戦闘妖精・雪風
以下はWikipediaより引用
要約
『戦闘妖精・雪風』(せんとうようせい ゆきかぜ)は、神林長平によるSF小説。これを原作としてラジオドラマ、OVA、漫画化もされた。
『SFマガジン』誌上に1979年から1983年にかけて掲載された連作短編で、1984年に『戦闘妖精・雪風』の題名で文庫にまとめられた。
1992年より『SFマガジン』誌上で断続的に第2部となる続編が連載され、1999年にハードカバーの単行本『グッドラック―戦闘妖精・雪風』としてまとめられた。また『グッドラック』に合わせた改訂版として2002年『戦闘妖精・雪風〈改〉』(ハヤカワ文庫)が発表された。
第3部は『SFマガジン』2006年4月号から不定期に掲載され、2009年7月『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』として発売された。
第4部は『SFマガジン』2020年2月号より掲載が開始され、2022年4月に『アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風』として発売された。
短編「スーパー・フェニックス」(『戦闘妖精・雪風』に所収)が第15回(1984年)星雲賞、『戦闘妖精・雪風』は第16回(1985年)星雲賞、『グッドラック―戦闘妖精・雪風』は第31回(2000年)星雲賞を受賞した。
2013年4月16日、米ワーナー・ブラザースにより実写映画化権取得とのニュースが流れた。主演はトム・クルーズ。プロデューサーはトム・ラサリー、アーウィン・ストフ。後者は日本のアニメ『カウボーイビバップ』の実写化権をキアヌ・リーブスとともに所有している。
ストーリー
「戦闘妖精・雪風」・「戦闘妖精雪風〈改〉」
そのFAFの主要基地の一つで、全軍の中枢が置かれている「フェアリィ基地」に属する戦術戦闘航空団特殊戦第五飛行戦隊、通称「ブーメラン戦隊」は、社会不適合者のなかでも「他者に関心を持たない」という心理傾向がある人間ばかりを集め、高性能な戦術戦闘電子偵察機「スーパーシルフ」を擁する対ジャム戦における戦術電子偵察部隊であり、たとえ目前の味方を見捨ててでも敵の情報を持ち帰ることだけを要求される特殊部隊だった。
きわめて高度な中枢制御体を搭載し、完全自律制御による高度な戦術判断や戦闘機動を可能とするスーパーシルフ。その3番機 (B-503)、パーソナルネーム「雪風」のパイロット、深井零は、雪風をみずからの半身と偏愛し、雪風以外のあらゆるものを「関係ない」と切り捨てるまでに雪風がすべてと信じていた。一方、特殊戦の前線指揮官で零の唯一の友人でもあるジェイムズ・ブッカーは、ジャムの戦術やそれに対する雪風の振る舞いを疑問視し、「この戦いに、人間は必要なのか?」との疑念を抱く。
ある日、零と雪風はジャムが作り出した人間のコピー「ジャミーズ」によって囚われの身となり、辛くも脱出するが、帰還途中にジャムの攻撃を受け不時着する。ジャムに雪風の機体と情報を渡さないために自爆を決意する零だったが、雪風は零の操作を拒絶。彼を射出座席で射出し、雪風捜索のため出撃していた新型機「メイヴ」に自己を転送した後、自らの手でスーパーシルフを破壊した。
「グッドラック 戦闘妖精・雪風」
ブッカーは意識のない零を雪風に乗せて飛ばすという荒療治を経て回復させた後、特殊戦に新しく配属された軍医のエディス・フォスの診察や、一時的に退役させ地球で休暇をとらせるなどの処置を行う。これらの計らいで心身を回復させた零は、雪風やFAFのコンピュータ群と自分との関係をより深く知ろうとする他、新しいフライトオフィサとして配属された桂城彰少尉との対話を通して、これまでほとんど意識してこなかった他人との関係にも意識を向けるようになる。
そんな中で、雪風は「ジャムが人間のコピーを作り出してFAFに潜入させている」という調査報告を行い、さらにFAF情報軍トップのアンセル・ロンバート大佐がジャムに寝返ったという事実が明らかになる。それと時を同じくして、ジャム側はFAFへの総攻撃を開始する。
「アンブロークン・アロー 戦闘妖精・雪風」
一方、ジャムの総攻撃を受けていたFAFは、新種のジャムである「タイプ7」の存在を確認する。FAFはタイプ7の捕獲を試み、雪風の通信に応じたタイプ7は基地に着陸するような素振りを見せるが、その次の瞬間に雪風に体当りするような行動を取る。それ以降、フェアリィ基地のすべての人間やコンピュータは、ジャムが作り出した不可知の空間に巻き込まれ、行動や時系列の記憶があやふやになるという特異な現象に巻き込まれることになる。零と雪風はこの状態を脱するために、コンピュータに感知できないものを人間の感覚で確認し、逆に人間が確認できないものを雪風が確認するという手段で脱し、ロンバートが試作機を奪って地球へ侵入しようとしていることを掴む。ロンバートを撃墜するため、零は雪風とともに超空間通路を抜け、地球に向けて出撃する。
「アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風」
これまでの現象から、FAFは「ジャムはフェアリィ星から地球へ既に侵入している」という結論に至り、地球の各国軍に対して対ジャム戦を教導するアグレッサー部隊の設立を決定。その第一歩として、日本空軍およびオーストラリア空軍との合同訓練を行う運びとなる。
日本空軍からFAFへの出向を命令された田村伊歩大尉は、アグレッサー役となる雪風との交戦中に、ロンバートからの「ジャムの仲間になれ」という誘いを受け、不可知戦域へ引きずり込まれそうになるが、雪風の助けを得て事なきを得る。また、訓練中に「地球機がジャムになる」という現象も確認され、FAFはジャムが新しい戦術に打って出たと確信する。
登場人物
深井零(ふかい れい)
FAF少尉。のちに中尉、大尉に昇進する。日本国出身。特殊戦3番機「雪風」パイロット。乗機である雪風、および友人のブッカー以外の何者も信頼せず心を閉ざしていたが、雪風やジャムとの関わりを通じて変化していく。
主人公格のキャラクターながら謎が多く、排他的人格者になった理由や、最新版文庫本ではFAFに来た理由も明らかになっていない。初出時は「非効率な機械は嫌いだという理由で博物館のSLを爆破した」、改定前文庫本にまとめられた際は「仕事のストレスで職場に放火した」という扱い。コミック版では窃盗団の運転手をした犯罪歴が描かれており、スピンオフ的短編小説では、学齢期に自分用のネットワークコンピュータを外部から利用されるのを嫌って、結果的に独自アーキテクチャのマシンを組み上げ、CPU処理時間の外部開放義務を忌避した罪に問われたことが描写されている。
ジェイムズ・ブッカー
FAF少佐。特殊戦の戦隊指揮官。イギリス出身。零の唯一の友人。日本人である零以上の日本通で、特殊戦三番機への「雪風」の命名と漢字のペイントも彼の手によるもの。元ロイヤルマリーン所属のパイロットで電子工学のスペシャリストでもあり、人間とジャム、そして雪風をはじめとするFAFの戦闘機械群との関係に疑念を抱いている。ブーメラン製作が趣味。イギリス軍所属のころ、殺したくなるほど憎みながらも同棲していた女性がブッカーの仕業に見せかけて何者かに殺された際、軍法会議であえていっさい抗弁せず有罪となり、FAFに送られた。無神論者であり、その様は「哲学を崇拝している」とたとえられるが、ジャムの総攻撃のなかではたびたび神や信仰について語る。
リディア・クーリィ
エディス・フォス
リン・ジャクスン
カール・グノー
トマホーク(トム)・ジョン
ヒュー・オドンネル
天田守(あまだ まもる)
矢頭元(やがしら はじめ)
桂城彰(かつらぎ あきら)
アンセル・ロンバート
ヒロシ・ヤザワ
ギャビン・メイル
ジョナサン・ランコム
田村伊歩(たむら いふ)
ジャム
南極に生じた「超空間通路」と呼ばれる霧の柱で地球と繋げられた惑星「フェアリィ」から侵攻してきた正体不明の存在。謎の飛行物体を目撃した者の「えらく混乱(ジャム)しちまって」という言葉から、「ジャム」という呼び名が定着した。
ジャムと人間とは知覚手段や概念がまったくと言っていいほど異なり、人間はジャムを、ジャムは人間を、互いにどのような存在なのか感知することが非常に難しいとされている。
ジャムから零や戦闘知性体に対して会話を試みるシーンは、ジャムの作ったコピー人間を含め何度か描写されるが、ジャム自身と直接対峙してさえ、その形や性質はおろか、生物か無生物かすら判明していない。しかし、ジャムからは人間の性質は幾分理解されているようで、無線中継で人語による会話を試みる・人間によく似た「ジャミーズ」を作成して情報収集端末とするなど、人間のレベルに合わせた行動が見られる。また、特定状況下にある人間やごくごく一部の人間にはジャムの想念を一瞬だけ感じ取れることがあり、作中では零やロンバートが自身の頭の中にだけ聞こえる「声」を感じ取る。
『グッドラック』で零に対してジャムが会話を試みるシーンでは、零から発せられた「おまえはだれだ」という問いに対し即答できず、若干の間をおいて、人間の概念でジャムと呼ぶものの総体である、と答える。このときジャムは、いくつかの可能性を例示されたうえで何者かと問われるが、それらの概念でみずからを説明することはできないとしたうえで「われは、われである」と答える。
ジャムの実態として、現時点で刊行されている小説中では「ある種の言語コードそのもの」「情報を食う存在」と表現されており、OVAでは惑星フェアリィそのものがジャムであるという可能性が示されている。
登場兵器
スペックはOVA版、外部リンクはOVA版公式サイトのもの。
フェアリィ空軍
FA-1 ファーン
ジャム戦争勃発時には地球で実用評価中であり、フェアリィ星への侵攻にあわせて優先的にフェアリィ空軍に配備された。当時の水準では非常に機動性に優れた戦闘機であり、実戦投入直後はジャムに対する優位を有していたが、ジャム側の性能向上によって優位を失い、戦闘爆撃機や対地攻撃機として運用されることが増えている。しかし、新たな主力機のFFR-31 シルフィードが高価であることから、前線の部隊によってはいまだに制空戦闘機として運用されているケースもある。単座のA/B型と複座の練習機C/D型が存在するほか、C型の一部を改修した、FA-1C(SEAD)という対レーダー攻撃/対空火器制圧用の機体(通称:フェアリィ・ウィーズル)が存在する。
全長:16.45m
全幅:11.56m
全高:4.83m
自重:11,876kg
基準離陸重量:16,662kg
最大離陸重量:24,669kg
エンジン:FNX-5010-Kターボファン×1基(最大推力8,221kg(地球大気内・ミリタリー推力)、12,877kg(地球大気内・アフターバーナ使用時))
最大速度:マッハ2.1
巡航速度:マッハ0.8
限界高度:17,700m
武装:
20mmガトリング砲×1
翼下ハードポイント×4
胴体下ハードポイント×3
AAM、ASM、精密誘導爆弾など最大5,800kgを搭載可能
スペック
FA-2 ファーンII(ファーン・ザ・セカンド)
OVA版では、元々高機動無人戦闘機の概念研究を目的とした技術実証機だったが、運用柔軟性の不足やソフトウェア開発の難航などの問題が発覚したため、暫定的に操縦システムのみのテストを行うことを目的として制作された有人研究機とされている。機体形状は後退翼と前進翼を組み合わせた一種のW型翼で、エンジン及び操縦席部分が翼面部分の上にアームを介して乗せられた形状になっており、それぞれが独立して動くことで高い機動性を発揮する。もっとも劇中では開発当初の想定通り、無人戦闘機として運用されることも多い(無人化に伴う機体への改修は行われていない)。
全長:15.16m
全幅:12.60m
全高:4.76m
自重:11,022kg
基準離陸重量:16,112kg
最大離陸重量:不明
エンジン:FNX-5010-K フィーニクスMk.XIFターボファン(推力10,220kg(地球大気内。ミリタリーパワー)、14,780kg(アフターバーナ使用時))×1
最大速度:マッハ1.8
巡航速度:マッハ0.9
限界高度:20,880m
武装:
20mmガトリング砲×1
主翼〜胴体下ハードポイント×5
AAM、ASM、精密誘導爆弾など最大6,400kgを搭載可能
スペック
FFR-31 シルフィード
それまでの主力機であったFA-1に代わる主力機として設計された。開発当初の設計案は長射程AAMを有する長距離迎撃機であったが、開発中に格闘戦能力を持たせるという要求が高まり、超音速巡航と高機動を両立できる機体として完成した。しかし従来の機体に比べ生産コストがはるかに高額となり、配備数は少ない。
OVA版ではステルス性を重視した形状となっている。大きく分けてブロック0 - 10と、コスト面から部品構成を見直したダウングレード版のブロック20以降に二分されている。性能面での違いはないとされているが、実際には素材の違いによる機体剛性やソフトウェアの簡略化などからわずかな性能差があるらしく、パイロットの間ではブロック10までが本物だという意味を込めて「オリジナル・シルフィード」と区別されることもある。
また、「アンブロークン・アロー」では、雪風と同じフェニックスMk.XIを搭載したシステム軍団所属のエンジン性能評価用機、TS-1も登場する。
全長:18.50m
全幅:13.77m
全高:5.01m
自重:不明
基準離陸重量:35,660kg
最大離陸重量:不明
エンジン:FNX-5010-H/J フィーニクスMk.Xターボファン(推力9,677kg(地球大気内・ミリタリー推力)、12,664kg(地球大気内・アフターバーナ使用時))×2
最大速度:マッハ2.7
巡航速度:マッハ1.4
限界高度:18,800m
武装:20mmガトリング砲×1
胴体内ウェポンベイ×7
左右エンジンポッド外側ハードポイント×2
AAM、ドロップタンクなどを搭載可能
スペック
FFR-31MR(FRX-47) スーパーシルフ
OVAでは開発予算獲得のためにシルフィードの派生機として登録されたまったくの新規開発機であり、外観も異なる。作中では下記のD型を含めて13機が特殊戦第5飛行隊に配備されている。また、バリエーションとしてD型の他、長距離迎撃戦闘機型のA型や、アビオニクスを改良したB型、エンジンを更に強化したC型が計画されたが、D型を除きいずれも既存機の改良案に取り込まれる形で計画中止となっている。
FFR-31MR/D スーパーシルフ
FRX-99 レイフ
FRX-00の原型となった機体であり、レイフのみで編成された新特殊戦の設立計画もあった。名前の由来は「知恵の狼」。小説版では一機が特殊戦に13番機として配備されており、OVA版では、この機体に雪風のセントラルコンピュータがみずからのプログラムを転送するほか、雪風がプログラムを転送した機体以外にも、システム軍団のTS-X1という機体が登場する。
小説版では、ステルス性を意識した形状を持つ。翼型は胴体に滑らかに繋がる、前縁フラットのないシンプルなクリップドデルタで、ストレーキ部分を持つ。尾翼は二組存在し、最適な位置を自動選択するため、垂直、水平双方を兼ね備えていると言える。また、機首に前進角のついたカナードを有する。エアインテークを機体上下左右に計4基持ち、二次元推力偏向ノズルを持つ。
OVA版では、主翼は折り畳み可能な軽い上反角のついた前進翼で、最高速度で飛行する際は裏返って後退翼となり、着陸時には垂直に立ててエアブレーキとして使用する。垂直尾翼は存在せず、機首には後退角のついたカナードを装備。有人機においてコクピットが存在する部位には、セントラルコンピューターユニットのセンサー類が存在する。エアインテークは胴体下部および上部左右の計3基。エンジンノズルはベクタードノズル。
OVA版では、FRX-00(雪風)に改修された1機、システム軍団所属機で2話において雪風と異機種間訓練を行ったTS-X1、後述のフリップナイト・システム搭載機(ハンマーヘッド)に改修された3機の少なくとも5機が生産されている。2機の異機種間訓練では、ダミーの AAM-VII 2機を搭載して実施され、TS-X1 が圧勝した。
全長:18.0m
全幅:14.52m
全高:6.28m
ヌード重量:11,860kg
基準離陸重量:不明
最大離陸重量:34,220kg
エンジン:FNX-5011-D-20 フィーニクスMk.XIターボファン(10,220kg(ミリタリー推力時)、14,930kg(アフターバーナー使用時))
最高速度:マッハ3.3
巡航速度:マッハ1.75
限界高度:24,800m
武装:
20mmガトリング砲×1
主翼上ハードポイント×2
主翼下ハードポイント×2
胴体下ハードポイント×6
短距離空対空ミサイルAAM-III、中距離空対空ミサイルAAM-V、長距離空対空ミサイルAAM-VII、レーザー機関砲ポッドを搭載可能
その他、各種可視光・赤外線カメラ、赤外線ラインスキャン、コンフォーマル・マルチバンドESMセンサー等の各種偵察装備を装備可能
スペック
FRX-00 (FFR-41/FFR-41MR)メイヴ
小説ではスーパーシルフ雪風が本機にプログラムを転送したため以後は特殊戦1番機 (B-501) として運用されることになり、同時にパーソナルネーム「雪風」を引き継いで、パイロットも零が担当する。
OVA版では同時開発されず、特殊戦に配備された 雪風のAIが転送されたレイフを有人化改修したものとなっており、1番機ではなく3番機として引き続き運用されている。レイフを原型として開発されたため、無人機なみの優れた機動性を発揮する。のちに心理分析用ソフト「MAc Pro II」をインストールされ、その言語エンジンを応用することで、ある程度の人語によるコミュニケーションが可能となり、人語の命令を理解することもある。OVA版後半では、機体表面にジャム機のような赤い紋様を発生させる視覚的な迷彩「ジャムセンスジャマー」を装備する。
スペックについては、FRX-99 レイフ の項を参照。
フリップナイト・システム
OVA版ではレイフの派生型として開発され、さらに機首部分に核弾頭を装備し、自爆兵器としての運用も視野に入れられている。その機首の形状から「ハンマーヘッド」とも呼ばれ、ジャムの総攻撃に際して3機のフリップナイトがFFR-41に随伴して出撃する。
スペックについては、FRX-99 レイフ の項を参照。
バンシー級原子力空中空母
原作とOVA版では扱いが異なり、原作でのバンシーIVはジャムとの交戦後、突如制御不能になり乗員が退艦。その後、調査中にアクシデントが発生し、制御系を破壊され墜落し、バンシーIIIはジャム大規模侵攻の際、自爆して空中で崩壊する。OVA版でのバンシーIVは原作同様のトラブルに見舞われたあと、絶対防空圏を突破してFAF基地への接近を図ったため、防衛ミサイル軍団が発射した短距離弾道ミサイルの直撃によって撃墜される。バンシーIIIはバンシーIV喪失の穴を埋めるため大規模な改修を受け、多数のFAF人員を搭載して惑星フェアリィからの脱出に用いられる。
海上航行する現実の航空母艦の様に、空中で艦載機の発着を行う。巨大なため、地上で建造したエンジンつきの外殻を気球で吊り上げたあとに滑空させ、空中で艤装を行うという特異な工法で完成されている。地表へのランディングは考慮されておらず、半永久にフェアリイ星防衛圏外縁を一定の軌道で飛び続けるという設定。原子力推進は、惑星フェアリイが人類にとって墜落した際のリスクがない環境なので採用された。
バンシー級空中空母の実戦配備数は4隻の予定だったが、建造予算がかかり過ぎることと、二隻でも空域を十分に防衛できることから、バンシーVとバンシーVIの建造は中止された。
船体(機体)は三層に分かれている。
トップデッキ:管制区画・対空砲区画・居住区画。
ミドルデッキ:離着艦区画・推進区画・格納庫区画。
ロワデッキ:原子炉区画・対空防御区画・格納庫区画・発艦区画。
なお、OVA版でのバンシーは飛行軌道を大きく変更してFAFの絶対防空圏に突入したりフェアリィ星からの撤退に利用されたりするなど、巨体らしからぬ機動性を発揮しているが、原作では遠心力で飛んでいるため下手に動かすと落ちるとの理由から、変針角度や傾斜率には大きな制約がかかっている。
FEP-1AWACS
FEP-1ACC
C-31F
無人空中給油機
訓練用標的機
巡航爆撃機
BAX-4(バックス・フォー)
OVA版では空挺戦車として登場する。8輪の装輪戦車であり、前部と後部を連結した連接車となっている。車体下部のスラスターと前部と後部にひと組ずつ配置された折り畳み式補助翼を用いて、ある程度の滑空を行うことが可能となっている。武装として前後部にファランクス状のガトリング砲塔を1基ずつ、計2基を装備し、車体前部には兵員乗降用のハッチを2基有している。劇中ではフェアリイ基地の地下都市上部にある、モノレール路線に配備された専用車両に搭載された状態から空挺降下を行う。
モーターグレーダー
戦闘機械知性体
機械知性体内でも考え方には差があり、一部の人間の有用性を理解している特殊戦の戦闘知性体たちは、最終的に、ジャムに対する特殊戦との共闘体制が必要と選択する。この状態をエディスは「新種の複合生命体」という造語で説明する。
人間とは異なる認識手段や思考によって、機械知性体は「ジャムがどのような存在なのか」を個体差こそあれ大まかに理解しているとされ、ブッカー達から問いただされた際には、ジャムから非戦協定を提案されたことを明かす。また、人間側が感知していない、ジャムからの宣戦布告のようなものもすでに受けていたと考えられている。OVA版には登場しない。
日本海軍
アドミラル56
各国軍の戦力を統合的に運用する「地球軍構想」の一環として建造された空母群の1隻で、他の同級艦としては、アメリカ海軍の「ヒラリー・クリントン」級やイギリス海軍・オーストラリア海軍共用の「イーグル」、ヨーロッパ各国が共同開発した「グラーフ・ツェッペリン」などが存在する。これらの艦は本来ならば完全な同型艦となる予定だったが、各国の要求性能や建造時期の違いから、それぞれ大きな差を持つ艦として就役した。なお、アドミラル56はこれらの艦のなかでも後期に就役した艦であるため、他艦と比べるとさまざまな改良が施されている。
艦自体はカタパルト4基とアングルド・デッキを持つ一般的なCATOBAR式空母であるが、基本設計完成後に電波妨害等によるアクティブステルス機能が導入されることが決定し、それを実現するために飛行甲板脇を始めとする艦のあちこちにアレイ構造物が設置され、飛行甲板そのものも拡幅されているため、外見の印象は通常の空母とは大きく異なる。その影響で艦載機の搭載スペースが縮小されたが、艦載機のF/A-27Cが他国の同級機と比べると比較的小型であることと、艦のECM能力の向上によって電子戦機の搭載数を減らすことができたため、ある程度の水準は保たれている。また、アイランド(島型艦橋)もステルス性を意識した形状になっている。本来ならば各種アンテナもステルス性を重視して統合・コンフォーマル化される予定だったが、アクティブステルスの投入により見送られた。エレベーターは4基設けられているが、アレイ構造物のために2基はインボード式となっている。
機関は米国が原子力空母用の大出力原子炉の技術移転を渋ったため、原潜用の低出力原子炉8基を搭載することによって代用している。推進システムには電気式を採用。カタパルトは新型センサーの電力消費量の大きさから電磁式の導入を断念し、蒸気式を搭載している。
原作では読み方は示されていない。OVA版劇中の台詞では「アドミラルゴジュウロク」と表音され、OVA版公式サイトではアドミラル56(イソロク)と表記されている。なお、艦名の由来は太平洋戦争開戦時の連合艦隊司令長官山本五十六から取ったという説、建造が承認された皇紀2656年(西暦1996年)の末尾2桁から取ったという説などがあるが、日本海軍は近隣諸国への配慮から公式見解を出していないという。
基準排水量:89,000t
満載排水量:123,000t
全長:390m
最大幅:110m(飛行甲板部分最大幅85m)
高さ:80m
喫水:12m
機関:加圧水型原子炉×8、蒸気タービン発電機×4、モーター8基4軸、計298,000馬力
速力:30ノット+
航空機:約80機
兵装:局点防御用対空ミサイル発射機4基、近接防御システム4基
乗員:3,200名
スペック
F/A-27C
高機動性とステルス性を重視した設計を持ち、艦隊防空や対地 / 対艦攻撃、SEAD(敵対空火器制圧)、偵察など多様な任務に対応可能なマルチロール機であり、大きな兵装搭載能力と航続力を有している。主翼の翼型は変形後退翼で、外半角のついた垂直尾翼とカナードを持った3サーフィス機である。エンジンノズルは可動ベーンが3枚ずつ装備されたスラスト・ベクタリングノズルで、機首をぐるりと囲む形で大型エアインテークが配されている(現実におけるX-32が近い)。ステルス性確保のため兵装や増加燃料タンクはすべて機内装備となっており、胴体内のエンジンと空気取り入れダクトの下に大型のウェポンベイを装備している。
アドミラル56の艦載機として開発された機体だが、地球軍構想による空母計画は主要国による共同計画であり、ヨーロッパ各国とアメリカが艦載機を共通化するなか、国内の技術保持等の名目で100%日本国内で設計・開発された。その代償として開発費と開発期間(特にソフトウェア関連)が大幅に伸びたうえ、生産数はA型で98機・C型で55機と少なかったことから一機あたりの単価が著しく高騰した。しかし、その性能は他国の同級機と比較しても劣るものではない。
OVA版に登場する部隊は「ドラゴン」と「イーグル」のコールサインを使用している。
全長:16.04m
全幅:11.76m
全高:2.80m
自重:12,040kg
基準離陸重量:18,998kg
最大離陸重量:不明
エンジン:MHF-1180-JFターボファン(推力9,778kg(ミリタリーパワー)、11,030kg(アフターバーナ使用時))×2
最大速度:マッハ1.8
巡航速度:マッハ0.88
限界高度:21,200m
武装:20mmガトリング砲×1
胴体内ウェポン・ベイ
ミサイル、誘導爆弾など最大6発。または偵察ポッド、ドロップタンクなどを搭載可能
スペック
E-2 ホークアイ
CH-53E スーパースタリオン
V-22 オスプレイ
こんごう型護衛艦、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦
タイコンデロガ級はMk 26 GMLS搭載艦とMk 41 VLS搭載艦が混在している。
日本空軍
F-4「飛燕」
日本空軍における最後の有人戦闘機と銘打って開発されており、それに違わぬ優れた機動性を有する。「アグレッサーズ」表紙のイラストでは、菱形に近い大型の主翼と傾いた双垂直尾翼を持ち、水平尾翼は存在しないイメージで描かれ、識別塗装として白地に青のストライプが描かれている。
ジャム(兵器)
ジャムが使う無人の航空兵器。作中では、撃墜しても残骸が短時間で消滅すると設定されており、飛行原理などさまざまな面で解明が進んでいない。戦闘機型のジャムは、つねにFAF側の航空機の性能とほぼ同程度の性能を持つよう異様な迅速さで性能が向上することから、零は状況に対応して進化する飛行機のような形態の生物である可能性に言及する。
いくつかの形態が確認されており、原作では真っ黒で全体像が捕らえづらい平面的で影のような機体と表現されるが、これは何らかの偽装機能によるもので、攻撃などで銀色の機体の様子が暴かれる描写もある。OVA版では機体全体に流れるように変化する縞模様があり、ときおり赤い模様が現れるといった変化がある。機首部などに高速回転するコアのようなものが見受けられ、機体全体がつねに振動しているようにぶれて見える。『敵は海賊』シリーズとのクロスオーバー作品『被書空間』では一基のミサイルが解析されており、人間の脳に似せたとおぼしき「有機生命体に似た組織」が構成部品として搭載されている。 OVA版ではタイプ1・2・電子戦タイプおよび高速ミサイルがあり、原作ではTYPE-7までが描かれている。
ジャム タイプ1
地表に設けられた基地のような構造物から巨大なブースターを装着した状態で発進する場合があり、このブースターは一定高度に達すると本体から分離される。この形態は「ジャム・ブースター」と呼ばれる。
全長:14.5m
全幅:30m(最大時)、12m(最小時)
全高:6.5m
自重:不明
総重量:不明
エンジン:不明
最大速度:マッハ2以上
限界高度:高度15,000m以上
武装:AAM数発
スペック
ジャム タイプ2
タイプ1よりも機動性に優れ、タイプ2の出現がフェアリィ星での膠着状態をもたらしたと言われている。
電子戦タイプ
極小タイプ(仮称)
ジャム タイプ6
ジャム タイプ7
それ以降、零を始めとするフェアリイ基地の人間たちは、時系列や行動の記憶があやふやになるといった特異な現象を体験することになる。
グレイシルフ
ジャム高速ミサイル
ジャミーズ
人間のように有機的な存在と自称しているが、身体を構成する物質は、地球の生物のようなタンパク質ではない。ジャミーズとの会話の内容から、零はタンパク質の光学異性体であるD型ポリペプチドでできた生物だと推測する。そのため、普通の人間が食べる物は消化できず、同じようにジャミーズの食べ物を人間が食べることもできない。人間と身体組成が違う理由について、コピー人間であるヤザワ自身は「手違い」「ばかばかしいミス」と述べるが、作中では、自由に食料調達ができないようにすることで行動をある程度制限する、ジャムが設定した一種のリミッターではないかとの推測もされる。なお食べ物のほかにOVA版では零ともみ合いになったヤザワの手首に零の親指がありえないほど深く、まるで骨や筋が存在しないかのように食い込むという描写がある。
その他
OVA版での33年前のシーンにおいて、侵攻してきたジャム機の攻撃を受けて撃墜される輸送機としてC-141が、Blu-ray Disc BOXおよびDVD-BOXに付属する特典映像「YUKIKAZE EXPERIMENTAL MOVIE」には、地球軍の戦闘機としてF-22、Su-27、MiG-21、JAS39、F-15DJが登場する。
書誌情報
- 『戦闘妖精・雪風』早川書房〈ハヤカワ文庫JA〉、1984年。ISBN 978-4150301835
- 『戦闘妖精・雪風〈改〉』早川書房〈ハヤカワ文庫JA〉、2002年。ISBN 978-4150306922
- 『戦闘妖精・雪風〈改〉〔愛蔵版〕』早川書房、2022年。ISBN 978-4152101532 …同タイトル文庫版に、書き下ろし短篇「棘を抜く者」、インタビューなどを追補したハードカバー版。
- 『グッドラック 戦闘妖精・雪風』早川書房、1999年。ISBN 978-4152082237
- 『グッドラック 戦闘妖精・雪風』早川書房〈ハヤカワ文庫JA〉、2001年。ISBN 978-4150306830
- 『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』早川書房、2009年。ISBN 978-4152090515
- 『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』早川書房〈ハヤカワ文庫JA〉、2011年。ISBN 978-4150310240
- 『日本SF短編50Ⅱ』早川書房〈ハヤカワ文庫JA〉、2013年。ISBN978-4-15-031110-0 …アンソロジー短編集だが、SFマガジン1979年11月号に掲載された雪風のパイロット版的な短編『妖精が舞う』が初出当時のまま収録されている。
- 『アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風』早川書房、2022年。ISBN 978-4-15-210128-0
- 『戦闘妖精・雪風〈改〉』早川書房〈ハヤカワ文庫JA〉、2002年。ISBN 978-4150306922
- 『戦闘妖精・雪風〈改〉〔愛蔵版〕』早川書房、2022年。ISBN 978-4152101532 …同タイトル文庫版に、書き下ろし短篇「棘を抜く者」、インタビューなどを追補したハードカバー版。
- 『グッドラック 戦闘妖精・雪風』早川書房〈ハヤカワ文庫JA〉、2001年。ISBN 978-4150306830
- 『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』早川書房〈ハヤカワ文庫JA〉、2011年。ISBN 978-4150310240
OVA版
『戦闘妖精雪風』(間の「・」〈中黒〉がない)のタイトルで、2002年から2005年にかけて全5巻が発売された。GONZO制作。ストーリーは原作の『グッドラック』編を中心に構成され、結末は独自のものになっている。
作画やコンピューターグラフィックによる空戦シーンが評価されており、2006年3月25日、東京国際アニメフェアにおける第5回東京アニメアワードでオリジナルビデオ部門・優秀作品賞を受賞した。
スピンオフ作品として、劇中の航空機を擬人化した妖精が主人公の『戦闘妖精少女 たすけて! メイヴちゃん』も制作されている。
キャスト
- 深井零 - 堺雅人
- ジェイムズ・ブッカー - 中田譲治
- リディア・クーリィ - 麻上洋子
- エディス・フォス - 山田美穂
- ヤザワ - 長克巳
- マーニィ - 田中敦子
- バーガディシュ - 桐本琢也
- イトー - 杉山紀彰
- リン・ジャクスン - 池田昌子
- トマホーク・ジョン - 矢尾一樹
- ロンバート - 土師孝也
- グノー - 大塚芳忠
- リンネベルグ - 小村哲生
- ライトゥーム - 菅生隆之
スタッフ
- 原作 - 神林長平(早川書房刊『戦闘妖精・雪風<改>』/『グッドラック 戦闘妖精・雪風』)
- 企画・設定プロデューサー - 飯田馬之介
- 監督 - 大倉雅彦
- 構成 - 山口宏、十川誠志(2 - 5)
- キャラクターデザイン - 多田由美
- アニメーションキャラクターデザイン - 相澤昌弘、橋本浩一、大塚八愛(5)、関野昌弘(5)、加藤優(5)
- メカニカルデザイン - 山下いくと、きお誠児、竹内敦志、海老川兼武
- 美術監督 - 竹田悠介、加藤朋則(2 - 5)
- 色彩設計 - 村田恵理子
- 撮影監督 - 吉岡宏夫
- 3DCGIチーフディレクター - 白井宏旨
- 3D特技監督 - 竹内敦志
- 編集 - 重村建吾
- 音響監督 - 鶴岡陽太
- 音楽 - 三柴理、塩野道玄(ザ 蟹)(1 - 4)、Clara(THE金鶴)(5)
- 特別協力 - 航空自衛隊
- プロデューサー - 杉山潔、桜井裕子、石川学(2)、小島勉(3 - 5)
- アニメーション制作 - GONZO DIGIMATION
- 製作 - バンダイビジュアル、ビクターエンタテインメント、GONZO
主題歌
オープニングテーマ「Engage」
エンディングテーマ「RTB」
第5話エンディングテーマ「RTB-AGL2」
漫画版
『雪風 YUKIKAZE I 戦闘妖精』として早川書房から単行本が刊行されている。作者はキャラクター原案の多田由美。
原作、およびOVA版と違うストーリーラインや設定で描かれたエピソードも多い(零の強盗歴、トム・ジョンの足の機械化など)。
II巻以降の刊行予定についてはアナウンスされていない。
関連商品
DVD/VHS-Video『戦闘妖精雪風』
DVD/Blu-ray BOX『戦闘妖精雪風』(初回限定生産)
DVD『戦闘妖精雪風 FAF航空戦史』
ゲーム『戦闘妖精雪風〜妖精の舞う空』
模型