新本格魔法少女りすか
以下はWikipediaより引用
要約
『新本格魔法少女りすか』(しんほんかくまほうしょうじょりすか)は、西尾維新による日本の小説。イラストレーションは西村キヌが担当。単行本は講談社ノベルス、講談社文庫ともに全4巻。
魔法が存在する日本を舞台に、魔法を使えない普通の人間である主人公の少年・供犠創貴と魔法使いの少女・水倉りすかの2人が、りすかの父親・水倉神檎を追う中での戦いと冒険を描いている。魔法少女ものに推理小説の要素を加えた作風であり、作中には「一般的な魔法を小説で書いた時の嘘っぽさ」を緩和するための装置として、架空の神話体系「クトゥルフ神話」からの引用がある。
全13話。『ファウスト』(講談社)Vol.1(2003年)から連載され、Vol.7(2008年)に掲載された第10話を最後にシリーズは中断。その後2019年、『メフィスト』(講談社)での連載が発表され、2020年4月発売のVOL.1および同年8月発売のVOL.2に掲載された。そして同年12月発売の単行本第4巻をもって完結した。
設定
舞台は主に九州の佐賀県。魔法の国・長崎県とは巨大な城門によって隔てられ、長崎県との行き来は城門管理委員会によって管理されている。
長崎県には魔法使いと呼ばれる者が住んでおり、彼らは魔法と呼ばれる異能力を行使する。魔法は「使用者の『精神』を外側に向けて放出する行為」とされ、その魔法によって使用者がどのような人物か知ることができる。魔法使いによって魔法を授けられた人間は「『魔法』使い」と表記される。魔法について「属性(パターン)」、「種類(カテゴリ)」、「顕現(モーメント)」という単語で説明がなされているが、これらが何を意味するのかは明確に示されていない。
魔法の発動を助ける技術として、魔法式(まほうしき)と魔法陣(まほうじん)がある。魔法式は、事前に術をかける対象に「式」を書いておき、呪文の詠唱時間を短くする技術。術者が近くにいなければ発動できない。魔法陣は、一定の条件がクリアされると発動する「陣」。魔法式と違い、術者が近くにいる必要はない。
魔法使いは海を渡れず、弱い者であれば川や湖も越えられない。もし海を渡ろうとした場合には死亡し、死を回避できたとしても、人間でも魔法使いでもない存在となる。
あらすじ
第1巻(第1 - 3話)
第2巻(第4 - 6話)
第3巻(第7 - 9話)
第4巻(第10 - 13話)
登場人物
水倉神檎を追う者たち
供犠創貴(くぎ きずたか)
水倉りすか(みずくら りすか)
長崎県森屋敷市出身で、運命干渉系の「魔法使い」。小学5年生。称号は「赤き時の魔女」。
一応小学校には籍を置いているがほぼ不登校であり、自宅で魔道書の写しの作業を行っている。好みのタイプは恰幅のいい男性(関取体型)。趣味は相撲観戦。父親探しのため佐賀県に転校してきた。2年近く前から単独で「魔法狩り」を行っていたが、1年近く前に創貴に出会い、以後行動を共にしている。「日本語」を覚えたのは最近であるため「○○なのが、○○なの」(例:私に優しくしてくれないのが、キズタカなの)といった、主語・述語の逆転した独特の言い回し(創貴曰く、「下手なドイツ語の訳みたい」な話し方)をする。彼女の血には水倉神檎によってあらゆる種類の魔法式が施されており、大抵の魔法ならば血を流すだけで施行できる。
属性は「水」、種類は「時間」、顕現は「操作」。自身の寿命を消費し、目標とする座標への移動にかかる時間や、ケガが完治するまでの時間を「省略」することができる。死に直面するほどの血を流すと1分間だけ17年後・27歳の自分になれる。17年後のりすかは、なるたびに性格は少し違うが共通して非常に好戦的である。またそれと同時に非常に強く、現在のりすかが使いこなせていない時間の魔法をいとも簡単に使いこなしている。
「〈物語〉シリーズ」とのクロスオーバー作品『混物語』にも登場する。逃亡した地球木霙の右足を追い「省略」を駆使することで、本来は脱せない九州地方を越え阿良々木暦の住む街に来訪する。
水倉神檎と六人の魔法使い
その他
水倉破記(みずくら はき)
供犠創嗣(くぎ きずつぐ)
作風
魔法少女ものに推理小説の要素を加えた作品で、バトルものでもある。本作における魔法は「何でもやりたいことができるすごい力」ではなく「固有の得意技」に近いものであり、主人公たちは相手の魔法の弱点を探り対抗手段を見つけていく。
題名に魔法少女を冠してはいるがいわゆる魔法少女ものではなく、例えば日曜日の朝に放送されるような魔女っ子アニメとは異なり、魔法の能力はファンタジーともオカルトとも違う凄惨さを感じさせるものとなっている。内容は「王道を逆立ちして行く」というもので、魔法少女ものの基本要素を少しひねくれさせている。
制作背景
執筆のきっかけは、講談社の編集者太田克史が魔女っ子ものによるメディアミックスを考えたことだった。『ファウスト』が創刊される際、この企画を実現するために西尾に執筆が依頼され誕生したのが、太田が「『絶対アニメ化は無理』と涙した」と語る本作だった。企画が依頼された時期は、『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』が出版された前後と思われる。
太田から依頼された企画のキーワードとして「魔女っ子探偵」があり、西尾は、「魔女っ子」はともかく「探偵」は自分には難しいのではないかと考えつつ、予習として中学生の頃に読んだ『ラヴクラフト全集』を再読した。また執筆にあたり、西尾は様々な魔法少女もののビデオを視聴した。当初は「魔法少女りすか」というタイトルを予定していたが、太田の「『新世紀エヴァンゲリオン』の『新世紀』のようなものが欲しい」という意見を受けて「新本格」が足された。太田の言う「魔法少女」は大人に変身するものであるが、西尾の世代は『おジャ魔女どれみ』のような、呪文で服が変わるだけのものであった。このため、大人に変身する魔法少女を書くにあたり、自分を納得させる理由付けが必要となった。そして出てきたのが時間操作の魔法であり、水倉りすかというキャラクターが出来上がった。
「一般的な魔法を小説で書いた時の嘘っぽさ」を緩和するための装置として、「クトゥルフ神話」が引用されている。作中にはクトゥルフ神話に関する用語が登場し、単行本の冒頭にはクトゥルフ神話の作者H・P・ラヴクラフトの小説からの引用がある。魔法の設定もクトゥルフ神話を下敷きにしていると思われる。また、台詞回しに漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に通じるところがあり、西尾は本作を「『新本格ジョジョ』と言っていいくらい」の気持ちで書いているという。
イラスト担当の西村キヌは、カプコンに所属していたころに太田に声をかけられて本作品に参加した。西尾は第1話と第2話制作後に西村のイラストを見たことで、それ以降創貴が良い奴になっていると述べており、「〈物語〉シリーズ」に続く、イラストによる方向性の変化を語っている。
西尾の別作品「戯言シリーズ」とは内容的には全く関係ないが、作中の最強のキャラクターに赤色をあしらっているのは西尾なりの「禁じられたクロスオーバー」であるという(同シリーズには「人類最強」の赤い人物が登場する)。
同時期刊行の『人類最強のヴェネチア』『デリバリールーム』『新本格魔法少女りすか4』の3作品は題材に繋がりがあるが、これは既刊『ヴェールドマン仮説』が「家族」をテーマとする作品であり、その部分をもっと掘り下げられたはずという気持ちの現れとされる。
執筆中断期間の状況
2006年には『新本格魔法少女りすか3』と『新本格魔法少女りすか0』の刊行が予定されていたが、『0』は刊行されず、『3』の刊行は翌年となった。
第10話は2006年の時点ですでに執筆を要望されていたが、それが掲載される『ファウスト』Vol.7は2年後の2008年に刊行された。残りの3話は続きものであり、『ファウスト』Vol.7で西尾は書き下ろしにしようかと述べていたが、その後も最終巻は刊行されず、2009年4月発売の『活字倶楽部』2009年春号に掲載されたインタビューで西尾は『偽物語(下)』・『零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係』・『ぼくの世界』・『新本格魔法少女りすか』第4巻と、(当時の)最終作ばかり止まっていた状況について、「ひどい状態」「少しオーバーフローを起こした」と述べている。
2016年8月には西尾の著作「〈物語〉シリーズ」と他作品のクロスオーバー小説『混物語』の1つとして、『新本格魔法少女りすか』とクロスオーバーした「第血話 りすかブラッド」が発表された。同作品の執筆について西尾は、りすかを書くのは本当に久しぶりで、もう書けないのではないかという不安もあったと話している。
2016年10月発売の『ダ・ヴィンチ』2016年11月号掲載の西尾へのインタビューでは、漫画家・羽海野チカの「物語の結末をちゃんと届けたい」という姿勢を見習い、自分も「世界シリーズ」と『新本格魔法少女りすか』の続きを書こうと思うようになったと話している。
2017年7月発売の『忍物語』では、登場人物の会話の中で、17年後に最終巻が出るらしいという噂が語られる。
2020年12月発売の『ダ・ヴィンチ』2021年1月号掲載の西尾へのインタビューによれば連載が再開されたのは、もう書けないと思っていたりすかが『混物語』でしっかりと書けたという体感があったこと、『忍物語』での登場人物の発言を嘘にするわけにはいかないと考えたことによるほか、「忘却探偵シリーズ」『掟上今日子の伝言板』の連載が手詰まりになったために、『りすか』の連載が始まったと言えなくもないと述べている。
既刊一覧
- 西尾維新(著)、講談社〈講談社ノベルス〉、全4冊
- 2004年7月5日発行(7月17日発売)、ISBN 4-06-182381-7
- 2005年3月15日発行(3月16日発売)、ISBN 4-06-182432-5
- 2007年3月20日発行(3月23日発売)、ISBN 978-4-06-182521-5
- 2020年12月7日発行(12月9日発売)、ISBN 978-4-06-521560-9
- 西尾維新(著)、講談社〈講談社文庫〉、全4冊
- 2020年4月15日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-518649-7
- 2020年8月12日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-520411-5
- 2020年12月15日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-521643-9
- 2022年12月15日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-529616-5
PV
文庫化とシリーズ完結を記念し、実写のプロモーションビデオが制作され、2020年7月26日に公開された。監督をYPが務め、子供のりすかをまいきち、大人のりすかを青戸しのが演じる。音楽としてSHE'Sの「Unforgive」が用いられている。
朗読劇
『詠唱劇「新本格魔法少女りすか」』と題し、原作第1巻の朗読劇が行われる。制作はOffice ENDLESS。出演者は週毎に変更される。
話数 | 回数 | 配信日 | 水倉りすか役 水倉破記役(第三話) |
朗読・供犠創貴役 |
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第一話 やさしい魔法はつかえない。 | act.1 | 2020年 10月6日 |
悠木碧 | 梶裕貴 |
act.2 | 10月27日 | 釘宮理恵 | 鳥海浩輔 | |
act.3 | 11月3日 | 高橋李依 | 松岡禎丞 | |
第二話 影あるところに光あれ。 | act.1 | 11月17日 | 三森すずこ | 福山潤 |
act.2 | 12月15日 | 水瀬いのり | 小野賢章 | |
act.3 | 2021年 2月16日 |
M・A・O | 斉藤壮馬 | |
第三話 不幸中の災い。 | act.1 | 6月8日 | 東山奈央 | 内田雄馬 |
act.2 | 6月15日 | 本渡楓 | 下野紘 | |
act.3 | 6月22日 | 富田美憂 | 蒼井翔太 |
漫画
2020年11月27日、真島ヒロによる漫画版がtwitterのアカウント「西尾維新公式情報」に掲載された。
その後、『別冊少年マガジン』(講談社)にて、絵本奈央によるコミカライズ版が2021年5月号から連載中。絵本は漫画版『化物語』第2巻特装版で同作の登場人物・神原駿河のイラストを寄稿しており、それがきっかけとなって本作の漫画化を行うこととなった。
- 西尾維新(原作)、絵本奈央(漫画) 『新本格魔法少女りすか』 講談社〈KCデラックス〉、既刊6巻(2023年11月9日現在)
- 2021年8月17日発売、ISBN 978-4-06-523154-8
- 2021年11月17日発売、ISBN 978-4-06-525983-2
- 2022年3月9日発売、ISBN 978-4-06-527268-8
- 2022年7月8日発売、ISBN 978-4-06-528379-0
- 2023年4月7日発売、ISBN 978-4-06-531288-9
- 2023年11月9日発売、ISBN 978-4-06-533506-2
参考文献
- 『ユリイカ9月臨時増刊号 総特集 西尾維新』青土社、2004年。ISBN 4-7917-0124-0。
- 『西尾維新クロニクル』宝島社、2006年。ISBN 4-7966-5092-X。
- 『ファウスト Vol.7』講談社、2008年。ISBN 978-4-06-378821-1。
- 『ダ・ヴィンチ 2021年1月号』KADOKAWA、2020年。