたくら しげまさ)
江戸幕府の京都所司代。実在した人物。
彼が江戸の公方に宛てた書状が、柳生烈堂の命令で彼の身辺に秘密裏に配された草によって細工されて柳生封廻状となったため、一刀は大井川で、この書状を運んでいた使者を襲撃し、これを奪った。
物語の終盤で、阿部頼母が一刀の子・大五郎からこの書状を盗み取り、公方に提出したうえで、烈堂を讒訴した際に、頼母の口から、この書状を江戸に発送して間もなく、板倉が急病となり数日で病死したこと、板倉が烈堂に批判的で一刀とも親しかった松平周防と親交があったこと、この書状に現れた文面から推測するに、板倉の身辺に新たに配された草が板倉を毒殺しただろうことが語られ、烈堂は公方から謀反の疑いをかけられて、江戸城に召喚されることとなった。
黒田斉隆(くろだ なりたか)
その他
今戸の竹阿弥(いまどのちくあみ)
七郎兵衛(しちろうべい)
長崎屋新助(ながさきや しんすけ)
江戸の廻船問屋。テレビドラマ『子連れ狼 (萬屋錦之介版)』では長崎屋清右衛門となっている。
紀伊九鬼港に停泊中に、長崎奉行板倉監物から無実の罪を着せられ連行されそうになるが、過去に板倉に罪を着せられて身代をつぶされた商人の遺族の依頼を受けた拝一刀が板倉を斬ったため、結果として窮地を脱する。これに恩義を感じた長崎屋は、遠慮する一刀を自分の船に乗せて陸地に送り届ける。この時、時化に遭い、船が沈みかけるが、一刀が愛刀・胴太貫で船の帆柱を切り、長崎屋は投擲雷で断崖を爆破し、ことなきを得た。数年後、一刀父子が江戸に戻り、今戸の竹阿弥に預けていた4万2千両を長崎屋に支払うと、長崎屋は自ら投擲雷を深川の隅田川沿いの河原である八丁河岸の一刀のもとに届けた。その帰途、阿部頼母が新川水門を開けたために江戸が水没の危機に陥ったことを知ると、八丁河岸に戻り、一刀と柳生烈堂に、一時和睦したうえで、投擲雷を使い住吉山を爆破して江戸の町を救うように要請。これを快諾した両者とともに水没しかかった町を通り住吉山へと向かうが力尽き、まもなく救出されるが町年寄の樽屋藤右衛門に一刀らが江戸の町を救ってくれたことを話し、絶命した。
用語
公儀介錯人(こうぎかいしゃくにん)
公儀御口唇役(こうぎおくちやく)
黒鍬衆(くろくわしゅう)
表柳生・裏柳生(おもてやぎゅう・うらやぎゅう)
柳生封廻状(やぎゅうふうかいじょう)
この秘密文書は、江戸幕府が京都所司代などの関連機関や諸大名が将軍や老中に宛てた文書の上に密かに桑の葉を溶かした無色透明の薬品で書き込まれる。この文書は通常、葵の紋の入った御状箱に収納後に優先的に江戸に運ばれ、将軍及び幕閣要人が目を通した後、文章は奥御祐筆に下げ渡され、一部を除き差し出し主を記録した後に廃棄されることとなる。裏柳生は奥御祐筆の差配を行う奥御祐筆組頭に「草」を入れ、廃棄されるべき文書を自らの手に入れ、これを蚕に喰わせ、虫食い文書にして、各藩の情報を手に入れている。
草(くさ)
誕生の経緯は、柳生烈堂の祖父・柳生宗厳が徳川家康の命を受け創設された組織であり、家康からは「たとえ、徳川家が滅亡したとしても、草については秘匿せよ」と厳命され、草に関する情報は裏柳生総帥以外に知る者はいない。
箱車(はこぐるま)
作中で2台登場し、初代は柳生封廻状をめぐる柳生烈堂との戦いにおいて一刀らが崖から転落し置き去りとなった。二代目の箱車には、車輪の車軸に柳生封廻状が隠されていた細工が施されていた。
投擲雷(とうてきらい)
作中では、拝一刀が来るべき柳生一門との対決に備え、子・大五郎用の武器として旧知の廻船問屋・長崎屋新助から購入した。相当数の投擲雷を入手したが、実際に八丁河岸での戦いで大五郎が使用したのは、自分が投擲雷を武器として用いることを柳生一門に知らせるための時と、柳生一門に取り囲まれた父・一刀を救出すべく、彼らが乗って来た馬を突入させ混乱せしめるために用いた時の合計2発のみであった。残りは阿部頼母が一刀と柳生烈堂を水死させようとして、誤って開けた水門から流れ出る濁流による水没の危機から江戸市中を救うべく、一刀と烈堂が一時協力して濁流を堰き止めるべく住吉山を爆破するのに使用されている。
毒屋の子(どくやのこ)
舞台となった時代
物語の記述によると、拝一族が姿を消したのが明暦年間(1655年-1657年)、柳生一族の断絶がお代替わりの天和元年(1681年)とあり、「咫尺の地」に明暦の大火と思しき記述や、柳生封廻状の癸卯の記述もある。
一方で100年以上後の時代の人物である山田朝右衛門吉継が登場するエピソードもあり、矛盾が多い。また「残菊の宿」には存在しない明暦5年の記述もある。なお、続編である『新・子連れ狼』においては、完全に時代考証が無視されており、異なる時代の人間が主要人物として多数登場している。
映像化
映画
- 子連れ狼 (若山富三郎版)
- 子連れ狼 その小さき手に - 2017年にハリウッド映画としてリメイク版制作予定。
テレビ
- 子連れ狼 (萬屋錦之介版)
- 時代劇スペシャル 子連れ狼
- 子連れ狼 (高橋英樹版)
- 子連れ狼 (北大路欣也版)
ゲーム
- 子連れ狼 (アーケードゲーム)
他作品への影響
- 『元祖天才バカボン』第27回第53話「賞金稼ぎ・子持ち狼なのだ」(1976年4月5日放送)では全編が『子連れ狼』のパロディとなっており、ふとした事から離れ離れになったママとバカボンを探して求めて賞金稼ぎの子持ち狼をバカボンパパが大五郎頭のハジメちゃんを連れて旅をする物語となっている。この回が放送される前日には、同じ日本テレビ系で萬屋錦之介版の子連れ狼(第3部)がスタートしており、両作の音楽をともに渡辺岳夫が担当していたため、作中のBGMにはドラマ版子連れ狼の曲が多数使用されている。
- 大友克洋著の短編『CHUCK CHECK CHICKEN』(漫画アクション増刊、1976年11月3日号)では、全編が『子連れ狼』のパロディとなっており、駆け落ちした妻と間男を追って元香荻(こおぎ)藩粋応(すいおう)流の解釈人・拝三拝が一子・団子郎と旅をする物語となっている。
- 秋本治著『こちら葛飾区亀有公園前派出所』第2巻「伊勢神宮参拝の巻」で主人公の両津と同僚の中川、寺井が初詣で伊勢神宮へ参拝に向かう新幹線の車内で子連れ狼が売り子として登場する。
- 本宮ひろ志著『俺の空 刑事編』第1巻「新米緊張す!」で先輩刑事の田村が主人公の一平に『子連れ狼』の死生眼について語る場面があり、どんな後ろ盾があろうとも修羅場で怖気づいては一人前とはいえないと先輩かぜを吹かすセリフがある。
- 『クレヨンしんちゃん』の中で「家族連れ狼」シリーズがあり、ひろしが拝一刀、しんちゃんが大五郎、他しんちゃんファミリーで旅をする内容となっている。
影響
- 『ロード・トゥ・パーディション』や『キル・ビル』といったアメリカ映画(ハリウッド映画)のネタ元ともなった。
- 本作の英語版を出版したダークホースコミックス社からは、表紙に『子連れ狼』のタイトルロゴをそのまま使用し、裏表紙には子連れ狼のリイメージニング作品である旨を示した関連作品『Lone Wolf 2100』も出されている。
- 『シン・シティ』(ダークホースコミックス社)などにも影響を与えた。