歪んだ複写
主人公の属性:記者,
以下はWikipediaより引用
要約
『歪んだ複写』(ゆがんだふくしゃ)は、松本清張の長編推理小説。『小説新潮』に連載され(1959年6月号 - 1960年12月号)、1961年2月に新潮社から単行本が刊行された。サブタイトル「税務署殺人事件」が付されている。
あらすじ
東京の西郊、武蔵境駅北方面の畑の中で、死後2か月の腐乱死体が発見された。被害者が元税務署勤務の沼田嘉太郎らしいと知ったR新聞記者の田原典太は、P税務署に探りを入れ、1年前に発覚した大型脱税事件の絡みで、沼田がP税務署を辞職していたことを知る。田原は同僚の時枝伍一と調査に乗り出し、事件の前に沼田が目をつけていた繁華街の料理屋「春香」を訪れる。春香には沼田と同時期にP税務署に勤務していた崎山亮久や野吉欣平が出入りし、スポンサーの供応を受けており、沼田は2人の動静を監視していたと田原は睨む。崎山と野吉の身辺を洗う中で田原は、税務署の内情に通じた不思議な男・横井貞章に出会う。横井は独自に事件を調べ「犯人は階段だ」「古物屋を捜したほうがいいな」と田原に伝える。
しかし横井は平和島で死体となって発見され、続いて第三の殺人も発生、調査を続けるうちに、田原は真犯人の動機に気付く。
主な登場人物
エピソード
- 作中で言及される「誇大な宣伝をして、零細な出資を一般の庶民から集め、戦後メキメキと大きくなった」「竹川商事」の事件について、川本三郎は保全経済会事件がモデルと推定している。
- 本作の特色として、地図を描くことで事件を解決に導く点が指摘されている。
- 研究者の小嶋洋輔は、本作が不正行為やエリートの弱さといった「歪んだ」ものが、次々と「複写」されていってしまう社会の現状を描いていると述べ、また作中に当時の東京圏の地理的拡大(阿佐ヶ谷・吉祥寺・武蔵境各駅周辺の当時の中央線沿線の格差)を描き込むことで、高度経済成長の「複写」を行う作品であると述べている。
- 「東京の西の繁華街といわれるS地区」「K通り」は新宿歌舞伎町の区役所通り、「地下鉄の工事」は営団地下鉄荻窪線(1961年開業、現在の東京メトロ丸ノ内線)とされている。
- 「東京の西の繁華街といわれるS地区」「K通り」は新宿歌舞伎町の区役所通り、「地下鉄の工事」は営団地下鉄荻窪線(1961年開業、現在の東京メトロ丸ノ内線)とされている。
作中パロディ
- 「誰かリオを知らないかア…」 - 『上海帰りのリル』の歌詞「誰かリルを知らないか」にちなむ。
- 「おなつ狂乱だね」 - 本作と同時期に『小説新潮』に連載されていた舟橋聖一の夏子シリーズにちなむ。
- 「前の車には税吏さま 後ろの車には社用さま 二つ並んではるばると 汚職の車が行きました」 - 『月の沙漠』にちなむ。