放課後退魔録
以下はWikipediaより引用
要約
『放課後退魔録』(ほうかごたいまろく)は、岡本賢一著、黒星紅白イラストの日本のライトノベル。角川スニーカー文庫より、全4巻。
なおこの項目では、放課後退魔録の続編である『放課後退魔録』(ほうかごたいまろく マルる)についても記述する。以降においては便宜上、放課後退魔録(る)、もしくは単に(る)と表記する。
ストーリー
紅椿学園に通う高校生・雨神丈斗はある朝、九堂よしえと桜宮サヤの2人に、悪い妖怪・妖魔を退治をしているという、妖魔術クラブに勧誘される。その時は取り合わなかった丈斗だったが、その後サヤにもらった護符を身につけていると、今まで見えていなかった化け物が見えるようになり、妖魔の存在を認めざるを得なくなる。そして彼は深夜の学校の地下で、妖魔に取り込まれ、恋人の夏芽に出会う。丈斗は夏芽を妖魔から引き離して、妖魔を倒すことに成功するが、夏芽は妖怪化が進み繭のような姿で眠りに就く。丈斗は夏芽を人間の姿に戻すため、妖魔退治をしていくことを決める。
丈斗の強引な妖怪狩りに反発していた妖怪たちも、丈斗の無用な妖怪狩りをしないという誓いを信じ和解する。そして妖魔を狩るうちに、丈斗たち妖魔術クラブは、妖魔を密造するメラ星の秘密結社・ベロルの存在を知る。その実力から妖怪たちに一目置かれるようになっていた丈斗は、本格化してきたベロルの地球侵略に対抗すべく、妖怪たちの連合・アマタケ連合を作る。やがて丈斗の働きにより夏芽が自我を取り戻し、そのころベロルとメラ星上層部による地球侵攻作戦が明らかとなる。丈斗はそれを阻止すべく地球侵攻の際に使われる星天使を召喚する人工衛星に忍び込む。だがその内部は、実験として召喚された下級の星天使・カウラに乗っ取られていた。カウラは研究員の隙をつき、強力な星天使である、リリスとリカーラを召喚していたのだ。
カウラのもとに辿り着いた丈斗。カウラは丈斗に日本と夏芽のどちらかを選べと告げる。丈斗は苦悩しながらも、夏芽に犠牲になってもらうことを選ぶ。そしてカウラが夏芽を殺そうとした時、それまで半分眠りについていたリリスが目を覚まし、そして丈斗は、リリスとカウラが歩んできた長い苦しみを知る。リリスは夏芽に同化し、カウラも夏芽の中のリリスと共にいるために丈斗と同化する。日本を攻撃しようとするリカーラを止めるには、人工衛星がなくてはならない。そのため丈斗はカウラの助けを借り、反乱の起こった人工衛星を破壊しにきたベロルの戦艦を倒す。丈斗は瀕死となりながらもリリスの物質転送の力で地球に帰還した。
用語説明
妖怪
全ての妖怪は普通の人間には知覚されない。そこに妖怪がいることを認識できず、妖怪に触れられても「触れられている」と認識できず、また妖怪が机を倒したとしても「机が倒れた」ということを認識できない。また妖怪に喰われた人間は妖怪化するので、たとえ隣で誰かが喰われたとしてもそれに気付くことはできない。ただ、妖怪の気配などは認識以下の領域で知覚でき、「なんとなく居心地が悪い」など感じることもある。
妖怪は12種類のエレメントと呼ばれるエネルギーで構成されている。エレメントがなくなると妖怪は消滅する。
全ての動植物の中で一番妖怪になりやすいのは人間である。妖怪になった人間は周囲に認識されなくなると同時に、「その人物について記憶」が認識できなくなり、つまり周囲の人の記憶からも消えていく。大抵の人間は、妖怪になる過程で思考力を放棄してしまっているが、一部は理性を保ったまま妖怪になる。また妖怪になりかけの人間は半妖怪と呼ばれる。
エレメント
エレメントを吸収し、それを放出すれば強力な攻撃手段となる。
妖魂(ようだま)
妖魂はエレメントの結晶なので、妖魂を吸収すれば短時間で効率よくエレメントをためられる。
紅椿学園(べにつばきがくえん)
元々妖怪が集まりやすい土地に建てられたので、地下校舎は妖怪の巣窟となっている。
メラ星
早くから妖怪の存在を知覚しており、大昔から妖怪を利用、妖怪と共生しつつ文明を発達させてきた。現在では高度な妖怪文明を確立している。科学力も地球を遥かにしのぎ、巨大な宇宙戦艦の建造、サイボーグ化による延命など高度な技術を有する。100年前に世界大戦があり、現在は戦争に勝った一国がメラを統一している。言語はエノク語。エノク語は魔法円にも用いられる。地球に妖怪を啓蒙しようとしているが、過去数回は失敗に終わったとのこと。
メラ人と地球人は元々同じ惑星で発生した人類だとされており、メラ人と地球人のハーフも可能。顔立ちはアジア系黄色人種に似る。
魔法円(まほうえん)
正円の中に五芒星やエノク語を書き加えることにより、周囲のエレメントに働きかけて、退魔や結界などの様々な効果を引き出す。強力なものほど複雑な図形となり、中には書くのに数日掛かるものもあるという。同じ魔法円でも使用者で威力が変わる。
サイボーグ
人工精霊(エレメンタル)
妖魔術クラブ(ようまじゅつクラブ)
部室のドアに退魔の魔法円が貼ってあり、中には九堂が自費でつけたエアコンや、サヤが持ち込んだウサギのぬいぐるみを入れたロッカーなどが置いてあるが、それ以外は特に変わった点はない。
秘密結社ベロル
『(る)』では、かつての悪行を「一部の暴走」として追及を逃れ、その裏で大天使召喚を企てていた。
デオドア
登場人物及び妖怪など
雨神丈斗(あまがみ たけと)
主人公。紅椿学園に通う高校2年生。
サヤたちによって妖怪の存在を知る。その後、妖魔のせいで妖怪化し眠りについた恋人の夏芽を元に戻すことを決意。そのために必要な妖魂を集めるうちに力をつけ、最後には地球を救う働きも見せた。
妖怪としての素質があったため、エレメントの吸収・照射や結界を魔法円なしでできる。
彼自身の強さに加え様々な妖怪たちの助けもあり、妖怪間のもめごとは「アマタケ」の名前を出すだけで治まってしまうほどに、一目置かれる存在となった。彼を慕って集まった妖怪たちの連合アマタケ連合は、かつてできた妖怪たちの集まりとしては最大級。
妖怪格闘ランキング0位。これはランキング1~5位の妖怪たちが全員「試合はしないが、丈斗の実力は自分以上だ」と表明したことによる。
丈斗の家系は代々妖怪化しやすい系譜。妹の妙子は昔に妖怪化してしまっており、丈斗は妖怪が見えるようになるまで認識できなかった。
酔うとその時の記憶が飛ぶ。
桜宮サヤ(さくらみや サヤ)
丈斗と同学年の幼げな顔立ちで小柄な少女。妖魔術クラブの第2代会長。人工精霊を使って戦う。使い魔は柴犬の姿の妖怪のピーチ。
ウサギが大好きで、私服はウサギづくめで学校でもウサミミを付けている。さらに部室にはロッカーいっぱいにウサギのぬいぐるみを持ち込んでおり、その全てに名前が付いているらしい。そのため「ウサバカ」と呼ばれることもある。ウサミミには妖怪を見るための装置が内蔵されているが、それもいつもウサミミをつけていることを正当化するためのようだ。
だが九堂よりも妖力があり、複数の人工精霊を召喚できさらに八卦占いをできたりなど、実力面は申し分ない。
かつて、好きになった人を妖怪に喰われた。そのことを妖怪ではないサヤは覚えていないが、九堂とともにその人を喰った妖怪を退治したことが入部のきっかけだった。彼女のウサギ好きも、その人の名前が「宇佐見」だったからなのではないかと、自ら推測している。
たびたびエロ発言をして九堂や五郎八にハリセンで叩かれる。
九堂よしえ(くどう よしえ)
眼鏡におかっぱ頭の妖魔術クラブのメンバー。丈斗たちより一学年上。パソコンで魔法円を描いて照射する戦法を多く用いる。財閥の令嬢。
以前妖魔退治をした際、首から下を妖魔に喰われてしまったが、サイボーグ手術をして蘇生した。たとえ心臓が止まっても、数日で復活できる。サイボーグ化によって視力は3.0になっていて、眼鏡は妖怪を視るための装置。
どうやら彼女の悲恋と体を喰われた時の話は関係があるようだが、詳しくは語られていない。
卒業後は、発達した技術を学びにメラ星へ留学した。
兄は泌尿器科医。妖魔術クラブのパソコンは彼の使い古しを譲り受けて改造したものであり、消去し忘れた画像データ(サヤたちは「邪念の塊」と呼んでいる)が度々出てくる。
彩音寺夏芽(さいおんじ なつめ)
丈斗と同じ学年で、彼の恋人。彼女の家も妖怪化しやすい体質の持ち主である。
中学生の頃、姉を階段から突き飛ばして殺してしまう。だが姉は妖怪化したので両親は彼女の存在を忘れ、夏芽自身も庭に姉の死体を埋めて、そのことを忘れた。だが姉はデビモに復活させられ、良心の呵責に耐えきれなくなった夏芽はデビモに取り込まれる。丈斗に救い出されるが、心を閉ざした夏芽は急速に妖怪化し、校庭の一角で繭のような姿で眠りに就く。
その後、丈斗が集めた妖魂によって人間の姿を取り戻す。半妖怪となった彼女は再び母と暮らし始めるが、母はこれまでの生活との歪みにストレスをためて体を壊してしまう。そして夏芽は、人間としての「夏芽」ではなく妖怪の「ナツメ」として生きることを決意し、一人暮らしを始めた。
寺流五郎八(てらながれ いろは)
霧山遊子(きりやま ゆうこ)
島城美也乃(しましろ みやの)
遊天童子(ゆうてんどうじ)
丈斗に憑く妖怪。金髪でベリーショート、ウエイトレスのようないでたちで、背中に赤い番傘をさしている。甘党で特におはぎが好物。普段は普通の人の姿だが、虎の頭をした獣人に姿を変えることもできる。
丈斗の先祖にあたり、丈斗の家系の人々を見守ってきた。だが、唯々諾々と周囲に流されるようなつまらない人間は生きていてもしょうがない、という考えも持っている。番傘には白字で「極楽浄土」の4文字が書かれており、そこにこれまで見守ってきた人の妖魂のうち透明なものをはめ込んでいる。このコレクションはその人を最後まで見守ったということの証のようなものとのこと。
右腕を千切られた丈斗に、自分の右腕をあげた。
月華に恋心を抱く。ウエイトレス姿は彼との約束によるもので、さらにおはぎも月華との出会いがきっかけで好きになったようだ。一人称は「俺」だが、性別は不詳。
ミョウラ
モーギ
デビモ
カウラ
放課後退魔録(る)
『放課後退魔録(る)』(ほうかごたいまろく マルる)は、放課後退魔録の続編として書かれたライトノベル作品。放課後退魔録の2年後を描く。岡本賢一著で、イラストは前作と同じく黒星紅白である。角川スニーカー文庫刊。
サブタイトルの「ワラキズ」はあとがきによると「笑う鬼神と傷のある少女」の略。(る)については、何を意味しているのか明かされていない。
I.とサブタイトルについてはいるが、2005年1月1日にI.が発売されて以来新刊は出ていない。
あらすじ
紅椿学園中等部に通う狛止米子と瀞牧兼は、ある日校内でウサミミを拾い、それを付けると今まで見えなかったドアが見えた。好奇心から2人は中に入るが、結界により外に出られなくなり、さらに妖怪に襲われてしまう。妖魔術クラブにその場を助けられ2人は窮地を脱し、彼らの話を聞いて妖怪について知る。そこに、水鬼を初めとした妖怪たちが襲撃してくる。その戦闘で米子は、自分の父を殺したのがその水鬼だったと知る。水鬼は逃走し、米子は水鬼への復讐を決意。米子と兼は妖魔術クラブの会員となる。
九堂たちに妖魔術の基本を教わった2人。そこに敵が現れる。水鬼に違いないと意気込んで現場に向かった米子だが、彼女はそのまま敵の手に落ちてしまう。米子をさらった水鬼は、米子に自分の過去と米子の父との約束を語る。そこに敵の黒幕であるピヨトルの側近が現れ水鬼に米子を喰うよう命令するが水鬼はこれを拒んで殺される。米子も殺されそうになったが、状況を不利と判断した敵はその場から撤退し、米子は難を逃れる。そして妖魔術クラブはピヨトル、そしてベロルの狙いを知る。ベロルは大天使を召喚して強大な力を手に入れようとしていたのだ。
そして、ピヨトルを裏切り殺した彼の側近・ザラバザが大天使に転生する。地球侵略をもくろむ彼を阻止しようとするザラバザを止めるべく米子と兼は戦うがまるで歯が立たない。そして兼はザラバザによって瀕死の状態となるが、そこで兼が大天使を召喚・転生する。ザラバザより数段強い鬼神となった彼はいとも簡単にザラバザを殺し、さらなる破壊をしようとする。米子は兼に必死で呼びかけ、兼は自我を取り戻して鬼神から人間の姿に戻ることができたが、代わりに妖怪となってしまったのだった。
新出用語
基本的な用語は前作と共通である。
大天使(だいてんし)
大天使を召喚すると、召喚者はその大天使に転生して強力な力を得られる。召喚される大天使はルーレットのようなもので決められるので、強いものを召喚できるかは運任せ。またまれに大天使を二体召喚するものもいる。その場合は、2体の天使の天使係数の掛け算で、合成後の力が決まる。二体召喚に成功すれば、最強の天使を一体召喚するよりもはるかに強大である。
登場人物・妖怪など
狛止米子(こまどめ こめこ)
父の死が水鬼のせいだと知り、その水鬼を殺そうとしたが、結局果たせなかった。そしてその悔しさを糧に、ザバラザに挑む。
瀞牧兼(とろまき かねる)
紅椿学園中等部2年生。米子と幼馴染。妖魔術の素質は全くない一般人。米子が「か」にアクセントを置いて外国人の名前のように「カネル」と呼んでいるので、周りにもそのイントネーションが定着している。
あだ名は「ハイテンションのび太」で、ツッコミ役。米子といつも一緒にいることから「金魚のフン」と揶揄されることもある。米子のためならば危険を顧みず行動する。
大天使のうち最弱のアナエルを二度召喚し、結果鬼神として強大な力を得るが、代わりに妖怪化してしまった。
ロロミ
シリル
寺流五郎八(てらながれ いろは)
桜宮サヤ(さくらみや サヤ)
九堂よしえ(くどう よしえ)
雨神丈斗(あまがみ たけと)
ピヨトル
ザラバザ
マリマ
シロ
タカイタカイ
遊天童子(ゆうてんどうじ)
水鬼(すいき)
かつて商人を溺れさせようとした時、商人は娘が育つまで待ってくれといった。水鬼はそれを信じ商人を逃がしたが、商人は戻ってこなかったばかりか、水鬼を退治しようとした。そこで水鬼はその一家を皆殺しにした。その時から水鬼は、人間を溺れさせ、約束を交わして逃げさせては、約束を守らない人間の一家全てを喰ってきた。米子の父は、約束を守って米子の代わりに水鬼に殺されたのだった。
米子の父と交わした約束を果たすため米子を喰うことを拒むなど、心底からの悪い妖怪ではないようだ。
既刊
- 放課後退魔録
- 放課後退魔録 ロストガール ISBN 9784044259013
- 放課後退魔録II ぬだらべ ISBN 9784044259020
- 放課後退魔録III 殺し屋と月見うどん ISBN 9784044259037 (短編集)
- 放課後退魔録IV ナツメ ISBN 9784044259044
- 放課後退魔録(る)
- 放課後退魔録(る) I.ワラキズ ISBN 9784044259051
- 放課後退魔録 ロストガール ISBN 9784044259013
- 放課後退魔録II ぬだらべ ISBN 9784044259020
- 放課後退魔録III 殺し屋と月見うどん ISBN 9784044259037 (短編集)
- 放課後退魔録IV ナツメ ISBN 9784044259044
- 放課後退魔録(る) I.ワラキズ ISBN 9784044259051