救世主ラッキョウ
以下はWikipediaより引用
要約
『救世主ラッキョウ』(メシヤラッキョウ)は、小林よしのりによる日本の漫画で、新興宗教をテーマにしたギャグ漫画。『東大一直線』に次ぐ、小林の2本目の連載作品である。
『月刊少年ジャンプ』(集英社)にて読切が掲載(年月号不明)され、その後1978年4月号から1979年8月号まで連載されたほか、後に『月刊コロコロコミック』(小学館)にてリメイク版も連載された。当記事ではそれぞれ区別の必要がある場合、旧作・新作と表記する。
以下の出典は同単行本、およびイースト・プレスのアンソロジー『小林よしのりの異常天才図鑑』『小林よしのりのゴーマンガ大事典』による。
旧作概要
漫画作品の場合、読切作品を掲載してから読者の反応を見て、好評ならば連載化するケースが多い。本作もその一つで、当記事では単行本で最初に収録されている読切を第1話、2番目に収録されている連載初回を第2話と表記する。
『ゴーマニズム宣言』で真言密教を背景に、宗教への造詣が深かったことを明らかにする小林だが、当時は語る機会が何もないままの作品発表だった。
第1話掲載時から読者より楽教への入信希望のハガキが殺到、連載開始と同時に会員制を敷くことにした。だが会員がまたたく間に増加し、会員証を作ったところ、印刷代が小林の毎月の原稿料を上回ってしまったので(当時の楽教新聞に「会長は破産じゃ!コジキになって印刷費を稼ぐ」とある)、『月刊少年ジャンプ』編集部が印刷・発送することになった。しかし名簿管理までは編集部も手が回らないので困っていたところ、小林の地元福岡の女子高生の会員たちが名簿を担当することになった。『東大一直線』でも進学団体いちょう会が登場、読者から入会希望や支部設置表明があったが、『週刊少年ジャンプ』編集部は特に何もしなかった。
こうして連載・布教とも「楽」が続いていたが、発送用のハガキを彼女たちに渡した後、やがて彼女たちが小林の後をつける、ストーカー行為をするようになった。嫌気がさした小林は「もうやめる」と宣言して彼女たちを泣かせ(『ゴー宣』でも「女泣かすのって本当に気持ちいい」と語っている)、急遽連載は終了する。最終回は打ち切り調のストーリーではなく、「楽狂が楽の神の元へ帰る」という一話で締めくくられた。
楽教
格式ばった言い回しでは楽教、くだけた表現ではラッ教と書き、両者とも使われる。中華楽会(ちゅうからっかい、創価学会のもじり)という言い方も存在する。作中では楽狂、現実世界では小林よしのりこと小林会長が教祖。
開教したきっかけおよび悟りは、小林によると「漫画で新興宗教をやってみたら?とある日思った」「締切に追われ、昭和の巌窟王となり、もっと楽せにゃ損やなという、悟りというか本音みたいなの」、楽狂によると第3話で「苦行なんか苦しくてつまらん。もっと楽に生きたい」。これは俗に「楽の思想」と定義されている。
名前などを付ける場合、“楽”を入れるのが良いとされ、仏壇はラツ壇、寺院は楽社と呼ばれる。
宗教用語
題目
冷やし中華
ラッキョウ
ラッキョ語
ラッキョウサイン
登場人物
読切と連載では絵や設定にある程度違いが目立つ。主な点は以下の通り。これらは第2話の時点でほぼ変化が完了したが、一部は第3話の中盤まで見受けられる。
第1話 | 連載 | |
---|---|---|
楽狂の顔 | 四角い | ラッキョウ型 |
表情 | うつろ | 百面相豊か |
服 | 詰襟の制服 | ローブ |
祈りのポーズ | 両人差し指を鼻の穴に | 単なる合掌 |
ヒロイン | 桃井さおり | 6話から涙子が登場 |
連載中、第4話の冒頭ではあらためてレギュラーの紹介がされている。
楽教徒たち
中華 楽狂(ちゅうか らっきょう)
野上 俊介(のがみ しゅんすけ)
楽狂と共に第1話から最終回まで皆勤で出演した唯一のキャラ。やや不良ぶった所があり、人生と身の回りに不安を感じて入信。しかし楽狂に対する不信感は最終回まで絶える事はなく、楽狂のアホ行為に対するツッコミは大体彼が行う。小さな眼鏡は第4話まで四角い透明、第5話から黒いサングラスに変わっている。『東大』に同姓同名の別人が登場するが、これは小林の知り合いの東大生からネーミングされたためで、#実在の関係者も参照。
石松 由多(いしまつ ゆだ)
第2話で阿留中に転校してきた。当初大きなマスクをしていたが、これは鼻の穴がワニのように巨大で不細工な事にコンプレックスを持っていたため。その悩みを振り払うために入信したが、鼻を楽狂にからかわれる事も多い。入信後は最も熱心な楽教徒となり、信者No.1の座は野上から彼に移る。その反面移り気な所があり、あっさり裏切ってしまう事も。少人数で行動する場合も、楽狂・野上・由多の3人組が多い。ボクシング部の部長で実力もあるが、観客たちに鼻をからかわれ、入信前は負けてばかりだった。体力があるという理由で、楽狂の強引な布教活動に肉体面で協力することもあるが、後の小林の造語を借りれば「純情まっすぐ君」なので、楽狂のアホ行為の捨て石になるばかり。第11話では弟、最終回では母も登場している。ネーミングはガッツ石松とユダ。
越 為夫(こえ ためお)
悲劇 涙子(ひげき るいこ)
本田裸 助子(ほんだら すけこ)
第16話から登場。水身自殺を図ろうとして楽狂たちが助けたが、その顔は鼻毛が伸びまくったアザラシのようなドブス女。入信したはいいが、自らを美女と思い込み、一時は涙子と三角関係になる。しかしその実態は、ある集団のスパイ。後に正式に6人目の楽教徒となる。涙子までの五人は第9話で同じクラスメートとして描かれていたが、助子は学校や職業がはっきり描かれていない。末期に登場したため出番は少なく、最終回では出演せず。
セミレギュラー
卑劣 極丸(ひれつ きわまる)
サブタイトル・単行本データ
後部のカッコは、そのエピソードで明記されている信者数。
- 推薦文は1巻が秋本治で、これについては入信を表明した有名人を参照。ちなみに『東大』も『こちら葛飾区亀有公園前派出所』も、1巻では小林と秋本が推薦文を寄せ合っている。2巻は最終巻のため、どの作品でも作者の推薦文となる。
- 第2巻は前述通り急遽最終回となったため、180ページという少年誌単行本の標準ページを保つことができず、増ページで全話収録している。
- ジャンプ・コミックス以外の再版は行なわれておらず、『異常天才図鑑』『ゴーマンガ大事典』に1話ずつ収録されているのみである。
- 楽教新聞では単行本が「楽書」と呼ばれており、購入した時点で、自動的に楽教徒の一員になると定義されている。
楽教新聞
第3話より劇中前半において1ページ分を壁新聞風に作り、各地の布教活動・作者周辺の内輪ネタ・読者からのお便りなどを載せる、一種の読者コーナーを毎号登場させた。名前は創価学会の機関紙「聖教新聞」に由来する。
第13話掲載号では江口寿史との会食について触れられているが、2人は『週刊少年ジャンプ』で同時に連載していたという事以外に個人的交流がなく、珍しい情報と言える。後に小林は江口について「自分より華やかなギャグ漫画だから意識していた」と語ったり、異常な遅筆であることを『ゴーマニズム宣言』でダメ出ししている。
実在の関係者
肩書きは中華楽会、漫画制作側とも当時のもの。
小林よしのり
野上俊介
堀内丸恵(ほりうち まるえ)
谷口忠男(たにぐち ただお)
中野和雄(なかの かずお)
山口豊実
入信を表明した有名人
名前の右のカッコは、入信の出典となる楽教新聞を収録した掲載回。
- 秋本治(第3話) - 会員番号10番。『ジャンプ』時代の小林の漫画には、両津勘吉が時々登場するが(作画は秋本でなく小林による)本作でも17話に登場。
- 甲斐よしひろ(第3話)
- この2人は、本作の連載開始前から元々小林の親友であり、名誉会員とされている。
- 高田みづえ(第4話)
- 大登(第5話)
- くらもちふさこ(第7話)
- 五十嵐夕紀(第8話)
- この2人は、本作の連載開始前から元々小林の親友であり、名誉会員とされている。
支部の置かれた大学
九州の大学が多いのは、当時小林が福岡で描いていたため。東京大学は『東大』の執筆実績による、東大生とのコネである。小林は「君たちの高校や中学にも支部を置こう」と、楽教新聞で奨励していた。
- 東京大学
- 早稲田大学
- 東京芸術大学
- 東洋大学
- 日本大学
- 工学院大学
- 福岡大学
- 九州大学
- 久留米工業大学
その他
- 小林の漫画は落書きやお遊びの作画が比較的多く、本作と『東大』を見ても、一方の作品がもう一方に描かれているシーンが大変多い。
- 第8話と最終回で登場した電車は西鉄2000形電車。最終回では地下鉄も登場しているが(楽狂が天国に、地下鉄の下りで帰る)、当時福岡には地下鉄が走っていなかったため(福岡市交通局の開業は1981年)、こちらはかなりいい加減なデザインとなっている。他にもバスやデパートなど、市街地の背景に福岡固有のものが多く登場する。
- 『月刊少年ジャンプ』では本作終了後、小林の趣味である格闘技をモチーフにしたバトル漫画『格闘お遊戯』が約1年連載、ストーリーギャグと言えるほどのシリアスな展開も含まれている。だが、次の『ジューシィガンコ』が連載4回で打ち切りとなり、小林の同誌での活躍もこれで終わりとなった。この後、小林の作品評価は『おぼっちゃまくん』まで苦難の時代が続く。
- 『おぼっちゃまくん』でよく使われた茶魔語には「さいならっきょ」がある。『おぼっちゃまくん』で『北斗の拳』のパロディが掲載された時、茶魔が必殺技として「さいならっきょ」を唱えながら、大量のラッキョウを発射しているが、これは当作でラッキョウを使う演出に慣れていたことが、描いた理由の一つと言える。
- オウム真理教が世間を騒がせ始めた頃、中沢新一が「オウムは『おぼっちゃまくん』みたいだ」と擁護したのに対し、小林は「ワシには楽教という、自分で作った宗教がある!」と反論している。またこの時『ラッキョウ』のリメイク構想を表明しており、それが下記につながる。
新作
小林が『コロコロ』で『茶魔』を大ヒットさせると、同誌には小林による他の漫画作品も多数掲載された。新作は『いなか王兆作』同様、『茶魔』と並行する連載作品として、同誌1990年6月号から8月号まで連載された。
リメイクのパターンで言えば「作品名・主人公の名前・基本設定は同じだが、細かい設定は一新され世界観も別物」に該当する。「異常天才図鑑」では『救世主ラッキョウ(新)』と表記。
「ゴーマンガ大事典」の作者作品解説によると「旧作同様に楽教新聞を作って宗教ごっこをやろうと思っていたが、旧作に比べ読者の反応が悪く、実現しなかった」と語っている。全3回で終えた後、単行本化はコロコロコミックからは行われなかったが、『ゴー宣』のヒットで過去の作品の復刻が多数行われた際、アンソロジーに収録されている。
登場人物(新作)
新作は掲載回数が少ないため、ゲストについても記載する。主人公たちが通う怒内小(どないしょう)学校の名は『風雲わなげ野郎』からの再使用。
飯屋 楽教(めしや らっきょう)
楽教の両親
甘江 信二郎(あまえ しんじろう)
月野 ひかり(つきの ひかり)
藤原(ふじわら)、前田(まえだ)、山崎(やまざき)
空手部主将