幼年期の終り
題材:地球外生命体,トランスヒューマニズム,進化,
以下はWikipediaより引用
要約
『幼年期の終り』(ようねんきのおわり、Childhood's End)はイギリスのSF作家、アーサー・C・クラークの長編小説。宇宙の大きな秩序のために百数十年間にわたって「飼育」される人類の姿と、変貌する地球の風景を、哲学的思索をまじえて描いた作品。アメリカ合衆国で1952年に刊行されたのち、クラークの代表作としてのみならず、SF史上の傑作として国際的に広く愛読されている。
概要
母体となったのはアーサー・C・クラークが1946年7月に執筆した短編小説『守護天使』 (Guardian Angel) である。当初「アスタウンディング」誌に投稿したが不採用となり、改稿の上「フェイマス・ファンタスティック・ミステリーズ(英語版)」誌の1950年4月号に掲載された。『守護天使』はのちの『幼年期の終り』第1部とほぼ同様のストーリーであるが、ディテール、結末などが異なる。
この『守護天使』をもととしつつ、敬愛するオラフ・ステープルドン風の「予見可能なユートピア」「人類のさらなる進化と終末」といったヴィジョンを取り入れて大きく膨らませた長編小説として、1952年に脱稿し、同年刊行された。クラークにとっては5作目の長編小説となった。
内容
プロローグと3つの部で構成されている。
プロローグ
第1部「地球とオーバーロードたちと」
カレルレンたちオーバーロードは、地球人として唯一オーバーロードの宇宙船への立ち入りを許された国際連合事務総長・ストルムグレンを通じて地球人を指導していたが、地球人に決して生身の姿を見せようとはしなかった。カレルレンは宇宙船内におけるストルムグレンとの会談においても壁越しでしか会話をせず、人々はそれを不満に思っていたが、やがてカレルレンは地球人に対し、50年後に生身の姿を公開することを約束する。ストルムグレンは定年退官直前の最後の会談のとき、カレルレンの姿を見ようと一計を案じ、実行に踏み切るが、その結果については黙して語らなかった。
第2部「黄金時代」
第3部「最後の世代」
80年後、ジャンが地球に帰還する。亜光速の宇宙船内で過ごしてきたため、相対性理論の教える通り、ジャンはさほど年を取っていないが、彼を迎えたのは変わり果てた地球の姿であった。カレルレンや、ジャンと旧知のオーバーロード・ラシャヴェラクは、ジャンが今や最後の地球人であること、「オーバーマインド」に関する知る限りの真相、「オーバーマインド」と一体化しつつあるかつての「子供たち」の状況、「子供たち」が一体化を始めた場合の地球の運命をジャンに語る。数か月後、ラシャヴェラクの頼みを受けて地球に残ったジャンは、地球を脱出したオーバーロードの宇宙船に向かって、地球全体の「物質としての終焉」の状況を報告する。
評価
発表から2か月の間に21万部の売上を記録し、また批評家たちからも好意的な評価を得た。また、クラークのファンの多くは『幼年期の終り』を彼の最高傑作だと考えているという。日本の純文学作家の三島由紀夫も『幼年期の終り』を読み、「随一の傑作と呼んで憚らない」と評している。
影響
「人類の進化」というテーマ、「宇宙人による人類の飼育」というアイデアなどは、この作品において総括された。その影響力は、SF内部に留まらず純文学やサブカルチャーの世界にも及んでいる。
書誌情報
- アーサー・C・クラーク『幼年期の終り』福島正実訳、早川書房〈ハヤカワ・SF・シリーズ〉、1964年。
- アーサー・C・クラーク『世界SF全集 15 クラーク』福島正実・高橋泰邦訳、早川書房〈世界SF全集〉、1969年。ISBN 4-15-200015-5。 - 『幼年期の終り』(福島正実訳)と『海底牧場』(高橋泰邦訳)を収録。
- アーサー・C・クラーク『地球幼年期の終わり』沼沢洽治訳、東京創元新社〈創元推理文庫〉、1969年4月。ISBN 4-488-61102-8。http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488611026。
- アーサー・C・クラーク『幼年期の終り』福島正実訳、早川書房〈ハヤカワ文庫 SF 341〉、1979年4月。ISBN 4-15-010341-0。http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/10341.html。
- アーサー・C・クラーク (October 2000). 幼年期の終り / アーサー・C・クラーク = Childhood's end /. 講談社ルビー・ブックス 241. 講談社インターナショナル. ISBN 4-7700-2711-7
- アーサー・C・クラーク『幼年期の終わり』池田真紀子訳、光文社〈光文社古典新訳文庫〉、2007年11月。ISBN 978-4-334-75144-9。https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334751449。 - 1990年の第1部改稿(注釈参照)に基づく翻訳。
映像化
2013年、Syfyによるミニシリーズドラマとしての制作が発表され、2015年12月14日から3夜連続で、同チャンネルで『幼年期の終り』が放送された。
参考文献
- アーサー・C・クラーク 著、福島正実 訳ハヤカワ文庫、1979年4月。ISBN 978-4150103415。
- 三島由紀夫『決定版 三島由紀夫全集』 34巻《評論 9》、新潮社、2003年9月。ISBN 978-4106425745。
- アーサー・C・クラーク 著、池田真紀子 訳「年譜」『幼年期の終わり』光文社〈光文社古典新訳文庫〉、2007年11月、440–448頁。ISBN 978-4-334-75144-9。