狂骨の夢
以下はWikipediaより引用
要約
『狂骨の夢』(きょうこつのゆめ)は、京極夏彦の長編推理小説・妖怪小説。百鬼夜行シリーズ第3作である。
文庫版刊行の際に、400枚以上の加筆訂正が行われた。
書誌情報
- 新書判:1995年5月、講談社ノベルス、ISBN 4-06-181844-9
- 文庫判:2000年9月、講談社文庫、ISBN 4-06-264961-6
- 分冊文庫判:2005年8月、講談社文庫、 ISBN 4-06-275156-9、 ISBN 4-06-275157-7、 ISBN 4-06-275158-5
- 四六判(愛蔵版):2006年10月、講談社、ISBN 4-06-213627-9
あらすじ
関口巽は大物小説家、宇多川崇からとある相談を受ける。それは、記憶喪失の妻・朱美の、海鳴りと甦ってくる記憶と殺した夫への恐怖に関するものだった。彼女は自分が記憶を失う以前に、前の夫を、首を切って殺してしまったのではないかという疑団にさいなまれていた。
伊佐間一成は、逗子の海岸で朱美と名乗る女性と出会う。折からの冷え込みで体調を崩していた伊佐間は、朱美にいざなわれるまま彼女の家へとあがりこむ。酒に酔うまま、朱美は過去に同じ店で奉公していた女性を殺してしまったと告白する。
同じく、逗子にあるキリスト教会の居候・降旗弘と牧師の白丘亮一は、ある日訪れた宇多川朱美から懺悔を聞く。彼女は、以前首を切って殺した夫が首をつなげて甦り、自分に会いにくるという。そしてその度に、絞め殺し、首を切っていると言うのである。
警視庁の木場修太郎は、二子山集団自殺事件を捜査する傍らで、逗子湾金色髑髏事件(生首殺人事件)に興味を持つ。伊佐間が再び逗子を訪れたのと時を同じくして、宇多川崇が殺され朱美が逮捕される。生前の宇田川と直前まで会っていた関口は、木場に相談を持ち掛けるが、そこに金色髑髏事件の証拠品をたどって神奈川警察の石井警部が訪問してくる。金色髑髏事件の証拠と思われた物は、宇田川の遺留品であった。木場は石井に話をつけ、相互の情報提供を持ち掛ける。
登場人物
中禅寺 秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)
関口 巽(せきぐち たつみ)
榎木津 礼二郎(えのきづ れいじろう)
伊佐間 一成(いさま かずなり)
木場 修太郎(きば しゅうたろう)
逗子の住人
宇多川 朱美(うだがわ あけみ)
崇の妻。27歳。祝言も入籍もしていないので正式には夫婦ではなく、所謂内縁の妻の関係。8年前に記憶を失い利根川を流れてきたところを宇多川に救助され、彼の調査で記憶を取り戻した後で夫婦となる。
戦後は東京へ引っ越すが、戦中に自分に尋問したと云う憲兵が住居を訪ねて来たため4、5回転居を繰り返し、都内では見つかると3、4年程前に逗子の葉山側へ引っ越してきた。だが、その頃から海鳴りの音を聞くと「骨になる」夢を見るようになり、2箇月前、先夫の死亡記事を見つけて以来、不在証明が確実な筈の先夫の殺害の様子などの過去を「過剰に」思い出し、さらには行ったはずのない千葉県九十九里の一松海岸で生まれた他人の記憶まで蘇る。様々な怪現象に悩まされた末に「飯島基督教会」へ相談に現れる。
宇多川 崇(うだがわ たかし)
小説家。幻想小説の大家。57歳。関口曰く「乱歩の蘞味と鏡花の品格を併せ持ち、虫太郎の魔境に露伴を遊ばせる」ような独特の作風で高い評価を得ている。文化藝術社主催「本朝幻想文学賞」創設にも尽力した。大柄で貫禄はあるが、太ってはおらずどこか神経質で危なっかしい印象を与える。取材や打ち合わせ、缶詰めで、月の半分は外泊し、生活も夜型。
理屈では理解できるが政治的な思想を持たず、国体の提灯持ちのような文章は書く気になれず、共産主義者や無政府主義者にも与することなく、戦中は作家を休業して故郷の埼玉県本庄に小さな家を借りて住んでいた。そして8年前、利根川で溺れていた朱美を助け、記憶を取り戻すために尽力し、そのまま惚れ込んで後妻に迎えた。
逗子に越してからは妻が記憶を過剰に取り戻してしまい、12月1日に神葬の席を借りて妻の様子がおかしいことを関口に相談。8年前の佐田申義殺害事件が妻の精神的不調に関連していると考え、担当の小泉に紹介された関口と敦子を介して猟奇殺人の真相究明を榎木津に依頼しようとする。榎木津への仲介と精神神経科医の紹介を取り付けて帰路に着いたが、その翌日に殺害される。
4年程前に執筆した「井中の白骨」は、平田篤胤の勝五郎再生記聞と番町皿屋敷を足したような作品で、昭和23年が舞台の『中禅寺先生物怪講義録』の1話でも書籍が登場している。
降旗 弘(ふるはた ひろむ)
白丘 亮一(しらおか りょういち)
朱美の過去
佐田 申義(さだ のぶよし)
鴨田 周三(かもた しゅうぞう)
二子山集団自殺事件の関係者
山田 春雄(やまだ はるお)
逗子湾金色髑髏事件の関係者
田淵(たぶち)、舟橋(ふなはし)
用語
二子山集団自殺事件(ふたごやましゅうだんじさつじけん)
現場が昭和8年に「死のう団」が野宿をしていたのと同じ、自刃に使われた短刀の柄に16弁の菊花紋がついていた、などのことから様々な憶測を呼ぶ。
しかし、当時の神奈川県警は柚木夏菜子誘拐事件の捜査に追われて深刻な人手不足で、解決を見ないまま次々続けて事件が起きたせいで、徹底して機動力を与えられないと云う結果になった不幸な事件であり、管轄外の木場と長門も身元確認に駆り出され、遺体の身元の特定に2箇月以上を要することとなった。
逗子湾金色髑髏事件(ずしわんこんじきどくろじけん)
最初は9月23日に逗子湾に浮かぶ金色の髑髏の目撃情報が記事になり、2日後には浜に金色髑髏が打ち上げられているのが見つかったものの、波に攫われたのか回収には失敗した。そして11月半ばには普通の髑髏が船上から目撃され、続いて肉片や髪の毛をつけて漂う生首も確認、12月1日には逗子湾に生首が打ち上がる。
鴨田酒造
桃囿館(ももそのかん)
町の中心から外れ、海からも離れた場所にあるので、冬場は観光客が宿泊せず、専ら仕事で長期間逗留する客を相手に商売している。
聖寶院文殊寺
脳髄屋敷
建物と周囲の地形を人間の頭に見立てており、妾宅が右脳、本宅が左脳、切り通しが脳梁、周囲を囲む山が頭蓋骨となっている。幼少期に事業に失敗して借金の形で手放した北鎌倉の生家の模造品で、間取りから庭の植込みや飾り井戸、庭石に至るまで全てが記憶とそっくり同じに造られており、間取りがあべこべにならないように敢えて左右対称にはしていない。
椿の死後に売却され、現在はそれぞれに宇多川家と一柳家が住んでいる。
漫画
志水アキにより漫画化され、前作『魍魎の匣』に引き続き「コミック怪」で連載された。
書誌情報
角川書店、怪COMICより発売。
関連作品
- 後巷説百物語 - 「五位の光」が本作と関連している。