戦国自衛隊1549
題材:タイムトラベル,
以下はWikipediaより引用
要約
『戦国自衛隊1549』(せんごくじえいたい1549)は、角川映画制作の日本映画。配給は東宝。原案は半村良、原作は福井晴敏。2005年(平成17年)6月11日に日本で全国公開された。
1979年(昭和54年)の『戦国自衛隊』のリメイク的な作品であるが、原作とはストーリー、キャラクター共に繋がりは無い。原作で燃料などの補給手段やタイムスリップの原因が説明されなかったのに対し、本作品では独自の説明がなされている。また、2組目の自衛隊が故意にタイムスリップするという独自の展開もある。
キャッチコピーは「消滅するのは、歴史か?俺たちか?」
概要
『戦国自衛隊』のコンセプトを元に福井晴敏がプロットを作成し、角川映画が角川グループ60周年記念作品として映画化した。総製作費は15億円。
主要舞台である「天母城」のオープンセットには2億円ないし2.2億円が投入され、陸上自衛隊の東富士演習場に建設された。日本映画でこれだけの規模のオープンセットが作られたのは、黒澤明の『乱』以来である。本作品では旧作当時に映画製作技術として存在しなかったCGもふんだんに取り入れられたほか、旧作で自衛隊の協力が十分に得られなかったのに対し、本作品では陸上自衛隊の全面協力を得て150両以上の実車を使用しており、撮影当時の現役自衛官200名以上がエキストラとしてラストシーンなどに出演している。戦国時代のススキ野原のシーンは全て東富士演習場内で撮影されており、第3特別実験中隊・ロメオ隊が演習場ごと戦国時代へ飛ばされたシーンはススキ野原の平面のある箇所を全て刈り取り、回し撮りで撮影されている。
旧作は千葉真一と真田広之による吹き替えなしのスタントと大規模な戦争も見せ場だったが、本作品はストーリーに力を入れた作品になった。
「ロメオ隊がタイムスリップするのは第3特別実験中隊のタイムスリップの2年後」や「揺り戻しが起こるのは3日後」、また歴史への影響をなるべく避けるために実弾は基本的に使用せず、戦国時代の人々はなるべく殺傷しないという本作品独自の設定ゆえ、旧作で見られた自衛隊の火器が戦国時代の人々に向けて使われるシーンは少ない。
公開週の興行収入ランキングは1位。興行収入総計は17.1億円だった。その後はハリウッド版として再編集され、『Samurai Commando Mission 1549』というタイトルで、アメリカ合衆国など31か国で上映された。
特撮
天母城の全景は、オープンセットに天守や石油精製プラントのミニチュアを合成して描写している。マットアートで描写される遠景の富士山は、時代考証に基づき撮影当時とは異なる稜線で描かれている。
自衛隊車両の破壊シーンでは、実際の車輌にミニチュアやCGによる爆破描写を合成しているが、撮影にあたっては合成のための素材撮影よりも、撮影時間の限られた自衛隊車両や俳優のカットを優先して撮影している。
あらすじ
西暦2003年10月13日、陸上自衛隊東富士駐屯地で、対「ソーラーマキシマム」の人工磁場シールド発生装置の実験中、事故が発生。その場にいた的場一等陸佐率いる"第3特別実験中隊"が地面ごと忽然と消える。その3日後、磁場の揺り戻しが起こり、元の演習場の地面と共に戦国時代の侍(七兵衛)が現代に到着する。
どうやら、第3特別実験中隊は1547年の戦国時代に飛ばされて生きているらしい。その後、彼らの歴史への介入による影響と思われる「虚数空間」、通称"ホール"が現代の日本各地に出現し、侵食を始める。ホールの侵食が進めば、いずれ、この世界は消滅してしまうと予測される。
2005年、極秘救出作戦"オペレーション・ロメオ"が発動され、特殊編成部隊"ロメオ隊"が第3特別実験中隊を救出するため、あるいは世界を救うために、タイムスリップを行う。かつて的場が創設した特殊部隊"Fユニット"の一員だった元自衛官の鹿島勇祐もオブザーバーとして参加し、七兵衛も同行する。到着先は1549年、つまり的場たちが戦国時代に到着してから2年の月日が経過しているはずである。現代に戻れるタイムリミットは、74時間26分。
しかしロメオ隊は、戦国時代に到着するなり、偵察に出したヘリコプターを誘導弾によって撃墜されてしまう。その直後、草木を身にまとい偽装した武装集団の襲撃を受けるが戦国時代の戦兵とは思えない洗練された動きに、最新兵器を持っていながらロメオ隊は退避せざるを得なかった。到着直後にもかかわらず幾つかの装備を失い、隊員の半数が犠牲となった壊滅的状況に鹿島は指揮官の森三佐に実弾を使うよう迫るが、ロメオ隊は"非常事態"を除き実弾の使用の一切を禁じられているとして、頑なに拒否する。しかし、森の発言から"オペレーション・ロメオ"の真の目的とは的場たちを救出することではなく、直接対決を意味していることを鹿島は知るのであった。実弾を使用可能なのは非常時のみという真意は、第3特別実験中隊を殲滅することだけのためということだった。
翌日、鹿島たちの元に、先日襲撃してきた武装集団が現れ、"天導衆"と名乗る。先頭に立つ人物が仮面を取ると、それは2年前にこの時代に飛ばされた"第3特別実験中隊"の隊員・与田であった。その事実に鹿島たちは驚くが、与田はロメオ隊に武器を捨て投降するように要求する。どうして攻撃してくるのか問いただす鹿島であったが、その直後、第3特別実験中隊所属の対戦ヘリ・AH-1S/コブラが飛来し、睨みをきかせてくる。いま抵抗するのは得策ではないと悟り、鹿島たちは要求に従うことするのであった。
そのまま天導衆によって彼らが連れてこられた先にあったのは、現代兵器で武装され、原油精製施設まで備えた天母城であった。鹿島たちはそこで、第3特別実験中隊の指揮官であった的場と再会するが、彼はこの時代で織田信長を名乗り、多くの仲間たちを失ったことで自分たちの存在意義について考えるようになり、自衛隊であることをやめ天導衆として最新兵器を使い、日本を強固な国に建て替えるため、故意に歴史を変えようとしていたのである。
鹿島は、かつて的場に言われた「未来に対して責任を持って生きろ」という言葉に従い、自分の選んだ道の未来を受け入れるため、そして歴史と未来を守るために、仲間たちとともに的場たちと対決することを決意する。現実は圧倒的な戦力を持つ的場たちが有利、自分たちだけで勝つことはほぼ不可能に近い。しかし鹿島は「自分たちの手の中に歴史を修正する切り札があること」に気が付く。
スタッフ
- 監督:手塚昌明
- 原作:福井晴敏/『戦国自衛隊1549』(角川書店)
- 原案:半村良
- 脚本:竹内清人、松浦靖
- 撮影:藤石修
- 照明:渡辺三雄
- 美術:清水剛
- 録音:湯脇房雄
- 整音:中村淳
- 編集:普嶋信一
- 音響効果:柴崎憲治
- 助監督:兼重淳、會田望、廣田啓、島田伊智郎
- 製作担当:芳川透
- VFXスーパーバイザー:道木伸隆
- VFXプロデューサー:大屋哲男
- 殺陣:深作覚
- 馬術指導:田中光法
- 特技監督:尾上克郎
- Bキャメラ撮影:清久素延
- 現像:東京現像所
- スタジオ:東宝スタジオ
- 製作補:佐藤直樹、秋葉千晴
- 企画協力:渡邊健一、樋口真嗣
- アソシエイトプロデューサー:門屋大輔
- プロデューサー:鍋島壽夫、土川勉、貝原正行
- 特別撮影協力:陸上自衛隊(東部方面隊、陸上自衛隊富士学校、陸上自衛隊航空学校、第1ヘリコプター団)
- 製作委員会メンバー:角川映画、日本映画ファンド、日本テレビ放送網
登場人物
ロメオ隊
鹿島勇祐 元2尉:江口洋介
高梨 2尉:井川哲也
天導衆/第3特別実験中隊
的場毅 1佐 / 織田信長:鹿賀丈史
与田 2尉:的場浩司
戦国時代の人々
飯沼七兵衛 / 織田信長:北村一輝
斎藤道三:伊武雅刀
藤介 / 木下藤吉郎:中尾明慶
用語
第3特別実験中隊
的場一佐率いる特別編成された混成部隊。かつて的場によって編成された特殊部隊「Fユニット」を前身としており、同隊が解体・再編されたものである。
2003年10月13日15:34、人工磁場シールドの暴走事故により、演習場ごと1547年へ飛ばされ、その直後に各地で虚数空間が出現した。世間には演習中に弾薬を積載したヘリの墜落事故で全員死亡したと発表されている。
実際には第三特別実験中隊は、磁場シールドの暴走で1547年の戦国時代にタイムスリップしてしまい、騎馬武者たちの攻撃に遭う。第三特別実験中隊の指揮官、的場一佐は攻撃を禁じて退避を試みたが、87式偵察警戒車の隊員を殺されたことを皮切りに総攻撃を開始し、90式戦車やAH-1S対戦車ヘリ・89式装甲戦闘車などで騎馬武者たちを蹴散らした。
その後、自衛隊であることを捨てて本格的な歴史改変のため、天導衆を名乗り、捕虜にした敵兵を用いて城を建築し、使用不能になった車両のパーツ流用して天母城を建築した。歴史改変に乗り出してから、初めに襲撃してきた軍勢の本拠地を壊滅させたところ、その軍勢が織田信長率いる軍勢であることと的場が信長を殺したことで、織田軍は天導衆を迎え入れ戦力を拡大していく。その当時織田軍と斉藤勢は敵対状態にあったが天導衆が加わった織田軍に太刀打ちできないと判断した斎藤道三は娘の濃姫を的場に娶らせる形で和睦し、的場は新たに自らを織田信長と名乗るのであった。しかし2年後の1549年、歪められていく歴史を再度修復すべく2005年からタイムスリップしてきた自衛隊の極秘実行部隊「ロメオ隊」と1549年の現地人の行動により、天導衆は壊滅した。
装備に関しては以下の通り。また、映画・漫画・小説版などで装備にバラつきがあり、映画では未配備の82式指揮通信車や軽装甲機動車,73式小型トラックなどが配備されている。ヘリコプターも、漫画版ではUH-1Jが2機配備され、小説版ではUH-60JAが配備されている。
天導衆主力部隊
- 90式戦車
- 本作品唯一の戦車。タイムスリップ直後の襲撃により、戦場へ乱入し的場の指示無視で砲撃を繰り返し軍勢を蹴散らす。その後は天導衆主力部隊へ配備されたが、最後はロメオ隊の84mm無反動砲により撃破・破壊された。
- 89式装甲戦闘車
- タイムスリップ直後の襲撃により、戦場へ乱入し的場の指示無視で砲撃を繰り返し軍勢を蹴散らす。その後は天導衆主力部隊へ配備される。
- 87式偵察警戒車
- タイムスリップ直後に的場の指示無視をした隊員2名が死亡。その後は天導衆主力部隊へ配備されたが、ロメオ隊により撃破・破壊される。
- 96式装輪装甲車
- 第3特別実験中隊の指揮車両。的場・与田・紅林らが乗車。その後は天導衆主力部隊へ配備されたが、ロメオ隊により撃破・破壊される。
- AH-1S対戦車ヘリコプター
- 第3特別実験中隊唯一のヘリ。タイムスリップ直後に対地ミサイルや機関砲による攻撃で軍勢を蹴散らす。その後はロメオ隊を含む敵勢力への威嚇行為に使用されるが、最後はロメオ隊の84mm無反動砲による攻撃で撃墜される。
本作品唯一の戦車。タイムスリップ直後の襲撃により、戦場へ乱入し的場の指示無視で砲撃を繰り返し軍勢を蹴散らす。その後は天導衆主力部隊へ配備されたが、最後はロメオ隊の84mm無反動砲により撃破・破壊された。
タイムスリップ直後の襲撃により、戦場へ乱入し的場の指示無視で砲撃を繰り返し軍勢を蹴散らす。その後は天導衆主力部隊へ配備される。
タイムスリップ直後に的場の指示無視をした隊員2名が死亡。その後は天導衆主力部隊へ配備されたが、ロメオ隊により撃破・破壊される。
第3特別実験中隊の指揮車両。的場・与田・紅林らが乗車。その後は天導衆主力部隊へ配備されたが、ロメオ隊により撃破・破壊される。
第3特別実験中隊唯一のヘリ。タイムスリップ直後に対地ミサイルや機関砲による攻撃で軍勢を蹴散らす。その後はロメオ隊を含む敵勢力への威嚇行為に使用されるが、最後はロメオ隊の84mm無反動砲による攻撃で撃墜される。
- 96式多目的誘導弾システム
- 88式地対艦誘導弾発射機
- 多連装ロケットシステム
- 90式戦車回収車
- 73式中型トラック
- 73式大型トラック
- 89式5.56mm小銃
- 9mm拳銃
- 12.7mm重機関銃M2
- 迷彩服2型
- 88式鉄帽
- 天母城
- 現在の静岡県富士見市の天母山に築かれた城で、天導衆が90式戦車回収車を使い平成からの追撃部隊を迎撃すべく建設された。石油精製施設やAH-1S コブラ用のヘリポート、12.7mm重機関銃M2が設置された物見櫓などを持つ。漫画・小説版でも天母城の形態は変わっており、漫画版では90式戦車を母体とした固定砲台や完全自動の城門、さらには映画本編には未登場のヘリ格納庫や戦車・装甲車格納庫などがある。
現在の静岡県富士見市の天母山に築かれた城で、天導衆が90式戦車回収車を使い平成からの追撃部隊を迎撃すべく建設された。石油精製施設やAH-1S コブラ用のヘリポート、12.7mm重機関銃M2が設置された物見櫓などを持つ。漫画・小説版でも天母城の形態は変わっており、漫画版では90式戦車を母体とした固定砲台や完全自動の城門、さらには映画本編には未登場のヘリ格納庫や戦車・装甲車格納庫などがある。
- 天導衆臨時シェルター
- 現在の山梨県忍野村の高座山に築かれた第二拠点で、ここには天母城と同等の砦が築かれている。織田軍の兵士たちがここと天母城を往来している。ただし、本作品には未登場。
現在の山梨県忍野村の高座山に築かれた第二拠点で、ここには天母城と同等の砦が築かれている。織田軍の兵士たちがここと天母城を往来している。ただし、本作品には未登場。
長持ちしそうにない兵器が大半を占め、使い物になりそうにないものも無造作に混じっている。例えば
- 多連装ロケットシステムは敵軍を一撃で殲滅できそうだが1回しか撃てないので、割に合わないという風に見て取れる。
- 96式多目的誘導弾システムも、戦国時代には赤外線を発する攻撃対象が存在しないため、劇中での方法ぐらいしか使い道がない。
- 発射機のみで飛ばされた88式地対艦誘導弾は使用すらできない(発射のためには、管制車やレーダー車などが必要)。
ロメオ隊
陸上自衛隊の極秘作戦「オペレーション・ロメオ」の実行部隊。
虚数空間を発生させている原因である第三特別実験中隊の救出と、歪められた歴史の修復を行うことで虚数空間を消滅させることが、本作戦の目的である。2005年10月13日12:05、オペレーション・ロメオは決行され、ロメオ隊が1549年へのタイムトラベルを開始した。
装備は以下の通り。
- 82式指揮通信車
- ロメオ隊の指揮車両。指揮官の森を筆頭に車長の三國・オブザーバーの鹿島と神崎らが乗車。タイムスリップ1日目では、藤助も乗車。天母城破壊時にマグマに飲み込まれる。
- 87式偵察警戒車
- ロメオ隊の主力車両。経緯は不明だが、藤助が単独で奪還し、天母城脱出の際に城門を破壊する。天母城破壊時にマグマに飲み込まれる。
- 軽装甲機動車
- 2両登場。1両は1日目に織田軍による油を用いた撹乱攻撃で破壊・炎上する。もう1両は天母城脱出後のロメオ隊の高稼働車両となる。天母城破壊時にマグマに飲み込まれる。
- 96式装輪装甲車改
- 本作品オリジナルの架空の装甲車で内部を医療用に改造したものである。車体後部に赤十字マークを付けている、所謂救急車の装甲車版。藤助の治療で使用されたが、天導衆に鹵獲後はロメオ隊には奪還されず天母城に残される。天母城破壊時にマグマに飲み込まれる。
- UH-1J多用途ヘリコプター
- タイムスリップ1日目の織田軍襲撃の際に鹵獲される。その後天母城脱出の際に奪還され、各地高起動・ロメオ隊残存隊員の現代への帰還に使われる。本作品で唯一現代に生還した装備。
- OH-1観測ヘリコプター
- 「オメガ1」のコードネームを持つ。タイムスリップ1日目に天母城から放たれた対空誘導弾により撃墜される。
ロメオ隊の指揮車両。指揮官の森を筆頭に車長の三國・オブザーバーの鹿島と神崎らが乗車。タイムスリップ1日目では、藤助も乗車。天母城破壊時にマグマに飲み込まれる。
ロメオ隊の主力車両。経緯は不明だが、藤助が単独で奪還し、天母城脱出の際に城門を破壊する。天母城破壊時にマグマに飲み込まれる。
2両登場。1両は1日目に織田軍による油を用いた撹乱攻撃で破壊・炎上する。もう1両は天母城脱出後のロメオ隊の高稼働車両となる。天母城破壊時にマグマに飲み込まれる。
本作品オリジナルの架空の装甲車で内部を医療用に改造したものである。車体後部に赤十字マークを付けている、所謂救急車の装甲車版。藤助の治療で使用されたが、天導衆に鹵獲後はロメオ隊には奪還されず天母城に残される。天母城破壊時にマグマに飲み込まれる。
タイムスリップ1日目の織田軍襲撃の際に鹵獲される。その後天母城脱出の際に奪還され、各地高起動・ロメオ隊残存隊員の現代への帰還に使われる。本作品で唯一現代に生還した装備。
「オメガ1」のコードネームを持つ。タイムスリップ1日目に天母城から放たれた対空誘導弾により撃墜される。
- 73式大型トラック
- 73式中型トラック
- 84mm無反動砲
- 5.56mm機関銃MINIMI
- 89式5.56mm小銃
- 9mm拳銃
- C-4爆薬
- 迷彩服2型
- 戦闘防弾チョッキ(後半ではロメオ隊ではない、とある人物もこれを着用する)
- 88式鉄帽(後半では鉄帽が何らかの理由で不足していたのか、一部の面々は七兵衛が調達した兜を着用)
- 対人センサー
- 戦国時代の人々の襲撃に備えて設置されたが、天導衆によってケーブルを切られ使用不能となる。
戦国時代の人々の襲撃に備えて設置されたが、天導衆によってケーブルを切られ使用不能となる。
過去への干渉を防ぐため、過去の人間への接触は固く禁じられており、使用する弾頭や薬莢はセルロース製の衝撃弾で、撃たれた相手を遠くへ吹っ飛ばすほどの衝撃を与え(殺傷能力は低い)、数年で土に戻るよう配慮されている。また、衝撃弾を装填した弾倉には区別のため黄色いテープが巻かれている。ただし、オブザーバーの鹿島には知らされていないが、相手が第三特別実験中隊だった場合は殺傷能力が充分あり、甲冑も貫通する実弾の使用が許可される。
あくまで第三特別実験中隊を捜索することが第1目標なので、戦車などの攻撃的な車両は配備されておらず、代わりに索敵能力の高い87式偵察警戒車、OH-1が配備されている。他に、第三特別実験中隊には装備されていない軽装甲機動車や82式指揮通信車がある。
もともとUH-1Jは操縦系・エンジン系に電子機器をほとんど使っていないため、現象の影響を大して受けることなく飛行することが可能であるので、兵器についての知識に乏しい人からは一見矛盾して見えるラストシーンも実はつじつまが合っている。
人選に関しても、少数精鋭編成の特殊部隊であり、全て陸曹以上の階級の隊員で構成され、陸士の階級の隊員は組み入れられていないなど、全体的に"火力"や"量"・"質"より"速"を優先している模様。
映画本編において、ロメオ隊が襲撃を受けた後の会話で「UH-1Jを失いました」とあるが、これは、襲撃を受けた際UH-1Jは飛び立てず、その後天導衆に鹵獲され天母城に運ばれた模様。のちに城内から奪還している。また、後半にロメオ隊員が84mm無反動砲を使ってAH-1Sを撃墜するシーンがあるが、84mm無反動砲は無反動砲にもかかわらず、なぜか誘導弾を発射している(現実に存在する砲弾は、各種無反動砲弾と対戦車ロケット砲弾のみ)。
虚数空間
2003年に各地に現れた漆黒の空間。通称、「ホール」。ブラックホールほどではないが、周囲の光や物質を飲み込みながら成長するという性質がある。
虚数空間のある場所は自衛隊の基地が設置されており、人工雲などでカモフラージュされているので存在は世間には知られていない。その原因は2003年10月13日15:34、人工磁場シールドの暴走事故により、戦国時代へタイムスリップした陸上自衛隊第三特別実験中隊が引き起こした歴史改変である。実際、彼らが過去へ飛ばされた直後からゴルフボール大のものが出現し始め、2005年の時点では富士山麓の虚数空間は直径数十メートルにまで成長した。
世界の侵食を食い止めるため、2005年に「オペレーション・ロメオ」が決行された。
人工磁場シールド
陸上自衛隊保有の架空の装置。本来は太陽からの電磁波「ソーラーマキシマム」への対抗策・隠密作戦行動時や避難救助活動中に電子機器や通信機器が電磁波の影響を受け使用不能になる危険性を考慮して、それらの電磁波を遮断もしくは無効化させることを目的に開発が始動した。
機器そのものは73式大型トラックに装備され、管制センターからコントロールし2台1組で運用される。プラズマ量が装置の耐久予測値を超えてなお出力を上げた場合、シールド内の直径70メートルの空間全体が「456年前の世界」と74時間26分の間入れ替わってしまう。
2003年10月13日15:34、富士山麓演習場で第三特別実験中隊がこの暴走事故により、演習場ごと1547年へ飛ばされ、その直後に各地で虚数空間が出現した。それに対抗し、虚数空間を発生させている原因である第三特別実験中隊の救出と、歪められた歴史の修復を行う作戦「オペレーション・ロメオ」が計画された。そして2005年10月13日12:05、前回の事故を再現し、ロメオ隊が1549年へのタイムスリップを開始した。
小説
この作品は劇場公開版のためのプロット的作品という位置付けであり、おおまかな展開は同様であるが、小説版、劇場版、漫画版とも細かい設定はもとより、登場人物たちの考えや行動、登場する勢力の装備などがかなり違っている。
自衛隊の存在意義といったものを提起した内容であるが、原作を意識してその「歴史を変えようとしながら歴史に呑み込まれていく」という原則を守りながら、それに抗う者たちの思いを描き出している。登場人物の半生を描く濃密な描写は少ないものの、世を捨てて斜に構えた主人公の鹿島や、現代への虚無感を抱えた的場などの脇役に加えて歴史上に実在する人物も登場し、それらの人々の思惑を取り込みつつ、それぞれの信念のもとにおける戦いが描かれる。しかし、旧作の『戦国自衛隊』とはストーリーも登場人物もいっさい無関係である。
並行世界という概念において、ブラックホールのようなものに侵食される現代世界を踏まえたうえで、歴史改変ものとしての内容が描かれている。また、軍事的な様子を表す用語や細かい交戦規定などの設定が多用されている。
なお、福井作品の『Twelve Y. O.』、『亡国のイージス』と設定が一部リンクしており、それらの作品と同様に大量破壊兵器を否定する内容が盛り込まれている。
書誌情報
あらすじ(小説)
富士山麓演習場で、太陽の電磁波から情報・通信回路をシールドする「アクエリアス計画」実験の最中、偶然の事故で的場一佐を隊長とする「海兵旅団」を含む第三特別混成団が、装備や車両と共に実験エリアごと姿を消してしまう。
そして1週間後、時の揺り戻しによって戻ったエリアから、1人の武者が現れる。その武者は、1543年の戦国時代からタイムスリップしてきたことが判明する。
それから6年、現代の富士周辺に「ホール」と呼ばれる原因不明の、あらゆる物質を飲み込んで消滅させる存在が出現する。未来の可能性の一つとして、不安定な存在になってしまった現代は、歴史を変えようとしている何者かから「過去からの攻撃」を受けていたのだった。
第三特別混成団を過去から救出すべく、元的場一佐の部下である鹿島は、実験に携わった技術者の神埼、過去からきた武士の七兵衛と共に救助回収部隊のロメオ隊を率いて1549年にタイムスリップする。タイムリミットは揺り戻しの起こる1週間。
だが、そこでロメオ隊を待ち受けていたのは、現地人を薬物や防弾甲冑などで強化した羅漢兵、桜の徽章を紋所にした桜衆、そして彼らを率いていたのは織田信長だった。
漫画
前半(第1巻)の話の流れは映画版や小説版と大体同じだが、後半(第2巻)になってくると意外な人物がロメオ隊に協力して天導衆に全面対決を挑むなど、登場人物の性格や行動が大きく異なる。ビジュアル的にも天母城の概観や天導衆の装備がかなり違っている。なお、同じ福井作品の『Op.ローズダスト』に登場する T-Pex (テルミット・プラス・エクストラ)が登場する。
- 原案:半村良
- 原作:福井晴敏
- 漫画:Ark Performance
- 初出:少年エース 2005年3月号 - 12月号
- 出版社:角川書店
- 第1巻(2005年5月26日):ISBN 404713726X
- 第2巻(2005年12月22日):ISBN 4047137707
- 第1巻(2005年5月26日):ISBN 404713726X
- 第2巻(2005年12月22日):ISBN 4047137707
参考文献
- 『宇宙船』Vol.118(2005年5月号)、朝日ソノラマ、2005年5月1日、雑誌コード:01843-05。