李陵 (小説)
以下はWikipediaより引用
要約
『李陵』(りりょう)は、『漢書』(「李広蘇建伝」「匈奴伝」「司馬遷伝」)、『史記』(「李将軍列傳」「太史公自序」)、『文選』(「答蘇武書」「任少卿報書」)等を典拠とした、中島敦の短編小説である。中島没後の昭和18年(1943年)7月、『文學界』に発表された(脱稿は前年10月)。『李陵』という題名は、深い交友のあった深田久弥が、遺稿に最も無難な題名を選び命名したもので、中島自身は「漠北悲歌」などいくつかの題を記したメモを遺していた。
漢の武帝のとき、匈奴征伐の際に、善戦およばず捕虜となった李陵は、匈奴単于に厚遇される。李陵は自己弁護をせず、胡の地に残る。一方、匈奴に順うのを潔しとしない蘇武は、苦節19年の末祖国に帰る。宮刑に処せられるも『史記』を執筆する司馬遷。三者三様の生き様を描いた。
あらすじ
前漢の武帝から昭帝の時代、匈奴と戦い俘虜となった李陵のことを中心として描かれている。李陵、司馬遷、蘇武の3名が主要人物として登場する。
主な収録書籍
- 『李陵』小山書店〈文學新輯4〉、1946年2月、NCID BN11436604、NDLJP:1134649。
- 収録作品 - 「李陵」「弟子」。
- 『山月記・李陵 他九篇』、岩波書店〈岩波文庫〉、1994年7月、ISBN 4003114515。
- 解説 - 氷上英廣、註 - 飯倉照平、初出一覧。
- 収録作品 - 「李陵」「弟子」「名人伝」「山月記」「文字禍」「悟浄出世」「悟浄歎異」「環礁―ミクロネシヤ巡島記抄―」「牛人」「狼疾記」「斗南先生」。
- 『李陵・山月記』新潮社〈新潮文庫〉、2003年12月、ISBN 9784101077017。
- 解説 - 瀬沼茂樹、注解 - 三好行雄。
- 収録作品 - 「山月記」「名人伝」「弟子」「李陵」。
- 収録作品 - 「李陵」「弟子」。
- 解説 - 氷上英廣、註 - 飯倉照平、初出一覧。
- 収録作品 - 「李陵」「弟子」「名人伝」「山月記」「文字禍」「悟浄出世」「悟浄歎異」「環礁―ミクロネシヤ巡島記抄―」「牛人」「狼疾記」「斗南先生」。
- 解説 - 瀬沼茂樹、注解 - 三好行雄。
- 収録作品 - 「山月記」「名人伝」「弟子」「李陵」。
外国語版
- 盧錫台訳『李陵』、太平出版公司(台湾)、1944年8月。 - 中国語版
- Penn, Setharin 訳『ឱ! ដួងច័ន្ទនៃព្រៃភ្នំអើយ ; លី លៀង ; ពិស្ណុការ』 - クメール語版
- 収録作品 - 「山月記」「李陵」「名人伝」
- 収録作品 - 「山月記」「李陵」「名人伝」
草稿と校訂版
「李陵」という題は、深田久弥が遺稿に最も無難な題名を選び命名したものである。中島自身が書き残したメモには「漠北悲歌」の語があるが、その字を消してある部分も同時に見えるため断定しにくく、無難な「李陵」となったのではないかとされている。
草稿は長らく不明になっていたが、1961年(昭和36年)に発見され、写真版を収めた
- 『原稿覆刻版 中島敦 李陵』文治堂書店、1980年11月、NCID BN05292204。
が刊行されている。さらに山下真史や村田秀明は草稿や浄書原稿を分析し、中島自身が書籍化した場合の本文を検討する。この試みは
- 山下真史、村田秀明『中島敦「李陵・司馬遷」定本篇・図版篇』、中島敦の会 発行、神奈川近代文学館 発売、2012年11月、NCID BB11149211。
- 山下真史、村田秀明『中島敦「李陵・司馬遷」註釈篇』、中島敦の会 発行、神奈川近代文学館 発売、2018年11月。
として註釈付きで書籍化され、注目を集めた。この版においては、中島のメモの最後にあった「李陵・司馬遷」をタイトルとしている。
参考文献
- 中島敦『李陵・山月記』(改)新潮文庫、2003年12月。ISBN 978-4101077017。
- 中島敦『山月記・李陵 他九篇』岩波文庫、1994年7月。ISBN 978-4003114513。
- 渡辺ルリ「中島敦『李陵』論」『叙説』第33号、奈良女子大学文学部国語国文学会、268-287頁、2006年3月31日。 NAID 110004437246。