未来人カオス
以下はWikipediaより引用
要約
概要
『未来人カオス』(みらいじんカオス)は、手塚治虫による日本のSF漫画作品。『三つ目がとおる』の連載終了後に、講談社の『週刊少年マガジン』1978年4月16日号から1979年1月1日号まで連載された。
近未来(20世紀末から21世紀初頭にかけて)の日本、数々の架空の惑星を舞台に物語が展開される。
あらすじ
幼いころからの無二の親友である須波光二と大郷錠は、共に超難関・銀河総合アカデミーを目指す学生。しかし最終試験の直前、大郷の前に謎の男が現れ、「須波を殺せ。殺せばアカデミーに合格させてやる」と唆す。動揺もあって大郷は最終試験で須波と明暗を分けてしまった。嫉妬にかられ、ついに須波を手にかける大郷。
須波は謎の少女に助けられ、宇宙の彼方のクローン技術により復活する。大郷への恨みもあり、何とか地球に戻ろうとするが、たどり着いたのは事件から10年経った日本だった。再会した大郷は宇宙移民局局長のポストに就いており、須波を捕らえるや地球外へ追放してしまう。
流刑星へ送り込まれた須波は「カオス」と名前を変えられ、囚人奴隷として過酷な労働に従事させられる。それでも数々の幸運と大切な仲間との出会いに恵まれ、友情を育む。そして大郷に復讐するための基盤を固めるべく、宇宙商人として財を築いていく。
一方、宇宙移民局局長の地位をほしいままにする大郷は、不要人口の地球外追放政策を強行する。時には暴力組織や過激派から命を狙われる日々の中で、他人を信じる心を失い、孤独に苛まれてゆく。そして幾度も窮地から生き延びて姿を現すカオスの存在に恐怖し、次こそ葬り去ろうと躍起になっていた。
このようにかつての大親友だったカオスと大郷は、ひとつの事件を境に正反対の境遇に置かれ、互いに憎み合うだけの関係と化してしまったかに見えた。しかし実はこれこそが、人智を超えた存在による「友情を消すことができるか」という実験の過程なのであった。
そしてある日、地球にて二人はまた相まみえることとなる。だがアクシデントで共に死の危険にさらされ、生き延びるためお互いに協力せざるを得なくなり・・・。
登場人物
須波 光二 (すなみ こうじ)
黒髪をした地球人の青年。宇宙関連の役人になるため銀河総合アカデミーを目指し、めでたく最終試験に合格した直後、親友・大郷錠の手により命を落としてしまう。しかし死体は宇宙の彼方へと転送され、オパスの手により蘇る。地球へ戻った途端、宇宙移民局局長に出世していた大郷により流刑星バカラ・サテライトに送られるという悲劇に見舞われるが、そこで出会った囚人エランバと共に自由を勝ち取る。その後もムーザル、マユ、ジダール将軍といったさまざまな宇宙人と友情を育みながら、たくましく生き延びていく。バカラ・サテライトを拠点に星間取引を始め、地球でもその名を知られるほどの大商人へと昇りつめる。
機械工学・地質工学といった知識、弁舌と商売の才能に恵まれ、さらに生存能力と決断力にも優れている。義理人情を重んじる性格でもあるが、若干頭に血が上りやすいのが玉に瑕。商人としての地位を確立してからは利益追求を優先するようになり、地球を買い占めたいという野望も抱いている。
クローン技術で蘇った際、髪の毛が茶色に変わり、ウサギの耳のように逆立つようになった。名前も、バカラ・サテライトの所長から「カオス」と名付けられて以後はそれで通している。
大郷 錠 (だいごう じょう)
由利 アンヌ (ゆり あんぬ)
由利アンヌのクローン
オパス
奇本 (きもと)
所長
エランバ
カオスのロボット
ムーザル
ベデルゴの女王
マユ
ジダール
宇宙を放浪する浮浪者の男性。マユと一緒に商売を始めたカオスの宣伝通信を聞きつけ、バカラ・サテライトにやって来た。浮浪者に似つかわしくない立派な体格で、人望も厚く、宇宙各地に「コジキ仲間」がいる。もともとは惑星ダフネスで将軍を務めていたが、仕えていた先代の王が女王に追放され、妻子も皆殺しにされたため、星を離れて放浪者となった。誇り高い性格で、二君に仕えないという信念を持つ高潔な騎士。
大郷錠ら地球勢力の侵攻で危機に陥った母星を救うべくカオスと共にダフネスへと乗り込み、善戦する。しかし女王の命令で無理やり降伏させられ、地球勢力に処刑されかけるという非情な見返りを得ただけだった。先代の王を支持するかつての仲間たちとクーデター実行を決意し、その際にカオスに「宇宙一の商人になってみろ」と激励した。
宇宙コジキたち
ボス
脾藤 狂心 (ひどう きょうしん)
閻魔 (えんま)
小郷 千鶴 (こごおり ちづる)
大臣
ダフネスの女王
お尋ね者
用語
銀河総合アカデミー
クローン技術
バカラ・サテライト
ダチョウのような脚に小さな虫のような胴体が付いた生物が繁殖しているが、知能は低い。また、動物に胞子を植え付け怪物のように変形させてしまう水生寄生植物もいる。
地球からの罪人を収容・管理する設備を備えていたが、彗星の接触により崩壊する。それ以降は残った建物や機械をカオスたちが自由に使うようになる。
ホーカ星人
ベデルゴ
同じ星に住む山椒魚型の宇宙人を宿主として長らく繁栄してきたが、それが絶滅してしまったため、種の存続の危機にさらされている。
惑星ダフネス
女王が政権を乗っ取ってからは政治が荒廃し、宇宙コジキたちも「もらいが少ない最低の星」と嫌っている。
ドギス
ケチャ症状
この薬を飲んだ科学者が最終兵器ドギスを開発したため、一時的にせよ知能向上の効果はあったようである。
その他
・様々な形態の宇宙人、宇宙船のデザイン等、手塚が映画『スター・ウォーズ』に大きな影響を受けて描いた作品であることがうかがわれる。
・最終話には「第一部 完」の文字が見られるが、第二部以降は結局描かれず、構想についても明らかにされていない。
・手塚は本作について、講談社漫画文庫2巻の「あとがきにかえて」で「友情とは何か」に対する自分なりの答えと述べている。
・漫画『ブラック・ジャック』のエピソード「侵略者」にカオスとよく似たキャラクターが登場するが、執筆は『未来人カオス』より前の1975年である。
単行本
- 手塚治虫漫画全集『未来人カオス』(講談社)全3巻
- グランドコレクション『未来人カオス』(講談社)全2巻
- 講談社漫画文庫『未来人カオス』(講談社)全2巻
- 手塚治虫文庫全集『未来人カオス』(講談社)全2巻