拳児
以下はWikipediaより引用
要約
『拳児』(けんじ)は、原作:松田隆智、作画:藤原芳秀による日本の漫画。週刊少年漫画雑誌『週刊少年サンデー』(小学館)に、1988年2・3号から1992年5号まで連載された。単行本は小学館:少年サンデーコミックスより全21巻(うち外伝1巻)、同ワイド版より全11巻、小学館文庫より全12巻、コンビニコミック版全8巻が刊行されている。
本記事では続編『拳児2』についても記述する。
解説
中国武術をテーマとした作品であり格闘シーンも頻繁に登場するが、戦闘そのものがメインテーマとなっている一般の格闘漫画とは異なり、主人公・拳児の成長を軸に中国武術の技術論や思想・哲学などを描いた物語となっている。
本作のストーリーそのものはフィクションだが、現実の武術史、実在した過去の武術家に関するエピソードが多数紹介されており、高名な武術家がモデルとなったキャラクターも数多く登場している。なお、連載当時は存命中だった武術家をモデルに作られたキャラクターは名前を一部改変した別名にされており、既に死去していた場合は実名で描かれている。
本作において八極拳は、主人公が主として学ぶ武術ということもあり、非常にダイナミックに描写されている。そのため、劇中の八極拳には漫画的な誇張が多く、実際の八極拳の姿とは大きくかけ離れた部分も少なくない。
あらすじ
父、母と3人で東京に暮らす剛拳児は、拳法に夢中のヤンチャな小学生。田舎暮らしから帰郷した祖父・侠太郎から八極拳を学び、曲がったことを許さない、正義感と義侠心にあふれる性格に育っていた。しかし、ある日侠太郎は、日中戦争時代に恩を受けたかつての知人を訪ねるため、単身中華人民共和国へ渡りそのまま消息を絶ってしまう。
時が経ち、中学時代、高校時代を経て、才気あふれる拳士としても成長しつつあった拳児は、祖父の言葉に従い日々修練に勤しんでいた。そして横浜の中華料理屋のオーナー、張 仁忠との出会いにより八極拳の鍛錬の機会を得て本格的な修行を始めるが、不良グループを束ねる拳法使い・トニー・譚に目を付けられ、小競り合いの末に抗争事件に発展し学校から無期停学処分を言い渡されてしまう。
張の勧めもあり、拳児は停学期間を利用して今だ行方の知れない侠太郎を探すため、台湾・香港を経由して中国へと旅立つことになる。
登場人物
主要人物
剛 拳児(ごう けんじ)
本作の主人公。正義感が強く、激情的で負けず嫌いな一面を持つ。幼少期はわんぱくで向こう見ずな子供だったが、やがて大人しく礼儀正しい少年へと成長した。幼少時より、祖父・侠太郎から八極拳を習っていた。
教育熱心な母親の方針で、進学校の乾清大学付属中学に通っていた。しかし、暴走族とのいさかいに巻き込まれて付属高校に上がれず、不良校である紫竹院学舎高校へ進学。侠太郎が中国に旅立って以降は、独学で八極拳の稽古を続ける傍ら様々な武術・格闘技を学んでいる。その後、横浜にて張仁忠に本格的に八極拳を師事していた。
高校1年次の2学期に、トニー・譚との抗争で無期停学処分を下されたため、その期間を利用し、音信不通となった侠太郎を追って一人中国へと旅立つ。日本を出国した後は、台湾で蘇崑崙に師事し、八極拳や蟷螂拳や八卦掌など数々の中国武術を修行している。
その後、香港を経由して中国に渡り、嵩山少林寺における夜叉王との戦いの末に病に倒れていた祖父と再会を果たす。その直後、再度姿を現したトニー譚との決闘に臨み、勝利を収めて無事帰国した。
修行の日々の中、若くして仁義礼智信厳勇の7つの心得を備え持つ者として、八極拳の正式な門人として認められるにいたるが、年頃の少年らしく強さを一途に追い求める性根と、1度決めたことを曲げず命を懸けた戦いにも臆せず立ちむかおうとする向こう見ずな性格は幼い頃より変わっていない。
トニー・譚(たん)
ベトナム出身の華僑。洪家拳と流星錘の使い手で、横浜にて「黒影会(ブラック・シャドー)」と名乗る愚連隊を率いている。戦争によって家族と離れ離れになり、シンガポール、香港を経て横浜へ来訪。異国でたった一人幼少時代を生き抜いてきた過去から、強くなることと勝つことへの強い執着心を抱くようになり、命のやり取りをしてこそ拳術だと妄信し相手を殺すことも厭わぬ粗暴で残忍な性格となった。自分の気に障る相手に一方的に喧嘩をしかけ、一度己が敵と定めた相手には勝利を収めるまでつきまとい、その気にさせるために執拗な挑発を行ったり、入門を断った老師の弟子たちに逆恨みから嫌がらせをするなど執念深く陰湿な一面も持つ。
張仁忠に何度となく八極拳を師事しようとしたものの、そうした性格の激しさからその都度拒否されたため、張から直々に技を学び、かつ生い立ちや境遇も正反対の拳児を激しく敵視している。その後の対決で拳児に2度敗れた後、修行のため中国本土に渡って心意六合拳を学び、侠太郎と再会した後の拳児に復讐戦を挑んだ。圧倒的実力差で拳児を追い込むも巻き返され、降参した振りをして執拗に追い詰め命を奪おうとするものの、拳児の八極拳の渾身の一撃を受けて共に崖から川に転落し、生死不明のまま消息を絶つ。
モデルはアメリカ合衆国在住の南派拳法家、トニー・チェン。チェン自身も本人役で劇中に登場し、譚とは義兄弟の間柄という設定になっているが、本作でのチェンは拳法家ではなく、拳法における思想の心得のある実業家となっている。
『拳児2』において登場はしていないものの、最後の対決以降も「幾度となく戦いを繰り広げた」と回想で示唆されている。
拳児の家族
剛 侠太郎(ごう きょうたろう)
拳児の父方の祖父で、八極拳の師匠。田舎に一人で暮らしている。明るく子供っぽい性格だが、義侠心に溢れ曲がったことを許さない。武術家としての技量は非常に高く、暗勁を使いこなすこともできる。
青年時代、日中戦争に従軍した際に滄州で負傷した自分を助け、友人となった中国人農夫・尹春樹の縁で、八極門の拳士・孟修齢に弟子入りした。終戦後、一門の協力を得て日本に帰国。老境に入り、友人との再会の約束を果たすべく中国に旅立ったまま消息不明となる。
中国では漢名風に略した剛 侠(カン・シャー)と名乗り、春樹の息子(東侠の父親)が決闘を強いられ殺された事件を追って河南省へ向かう。嵩山少林寺を訪れたことがきっかけで夜叉王の頭目・悟空と立ち合い、一昼夜に渡る激闘の末に義兄弟となった。やがて内輪争いで悟空が殺されると夜叉王に監禁され、関節リウマチを患ったため身動きがとれず、老君山で拳児の来訪を待ち続けていた。
拳児と再会して夜叉王との紛争を終結させた後、トニー譚との決着をつけることを決意した拳児に手紙を残して先に帰国。決着をつけて帰って来た拳児を田舎に呼び寄せて刀による真剣勝負をさせ、「人が万物の愛によって活かされている」ということを実感と共に教え伝えた。
剛 仁(ごう ひとし)
日本
市村 太一(いちむら たいち)
風間 晶(かざま あきら)
井上(いのうえ)
堀田 豪士(ほった たけし)
高山 双八(たかやま そうはち)
阿形(あがた)
藤吉、野田(ふじよし、のだ)
三藤(みふじ)
拳児が進学した紫竹院学舎の教師。拳児のクラス担任兼生徒指担当。空手家でもあり、「鉄拳」の異名で生徒たちからも恐れられている。
豪快な人物で、生徒たちに恐れられる一方で、生徒たちを信頼することを心掛け、三流高と呼ばれる学校に進学してきた彼らに「大きい男であれ」と語るなど、教師としてのみならず漢としての器も深い。
拳児の理解者の一人でもあり、世間一般の流れから外れた彼を感心と共にあたたかい目で見守り、校内での乱闘騒ぎが起きた際には満場一致で退学にすべしと言い切る教師たちの中で唯一拳児をかばった。また、トニー譚との抗争に図らずも及んでしまった拳児に落胆する母に対し、大ごとに巻き込まれるのは大物になる証拠、自分が代わりたいくらいだと興奮しながら言い切った。
木製の椅子を盾にしてきたトニーの子分を椅子ごしの一撃でヘルメットごとぶちのめすなど、空手の腕もかなり立つ。拳児を空手部に誘った際には、自分が高山の後輩であり、自身が唯一勝てなかった相手だと語っている。
張 仁忠(ちょう じんちゅう)
張 禅(ちょう ぜん)、美美(めいめい)
台湾
劉 月侠(りゅう げつきょう)
李書文の最後の弟子。台湾総統府侍衛隊の武術教師をしており、その傍らで自ら見込んだ数人の高弟に八極拳を指導している。後に拳児を直弟子とし、正式な八極門の門人として迎え入れる。八卦掌の達人でもある。
大陸・滄州の出身で、青年時代は中華民国の工作員として活動していた。やがて命懸けの戦いに空しさを感じ、戦後は台湾に渡って長い間武術と関わることなく静かに暮らしていたが、総統府に武術師範として招かれたのをきっかけに自らの技を後世に伝える作業に乗り出した。正式な門人としては拳児や蘇を含めて5人の弟子がおり、劉以外の武術家からも教えを受けている。拳児の入門祝いにそれぞれが学んだ武術を(時間の関係もあって触り程度だが)教えている。
モデルは李書文の実在の関門弟子・劉雲樵。
蘇 崑崙(そ こんろん)
劉月侠の高弟。台北で診療所を営みながら、学生に蟷螂拳を指導している。生まれ故郷の台南で張徳奎から秘門蟷螂拳を学んだ後、劉に弟子入りし八極拳を学んだ。小柄な体格の明るいお調子者だが、各種格闘技の心得のある在台アメリカ軍人数人を圧倒するなど、その実力は非常に高い。武徳と義侠心を重んじ、師や同門の仲間、善良な市民に不埒な所業を働く人間のことを反面教師としつつ徹底的に懲らしめる。拳児の台湾滞在中、自宅に拳児を寝泊りさせ、蟷螂拳と八極拳をコーチする。
拳児のことを非常に気に入っており、別れが近づいてきた際に落ち込む様子を見せるほどかわいがっている。
『拳児2』では髪がかなり白くなったが、陽気で調子がいい様子は変わっていない。
モデルは劉雲樵の直弟子・蘇昱彰。
田 英海(でん えいかい)
香港
閻 大旺(えん だいおう)
閻 勇花(えん ゆうか)
ボビー
中国
朱 勇徳(しゅ ゆうとく)
尹 東侠(いん とんきょう) / 道戒(どうかい)
董 竹林、ペイペイ(たん つーりん、ぺいぺいは「亻に菩」を繰り返す)
金白山、石鉄岩(きん はくさん、せき てつがん)
陳 小豪(ちん しょうごう)
李 長典(り ちょうてん)
張 猛炎(ちょう もうえん)
道珍(どうちん)
悟雷(ごらい)
悟空(ごくう)
強盗団「夜叉王」のリーダー。かつては少林寺の秘伝である心意把を継承する拳士だったが、文化大革命の際に紅衛兵と乱闘騒ぎを起こし殺害してしまったことで、寺に迷惑がかかることを恐れて少林寺を去る。出奔後、父を身代わりに殺されたことを機に、紅衛兵に虐待を受けた経験を持つ者たちを集めて少林拳の心意把を伝授して夜叉王を結成し、復讐のために紅衛兵のみを標的にして襲撃を繰り返していた。
文化大革命が終わった後も夜叉王の活動を続け、老君山に篭もっていた。やがて訪ねてきた侠太郎と激闘を繰り広げた末に意気投合して義兄弟となり、連日におよぶ説得を受けて夜叉王の解散を決めるが、それに不満を持つ部下に暗殺され、侠太郎の身柄と共にその事実を秘匿された。
夜叉五(やしゃご)
夜叉一 (やしゃいち)
張 伯天、琇瑛(ちょう はくてん、しゅうえい)
李 書文(り しょぶん)
清朝末期から中華民国時代に実在した、伝説的な強さを誇った八極拳の拳士。拳児の使う李氏八極拳の祖でもある。
過去の時代の人物であるため劇中に本人が登場することはないが、侠太郎の訓話や劉月侠の昔話といった形で、その強さや人物像に関するエピソードが度々紹介されている。
非常に偏屈で気難しい人物で、八極拳こそ最高の拳法と信じ込みその他の拳法を絶対に認めようとしない頑なな性格。他流派の老師に対抗し、劉月侠に無茶な稽古を付けてその様子を見せつけたりしていた(皮肉にも、その稽古から逃げ出したことで月侠は他流も学ぶようになる)。
拳児本編では「強さゆえにその身を滅ぼしてしまった人」と狭太郎に形容されているように、試合で打ち負かされた相手の身内に毒殺されたと語られている。その一方、旅の中で拳児が伝え聞いた話では、老境に差し掛かった頃には度重なる試合を疎んじるようになり、手合わせた相手を死なせてしまったことで虚しさを感じたり、手をかけた相手を放置せず丁重に弔うなどの心境の変化があったとされている。
外伝では最後まで旺盛に試合に臨んでおり、最後に手合わせた高名な武術家を死なせてしまった後逃げるように町を去ろうとする途中で町の人間に振舞われた毒入りの茶を飲んでしまい、本編で語られた通りに死亡した。
実在の李書文については、李書文を参照。
拳児2
『拳児2』(けんじ ツー)は、『拳児』の続編。サンデーうぇぶりにて2018年6月1日から不定期で連載されている。2019年7月に、同年までに配信された5話を収録した単行本が発売された(ISBN 978-4-09-129349-7)。
前作から時代を経て成長し、武術家となった拳児の活躍を描く。作画は同じく藤原芳秀が手がけているが、2013年に死去した松田隆智は原作から原案の位置づけになり、代わって「拳児」初代担当・佐藤敏章がシナリオ協力を担当している。なお、単行本あとがきでは、著者が女性として描かれている。
2019年から参加しているさいとう・プロダクションで作画チーフとなり仕事が増大したためか、2020年9月16日に第8話を配信して以降は更新が止まっており、また藤原の単独名義では他作品の発表も行われていない。
登場人物 (拳児2)
剛 拳児(ごう けんじ)
40も間近にして独身。お互いに想い合ってはいたが恋人未満であった風間晶とは、恋愛や結婚には発展しなかった模様。日本ではアパートで独り暮らしをしているが、部屋には常にゴミ袋が置かれており、掃除もあまりされていない。両親は祖父・侠太郎の暮らしていた田舎で隠居している。
ライバルだったトニー・譚とのその後の関係は語られていないが、前作の後も幾度となく戦いを繰り広げたと回想で示唆されている。
市村 太一(いちむら たいち)
市村 拳太(いちむら けんた)
竜崎(りゅうざき)
竜崎 猛(りゅうざき たけし)
職業は自動車整備工場経営。強面で堅気らしからぬ外見や立ち居振る舞いをしているが、拳児によると根は悪人ではないという。叶と結城に頭が上がらない。
高山 双八(たかやま そうはち)
叶 一撃(かのう いちげき)
竜崎をあしらった拳児を道場に呼んで自ら立ち合い、左上段回し蹴りをかわして反撃を加え、臆することなくアドバイスを贈ってきた拳児を認めて道場への出入りを許す。その後工夫した新しい戦法を披露し、茶飲み話に武道家として弟子をとることの大事さを拳児に説いた。
高杉 凛(たかすぎ りん)
高杉 晶(たかすぎ あきら)
張 禅(ちょう ぜん)
張 仁忠(ちょう じんちゅう)
陳 剣英(ちん けんえい)
陳 秀麗(ちん しゅうれい)