漂流教室
漫画
作者:楳図かずお,
出版社:小学館,
掲載誌:週刊少年サンデー,
レーベル:少年サンデーコミックス,
巻数:全11巻全6巻,
以下はWikipediaより引用
要約
『漂流教室』(ひょうりゅうきょうしつ)は、楳図かずおの漫画。『週刊少年サンデー』(小学館)にて1972年から1974年にかけて連載された。
作品解説
荒廃した未来世界に校舎ごと送られてしまった主人公の少年・高松翔ら、小学校児童たちの生存競争を描いた作品。
担当編集者の「のっけから、ドーンと盛り上がるモノにしてほしい」という要望を快諾した楳図かずおは、以前から考えていた「『十五少年漂流記』を学校ぐるみでやる」という構想を元として、「時間を越えた母子の愛」と当時問題となりつつあった公害をテーマに盛り込んだ。以前からの構想やアイデアがあったため、冒頭からラストまでのかなり細かい部分を頭の中で作り上げてから書き始めたという。楳図は、本作においての編集者との会話は、先述の一言と、膨大な量のメモを見たときの「もうそろそろいいんじゃないの」だけであったと述べている。
作品名は編集会議で決まったが、楳図はもう一つの作品名として「ただいま」を挙げている。ミュージシャンでもある楳図は、後に「ただいま」という曲を発表している。
こうして『週刊少年サンデー』1972年23号から1974年27号まで連載された本作は、1974年に刊行が始まった少年サンデーコミックスに初めて収録された作品でもある。楳図の元々の持ち味である恐怖漫画のテイストに加え、意表をついた物語の展開も読者に衝撃を与え、楳図は本作も含めた一連の作品で1975年に第20回小学館漫画賞を受賞している。
連載終了後に続編の企画が持ち上がることにより、楳図は「最終話に出たロケットで子供たちが宇宙へ飛ぶ」という設定を考えたが、その言葉が浮かんだ時点で違和感を覚えたため、続編執筆の話は取り止めになった。しかし、その設定は後の楳図が「続編」と銘打った『14歳』で描かれることになる。また、楳図は「『14歳』ではなぜ本作の地球が砂漠と化したのかを描いてみたかった」とも語っている。
2007年10月から12月にかけて発売された復刻版には、コミックス版で入れられなかった雑誌掲載時の扉絵や製作時にカットされたページも挿入された。また、2012年に刊行が始まった『14歳』復刻版の全巻購入者特典として、本作の創作ノートが刊行された。
あらすじ
高松翔は、大和小学校の6年生。ある日、翔は母親とケンカをしたまま学校に行き、授業中に激しい地震に襲われる。揺れはすぐに収まったが、学校の外は岩と砂漠だけの荒れ果てた大地に変貌していた。突然の出来事に皆パニックに陥り、教師たちは全員亡くなってしまう。やがて荒廃した世界の正体が、文明の崩壊によって滅んだ未来の世界だと知った子供達は互いに協力し、大和小学校を拠点とした「国」を築くことを決意する。大和小学校国の総理大臣として児童の代表となった翔は、児童たちみんなが家族であるという意識の下、規律正しい生活のもとで困難を乗り越えていけるよう精一杯の努力を重ねようとする。
しかし、飢餓や未知の事象に対する恐怖心からくる狂気や内部対立、伝染病の蔓延、唯一生き残った大人である関谷の暴虐、荒廃した未来に棲息する未来人類の襲撃などの脅威により、児童たちの数は日を追う毎にじわじわと減っていく。更に、学校をタイムスリップさせる原因となった手製のダイナマイトによる爆発事件の犯人が翔であったというデマが流れ、翔は次第に孤立してしまう。
常識を超越した出来事が次々と振り掛かる中、翔と過去の世界を繋ぎ止め、翔にとっての唯一の心の支えとなっていたのは、5年生の少女・西あゆみのもつ不思議な力で時空を超えて母とコンタクトを取れるという、不思議な現象だけだった。周囲が子供達の帰還を諦める中、息子の帰還を信じる翔の母は、西の不思議な力によって未来にいる翔と仲間達に必死の思いで援助の手を差し伸べ続けていた。
その後、自らの意思で学校を出て行った後、息も絶え絶えの状態で戻ってきた女番長の口から「天国」の存在を知らされた翔たちは、学校一帯を覆わんとする高濃度の光化学スモッグの雲から逃れるため、富士山にあるという「天国」の存在に一縷の望みを託し、生き残った児童たちを連れて「天国」を目指して荒野を行進する。迫りくる化学スモッグや広大な地割れを乗り越え、翔たちがたどり着いた「天国」。そこは未来の科学力で築かれたレジャーランドの残骸の残る場所であった。暴走したロボット達の襲撃から逃れた翔たちは、その奥に鎮座するコンピューターから、自分たちが元の世界に戻るための重要な糸口が大和小学校そのものにあることを知る。
しかし、飢餓による苦しみと、翔の存在を疎み対立する同級生の大友らのグループとの抗争の激しさはついに頂点に達し、狂気に駆られた子供達は無残な殺し合いを始めてしまう。理性でこの事態を耐え切った翔は自分が爆発事件の犯人だと告白する振りをしてみんなをおびき寄せつつ学校に戻り、今こそ元の世界に帰ることができる最後のチャンスだと説得する。しかし、大友たちは聞く耳を持たず翔を殺そうと一斉に攻め寄った。
今まさに翔が殺されようとした時、大友はとっさにみんなから翔を庇い、事の真相を激白した。大和小学校を未来に飛ばすことになった大地震は、優等生であることを求め続けられる苦悩から逃れんがために、校舎を吹き飛ばそうとして彼が仕掛けた手製のダイナマイトが原因だったこと。罪悪感のあまり、翔に全ての責任を押し付けていたこと。全ての真相が明らかになった今、翔は大友と固く手を握り合って和解し、再び友情を取り戻す。
「強大なエネルギーの発生によって次元の裂け目を生み出すこと」。それが、「天国」のコンピューターが語った、過去の世界に帰る唯一の手段であった。大友の残したダイナマイトの最後の1本に望みを託し、翔たちはエネルギーの発生源を生み出すべくダイナマイトを爆発させるが、思惑は外れる。爆発の影響で火山活動が活発になってきたことを利用して再び挑戦するも、失敗に終わってしまうのだった。
落胆の中、翔たちが見たものは荒れ果てた世界に垣間見えた、命の再生の片鱗であった。その様を見た翔は、「荒廃した世界の復興こそ自分たちが未来世界に来た意味だった」と結論付け、ここに留まることこそが自分たちの選ぶべき道なのだとみんなに力強く語る。そして、過去の世界から母親の手で送られてきた援助物資により、過去と未来の世界に繋がりが生まれたことに希望を見出した翔たちは、過去への帰還を諦める代わりに、爆発に巻き込まれ一緒に未来に来てしまった幼稚園児のユウちゃんをなんとか過去の世界に送り届けようとする。幼いながらも、悲惨な未来の姿をその目で見続けてきたユウちゃんは、未来の地球を絶対に荒廃させないよう努力することを翔たちに誓い、みんなに見守られながら過去の世界へと帰っていった。
翔が未来に来てから書き綴ってきた日記はユウちゃんの手から翔の母親へと手渡され、それによって未来と過去を繋ぐ架け橋が生み出された。未来の世界で息子が元気に生きていることを知った翔の母は、天を見上げて未来の世界への希望に想いを馳せるのだった。
登場人物
主要人物
高松 翔(たかまつ しょう)
主人公。大和小学校6年3組。元気で明るいごく普通の少年。スポーツ刈りにした頭が特徴。血液型はAB型。悪戯好きで勉強は苦手(但し、知識や判断力には優れており、頭は良い)、親にも迷惑をかけてばかりいたやんちゃな子供だったが、荒廃した未来の世界に飛ばされてからは現状をいち早く理解し、皆を纏めあげ、普段の人望の厚さもあって大和小学校国の総理大臣に選出される。統率力と生来の責任感の強さから皆を引っ張り、下級生達の兄として、また幼いユウちゃんの父として行動する。未来に漂流する前では母と喧嘩別れになってしまったが、欲しかった未来カーを我慢して母へ腕時計をプレゼントしようとするなど基本的に母に対する敬慕は深い。下級生の目撃証言により(他にも何者かが流したデマもあって)漂流の原因を作った犯人にされる。『漂流教室』の物語は漂流中に彼がつけていた日記という体裁で語られていく。運動神経も良いらしく運動会ではリレー選手にも選ばれていた。
終盤で大友と和解した後、現在へ帰還するため、大友の残した最後のダイナマイトでタイムスリップを敢行するものの失敗してしまう。落胆の中、世界再生の片鱗を未来世界の中に見出したことで、自分達が未来にやって来た意味が『荒廃した未来を再生させるためだ』という結論に行き付く。そして彼は生き残った仲間と共にこの世界に生きる決意を固める。
大友(おおとも)
大和小学校6年3組のクラス委員長。成績優秀で、顔も中々整っている。翔によって大和小学校国の厚生大臣に選ばれ、翔に次ぐNo.2的な立場を得る。個人的感情や考え方の違いから対立し、翔と決裂した後は旧校舎を拠点に別グループを編成し、翔と真っ向から対立するが最終的には友情を取り戻し、現代へ戻るために尽力する。冷静で合理的な判断を下し、自己犠牲の精神もある一方、物事が順調に運ばなかった場合に大声を上げて八つ当たりしたりと堪え性がなく、助からないと判断した仲間を躊躇なく見捨てたり、邪魔な者には冷淡にあしらう等、翔との決裂もこの性格が災いして起こった。しかし漂流以前の翔との関係は良好で、度々翔の家にも遊びに行っていた。実は日々自我を殺して優等生を演じることを死ぬほど苦痛に感じており、そこから学校を無くしてしまおうと職員室にダイナマイトを仕掛け、学校を未来へタイムスリップする契機を生み出した張本人である事が物語の終盤になって判明した。その罪の重さに耐え切れず、疑惑の掛かった翔に罪を擦り付けて平静を保っていた。やがてそれが殺し合いに発展する結果になり、更なる罪悪感に苦しみ続けていたが、終盤で全てを告白し、翔の言葉に救われる。また密かに川田咲子に恋していたが、彼女が翔に好意を寄せていた事も翔へのコンプレックスの一端となっていた。和解後、プロポーズとも受け取れる言葉で想いを告げる。大学生の兄が一人いる。最後まで母に思われている翔とは対照的に、いともあっさりと母親に見捨てられてしまう。翔と同じく運動神経抜群で、運動会のリレー選手の実績がある。小説版では下の名前は「正雄」(まさお)になっている。
川田 咲子(かわだ さきこ)
大和小学校6年3組。ヒロイン。クラスでの席は翔と隣同士。男勝りでしっかりした性格。やや上で縛ったポニーテールが特徴。血液型は翔と同じAB型。翔に好意を持っており、どんな時でも翔に従って行動する。しかしその心理は何処か恋愛感情というよりも執着心に近いものがあり、大友の槍から翔を守ろうとするのも、ユウちゃんの母親的存在として行動するのも、全て翔への想いのためである。翔が不在の時や倒れた時は、彼に代わって皆の指揮を取ることが多い。運動神経は良く、リレーの選手にも選ばれていたようだ。また戦時下のニューギニア島の逸話、ペスト、盲腸などの知識も豊富で頭が良い。「川田さん」「咲子さん」「咲ちゃん」など様々な名で呼ばれるが、翔からは「咲っぺ」と呼ばれている。小3の弟がいる。最後まで生き残ったが、終盤で自分の翔への想いが原因で元の世界に戻れないと告げ、そのショックで自殺を図ろうとするが大友に止められた。
西 あゆみ(にし あゆみ)
大和小学校5年生。この物語のもう一人のヒロイン。容貌はとても美しく、咲子とは対照的に大人しく物静かな性格。幼い頃に転んで脊髄を痛めたために足が不自由で、松葉杖を常備している。その所為で皆から除け者にされ、一人で空想ばかりしていた。そのおかげか、自身の体を通じて現代にいる翔の母・恵美子と翔の意思疎通を媒介する超能力のような力が身についており、唯一、未来と現代を繋ぐ架け橋となって、翔たちが危機を脱する決め手を何度も作り出すことになった。最初は儚げでか弱かったが、翔の盲腸手術の時に自ら助手として名乗り出るなど、徐々に強靭な意志を見せるようにもなっていく。現代との交信は体力を著しく消耗するようで、物語の後半ではほとんど意識が戻らない状態に陥っていた(過去と未来とを繋ぐ交信超能力は眠った状態でのみ発現されるが、最終盤で超能力を使い果たすことで目覚めの予兆を見せていた)。出身は長野県。両親は既に他界し、東京の叔父の元で暮らしていたものの叔父からも白目で見られる辛い日々を送っていた。二年生の頃仲田と同じクラスになった事があり、差別されていた自分を庇ってくれたことから、怪虫の生みの親として敵視される仲田を庇った。最後まで生き残った。
小野田 勇一(おのだ ゆういち)
3歳児。未来の世界では本人がフルネームを言えなかったために「ユウちゃん」とのみ呼ばれている。漂流前日に翔と出会い、次の日も遊ぶ約束を守って校庭の砂場にいたため、漂流に巻き込まれる。ただし行方不明者には含まれていない(恐らく小学校に来ていた事が目撃されなかったため)。お屋敷町に住んでいる。未来に飛ばされた当初は幼児らしい多少我侭な面も見せており、終盤では他の子供達が未来世界で生きる決意をした後も現代に戻りたがっていた。漂流中の幾多の困難を翔たちと共に潜り抜けるうちにある強い決意を胸に抱き、終盤で子供達の中で唯一、現代に帰還する事となる。苗字の由来はフィリピンから終戦後30年目にして日本に帰国した元陸軍少尉の小野田寛郎。
関谷 久作(せきや きゅうさく)
「長吉製パン」というパン屋、及び学校給食全般の納入をしている。年齢は38歳。学校給食を卸しに来たところ漂流に巻き込まれる。漂流以前は優しい人物を装っていたが、漂流後は残忍醜悪な本性を現し、学校を支配しようと目論む。「学校ごと未来にタイムスリップした」という状況を信じず、未来世界は「荒廃した現代」だと思っており、アメリカ軍の救助を待っている。後に怪虫に襲われた時、余りのショックで一時幼児退行を起こすが、あるきっかけで再び意識を取り戻し、何度も子供たちの足を引っ張ることになる。最後の“大人”であった若原がいなくなってからは事実上作中における唯一の大人になる。暴行の多くは己の欲望を満たすためであり、狂騒的に殺人に耽る子供達とは対照的でもある。最後まで高松たちの足を引っ張る作品中最大の悪役とでもいうべき存在だったが、ユウちゃんが現在に戻る帰還の儀式を妨害しようとした際、馬内によって顔面をつかまれ両目をつぶされ、地面に後頭部を何度も打ちつけられ、さらに首を絞められて妨害を止められる。結局現代に帰還することは叶わず、高松たちと共にこの世界に取り残されてしまった。生死は不明。
実在の漫画家、関谷ひさし(本名、関谷久)から取ったと推測される。
6年3組
柳瀬(やなせ)
山本(やまもと)
池垣(いけがき)
吉田(よしだ)
大臣
我猛(がもう)
大月(おおつき)
柴田(しばた)
石田(いしだ)
その他の生徒達
川田 たけし(かわだ-)
安堂(あんどう)
辰巳(たつみ)
八田(はった)
女番長
大和小学校6年生。小学生なのに化粧をし、吉祥寺や新宿の街をうろつくかなりませた不良少女。本人は「番長」と呼ばれるのが嫌いで「お姫様」と呼ぶように強要する。ケンカの腕も相当に強い。トメ子とハツ子という2人の子分を常に脇に従えている。学校を支配しようと目論み、翔と総理大臣選挙で対決するが1票差で敗れ、トメ子とハツ子、その他女子2人の4人と共に学校を去った。その後見るも無残な姿で一人学校に帰還し、「富士山の向こうに天国がある。」と言い残し、死亡した。トメ子とハツ子、その他の2人はどうなったのかは原作では不明だが、小説版では初子の腐敗した死体が「天国」で転がっていた。
漫画版では本名不詳だが、小説版では高木 摩耶(たかぎ まや)という名前になっている。
仲田(なかた)
坪田(つぼた)
橋本(はしもと)
盲腸になった事のある男子児童
内藤(ないとう)
教師達
関谷は#主要人物を参照。
若原(わかはら)
未来に生きる者
怪虫(かいちゅう)
未来人類(みらいじんるい)
大和小学校が飛ばされた世界に闊歩する人類。カマドウマのような形態で、四足歩行をし、背中に大きな目玉が一つある。指は三本で、鉤爪のような爪を持つ。テレパシー能力を有しており、思っている事は喋らなくとも相手に伝わる。死ぬと、他の者が亡くなった者の記憶を必要な部分だけ受け継ぐ。実は現生人類が新しい癌の薬を服用した事によって突然変異したもので、あまりの奇怪な姿から現生人類から迫害されたため、現生人類に強い恨みを持つ(小説版では迫害の内容が少しだけ記載されている)。環境汚染などで現生人類が滅び去った後、地上を支配する。知能は高く、「過ぎ去った物に対する儀式」と称して電車を動かしたり、8ミリ映画を映したりしていた。作中では備蓄食料に発生したキノコを食べた児童数名が四つん這いで移動するようになったうえ背中に目玉ができ、未来人類と同じような存在になっていってしまう(しかし、人間としての自我は残っており、翔たちを逃がすために未来人類と戦う姿が描写されている)。
生存者
未来ヒトデ
現代にいる者
翔の父親
馬内 守也(ばない もりや)
大友の母
大木(おおき)
プロ野球選手。所属チームは明らかでないが、ユニフォームには「GIAN」と書かれている。背番号は「6」。翔や信一は彼の大ファン。どのようなピンチでも切り抜ける逆境に強い選手らしい。だが実際には体力に限界が来ており、人々のイメージを壊さないため引退を考えていた。死球を頭部に受けて運ばれた病院で、誘拐犯から子供を助けた際、誘拐犯に首を刺され絶命。その遺体は病院にてミイラとして永久保管される事となる(原作では理由不明だが、後述の小説版ではその旨が語られている)。その際に駆けつけた恵美子が未来でペストに侵されている翔達を救うため、彼の遺体にペストに有効なストレプトマイシンを詰めた事で、未来の翔たちを救うことができた。
構造物
大和小学校
ホテルケイヨー
東京駅
富士大レジャーランド・天国
小説
原作:楳図かずお、著:風見潤。原作では語られなかった詳細が、一部で科学的考察も交えて記載されている。また、原作では名字のみだった多くの登場人物の下の名前が明らかになっている。
楳図はノベライズについて、「文章にするのではなく、小説にしてほしい」という注文をつけ、翻訳もしていた風見に直接白羽の矢を立てたという。風見はノベライズに当たって、大和小学校が位置する港区を歩き回ったり、友人の作家である久美沙織と討論をするなどして、第1巻の出版までに2年を費やしている。
- 『漂流教室1 時間漂流篇』角川文庫、1985年 ISBN 4-04-160801-5
- 『漂流教室2 怪虫篇』角川文庫、1985年 ISBN 4-04-160802-3
- 『漂流教室3 黒死篇』角川文庫、1985年 ISBN 4-04-160803-1
- 『漂流教室4 邪教篇』角川文庫、1986年 ISBN 4-04-160804-X
- 『漂流教室5 再生篇』角川文庫、1986年 ISBN 4-04-160805-8
追加シーン・原作との差異
- 現代(学校が消失した日)は、1985年6月28日。時間螺旋理論に気付いた信一によって、未来はその137年後の2122年と特定されている。
- 出だしは小説オリジナルになっており、原作での最初の言葉は小説での大友との一時決別時に一部流用されている。
- 翔が未来カーを買うとき原作は実物を見た途端思いとどまるものの、小説ではさきに買われてしまったため(買ったのは恵美子)憤慨するもそんなに必要ではなかったことに気づく。
- 大友がダイナマイトを設置するシーン(時限爆弾)。
- 給料泥棒と教師の格闘シーン。
- 翔たちが愛川を助けに行く際の「全員死ぬことを望んでいます」発言をしたのが大塚先生であることがわかる。
- 若原の殺害シーンの詳細。
- 西あゆみが長野に行こうと仲田に引き止められながらも校門をでるシーン。
- 女番長が翔に「未来に来たのはあんたのせい」と突っかかる訳として名字に「た」のつく人のせいで未来にきてしまったという下級生のデマに対し女番長が「あたしのせいかい」ときっかけを暗示している。
- 怪虫襲来の際下級生に嗅がせたのが原作ではクロロホルムであるのに対し小説ではエーテルになっている。
- 原作での恵美子の野球グラウンド乱入シーンがカットされている。
- 大木が病院にてミイラ化して永久保管されることになった訳として、大木が「野球ではただの数字しか残らないから何か後世に残るものが欲しい」と馴染みの病院長に相談した所「じゃ、ミイラにでもするかね」といったのが始まりだったことがわかる(最初冗談のつもりだった)。
- 地球が滅亡した訳を原作でははっきりと書かれなかったが、小説では公害や環境破壊、さらに核戦争が起こってしまったがためにこうなってしまったことが明言されている。
- 女番長が天国から大和小学校に帰還するシーン(その時関谷とニアミスしている)。
- 小説版オリジナルキャラクターとして、東山久司(ひがしやま ひさし)が登場する。SF研究家であり、大和小学校の消失事件を独自に調査していた所を恵美子に出会う。
- 馬内の脳が欠けたシーンを原作ではTVで全国に流すが小説では東山の口から恵美子に語られる。
- なぜ恵美子がTV局に潜入できたかが小説版ではかなり詳細が語られている。なお、乱入する音楽番組は、小説版執筆当時に放送されていた『ザ・ベストテン』を意識した描写になっている。
- 未来に降り立ったロケットは、スペースシャトルに変更されており、恵美子が何十年もかけて寄付されたお金を貯めて買った事がわかる。ロケットも未来の大和小学校に降りるようにプログラムされていた(一度現代で打ち上げ宇宙に留まり100何年後に降りるようになっていた)。
漂流教室・UMEZZ PERFECTION!版
2007年10月より12月にかけて、月刊IKKI協力の下、ブックデザイナー・祖父江慎の手で新たな装丁が施され、UMEZZ PERFECTION!第8弾として『漂流教室』が出版された。全三巻(ISBN 978-4-09-181498-2 、ISBN 978-4-09-181499-9、ISBN 978-4-09-181500-2)。
主な特徴として、
- 装丁のテーマは『バイブル―――分断された絆』。
- サンデー掲載時に描かれた扉絵が随所に挿入されており(タイトル等は省かれている)、セリフも可能な限り連載当時のものを再現している。
- コミックス出版時にカットされた連載当時のページや絵を出来る範囲で復活したほか、当時制作されながら、雑誌等には掲載されなかった未使用のカットを収録。
- 一巻分のページ数は700ページを超える。しかし全三巻分の厚さは12cm程。
- 一冊ごとのページ数表記に加え「全話通しページ数」を表記。総ページ数は2200ページを超える。
- 出版時のミスページも修正済み。
- サンデーコミックス十一巻分の話を余す所なく詰め込んである。
- 第一巻のテーマカラーは赤。第二集のテーマカラーは緑。第三集のテーマカラーは青。
- カバーには空押し加工で『漂流教室』のタイトルが入る。
が挙げられる。
映画
『漂流教室』
1987年、劇場公開作品。東宝東和配給。原作者である楳図かずおや東宝特撮の名監督でもあった本多猪四郎も出演している。
重い内容の原作に対し未来志向の前向きな作品となっており、舞台が神戸のインターナショナル・スクールに変更される、未来人類のデザインや描写が全く違うなど余りにも原作とかけ離れたストーリーだったため、原作者の楳図は自宅(まことちゃんハウス)の縞模様の外壁に怒った近隣住民と同じくらい怒っているといわれる(試写以来、一回も見ていないという)。大林宣彦のフィルモグラフィーの中でも最も影の薄い映画と評される。
当初はオーストラリアの砂漠でロケーション撮影するはずであったが中止となり、全てスタジオ撮影になった。スタジオに大量の砂を持ち込んで、それが教室に流れ込んだりするシーンが特に大変だったという。背景はマットペインティングによるが、『日本特撮・幻想映画全集』(勁文社、1997年)では砂漠の広さを表現できず閉塞的な画面になったと評している。
下記の通り脚本は橋本の個人名義だが、実際は完成した脚本を、大林が全面的に書き直した。怪物がピアノを弾くシーンでは大林が着ぐるみの中に入り、自身が作曲した曲を演奏している。大林はこの怪物の描写にはドラキュラ伯爵をイメージしたという。
大林は「完全な請負仕事で、職業監督に徹した」と回想している。
当時、受験勉強のために俳優業を休業していた林泰文を大林が「お前は俳優としていいものを持っているから、その時期に映画界と離れて過ごすのは人生にとって損失になる。映画も受験も両方やればいいじゃないか」と説得してメインキャストに抜擢した。本作を通しての経験で、林は英語を上手く話せるようになり、英会話留学を志すきっかけとなった。
ビデオテープ、レーザーディスク、VHDディスクで発売されたが廃盤。その後はソフト化されていない。
キャスト
- 高松翔 - 林泰文
- あゆみ - 浅野愛子
- マーク - トーマス・サットン
- ルーニー - ケン・スチュワート
- ロブ - ロバート・マカフィー
- 久和みどり - 南果歩
- タガート - トロイ・ドナヒュー
- 勇一 - 佐々木一成
- 勇一の母 - 原田貴和子
- 関谷 - 尾美としのり
- 高松恵美子 - 三田佳子
- 高松芳男 - 小林稔侍
- 大和島博士 - 高橋悦史
- 藤木達也 - 北詰友樹
- ピギィ - マーカス・ドーブ
- ベルナルド - バジェラ・ボザージ
- 警察官 - 楳図かずお、鶴田忍、栩野幸知
- 高松家のお爺ちゃん - 本多猪四郎
- 高松家のお婆ちゃん - 本多きみ
スタッフ
- 監督:大林宣彦
- 原作:楳図かずお
- 脚本:橋本以蔵
- 潤色:大林宣彦、石上三登志、小倉洋二
- 音楽:久石譲
- 「Love Theme」作曲:大林宣彦
- 主題歌:今井美樹「野性の風」
- 作詞(日本語版):川村真澄
- 作詞(英語版):トミー・スナイダー
- 作曲:筒美京平
- 編曲:久石譲
- 撮影:志満義之、宝田武久
- 美術:薩谷和夫
- 音響デザイン:林昌平
- 録音:稲村和巳
- 照明:望月英樹
- 音響効果:柏原満、伊藤克巳、今野康之、神保大介
- 編集:小川信夫、大林宣彦
- 助監督:小倉洋二、吉田多喜男、辻井孝夫
- アニメーション:粟飯原君江
- ビジュアルエフェクトスーパーバイザー:島村達雄
- ピクトリアルデザイン:島倉二千六
- 特殊造型クリエイター:市田喜一
- スタジオ:東宝スタジオ
- 音楽録音:アバコクリエイティブスタジオ
- 現像:IMAGICA
- ロケ協力:神戸市、香りの家オランダ館 ほか
- 製作総指揮:中村賢一
- 製作者:高木盛久、山科誠、山下輝政
- プロデューサー:中島忠史、末吉博彦、篠島継男、莟宜次、小久保章一郎
- 企画:莟宜次
- 企画協力:渡辺繁、木村真章
- 協力プロデューサー:大林恭子
- 企画協力:鎌倉スーパーステーション(ケイエスエス)
- 製作協力:IMAGICA、読売広告社、コダック・ナガセ
- 製作プロダクション:CCJ
- 製作:日本テレビ放送網、バンダイ、東和プロダクション
- 「Love Theme」作曲:大林宣彦
- 作詞(日本語版):川村真澄
- 作詞(英語版):トミー・スナイダー
- 作曲:筒美京平
- 編曲:久石譲
『漂流教室 (DRIFTING SCHOOL)』
1995年公開。アメリカと日本の共作ではあるが日本では劇場公開されておらず、オリジナルビデオ作品として発売。
アメリカの高校が舞台となった。米軍が秘密裏に保持していた殺人衛星の誤射が物語の発端になっていることを始め、原作との違いが非常に多い。(製作当時はまだ初歩的なものであったが)CGが部分的に使用されている。
キャスト (DRIFTING SCHOOL)
- トーマス・キング:ビリー・ドラゴ
- ジョン・ロビンソン:ロン・メレンデス
- ピーター・ジャクソン:ババ・スミス
- エミリー・スコット:キャロライン・ウィリアムズ
- ポール:アンドリュー・バラック
- サム:ヒル・ハーパー
- スターン将軍:ヘンリー・シルヴァ
- アンドリュー・モーガン:マイケル・カラン
- ナンシー:シャノン・エッシャー
- サキコ:藤田めいる
- マック・オーヨモ:ヤストミ・フジワラ
- マツオ:小西博之
- ケニー・スミス:ドレイク・ベル
スタッフ (DRIFTING SCHOOL)
- 監督:J・J・ミムラ
- 原作:楳図かずお
- 脚本:エリック・シャーマン、伊藤秀裕
- 撮影:チューイ・エリゾンド
- 音楽:ソムトウ・スチャリトカル
- セカンドユニット監督:渡辺武
- Co.プロデューサー:ジャゴウ・ブレスラー
- プロデューサー:ジュン・チャン、イーヤン・チョイ
- 製作総指揮:伊藤秀裕、末吉博彦
- 製作:Tri Vision Entertainment
テレビドラマ
- 『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』
- 放送期間:2002年1月9日 - 3月20日
- 放送時間:毎週水曜日 21:00 - 22:00
- 放送期間:2002年1月9日 - 3月20日
- 放送時間:毎週水曜日 21:00 - 22:00
主演に教師役の常盤貴子と窪塚洋介を据え、フジテレビ系列で放映された。全11話。DVDは全6巻。
なお、1980年代にもフジテレビ系列でドラマ化の計画があったが、諸事情により『ピーマン白書』に企画変更された。
ラジオドラマ
- 『漂流教室』
- 放送期間:1985年11月5日~11月15日 (全9回)※11月4日(月)は特別番組のため休止。
- 放送時間:月〜金曜日 21:40 - 21:55
- 脚色:佐々木守、演出:笹原紀昭
- 出演:菊地英博,岩崎愛,渡部猛,宗形智子,楳図かずお、他
- 放送期間:1985年11月5日~11月15日 (全9回)※11月4日(月)は特別番組のため休止。
- 放送時間:月〜金曜日 21:40 - 21:55
NHK-FM「公園通り21」内のラジオドラマコーナー「アドベンチャーロード」にて放送された。
舞台
『漂流教室〜大人たちの放課後〜』のタイトルで上演された。物語の舞台は蝮谷高校(夜間部)に変更されている。
期間・会場
会場:よしもとプリンスシアター
出演者
大友正雄 - 宮下雄也(RUN&GUN)
川田咲子 - 小野真弓
西あゆみ - 伊藤修子(拙者ムニエル)
我猛一平 - 松本慎也(Studio Life)
若原健一 - 山田将之
柳瀬弘之 - 篠崎友(とくお組)
畑佑紀 - 北川仁(とくお組)
池垣純二 - 加藤啓(拙者ムニエル)
関谷久作 - 川下大洋 (Piper)
スタッフ
脚本・演出 : 徳尾浩司(とくお組)
美術:泉真
照明:日高勝彦(日高照明)
音響:東山あつ子、筧良太(アラベスク)
舞台監督:山岡均
演出助手:相田剛志
衣裳:遠藤百合子
ヘアメイク:大宝みゆき
制作:藤井麻美(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)
制作助手:保坂綾子
プロデューサー:仲良平(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)、高田雅士(高田制作所)
企画・製作:(株)よしもとクリエイティブ・エージェンシー
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