海街diary
以下はWikipediaより引用
要約
『海街diary』(うみまちダイアリー)は、吉田秋生による日本の漫画作品。『月刊フラワーズ』(小学館)にて、2006年8月号から2018年8月号まで不定期連載された。『ラヴァーズ・キス』とのクロスオーバー作品である。また作者曰くこの二作品と今後描く作品で鎌倉三部作を考えている。番外編「通り雨のあとに」はスピンオフ作品『詩歌川百景』に繋ぐエピソードになる。
第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、マンガ大賞2013、第61回小学館漫画賞一般向け部門受賞。2018年12月時点でシリーズ累計発行部数は360万部を突破している。
2015年に実写映画が公開。2017年に舞台化作品が上演。
あらすじ
神奈川県鎌倉市で暮らす香田三姉妹の元に、自分たちが幼いころに離婚して家を出て行った父の訃報が届いた。次女・佳乃は15年以上会っていない父の死を特に何とも思えず、父との思い出が殆どない三女・千佳も佳乃と同じ気持ちだった。それでも長女・幸の頼みで葬式に出るために山形へ赴いた佳乃と千佳は、そこで年齢の割にしっかりしている中学1年生の異母妹・浅野すずと初めて出会う。
既に母も亡くしていたすずは父の再々婚相手の家族と暮らしていた。気丈だが感情を見せないすずに対し、葬儀の打ち合わせで会った亡父の妻・陽子は頼りなく、佳乃はすずの今後について安請け合いする陽子に不信感を抱く。妹2人と違って記憶が確かな幸は父を許せず、夜勤を口実に欠席するつもりだったが、妹からのメールで事情を知ると徹夜を押して急行して葬式に出席する。葬式からの帰り、すずは幸から亡父のことで感謝の言葉をかけられ、堪えていた感情が爆発するように号泣した。幸はそんなすずに「鎌倉に来て一緒に暮らそう」と誘い、すずは快諾した。
そして、四十九日を済ませた翌週に、父を亡くした地を後にしたすずが鎌倉の異母姉たちが住む一軒家に引っ越してきた。異母妹を「四女」として迎えた香田家の新たな共同生活が始まる。
月日が流れ、鎌倉の生活に馴染んだすずの下を金沢から母の妹だという人が訪ねてくる。すずは不倫から始まった両親の関係や自身の出生に関して負い目を感じており、特に自分の母の話題を香田家では避けていた。母の実家は自分達を嫌って縁を切ったと思い込んでいたため、叔母の訪問を受けても今更という気持ちが強かった。しかし叔母から母とその実家の事情を聞いて、お互いを大切に思い合っていたことを知り、遺産相続の話し合いのために姉たちと金沢を訪れた際に伯父から亡母の振袖を贈られる。
さらに月日が流れ、中学3年に進級したすずは高校進学について選択する立場になるが、普通の高校か奨学金を貰える女子サッカーのある高校かを決められず、ヤスこと井上監督を介して打診のあった静岡の掛川学院からのオファーにも戸惑うばかりだった。また、幸、佳乃、千佳の恋愛模様も新たな局面を迎えていた。
登場人物
香田家
香田幸(こうだ さち)
長女。物語開始時、29歳。容姿は黒髪のショートカット。鎌倉市民病院の内科病棟に勤務する看護師。通称は「シャチ」。妹には「愛の旅人」と呼ばれる。
父親を喪い憔悴していた異母妹のすずを気にかけ、鎌倉に引き取った。生真面目で毅然とした性格は教師だった母方の祖母譲りで、実の母・都とは会うたびに衝突し、妹たちと口論になることも少なくない。同じ病院の小児科医・椎名和也と不倫関係だったが、彼とのボストン行きの誘いを断って関係を断つ。その後、師長から打診されていた緩和ケア病棟に異動し、主任に昇格したほか、7巻では同じ病院に勤務する井上泰之と恋仲となった。実は弱いのに飲みたがり泥酔する。交際相手と上手くいかないと果物を大量に買ってくる傾向にある。
千佳が妊娠した事実をたまたま知ったすずに口止めし、千佳が子供の父親である三蔵にすら隠そうとしたことを知って叱責する。
香田佳乃(こうだ よしの)
次女。物語開始時、22歳。容姿はパーマをかけたセミロング。短大卒業後に地元の鎌倉八幡信用金庫で働くOL。当初は信用金庫の窓口業務がメインだったが、3巻目で上司の坂下課長と共に外回りも担当するようになった。通称は「よっちゃん」。他の姉妹からは「愛の狩人」と呼ばれる。
カマドウマが苦手。仕事柄、金に関してシビアだが、その反面、酒癖が悪い上に男運が極めて悪く、昔ホストに100万円貢いだことがある。(『ラヴァーズ・キス』の1年前の)藤井朋章と付き合っていたが、朋章には外資系企業で働いていると偽り、後に互いの秘密が暴露され関係に終止符を打つ。それ以降はしばらく男に縁がなく酒に愉しみを見出していたが、新しく上司になった坂下美海に恋心を抱き、猛烈にアタックして仕事に意欲を燃やすようになり、美海と相思相愛の仲になる。
香田千佳(こうだ ちか)
三女。物語開始時、19歳。容姿は冒頭では団子に結わえていたが、恋人である浜田三蔵店長とお揃いにするため、父の葬儀の前日にアフロヘアーにした。顔にそばかすがある。スポーツ用品店「スポーツ・マックス」藤沢店勤務。
行動は破天荒で一番掴み所のない性格。勤務先が後援をしている縁で地元のサッカークラブ・湘南オクトパスのメンバーと面識がある。口論の頻度が多い幸と佳乃の関係の本質を理解している。すずと特に仲が良く、三蔵の子を妊娠していることを告げた。姉たちに叱責されて妊娠を三蔵に告げ、帰国した彼と結婚した。すずの卒業式の日、息子・走馬(らんま)を出産した。
実写映画版では髪型は変わらず終始シニヨンにしている。一部のシーンでは眼鏡を掛けている。
浅野すず(あさの すず)
本作の主人公。香田三姉妹の異母妹。引き取られた先の香田家での立場は「四女」。
物語開始時、13歳。誕生日は8月7日。容姿は黒髪のショートヘアだったが、鎌倉に来てからボブカットに変えた。基本的に積極的で明るい、しっかり者の少女。
金沢の呉服屋の娘である母親の喜和子が香田家の婿養子だった父親の浅野と不倫関係に陥り、鎌倉から駆け落ちした後に生まれた。母がクモ膜下出血で亡くなるまでは仙台におり、全国大会で優勝経験のあるジュニアサッカーの強豪「青葉JFC」でレギュラーだった。父の葬儀で面識を得た香田三姉妹に引き取られ、鎌倉へ引っ越してくる。亀ヶ谷中学に転校し、「湘南オクトパス」に入団して本来の活発さを発揮するようになる。
当初、裕也に想いを寄せていたが、想いを告げる前に彼女の存在を知ったことで失恋した。その後、徐々に風太の存在が大きくなっていき交際を始める。静岡県の男子サッカーの強豪校・掛川学院から女子サッカー部の新設に伴い、スポーツ特待生枠での入学を打診され、それを受ければ姉達と一緒にいられなくなると悩むが、風太に背中を押されて静岡に行く決心をし、高校進学のために一旦住み慣れた鎌倉を離れる。
母方の親族が母を見捨てたと悪感情を抱いていたが、母が自ら縁を切っていたことを叔母から聞き誤解していたことを知る。
その10年後、番外編「通り雨のあとに」で、守がすずを「昔サッカーをやってた」と言い、元選手だと示唆される。父の十三回忌を機に両親の墓を鎌倉に移すことにし、甥たちを連れて山形に赴き、久しぶりに再会した義弟・和樹に風太と結婚する旨を報告した。その際、顔は描かれなかった。
湘南オクトパス
多田裕也(ただ ゆうや)
尾崎風太(おざき ふうた)
緒方将志(おがた まさし)
坂下美帆(さかした みほ)
鎌倉の知人・同僚
大船のおばちゃん
尾崎光良(おざき てるよし)
藤井朋章(ふじい ともあき)
本作とクロスオーバーしている『ラヴァーズ・キス』の主人公。物語開始時、17歳。産婦人科の藤井病院の息子。風太には「トモちゃん」と呼ばれている。第1話登場時は大学生と偽って佳乃と恋人関係にあったが、後に互いの嘘がばれて別れた。この時期は稲村ヶ崎のマリンショップ「ドルフィン」でバイトをしながら、長谷にある古びたマンションで一人暮らしをしていた。小笠原でダイビングショップを経営している叔母・美佐子は幸の元同僚。
悪い噂が絶えないが、母親が植木屋の息子・岩崎光司と浮気したことで父親とは険悪になり、その後、岩崎に父親のことで強請られていたが、その岩崎が自殺した際に殺したのではと警察に疑いをかけられた過去を持つ。複雑な家庭環境で育った者同士、すずとは共感し合う。本作に絡むのは第4話「花底蛇」までで、その後の消息は風太と光良からの伝言で知らされ、2年後の19歳時点で、大検を受けて東京でバイトしながらの予備校生活を経て、イルカの研究をしている大学講師のサポートをしていて興味を持ったらしく、その先生と一緒に「東京海洋大学海洋生物研究所小笠原鯨類調査団 2013.春」と映っている記念写真が披露された。
浜田三蔵(はまだ さんぞう)
千佳の勤め先・スポーツマックス藤沢店の店長にして彼氏。髪型はアフロヘアー。そのため、風太らにはアフロ店長で定着している。家族構成は不明だが複数の兄がいるらしい。登山が趣味で、過去にマナスル登頂に成功している。登山中に遭難しかけ、凍傷で足の指を3本ずつ失っている。井上泰之の大学時代の先輩。超一流のクライマーであり、自身が登山家としての現役時代に世話になったシェルパのアン・パサンが息子を得た矢先、酔っ払って足を滑らせて増水した川に落ち溺死したことを社長から知らされ、山岳会の仲間である高山と共に追悼式に出席すべくネパールのシェルパの村に向かう。アン・パサンの死の報せを受けた直後、福田に相談した際、何かに悩み迷っていた。千佳が自身の子を妊娠していることを知り、慌てて病院に駆けつけて結婚を申し込んだ。
椎名和也(しいな かずや)
アライ
幸の同僚の看護師。作中では一度も顔を見せておらず、後ろ姿も一度しか描かれていない。同僚からは一貫して苗字のみ、尚且つ片仮名で呼ばれているため、具体的なフルネームやプロフィールは不明である。滅茶苦茶な対応ばかりして同僚に迷惑をかけてばかりしており、だらしなく看護師としての技術も未熟。その一方で患者にとって致命的なミスは絶対にせず、他の者には気付かなかった患者の気持ちを察したり死んだ患者に対しても声掛けを行うなど、彼女のミスは本当に大切なこととそれ以外との落差が激しいことに起因する。そのためか患者からの信頼は厚い。それに気がついた幸の推薦により、幸と共に緩和ケア病棟に異動する。夜勤時に急変・急患を呼ぶと同僚に困惑される。さらに霊感が強いと描かれるが、本人の冗談か不明。
最終巻でも顔の下半分だけであり、最後まで顔が不明だった。
坂下美海(さかした よしみ)
二ノ宮幸子(にのみや さちこ)
福田仙一(ふくだ せんいち)
喫茶店「山猫亭」の店主。二ノ宮の友人で、その死後、海猫食堂のレシピを引き継いだ。尾崎酒店の常連客。関西出身で非常に口は悪いが、配慮に長けている。17歳の時に自動車整備工場を営んでいた父親が首を吊っても自業自得だと悲しむこともなかったが、母親が債権者に頭を下げまくって2年後に亡くなったのだった。援助を頼んで断った父の妹である叔母の息子(自身の父方の従兄弟)を危ない相場に手を出させてヤクザの紐付きの金貸しを紹介して自殺に追い込んだ過去がある。自身の働いていたエベレストのホテルに泊まってみたいという二ノ宮の願いをはぐらかしていたことを悔やんでおり、将志が北鎌倉高校の受験に合格した頃、ヒマラヤを目指して旅立った。
実写映画版では原作と異なり序盤から登場している。映画版では海猫食堂の味を原作とは異なり自分で受け継ぐと言っている。
加藤乃恵留(かとう のえる)
その他
今井都(いまい みやこ)
浅野(あさの)
浅野季和子(あさの きわこ)
陽子(ようこ)
飯田和樹(いいだ かずき)
陽子の連れ子。物語開始時、小学2年生。母がすずの父親と再婚したため、短期間、すずとは義姉弟だった。すず曰く「なんちゃって弟」の1人。義父の死と義姉すずが去った後、1年も経たずに再々婚した母の相手に馴染めず、米沢に移った母と弟・智樹(ともき)と別れて子のない大叔父夫妻に引き取られる。
番外編「通り雨のあとに」で20歳になり、温泉旅館「あづまや」で働く姿が描かれる。弟・智樹が15歳の時に傷害と窃盗で更生施設に入り、退所後に借金を頼んだのを拒絶した直後、智樹がお布施を盗んだと聞かされて真に受け、住職の母子に謝罪した。ただし、その証言をした人物は問題のある人間なので真偽のほどは定かではない。離れていた時間と距離が作った溝があり、弟よりも悪意のある人物の発言を信じてしまう。
一方的に預けられ一緒に大叔父夫婦の養子となった異父弟・守と共に暮らしており、養親の大叔父が亡くなり、大叔母も夫の死で認知症が一気に進んで介護施設に預けるも先は長くない。両親の墓を鎌倉に移したため、すずは2度と山形に来ないだろうと静かに悲しんでいた。
「通り雨のあとに」から繋がるスピンオフ作品『詩歌川(うたがわ)百景』の主人公。
智樹(ともき)
北川十和子(きたがわ とわこ)
北川直人(きたがわ なおと)
作中に登場する名所
- 江ノ島電鉄 - 長谷駅、極楽寺駅
- 稲村ヶ崎
- 佐助稲荷神社
- 二階堂
- 瑞泉寺(紅葉ヶ谷)
- 大塔宮
- 腰越
- 御霊神社
- 腰越漁港
- 江ノ島
- 極楽寺坂切通し
- 光明寺
- 高徳院
- 大巧寺
書誌情報
単行本
- 吉田秋生 『海街diary』 小学館〈flowersコミックス〉、全9巻
- 「蝉時雨のやむ頃」2007年4月26日発売、ISBN 978-4-09-167025-0
- 「真昼の月」2008年10月10日発売、ISBN 978-4-09-167037-3
- 「陽のあたる坂道」2010年2月10日発売、ISBN 978-4-09-167040-3
- 「帰れないふたり」2011年8月10日発売、ISBN 978-4-09-167048-9
- 「群青」2012年12月10日発売、ISBN 978-4-09-167053-3
- 「四月になれば彼女は」2014年7月10日発売、ISBN 978-4-09-16-7058-8
- 「あの日の青空」2016年1月8日発売、ISBN 978-4-09-167073-1
- 「恋と巡礼」2017年4月10日発売、ISBN 978-4-09-167078-6
- 「行ってくる」2018年12月10日発売、ISBN 978-4-09-167088-5
関連書籍
- 『すずちゃんの鎌倉さんぽ』2008年10月8日発売、ISBN 978-4-09-179028-6
- 舞台になった鎌倉の紹介本
- 『すずちゃんの海街レシピ』2015年5月8日発売、ISBN 978-4-09-167068-7
- 作中に出てきた料理の紹介本
- 舞台になった鎌倉の紹介本
- 作中に出てきた料理の紹介本
映画
2015年6月13日に公開。監督・脚本は是枝裕和、音楽は菅野よう子。物語の中心となる“四姉妹”を綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが演じた。
第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品および第39回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。
舞台
舞台化作品が、2017年3月31日から4月2日まで新国立劇場・小劇場で上演。脚本・演出は森岡利行。同年10月6日から8日には紀伊國屋ホールで再演。
2022年3月30日から4月3日まで、東京・シアターサンモールと大阪・ABCホールで同じく脚本・演出:森岡利行で再演予定。