新暗行御史
以下はWikipediaより引用
要約
『新暗行御史』(SHIN ANGYO ONSHI、しんあんぎょうおんし)は、小学館のコミック誌「月刊サンデーGX」(ジェネックス)で連載されていたファンタジー漫画。また、日本のアニメーション制作プロダクションオー・エル・エム(OLM)と韓国のキャラクター・プラン(CHARACTER PLAN)によって作られた日韓共同合作劇場アニメ作品。全17巻。外伝を集めた『新暗行御史 外伝』、ガイドブックの『新暗行御史 』がある。話数カウントは「Classic.○」。
概要
原作は尹仁完、作画は梁慶一が担当の、韓国人による連載漫画。
内容はオリジナルだが、朝鮮半島の歴史や伝承が元ネタとして使われることも多い。
タイトルにある「暗行御史」(あんぎょうおんし、アメンオサ、韓:암행어사,'amhaiq'esa)とは、朝鮮王朝(李氏朝鮮時代)に実在した特別な官職。作品内においては、主人公の文秀(ムンス)が暗行御史を名乗っている。文秀は御使の証である馬牌(マハイ)を用い、幽幻兵士(ファントム・ソルジャー)を召喚して敵を倒す。彼は聚慎(ジュシン)という国の将軍だったが、聚慎が滅亡してからは流浪の旅を続けている(聚慎という名は朝鮮の原音に推定されている「ジュシン」から)。聚慎滅亡の原因となった男を捜すことが文秀の目的のひとつである。
作中の文明レベルは、西欧諸国が19世紀程度、聚慎は原始的な火砲はあるが携帯用の銃火器は普及しておらず、個人の武器は刀剣が主流であることから17世紀程度である。ただし、聚慎には西欧では一般的でない(失われた)魔法術が普及しているため、実際の戦闘では優劣は決めがたい。
登場人物
多くの人物は朝鮮語の名前で読む。
文秀一行
聚慎時代は、若くして軍の将軍を務め、最高位「伝説」の称号を授かる程の、数々の戦果を上げた。聚慎の王である解慕漱(ヘモス)とは同郷の親友で、二人で理想の国家を築こうとしていた。だが、かつての部下であり数少ない友人でもあった阿志泰(アジテ)の陰謀によって聚慎は滅亡してしまう。その後は、暗行御史となり、宿敵、阿志泰を追う放浪の旅に出る。
喘息のように呼吸困難に陥る病気に侵されているが、これは恋人だった桂月香(ケウォルヒャン)が患っていた病気を阿志泰の魔術によって身代わりになることで発生したもの。特殊な治療用パイプを吸入することで、一時的に苦しみから解放される。これが戦いなどで度々窮地を招く。
活貧党との戦いで瀕死の重傷を負い、持っていた曼陀羅華(マンダラケ)の鍼で仮死状態となり、夢や過去の世界に捉われるが生還する。その時に病気も完治するが、実は死期が刻一刻と迫る状態だった。そのため、死神と思われる影が見えるようになる。
かつては剣を得物にしていたが、上述の病による悪影響と過去の出来事から、聚慎滅亡後は銃を使うようになった。その腕前は高く、どのような体勢からでも動き回る目標の急所に寸分違わず狙いを定めるほど。
名の由来は李氏朝鮮時代の最も代表的な暗行御史である朴文秀(パク・ムンス)から。
当初は圧倒的な強さを見せていたが、物語中盤から現れた強敵たちに苦戦し、強さを求めて放浪することになる。その途上で阿志泰に魅入られ、彼の仲間になってしまう。モデルは、朝鮮の古典『春香伝』に登場する成春香。なおCLAMPも同じ題材から漫画『新・春香伝』(1992年)を描いている。
房子(パンジャ)
暗行御史に仕える従者の職「房子」を務める、子供並みに小柄な青年。本名は不明。暗行御史に仕えることを生きがいとしている。ドジな上に料理も戦闘の腕もからっきしで、基本的に房子としてはてんでダメな男だが、忠誠心は人一倍強く、いざという時には壮絶な行動力と精神力で以て主のために奔走・献身できる真っ直ぐな忠義者。かつて仕えた暗行御史の青年・阿里亜(アリア)は、クビにされてばかりだった自身の本質を見抜いて評価してくれた恩人だったが、領主の陰謀により処刑された。その後、暗行御史である文秀に出会えたことを心から喜び、房子となることを懇願する。また、何故か珍獣と心を通わせることに長け、言葉は通じなくとも多くの森の住人たちと友情を育んでいる。
英實(ヨンシル)と共に白頭山(ペクトウサン)へ避乱潟花(ピランソッカ)を求める道中、山頂にて待ち伏せていた山道(サンド)に襲われ、そのまま息絶えたかと思われたが瀕死のところを英實が作った心臓を凍らせる薬を打ち込まれ仮死状態になっていた。復活後も変わらず文秀の傍に仕え続ける。
彼も『春香伝』に出てくる夢龍の下僕がモデル。
かつての聚慎の民
元述(ウォンスル)
かつて聚慎の剣士部隊「花郎(ファラン)」(花郎に由来)に所属した、最高の剣士を意味する「郎(ラン)」の称号を持つ聚慎最強の剣士であり、悪獣との戦いにおいては戦況を決める程の多大な戦果を挙げた。その後人々から剣聖と呼ばれる程の領域まで足を踏み入れた彼は、もはや人を切るのに剣すら必要とせず、殺気を形状化して透明な刃とする「殺形刀(サルヒョンド)」という戦闘法を身に付けるに至った。聚慎の軍人だった若かりし頃は上官である文秀と、共に闘った戦友を何より大事に考えているしている好青年だったのだが、人を念ずるだけで消滅させる程の人知を超えた力を持つ阿志泰の持つ恐怖に屈し、聚慎崩壊後は彼の部下となり元暁と共に溶炉建設矯正所の最高責任者となっていた。山道(春香)と闘った際も、戦闘の最中に指導する程の余裕を見せ圧倒するも、彼女が阿志泰の装飾具を持っていた事に動揺した一瞬の隙を突かれ「殺形刀(サルヒョンド)」を突破され致命傷を負った。その後文秀に看取られながら最期を迎えるも、阿志泰の妖術でゾンビになって復活した。悪獣の襲撃で亡くなった厳格な父親とは犬猿の仲であり、兄が先立ったことを気にしている。名の由来は新羅の悲劇的な花郎の名から。
元暁(ウォンヒョ)
かつて聚慎の魔法戦隊の戦隊長だった聚慎最強の魔法使い。究極の召喚獣「桓雄(ファヌン)」(桓雄に由来)を用い、自身も悪獣の群れを一掃できる程の強力な魔力を持つ。性別の計り知れない美しさを持つ人間に見えるが、その正体は同属の蛮行に耐え兼ね人間へと帰化した悪獣(妖怪)であり、力を大きく消耗すると本来の悪獣の姿に戻ってしまう。本来の醜い姿と、心の根底に宿る悪獣としての本性に苦悩している。そのように優しい性格の持主だったが、聚慎崩壊後は元述と同じく阿志泰の恐怖に屈して彼の部下となり休火山のある街の領主となる。自分の生命を維持するための生贄を要求し、同族を量産。彼が嫌う悪獣そのものに成り下がっていた。名の由来は新羅時代の上人の名から。
英實(ヨンシル)
かつて聚慎一の足拳道(テコンドー)の達人だった男。元述と共に悪獣との戦争を生き延びた猛者だが、その戦争の最中に垣間見た、阿志泰の人智を超えた力に魅了され、自身はその力に少しでも近づけるように科学に傾倒。彼の右腕として反逆者の取締りとは名ばかりの殺戮を行なっていた。その後に阿志泰の異常性に耐え切れなくなり、彼の元を去った。その後は自身がかつて行った蛮行を反省しつつ、弥土の元で鍛冶屋と武器発明の修行をしている。彼の発明品は失敗作に近い珍品が多いが、それが文秀一行の危機を救う事も度々あった。最終決戦では麻古(マーゴ)と互角の戦いを繰り広げ、阿志泰の一瞬の隙をつき背後から奇襲をかけるが、惜しくも力及ばず阿志泰の能力によって敗れ消滅した。名の由来は李氏朝鮮時代の世宗大王の治世に活躍した科学者の名から。
解慕漱(ヘモス)
阿志泰の勢力
阿志泰(アジテ)
文秀の最大にして最強の宿敵である存在。命ずるだけで人の命を奪い、死者すら蘇らせる程の人智を超えた力を持つ。その力による恐怖と妖しい魅力で、聚慎を滅亡させた張本人でありながら聚慎の遺臣を部下に抱えている。その正体は悪魔であり、彼の一族は本来自我というものを持ち得ぬ存在であるが、人間の持つ原初的な悪(絶対悪)と混ざり合うことによってこの世に降臨することが出来る。聚慎時代はメガネをかけ、背の低くて弱々しい文官の青年といった外見だったが、彼本来の性格は混沌を尊び、悪徳を好むなどその正体同様、邪悪極まるモノであり、ある日急に解慕漱の姿を乗っ取りって聚慎に混乱をもたらし、結果として滅亡させた。上記のように凄まじい力を持つ人外の存在であるが、自身を殴り飛ばした文秀に執着し、解慕漱に化けて桂月香と寝た事を自慢する等、どこか下衆な人間じみた所がある。
聚慎崩壊後は各地を放浪しながら、人外の力を持つ者たちを部下とし、強大な勢力をつくっていた。山道もその力に魅入られ、一味となる。
名の由来は後高句麗で、王・弓裔を惑わした逆臣の名から。
活貧党(ファルビンダン)
悪政と闘い、私財を蓄える悪人から財物を奪い貧しい人々に分け与える等、弱気を助け強きをくじくと評判の義賊集団。
人数は少数ながら構成員の多くが合気の使い手である精鋭集団である。 彼等のお陰で救われた村がいくつもあるというその一方で、総裁である洪吉童の思想を理解していない一部のメンバーが殺戮や略奪を行っており 又、「正義」を掲げつつも、その行為で苦しむ人がいる以上、ただの盗賊集団に過ぎないと文秀は指摘している。
西洋人
いずれもプリティニカ帝国出身。
その他
平岡(ピョンガン)
七甲山(チルガプサン)の領主、平袁(ピョンウォン)の娘。幼少期は病弱で居るはずの無い動物や人間が見える「虚言症」という病気を患っており恋人の野生児の温達(オンダル)と横暴な兄の平骸(ビョンヘ)も彼女の見た幻覚であった。このことを父の平袁は大変憂れいており彼の死後、以前より交渉していたプリティニカ帝国のマーク大佐に国が侵略されることになる。弥土の試練で彼女を助けるよう言われた文秀は温達と平骸が彼女の「虚言症」の見せる幻覚だということをマーク大佐の侵略の時まで気づかなかった。その後幻覚から目覚めた彼女は文秀一行の活躍でマークの軍団を破り、新しい女王として国の名前を古倶慮(コグリョ)と改める。その際、幻影であるはずの温達が銃弾に狙われた彼女を庇った。後に仮死状態の文秀と仲間達を保護し、阿志泰との最終決戦に協力する。戦いの後、慎羅の若き領主と結婚する。モデルは、朝鮮の童話『バカの温達』に登場する同名の女性。
設定・用語
- 暗行御史(アメンオサ)
かつて聚慎に存在した特殊官吏。正体を隠して地方を回り、領主の悪政等を糾弾・粛清する事を役割とする。作中でも語られているが、水戸黄門的な存在である。護衛の山道、従者の房子と共に3人一組で行動するのが基本。
暗行御史の地位は高く、正規軍にすら許されていない銃火器の携帯が許されている。反面、家族を持つ事を許されないなどの厳しい掟も存在する。
- 馬牌(マハイ)
馬が描かれた暗行御史の証。一頭の馬が描かれたものを「一馬牌」、二頭のものを「二馬牌」、三頭のものを「三馬牌」と言い、馬の数が多いほど暗行御史としての地位が高い事を意味する。一馬牌を持つ暗行御史は聚慎から兵士を、二馬牌を持つ暗行御史は魔術師の支援を受けることが出来る。魔術師は退魔能力を持ち、悪獣や妖怪にも対処できる存在だった。
三馬牌は特に「究極の三馬牌」とも呼ばれ、馬牌それ自体が特別な力を持つ。馬牌を掲げ「暗行御史の出頭だ」の掛け声と共に、虚空から死滅した聚慎の特殊部隊「幽幻兵士(ファントム・ソルジャー)」を召喚し、暗行御史1人でも多勢を相手に渡り合うことが出来る。聚慎が滅びた今、実質的に力を持っているのは三馬牌だけと言う事になる。しかし、召喚時に暗行御史の肉体に多大な負担が掛かり、場合によっては命にも関わるため過度の多用は出来ず、使いどころが限られる。
- 幽幻兵士(ファントムソルジャー)
文秀の三馬牌から召喚される、笑顔を象った不気味な仮面に道化師風の鎧衣装を身に纏った異形の戦士たち。死人に仮初の肉体を与えて呼び出すため、全員が常人を凌ぐ身体能力と銃弾程度は意に介さない耐久力を有し、更に非常に優れた腕前を持つ精鋭の集団でもある。しかし、砲弾などの強力な攻撃には耐えられず、重傷を負うと消滅するなど、決して不死身というわけではない。また、退魔能力を持たないため、悪獣や妖怪相手には全くの無力という欠点も有している。後に三馬牌の改良に伴い、兵士たちの戦闘力も比較にならないほど強化されたが、掛かる負担も絶大なものとなり、三ヶ月に一度程度しか呼び出せなくなってしまう。
その正体は聚慎の特殊部隊の兵士であり、同国の将軍でもあった文秀の直属の部下だった者たち。死して言葉を失った現在でも文秀に忠誠を誓っており、強固な信頼関係で結ばれている。
- 閣氏部隊
黄の四馬牌から召喚される、女性のみで構成された聚慎の特殊部隊。幽幻兵士同様、死者に仮初の肉体を与えて呼び出す同質の存在。表沙汰にならない諜報などの秘密工作を専門としていたことから、文秀でさえ隊員の姿をほとんど目にしたことがないほど表舞台に上がらなかったため、伝説的な存在として聚慎関係者の間で語り草となっていた。戦闘力は強化後の幽幻兵士と互角に渡り合い、二馬牌から受け継いだ退魔能力のお陰で悪獣や妖怪への対処もこなすことができる。
劇場アニメ
初の本格的な日韓共同合作アニメ映画として製作され、日本では2004年12月4日に公開。「日韓友情年2005」のプレイイベントとして認定されている。キャッチコピーは「希望は、戦いの先にある」。
声の出演
- 文秀(ムンス):藤原啓治
- 山道(サンド):小林沙苗
- 柳義泰(ユ・ウィテ):宮本充
- 摩利(マーリ):朴璐美
- 弁(ビョン):中尾隆聖
- 沃(ヨウ):日髙のり子
- 夢龍(モンリョン):岸尾大輔
- 浚(ジュン):福島潤
- 熱砂蝙蝠:早水リサ
特別出演
- 韓国版オープニングナレーション・タイトルコール:イ・ジフン
- 日本版オープニングナレーション:ユンソナ
- エンディングナレーション:チソン
スタッフ
- 作:尹仁完
- 画:梁慶一
- 原案協力:夏目晃暢(サンデーGENE-X編集部)
- スーパーバイザー:本郷みつる
- エクゼクティブプロデューサー:亀井修、鄭焙
- 企画:久保雅一、安鉉東
- プロデューサー:加治屋文祥、楊芝恵、遊佐和彦、李相燉
- アニメーションプロデューサー:神田修吉、李東基
- 脚本:本郷みつる、尹仁完、志村錠児
- 絵コンテ:志村錠児、本郷みつる、安台根
- 演出:志村錠児、安台根、小林孝嗣、渡辺正彦、越智浩仁、本郷みつる
- 演出助手:徳本善信
- キャラクターデザイン:高橋英樹、呉敬吾
- デザインワークス:佐藤和巳、ゴトウマサユキ
- 総作画監督:高橋英樹
- 作画監督:毛利和昭、安台根、沢田正人、久高司郎、佐藤陵、松本卓也、相澤昌弘
- 色彩設計:渡辺亜紀
- 美術監督:小林七郎
- 撮影監督:水谷貴哉、金智燿
- CGIディレクター:小林雅士
- 編集:辺見俊夫、金長秀
- 日本版 音響監督:三間雅文
- 音楽:大谷幸
- 制作担当:小板橋司
- 制作デスク:亀井康輝
- アニメーション制作:OLM Team Koitabashi、CHARACTERPLAN
- 製作:新暗行御史製作委員会
- 監督:志村錠児
新暗行御史製作委員会
- 小学館
森万紀子 西坂正樹 福田誠 上阪泰幸 水口正裕
神山敦行 袖崎友和 萩原綾乃 坪内崇
- クロックワークス
- 双日
- 博報堂DYメディアパートナーズ
- オー・エル・エム
- トゥーマックス
- バンダイ
- テレビ東京
- 小学館プロダクション
韓国側製作協力パートナー
- テウォンC&Aホールディングス
- CHARACTERPLAN
- KTBネットワーク
- 三星ベンチャー投資
楽曲
『Song With No Name~名前のない歌』
『My Name』
CD
- 新暗行御史オリジナルサウンドトラック(2004年12月1日発売)
備考
- 第一話はミスリードを導く構成になっており、終盤になって暗行御史の正体が判明する。
- 『吼えろペン』の特別編を尹仁完と梁慶一の2人で描いたことがある(この際、2人がこの作品のファンということが触れられている。)。そのお返しとして、島本和彦が本編のパロディを描いている。梁氏が倒れたことで代筆を頼まれた炎尾燃が、山道が文秀に活を入れる熱血漫画に仕立ててしまい怒られる、というもの。また、梁慶一が頼んだことにより、『アーメンオッサン』(『新暗行御史』をモデルにした『吼えろペン』の劇中劇の1)を梁慶一自らペン入れしている。
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