死亡遊戯で飯を食う。
以下はWikipediaより引用
要約
『死亡遊戯で飯を食う。』(しぼうゆうぎでめしをくう)は、鵜飼有志による日本のライトノベル。イラストはねこめたるが担当している。MF文庫J(KADOKAWA)より2022年11月から刊行されている。
デスゲームの賞金で生活しながら、デスゲームでの連勝を目指す主人公・幽鬼の物語。
万歳寿大宴会によるコミカライズが『月刊コンプエース』(KADOKAWA)にて2023年6月号から連載中。
あらすじ
第1巻
ゴーストハウス(28回目)
キャンドルウッズ(9回目)
ライフタイムジョブ
第2巻
スクラップビル(10回目)
ゴールデンバス(30回目)
クリムゾンレーキ
第3巻
ワンファインデイ(40回目)
クラウディビーチ(44回目)
リーブ・ザ・フロントライン
第4巻
クラウディビーチ - 第八日
スクールメイト(47.5回目)
シティシナリオ(44.5回目)
ハロウィンナイト(45回目)
ロスト・アンド・ファウンド
登場人物
主人公
幽鬼()
本作の主人公。17歳。幽霊のような風貌が特徴のプレイヤー。当初は強い動機を持たないままゲームへの参加を繰り返していたが、キャンドルウッズ後は生きる理由として99回のゲームクリアを目指すようになった。ゲームでは生き残りの戦略として、可能な限り利他的なプレイスタイルをとる。本名は反町 友樹()。
鵜飼は幽鬼について、自分の一部分の要素を極端に広げたキャラクターだと述べた。
二語十は幽鬼について、思考への理解がおよばず感情移入できないが、ある意味では圧倒的なヴィランを見ているような感じであり、過去を描くエピソードで幽鬼がそうなった理由が出てきてほしいという思いと、一方で背景が何もないのも敵キャラとして見た場合は魅力的だという思いがあることを述べた。
『このライトノベルがすごい!』女性キャラクター部門では2024年版で12位を獲得した。
ゴーストハウスの登場人物
黒糖()
キャンドルウッズの登場人物
白士()
伽羅()
萌黄()
スクラップビルの登場人物
御城()
ゴールデンバスの登場人物
クラウディビーチの登場人物
真熊()
永世()
日澄()
古詠()
海雲()
シティシナリオの登場人物
作中設定
本作の殺人ゲームはショービジネスである。観客が存在し、ゲームの会場には至る所に監視カメラが設置されている。観客は誰が生き残るか賭けをしており、ゲームをクリアしたプレイヤーはそこから賞金を得ている。初回の賞金は300万円前後だとされる。ルールはゲームごとに異なるが、人死を厭わないことは共通している。
ゲームに参加するプレイヤーは少女のみであり、 基本的に容姿のいい者が呼ばれる。プレイヤーはゲーム中はコスプレめいた衣装を着ることになる。参加するか否かの決定はプレイヤーに委ねられており、断ることができる。参加するプレイヤーの数が足りなかったり、上玉を発見したりした場合に運営からアプローチをかけられるスカウト組も存在する。幽鬼によると、やむを得ない事情によってゲームに参加するのは多くても5, 6回で、生業としてゲームに参加する者は死生観が変わっているとされる。
外部からゲームに武器を持ち込むことは禁止されているが、義手や義足の使用は許可されており、爪などの人体の一部を改造するプレイヤーも存在する。
ゲームの生還率は平均で7割に設定されている。プレイ回数を重ねて経験値を積めば生還率は高くなるが、30回付近になると生還率が急に落ちる三十の壁と呼称される現象が起こる。これは運営がゲームの難易度を操作しているわけではないらしく、白士からは呪いのようなものと評されている。白士によると98回がプレイヤーの最高連勝記録であり、白士と後の幽鬼は99連勝を目標に定めている。
ゲームを鑑賞する人への配慮として、プレイヤーの肉体には防腐処理が施される。空気に触れた血液が白い綿のような物質に変化するようになるほか、体臭がなくなり、遺体になっても腐敗しなくなる。ゲーム中に負傷したプレイヤーは、終了後に運営から治療を受ける。〈防腐処理〉の存在により治療可能な範囲は通常より広く、体の一部を失ってもだいたいは元に戻してもらえる。運営による治療が不可能な怪我を負ってもゲームを続けることを希望するプレイヤーは、職人に義体をつくってもらう。
プレイヤーはゲームについて一般人に話したり、運営母体を詮索したりすることを禁じられている。プレイヤーは身元を秘匿するために偽名=プレイヤーネームを使用するほか、ゲームの会場への送迎時はエージェントから渡される睡眠薬を服用する必要がある。2回目のゲームを生還したプレイヤーには専属のエージェントがつく。プレイヤーはゲームで長期間生き残るために師匠を探すこともある。
作風・制作背景
デスゲームのプレイヤーの衣装は毎回異なる。これは人狼ゲームを題材とした新都社の漫画『汝は人狼なりや?』が元ネタとなっている。
読者層については、鵜飼自身が高校生くらいまで本を読めていなかったため、同様の読者がいることを念頭に置いているという。
鵜飼によると、応募作の投稿時代は『探偵はもう、死んでいる。』や『スパイ教室』の隆盛から、それらはライトノベルの文法を用いてそれ以外のジャンルの話を展開していると解釈し、自分が書けるジャンルとしてデスゲームものに決め、それがトレンドだと思って執筆していたという。
評価
MF文庫Jライトノベル新人賞での評価
本作は第18回MF文庫Jライトノベル新人賞にて優秀賞を受賞した。審査員の1人であるさがら総によると、審査員2人が最高評価、もう2人が最低評価をつけて賛否が割れたという。最高点をつけたさがらは、最低評価もむべなるかなという感想とともに、叩いて丸めるのではなく尖りに尖らせて読者をどれだけ深く刺すことができるかで勝負すべき作品だと話した。
各巻での解説
『探偵はもう、死んでいる。』の著者である二語十は、新人賞の審査会で本作が人を選ぶ作品であり賛否両論とされたことに言及し、そういったフレーズを用いて売り出される小説がたまにあること、それらのフレーズが作品のクオリティへの世間の批判を封じるための免罪符になっていないか、より多くの読者を楽しませる努力を怠っていないかという疑問を呈した上で、本作は多くの読者を楽しませようという意図を最大限に感じたと述べた。デスゲームものによく見られる過剰にグロテクスな表現に必ずしも頼るわけではなく、読者の想像に任せたり防腐処理の設定を生かしたりして読者の生理的嫌悪を抑えている点や、デスゲームの参加者によるコスプレがライトノベルとしてビジュアルを意識した作りになっている点などを評価した上で、本作が世間から受ける評価はやはり賛否両論であろうこと、評価が割れる大きな理由は主人公である幽鬼を受け入れられるかどうかであることを述べた。
『スパイ教室』の著者である竹町は、従来のデスゲームもののお約束をことごとく無視した怪作だと評した。主人公について、共感できるような切実な理由がないことを述べ、前半部分の変更案を挙げた上で、そちらの方がつまらないものになっていると自評し、破茶滅茶な箇所を変更すると本作の魅力が消えてしまう、その滅茶苦茶さをわかろうとするのではなくただ堪能すればいいと評した。後半については絶賛というより激怒みたいな感想を抱いたと述べた上で、そうでなくてはつまらない、新人賞作品に求められるのは型破りで常識離れしたパワーであり、本作には唯一無二の読後感を抱かせる力があると述べた。
『ライアー・ライアー』の著者である久追遥希は、デスゲームものである本作が新人賞で優秀賞を受賞したと聞いた際に、本作には何かしらの捻りがあるのだろうと予想したが、実際はストレートに人が死ぬゲームを題材にしており、万人受けしないテーマだと理解した上で飛び道具を用いず読者を楽しませようとする一面があると評した。また、主人公である幽鬼以外のキャラクターが巻を跨いで活躍することがない点について、幽鬼以外の推しキャラが発生しにくい構造だが、だからこそ「どうせ生還するキャラクター」ではなく「いつ命を散らしてもおかしくないプレイヤー」として認識せざるを得ないため、最後まで物語に緊張感を持たせていると述べた。
『義妹生活』や『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?』などの著者である三河ごーすとは本作の第1巻を読んだ時点では、従来のデスゲーム作品と微妙にズレているという感想を抱いたという。第2巻の読後、その理由は本作がデスゲームを題材にしながら徹底的に日常的な課題を扱っているからだと述べた。
『あの夏が飽和する。』の著者であるカンザキイオリは、本作がただのデスゲームものではなく、自分の意志でゲームに参加する登場人物たちは、命を弄ばれる側でありながらむしろ支配して弄んでいるようだと述べたほか、ゲームが場所や内容を変えて何度も続いているため、ゲームごとにジャンルも若干変わっていくと述べた。また本作の重心にあるのはさながら青春のような登場人物たちの感情のぶつかり合いと、それによって生じる熱い展開だと評した。防腐処理の設定が死のイメージを抑えてそこまでグロテスクに感じさせず、熱い展開を浮かび上がらせており、幽鬼とそれを取り巻く登場人物たちはただ生き残るために蹴落とす関係ではなく、プライドと感情に則ってバトル漫画のような殺し合いに惹き込まれたという。
『恋に至る病』の著者である斜線堂有紀は、本作を「極めて変則的な特殊設定ミステリ」と呼び、幽鬼の突飛な設定や個性豊かなプレイヤーたちの一方で、ルールで読者を導くフェアなミステリだと評した。また、本作の登場人物たちは繰り返しゲームに参加していることによって何度も同じ場所に居合わせ、共通認識を増やしているため、過去の事件(ゲーム)の情報も巧妙な伏線として機能し、ロングスパンで事件を描くことを可能にしており、「最新刊こそが最も面白い」というルールがあると述べた。
『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』の著者である冬野夜空は、どこまでいっても小説は娯楽で売れることが正義であり、執筆にあたってさまざまな打算が生まれるとした上で、本作ではそれらの打算を全て殺していると述べ、その理由は書き手が自分の思う面白いものを書くためであり、枠にはまらない本作は、ある意味で誰にも予想できず、どんな作品よりも無限大の可能性を秘めていると評した。
その他の評価
書評家のタニグチリウイチは、本作について、参加者が死ぬデスゲームを見て喜ぶ視聴者がいて、そのおかげで出る賞金によって食べていける参加者の少女たちの壊れた心理に触れられる作品、ダークさが虚ろな笑いを誘う作品と紹介し、連勝したいからという理由で命を賭け、勝つために命を奪う幽鬼のヒロイン像は挑戦的であると述べた。また、とにかくヤバいという感想を持ち、血まみれにならない工夫がなされているため、アニメになってもビジュアル的にはレーティングをクリアできそうなのが面白いが、死の場面を繰り返し見せられるヤバさは残り、連続する死に感覚が麻痺して命はばらまかれてこそ輝くものだと思えるところにもヤバさがあると述べた。主人公が不条理なゲームのシステムを破壊するために挑むような正義感ではなく、99連勝を達成したいという我欲を原動力としていることを挙げ、それゆえに正義の軸が存在しない世界観を浴びせられ、誰に気持ちを寄せて読むか迷った末の境地を考えると恐ろしくなるが、感情よりも利益を優先しなければ生き残れない今の社会で生きる人に沿っているものなのだとしたら、本作は最適だと評した。
ライターの太田祥暉は、デスゲームを連戦していく作品は、デスゲームもの特有の緊迫感とは別の軸が必要になるものであり、本作におけるそれはドライな少女が一歩引いた立場からデスゲームを俯瞰して勝ち進んでいく視点だと述べた。また、評論家の宇野常寛が理不尽な状況下でも攻略して生きていくことを主眼とした作品群を「サヴァイブ系」と呼称したことを紹介した上で、本作について、生き延びる術は探すが一人で勝ち進んでいこうとするのではなく、他プレイヤーと協調し、暴力的衝動にのめり込むわけでもないが、一つの矜持があると述べ、デスゲームもので新たな緊迫感を示すことに成功していると評した。
「ラノベニュースオンラインアワード2022年11月刊」の投票アンケートでは、本作の第1巻が「総合部門」と「新作総合部門」で選出された。『このライトノベルがすごい!』では2024年版で文庫部門2位、新作部門1位を獲得している。
既刊一覧
小説
- 鵜飼有志(著)・ねこめたる(イラスト) 『死亡遊戯で飯を食う。』 KADOKAWA〈MF文庫J〉、既刊5巻(2023年12月25日現在)
- 2022年11月25日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-681937-6
- 2023年1月25日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-682109-6
- 2023年4月25日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-682405-9
- 2023年8月25日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-682765-4
- 2023年12月25日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-683149-1
漫画
- 鵜飼有志(原作)、ねこめたる(キャラクター原案)、万歳寿大宴会(漫画) 『死亡遊戯で飯を食う。』 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉、既刊1巻(2023年12月26日現在)
- 2023年12月26日発売、ISBN 978-4-04-114456-5
関連企画
第1巻の発売前には「幽鬼へのインタビュー」がTwitterの動画版とカクヨムのテキスト版で1か月かけて連載された。幽鬼の声は冥鳴ひまり(VOICEVOX)が担当した。
他にも本作の紹介動画が公開され、第1巻の発売後には「他プレイヤーから見た幽鬼」がTwitterの動画版とカクヨムのテキスト版で連載された。幽鬼、紅野、伽羅の声はありナ、金子、萌黄の声はおまめ、青井、藍里の声はむゆぬ、黒糖、白士の声はふるせ、桃乃、墨家の声はayuぱんだが担当した。
第2巻の発売時には中島由貴がナレーションを務めるPVが公開された。
第3巻の紙書籍の帯には、中島由貴が幽鬼の声を担当するボイスドラマ「幽鬼、恋人シチュのボイスを収録する」を視聴できるコードが付属した。
第4巻のフェア特典イラストカードおよび紙書籍の帯には、中島由貴が幽鬼の声を担当するボイスドラマ「幽鬼、夏祭りシチュのボイスを収録する」を視聴できるコードが付属した。
『このライトノベルがすごい!2024』新作部門1位を記念して2023年11月27日から12月3日までJR秋葉原駅にて本作の大型広告を掲出。
参考文献
- 鵜飼有志『死亡遊戯で飯を食う。』KADOKAWA〈MF文庫J〉、2022年11月25日。ISBN 978-4-04-681937-6。
- 鵜飼有志『死亡遊戯で飯を食う。2』KADOKAWA〈MF文庫J〉、2023年1月25日。ISBN 978-4-04-682109-6。
- 鵜飼有志『死亡遊戯で飯を食う。3』KADOKAWA〈MF文庫J〉、2023年4月25日。ISBN 978-4-04-682405-9。
- 鵜飼有志『死亡遊戯で飯を食う。4』KADOKAWA〈MF文庫J〉、2023年8月25日。ISBN 978-4-04-682765-4。
- 『このライトノベルがすごい!』編集部『このライトノベルがすごい!2024』宝島社、2023年12月9日。ISBN 978-4-299-04899-8。