海の底のピアノ
以下はWikipediaより引用
要約
『海の底のピアノ』(うみのそこのピアノ)は、井上敏樹による日本の小説。2014年2月7日に朝日新聞出版から発売された。
概要
井上敏樹による初のオリジナル小説。8か月間で執筆された。「脚本家はものを書き続けなきゃいかん!」と特に出版のあてもなく書いたところ、作家の川上弘美に原稿が見つかり「これ出さなきゃダメよ!」と叱られて出版することになった。元は3倍以上の長さがあったが、井上曰く「短くして良くなった」という。
テーマは「救済。この世に生きていけないタイプの人間の救済の話」であり、物語の構造的・骨格的には仮面ライダーといってもいいと井上は語っている。本作を執筆するにあたって井上は、色々な曲を聴き、調律の専門書やラフマニノフの自伝を読み、ピアノの製造過程を勉強し、音楽大学の入学手続きの資料を取り寄せ、ピアニストにも読んでもらった。また、文章に「…のだ」の文体が使われていない。これはストーリーがドラマチックであるため、文章もドラマチックにならないようにしたためである。
あらすじ
幼い頃に誘拐され性的虐待を受けて育った水雪は母親からピアノの英才教育を受けて育った和憲と出会う。次第に惹かれあっていく2人だったが…。
登場人物
水雪(みゆき)
イノグチ
ミルク
シノハラ
和憲と同じピアノ科の2年生で、同じ砂田教授の門下生。グレン・グールドの真似をして1年中厚手のコートを着込んで首にマフラーを巻き唸り声を上げながらバッハを弾いたり、スヴャトスラフ・リヒテルの真似をして亀を散歩させたりと、ピアノ科の中でその変人ぶりで有名。
キタノ
スズキ
宗方
須藤
赤沼
ジャム
曲目
作中に登場した曲目の一覧
チャイコフスキー『ピアノ協奏曲第1番』
ピアポント『ジングルベル』
『さくらさくら』
ドビュッシー『2つのアラベスク』
ドビュッシー『マズルカ』
バッハ『フーガハ長調BWV952』
ショパン『ノクターン』
ショパン『エチュード第2番イ短調』
ショパン『エチュード第8番ヘ長調』
ショパン『子犬のワルツ』
バッハ『ゴールトベルク変奏曲』
ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』
ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第3番』
バラキレフ『イスラメイ』
ベートーヴェン『皇帝』
ベートーヴェン『エリーゼのために』
ブラームス『ハンガリー舞曲第21番』
ラヴェル『水の戯れ』、マクダウェル『森のスケッチ』
モーツァルト『ピアノ・ソナタ第15番ハ長調』『ピアノ協奏曲第20番』、ベートーヴェン『月光』『ピアノ協奏曲第1番』、ショパン『スケルツォ第2番変ホ長調』『木枯らし』、グリーグ『風の精』『小川』、シベリウス『樅の木』、シューマン『協奏曲』、リスト『ハンガリー狂詩曲第2番』『風景』『幻影』『英雄』『雪嵐』、プロコフィエフ『ピアノ協奏曲第3番』、ファリャ『スペインの庭の夜』、クライスラー『愛の悲しみ』、ラヴェル『夜のガスパール』
書評
単行本の帯に川上弘美は「絶望的に美しい」という推薦文を寄せ、東映プロデューサーの白倉伸一郎は「私たちは胎内から生まれ、いつしかその胎へと戻る。そこは空洞か、それともきらめく海の底なのか」という推薦文を寄せた。
評論家の宇野常寛は「井上敏樹の退屈だけが文学として機能する」という推薦文を寄せ、「『555』で描いて、そして10年間放置していたものにようやく再びアプローチした作品だと思う。要するに乾巧のように夢もなく、ただ滅ぶだけの存在からこの世界がどう見えるのかということ。そして言ってみれば、あれから10年経ってオルフェノクのようにしか生きられない人々と、本質的には決して何も起こらない世界の組み合わせから何が出てくるのかを最後まで追求した作品だと思う。今の井上敏樹という作家にとって、いかに『アギト』と『555』が特別な位置にある作品かを痛感させられる。」と評している。
脚本家の島田満は「ひとは醜悪でいびつで孤独な生きものだけど、それでも生きていることは優しくて暖かい…という気持ちになった。」と評している。
俳人の小澤實は「作品世界の大きさと異様さとに圧倒された。作品内に拉致されたような体験は久しぶり。」と評している。
俳優の村上幸平は「(前略)数日前には読み終えたのですが、読後の虚無感、喪失感、脱力感に囚われてぼ~っとしちゃって何のやる気も起きなかった。海の底のピアノが放つ切なすぎる余韻に絶望的に美しい残響に浸っていた。(中略)壮絶な破滅の物語だった。しかし儚い美しさが心に沁みる。とにかく井上敏樹を惚れ直した!!!大好きでよかった!!!尊敬していてよかった!!!そんな気分になった本です!」とブログで綴った。