小説

時間の習俗




以下はWikipediaより引用

要約

『時間の習俗』(じかんのしゅうぞく)は、松本清張の長編推理小説。雑誌『旅』に連載され(1961年5月号 - 1962年11月号)、1962年11月に光文社(カッパ・ノベルス)から刊行された。『点と線』の三原警部補と鳥飼刑事が再び探偵役となり、犯人が仕組んだアリバイに挑戦するミステリー長編である。

小説の時代設定は『点と線』から4年後とされる。これまで3度テレビドラマ化された。

あらすじ

関門海峡に面した門司市の古社・和布刈神社において、旧暦元旦の未明に行われる「和布刈神事」に対する、写真撮影が殺到していた。他方、その前日深夜23時頃、神奈川県の相模湖近くの弁天島で、交通関係業界紙の編集人・土肥武夫の死体が発見された。土肥の投宿していた宿の女中は、女性が同行していたことを証言するが、その女性は行方不明になっていた。

有力な容疑者も挙がらず手がかりが掴めない中、三原警部補は土肥の交際人物のリストから、行動に作為の感じられるタクシー会社の専務・峰岡周一に着目する。だが、峰岡には完全なアリバイがあった。

登場人物

原作における設定を記述。

三原紀一

警視庁捜査一課の警部補。『点と線』の事件以来、鳥飼刑事と親しい間柄となっている。
鳥飼重太郎

福岡警察署の古参刑事。峰岡のアリバイに関する回答を契機に、事件調査に協力する。
峰岡周一

大手タクシー会社「極光交通」の専務。
土肥武夫

「交通文化情報」発行人及編集人。
江藤順平

駿河台の表具師。俳句誌「荒海」の主宰者。俳名は「白葉」。
須貝新太郎

名古屋のゲイバー「蝶々」勤務の男。北海道出身。
梶原武雄

「上ノ橋福岡食品工業」の工員。俳句好きのアマチュアカメラマン。
大隈辰吉

「帝都交通新聞」の社長。
佐原福太郎

「中央自動車情報」の社長。

エピソード
  • カッパ・ノベルス版刊行の翌年『宝石』に掲載された創作ノートで、『点と線』の刊行後、当時「旅」の編集長であった岡田喜秋から「もう一ぺんやらないか」と言われたことが契機であることを明かした上で、著者は以下のように述べている。「当時「宝石」あたりからさかんに、社会派は攻撃されている時なんだね。いや、それは尤もなところもある。僕は、前にも話したように、絶えず、攻撃については好意的な受け入れ方をしているんだ。じゃ一つ書いてみようというので、書いたわけです。やはり登場人物も『点と線』と同じ人を使って―僕はそういうことは嫌いなんだよね。これがはじめてですよ―そして、まあ「旅」という読者も考えて、やはりなじみの人物が登場した方がいいんじゃないかと考えてね。一番不可能なこと、遠隔地における犯罪ね、そこに自分が行ってやるんだけど、第三者にはどう見ても、飛行機を利用しても何をしてもだめだと」「そこに今までみたいに、風景だとか、観光地だけじゃつまらない。習俗ね。和布刈神社のああいう古い神事、そういうのを一つ取り入れたらいいんじゃないか。多分に「旅」的な、そこからの発想です」
  • 直筆原稿初回では『時間の配色』のタイトルであったが、連載時に現在の題に変更された。
  • 冒頭の和布刈神事に関しては、俳句で著者と交友のあった横山白虹を通じて、門司郷土会発行の「和布刈神事の話」が著者に提供された。
文学碑

小説の冒頭に登場する和布刈神社の境内には、本作にちなんだ文学碑が立てられ、本作の一節が刻まれている。文学碑の場所は拝殿の左横である。なお、関門海峡を挟んだ下関側にあるみもすそ川公園内には、著者の『半生の記』の一節を刻んだ文学碑が立っているが、中央に開いた穴から、対岸の和布刈神社を望める趣向となっている。和布刈神社のそばに関門トンネル人道の入口があり、人道トンネルを徒歩もしくは自転車で通って下関側に出ると、みもすそ川公園のすぐそばに出ることができる。

テレビドラマ
1963年版

『推理文学シリーズ・時間の習俗』。1963年8月16日 20:00 - 21:00、NHKの「文芸劇場」枠で放送された。

キャスト
大木実 富田浩太郎 中村栄二 舟木淳 多々良純

スタッフ
脚本:川崎九越 監督:安井恭司 制作:NHK

1982年版

『松本清張の時間の習俗』。1982年6月19日 21:02 - 22:53にTBS系列の「ザ・サスペンス」枠で放送された。第一の殺人の舞台を浜名湖に設定している。視聴率は21.1%であった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

キャスト

  • 三原紀一:萩原健一 (警視庁の警部補)
  • 鳥飼重太郎:井川比佐志 (福岡県警の刑事)
  • 峰岡周一:中谷一郎 (建設会社の重役)
  • 松村友子:藤真利子 (幼稚園の先生で三原の恋人)
  • 紺野桂子:山口いづみ (峰岡の秘書)
  • 土肥武夫:川辺久造 (記者)
  • 土肥の妻:谷口香
  • 土肥の上司:高原駿雄
  • 吉村:松原留美子 (ゲイボーイ)
  • 大橋警部:福田豊土 (静岡県警の警部)
  • 本部長:原田樹世土
  • 刑事:山本清
  • 刑事:伊東達広
  • 刑事:小林尚臣
  • 幼稚園の先生:藤木聖子
  • 幼稚園の先生:姉崎公美
  • 旅館の女将:絵沢萌子
  • 旅館の仲居:神保共子
  • 新村礼子、北見治一、西東秀一、青木卓、大久保正信、中村武己、山崎満、江梨みつ子、新城彰、恩田恵美子、下坂泰雄、風中臣、高橋豊、美和哲三、逢坂秀実、松田章、鈴木陽
  • ナレーター:寺田農

スタッフ

  • 企画:霧プロダクション
  • 脚本:岡本克巳
  • 監督:富本壮吉
  • 音楽:萩原健一、ドンジュアン・ロックンロールバンド
  • 助監督:息邦夫
  • 撮影技術:小林節雄
  • 照明:山川英明
  • 編集:田賀保
  • 現像:東京現像所
  • 美術:川崎軍二
  • プロデューサー:千原博司(大映テレビ)、忠隈昌(TBS)
  • 企画:春日千春(大映テレビ)、樋口祐三(TBS)
  • 製作:大映テレビ、TBS
2014年版

「松本清張スペシャル 時間の習俗」フジテレビ開局55周年特別番組として、フジテレビ系列で2014年4月10日(木曜日)の21:00 - 23:15に放送された。視聴率は10.2%であった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

キャスト(2014年版)

  • 三原紀一:内野聖陽 (警視庁の警部補)
  • 鳥飼重太郎:津川雅彦 (福岡のベテラン刑事)
  • 峰岡周一:加藤雅也 (マスコミを賑わす若手衆議院議員)
  • 野末美樹:木南晴夏 (三原と組むキャリア組の刑事)
  • 柴崎一課長:田村亮
  • 梶原亮太:片岡信和
  • 同期生・田浦:橋本じゅん
  • 梶原美和子:酒井若菜
  • 須貝新太郎:千葉雄大
  • 須貝寿美子:梅沢昌代
  • 植村:小須田康人
  • 鈴木慎一(鑑識):伊藤正之
  • 須貝耕三:井上肇
  • ママ・リツ子:やべけんじ
  • 土肥武夫:山地健仁
  • 浜崎茜、平川和宏、前田剛、清水伸、松澤重雄、小渕友加里、中野薫、東武志、丸若薫、鶴見和也 ほか

スタッフ(2014年版)

  • 脚本:浅野妙子
  • 演出:光野道夫
  • ピアノ演奏:スワベック・コバレフスキ
  • ロケ協力:福岡フィルムコミッション、伊那谷フィルムコミッション、太宰府市、福岡県指定無形民俗文化財黒土神楽講、和布刈神社、テレビ西日本、九州旅客鉄道 ほか
  • 技術協力:ビデオスタッフ
  • 照明協力:ザ・ホライズン
  • 音響効果:アウルサウンドワークス
  • 写真・映像協力:豊田直巳、VisualworksOHP、福島テレビ
  • 警察台本監修:永澤敏敬
  • 警察現場指導:ビーテックインターナショナル
  • 方言指導:西見波二
  • 殺陣指導:高橋昌志
  • プロデュース:小池秀樹
  • 制作著作:フジテレビジョン

松本清張原作のテレビドラマ一覧(放送順)

脚注・出典