新戦艦高千穂
ジャンル:海洋冒険,
以下はWikipediaより引用
要約
新戦艦高千穂(しんせんかんたかちほ)は、平田晋策による海洋冒険小説である。
1935年(昭和10年)7月から翌年3月まで少年倶楽部に連載された。
概要
平田晋策(1904年-1936年)は現在の兵庫県赤穂市出身で、旧制中学を中退した後、賀川豊彦のもとで社会運動に目覚める。10代後半から左翼活動に参加したが、暁民共産党事件に関わったことで当局の摘発に遭い、逮捕・転向した。その後1928年頃からは、国際関係や軍事問題を取り上げた著述活動を始め、やがて在野の軍事評論家として知られるようになった。更に当時すでに有力出版社であった大日本雄弁会講談社(現・講談社)への軍事評論寄稿をきっかけに、同社から小説執筆の勧誘を受けると、1933年以降は軍事知識を活かした小説を多数執筆して人気作家となった。
中でも少年向けの軍事冒険小説『昭和遊撃隊』(1934年1-12月 「少年倶楽部」連載)は大きなヒットとなり、少年層の人気を集めたことから、これに続く「少年倶楽部」連載作品として企画されたのが本作であった。
平田は作家活動で得た知名度を生かして政界進出を目指し、1936年2月の第19回衆議院議員総選挙出馬を図ったが、本作連載の最終章を脱稿した後の1936年1月、選挙運動に赴いた郷里の兵庫県で自動車事故による重傷を負い、1月28日に31歳で急逝した。このため、本作は平田の遺作となった。
平田の兄は医師の平田内蔵吉で、その孫は劇作家の平田オリザ。オリザによると、平田家が薬問屋だったため晋策にはある程度の科学知識があり、それまでの軍事小説が精神論中心のものだったのに対し、初めてSFの名に値する大衆児童文学を書きえたという。
ストーリー
193X年、北極探険船「北斗丸」と新戦艦「高千穂」は、大量の資源が眠っているという「北極秘密境」を発見、開拓すべく北極へと出港した。だが、これと同時にA国(モデルはアメリカ合衆国)、B国(モデルはソビエト連邦)も秘密境を自らの領土とすべく探険艦隊を派遣していた。ここに秘密境争奪戦は始まったのである。
主要登場人物
日本
小川寛(おがわ ゆたか)
勝山一枝(かつやま かずえ)
小川明(おがわ あきら)
勝山一郎(かつやま いちろう)
明智三郎(あけち さぶろう)
A国
B国
登場艦船
日本
全艦が新開発の電気砕氷装置を搭載している。
高千穂
- 排水量:36,000t
- 全長:200m
- 全幅:30m
- 喫水:10m
- 舷側最大装甲厚:40cm(本田鉄鋼B号使用)
- 甲板最大装甲厚:20cm(上同)
- 機関:艦本式ディーゼル二十万馬力
- 速力:33ノット
- 航続距離:30,000海里
- 主砲:四連装40cm砲×3
- 副砲:四連装15cm砲×4
- 高角砲:連装13cm高角砲×6 小高角砲八門(呉式電気砲)
- 機関砲:八門
- 魚雷発射管:二台(水中)
- 機雷:80個
- 航空兵装:九五式カタパルト四台 九X式水上機16機
北斗丸
天城
- 排水量:19500t
- 速力:18ノット
- 主砲:36cm砲六門
- 副砲:15cm砲16門
- 高角砲:12.7cm高角砲四門 8cm高角砲四門
千島
- 排水量:22000t
- 速力:20ノット
- 主砲:15cm砲四門
- 高角砲:12.7cm高角砲四門
- 航空兵装:カタパルト一台
畝傍
浦風
信濃
A国
ライオン
- 排水量:33000t
- 速力:23ノット
- 主砲:40cm砲八門
- 副砲:15cm砲16門
- 高角砲:13cm高角砲八門
- 航空兵装:カタパルト三台 水上機八機
黒鯨(ブラック・ホエール)
- 排水量:2800t
- 速力:20ノット(水上) 12ノット(水中)
- 主砲:13cm砲二門
- 高角砲:8cm高角砲二門
- 航空兵装:水上機一機
イーグル
- 排水量:20000t
- 速力:21ノット
- 主砲:15cm砲六門
- 高角砲:12cm高角砲十門
- 航空兵装:カタパルト六基 水上機28機
パイロット
- 排水量:3000t
- 速力:20ノット
- 主砲:8cm砲四門
- 航空兵装:カタパルト一基 水上機二機
マルコポーロ
B国
マラー
- 排水量:27000t
- 速力:24ノット
- 主砲:36cm砲十門
- 副砲:15cm砲16門
- 高角砲:12cm高角砲八門
- 航空兵装:カタパルト二基 水上機六機
シベリア
- 排水量:3500t
- 速力:20ノット
- 主砲:12cm高角砲四門
- 航空兵装:カタパルト一基 水上機二機
イワン
影響
本作の発表により平田晋策は一躍流行作家となり、大日本帝国海軍も戦意高揚への利用を図った。軍国少年の中には「新戦艦高千穂」の実在を信じていた者もいたほどだったという。
斎藤貴男は梶原一騎『新戦艦大和』は本作がヒントになったと指摘しており、間接的に『宇宙戦艦ヤマト』のルーツになっているといえる。
また、佐藤大輔の架空戦記小説「レッドサン ブラッククロス」にも、本作に登場する高千穂をモデルとした日本帝国海軍の「高千穂級戦艦」が登場する。
単行本
少年倶楽部での連載完結後すぐの単行本刊行のほか、太平洋戦争後に幾度かの再刊や全集収録が行われている。
- 「新戦艦高千穂」(大日本雄弁会講談社 1936年2月)
- 「新戦艦高千穂」(講談社 1970年)
- 「少年小説大系 第17巻」(三一書房 1994年2月)
- 「新戦艦高千穂」(真珠書院・パール文庫 2013年11月)