悪役令嬢転生おじさん
漫画
作者:上山道郎,
出版社:少年画報社,
掲載誌:月刊ヤングキングアワーズGH,
レーベル:ヤングキングコミックス,
発表期間:2020年3月16日 -,
巻数:既刊6巻,
以下はWikipediaより引用
要約
『悪役令嬢転生おじさん』(あくやくれいじょうてんせいおじさん)は、上山道郎による日本の漫画作品。『月刊ヤングキングアワーズGH』(少年画報社)にて、2020年5月号より連載中。
52歳の善良なオタク公務員男性がひょんなことからハイ・ファンタジー乙女ゲーム世界の悪役令嬢へと異世界転生して魔法学園に入学。前世の娘と同世代である登場人物に対して思わず親目線で接したり、前世での豊富な人生経験からくる機転を活かして様々なトラブルを解決することで、本人の意図せぬところで周囲の人々からの評価や好感度が上がっていき、ゲームのシナリオとは全く違う人間関係を構築する様を描くコメディ作品。「次にくるマンガ大賞2020」コミックス部門で4位に入賞した。2021年1月30日、31日にオンラインイベント「マツリー」が開催され、その中で先行公開された企画「マンガ誌編集長が選ぶ、2020年のイチオシ作品」にて、『月刊ヤングキングアワーズGH』編集長代理の須見武広が選んだ作品は本作である。
メディアミックスとして、アニメの製作が決定している。
あらすじ
屯田林憲三郎は、52歳の公務員。日々の仕事とオタク趣味を両立し、自分同様にオタクな妻・娘との関係良好な家庭を築く充実した人生を送っていたが、トラックに轢かれそうになった子供を身を挺して救った記憶を最後に、気付くと異世界の公爵令嬢グレイス・オーヴェルヌ(15歳)になっていた。
自分が異世界転生したこと、そして自分が転生したグレイスが娘のプレイしていた乙女ゲーム「マジカル学園ラブ&ビースト」の悪役令嬢であることは理解したものの、ゲーム内容に関する知識は全くない憲三郎は自分なりに悪役令嬢としての役割を果たし、ゲーム主人公と攻略対象の仲を取り持とうとするが、生来の人の好さとおじさんならではの親目線で接するため、本来ならば嫌われなければいけないゲームの主人公アンナ・ドールに慕われるようになり、ゲームの攻略対象であるイケメンたちからも(憲三郎にそのつもりはないのだが)好かれるようになっていく。
一方、日本では事故後、目立った外傷もないのに意識不明のまま入院する憲三郎の姿があった。入院手続きのため母を病院に残して帰宅した憲三郎の娘・日菜子は、リビングで「マジカル学園ラブ&ビースト」が起動したままのゲーム機を発見する。メッセージを読み進める以外の操作はテレビの電源も含めてほとんど受け付けないゲームは勝手に進行し、グレイスが登場する際のテロップでは「グレイス(憲三郎)」となっていた。ゲーム内のグレイスの言動から父の意識がゲーム内で彼女に入り込んでしまったと確信した日菜子は父の意識を戻すにはゲームをクリアする必要があると判断し、この異常事態をあっさり受け入れた母と共にゲームを進めていく。そしてこのゲームの特徴である「ビースト」の召喚イベントにおいて、初めてゲーム内に干渉が行えるようになる。日菜子が謎のメッセージに従って液晶テレビ画面に手を差し込み、ゲーム内のグレイスが召喚したデフォルメ頭身化されたグレイスと憲三郎そっくりな2体のビーストを混ぜ合わせることで火と水という相反する属性を持つ古代龍(エンシェントドラゴン)のビーストが誕生する。召喚時に現れた巨大な手や聞き覚えのある声が気になるグレイス=憲三郎だが、妻子からの声を直接届ける術はないままゲームは進行していく。 しかしグレイスの兄アドリアンの登場により、彼の能力で短時間ながらゲーム世界と現実世界が接続することが判明。二度目のチャンスを活かし妻子から渡された手紙により、グレイス=憲三郎は現実世界の自身の肉体がまだ生きていることを知る。
登場人物
主人公
屯田林 憲三郎(とんだばやし けんざぶろう)
主人公。52歳。バーコード禿頭で眼鏡をかけた冴えない外見の公務員。人当たりがよく温厚な性格で部下に対する面倒見が良い。中間管理職でその場を収める為には自分が頭を下げる等、長い社会人生活の中で生きる術を身につけている。オタクであるため異世界転生については一応の知識はあるが、乙女ゲームはほとんど知識が無く、娘から「悪役令嬢」について説明された際には「『キャンディ・キャンディ』のイライザみたいな感じ」と理解している。おじさんなので人の名前を覚えるのが苦手だが、ゾイドやモビルスーツの名前はしっかり覚えている。勤務先が妻沼田市役所らしき描写がある。
グレイス・オーヴェルヌ
憲三郎が憑依した姿。15歳。ゲームの舞台となる王国で王族に次ぐ権力を持つオーヴェルヌ公爵家の令嬢。乗馬中に落馬したショックで前世の記憶を思い出す。それ以前はプライドが高く、わがままな完璧主義者で、平民に対する偏見が強く、他者を𠮟りつけることはあっても礼を言うことが無い典型的な上流階級令嬢だった。憲三郎も以前の記憶を共有しており、あまりに性格が正反対なため「ミスマッチにも程がある」と感じている。また憲三郎の記憶の中では、幼い頃は屋敷の工房や庭師の仕事を眺めるのが好きな穏やかな性格だったらしく、淑女教育をうけるようになってから、「淑女であるため」という理由で厳しく偏屈な性格になって行ったことが判明している。後に憲三郎と精神世界で邂逅する機会があったものの、現在は肉体を憲三郎に任せ心を閉ざしている様子。
前世である憲三郎の記憶が戻って以降は周囲からその言動が以前と違うことに驚かれているが、憲三郎の言動が公爵令嬢として完璧な優雅なものに自動的に変換される「優雅変換(エレガントチート)」が発動されるため別人になったと怪しまれるのではなく「成長して性格が穏やかになった」と解釈されている。
本来なら主人公のアンナとは恋敵であり執拗にいじめる役割だが、憲三郎の記憶が戻って以降はアンナを親目線で心配して、面倒をみるようになった為にすっかり懐かれてしまっている。
この世界の魔法は発動した魔法陣に杖で任意の効果を文字入力することで効果を発揮するが、グレイスは憲三郎の知識から漢字で入力することで効果の拡大と入力時間の短縮ができるようになった。
魔法学園関係者
アンナ・ドール
1年生。ゲームの主人公。平民でありながら魔法の素質があったため、パン屋を営む両親が娘のために無理をして高い学費を稼ぎ、それに応えるために猛勉強をして首席で入学試験を突破した努力家。何もないところで転ぶなどドジっ娘属性もある。所有ビーストはペガサス(風属性)。
ゲームでは入学式当日に校門前でグレイスに身分の差を弁えるように長々と説教を受けた上に両親を侮辱までされ、悔し涙を流しつつ、猛勉強していつか見返してやると誓い、最悪の出会いでライバルとなるはずだったが。彼女の両親に共感してしまったグレイス=憲三郎が彼女の両親の見識の高さを褒め、両親の思いに応えるためにも学園で学んで幸福な人生を送るべきであると助言したため、嬉し涙を流して感激し、すっかりグレイス=憲三郎に懐いてしまい腰巾着のように行動を共にする。本来ならグレイスから受けるいじめから逆境を乗り切って成長と恋愛に発展して行く流れのはずだが、憲三郎の人柄では全て裏目に出てしまい、グレイス=憲三郎の言う事を全て肯定的に捉えてしまうようになり、結果的にグレイス=憲三郎のサポートによって成長して行く。口癖は、「(なるほど、)さすがグレイス様…。」
ヴィルジール・ヴィエルジ
2年生。この国の第一王子(王太子)であり、グレイスの婚約者でもある。魔法学園では生徒会長も務める。ゲームの攻略対象。所有ビーストはグリフォン(風属性)。
誰に対しても人当たりが良く優しく接するが、生まれた時から次期国王として育てられたため、内心では全ての人を「国にとって有用か」だけで価値を判断している。
本来ならアンナが登校初日にグレイスの侮辱を受けて一人で泣いてる時にヴィルジールと出会って最初の恋愛フラグとなるはずだったが、グレイス=憲三郎が褒めてしまった上にヴィルジールとの出会いまで仲介した為にアンナはグレイス=憲三郎に気持ちが行ってしまった事でヴィルジールをさほど意識しなくなってしまう。
また、彼自身は婚約者であるグレイスに対しても恋愛意識は無かったのだが、数学が苦手だったはずの彼女が生徒会の予算計算で見事な能力を発揮した上に手柄をアンナに譲ろうとするのを見て、陰で努力をしていたんだと肯定的に捉えてしまい、その有能さと謙虚さにかつてない胸の高鳴りを感じてしまう。
リシャール・ヴェルソー
オーギュスト・リオン
ランベール・バランス
フランセット・メルキュール
1年生。演劇部員。愛称はフラン。本来は主人公の親友でゲームの情報提供役だった女生徒。グレイス=憲三郎がアンナの親友ポジションに収まったため出番がなかったが、学園祭で生徒会が演劇を上演することになった際、それを補佐するべく演劇部から生徒会へ出向することになった。演劇部でも随一の演劇知識を持ち、演劇部に保存された過去の脚本を全て読んだと言う、日菜子の説明によると「物知りなオタク」キャラ。生徒会「箱推し」で、最新の魔道具である「カメラ」を使いこなし、「課金」の概念を知っているなど、ゲーム世界において現実の現代的なオタク思考を持つ。グレイス=憲三郎から「擬人化」の概念を教わったことで苦手学科を克服し成績が飛躍的に向上、グレイス=憲三郎の推薦もあり晴れて生徒会書記に任命された。
アドリアン・トロー・オーヴェルヌ
オーヴェルヌ公爵家関係者
レオポルド・オーヴェルヌ
ジャクリーヌ・オーヴェルヌ
製作
単行本第1巻のあとがき漫画によると、1990年にデビューして以来漫画家を天職と自認しつつも、直近の連載2本が続けて短期打ち切りとなり危機感を覚えた上山が、最近の漫画界のトレンドを学ぶため近年流行している「異世界もの」作品を読み漁り、その中で「悪役令嬢もの」が気に入ったため「こんな悪役令嬢ものが読んでみたい」と思いついた本作のプロトタイプを同人漫画としてSNSで公開したところ、約16万いいねという爆発的な反響があり商業化につながったという。
通常の異世界転生作品では現世で命を落とした主人公が異世界に転生するが、本作では意識不明ながらも存命のまま転生し、異世界における主人公の活躍を現世の家族が見守っている珍しい設定になっている。この点についてインタビュー記事で尋ねられた作者は「この漫画はハッピーエンドで終わらせるつもりで描いていますので、だったら娘と妻を残して憲三郎が死んじゃうのは違う」「昔の異世界ものの作品はだいたい最終回に元の世界に帰って来るのが多かったので、そういう原点に立ち返ったとも言えます」と答えている。
書誌情報
- 上山道郎『悪役令嬢転生おじさん』少年画報社〈ヤングキングコミックス〉、既刊6巻(2024年1月4日現在)
- 2020年12月16日発売、ISBN 978-4-7859-6827-4
- 2021年8月2日発売、ISBN 978-4-7859-6968-4
- 2022年4月5日発売、ISBN 978-4-7859-7114-4
- 2022年12月28日発売、ISBN 978-4-7859-7308-7
- 2023年6月5日発売、ISBN 978-4-7859-7406-0
- 2024年1月4日発売、ISBN 978-4-7859-7578-4