狭き門
題材:いとこの恋愛,
以下はWikipediaより引用
要約
『狭き門』(せまきもん、原題:La Porte étroite、1909年)は、フランスのノーベル文学賞受賞者アンドレ・ジッドによる小説である。
名称の由来
題名の「狭き門」は、新約聖書のマタイ福音書第7章第13節にあらわれる、イエス・キリストの言葉に由来する。狭き門より入れとは、神の救いを得るためには、それ相応の努力をしなければならないことを指す言葉。本当に自分にとって価値ある成果を得たいならば、困難な道を歩んでいくべきだ、ということ。キリスト教で、天国に至る門は狭く道は細いが、神の救いを得るには、苦難の道を歩まなくてはならないことをいう。
英語訳は、
転用
「狭き門」は、転じて、競争が激しくて入学・就職などがむずかしいこと、また、そのようなはいることが非常にむずかしいところを指す。
概要
物語の語り手であり主人公でもあるジェロームは、2歳年上の従姉であるアリサに恋心を抱く。アリサもまたジェロームを愛しているが、彼女の妹のジュリエットもまたジェロームに好意を抱いていた。 しかし、ジュリエットと周囲の人々は両者が結ばれることに好意的であるも、神の国に憧れを持つアリサは、妹への遠慮もあり結婚をためらい続ける。それは、二人の思いを知ったジュリエットが身を引いてもなお変わらなかった。
アリサは最終的に地上での幸福を放棄し、ジェロームとの結婚をあきらめてついには命を落とす。残されたジェロームは、アリサが遺した日記に綴られた自分への熱い思いを胸に、『全てを忘れてしまうまで』一人生きていくことを決める。
この作品において、アリサの自己犠牲の精神は美しく描かれている。しかしジッドはこの作品を通して、アリサのような自己犠牲に対する批判を行った。
ジッド自身のこの作品への言及
1894年10月13日 日記
苦悩の可能性。熱愛できなかったと思っている魂。『マドモアゼル・クレールの死』
1907年6月22日 日記
この惨めな作品を完全にはじめから書きなおすのはこれで4度目。これまでに苦しみに苦しんだ作品だ。[中略]だが、1日も終わる頃、全力をふりしぼったおかげで、この形の定かでない塊を動かせたような気がした。
1908年10月17日 ポール・クローデルへの手紙
ぼくはこれを書くのに長い年月をかけました。(最初に考えついたのは1881年で、題は『正しくこの世を去ることについてのエッセー』とするつもりでした。)この小説のアイデアはぼくにこびりついて、久しく離れませんでした。読んでくだされば、これがたんなる文学的主題を扱ったものでないことは、きっと分って頂けるでしょう。[中略]それから、この書物のプロテスタンチスムが[カトリックである]あなたをひどく怒らせないように念じています
。
1908年10月18日 日記
15日には『狭き門』を完成した。 - 16日、口髭を剃り落とす。
1913年3月 日記
昨夜『狭き門』を50ページ読み返す。この作品を読み返すたびに、言葉に尽くせない感動を覚える。
1914年6月30日 日記
『抜け穴』に関するスーデーの論説とリュシアン・モーリの論説を同時に読んだ。[中略]だが私の『狭き門』が批判的な作品ということがすぐに分からなかったとはまったく驚き入る。
1949年 ジャン・アムリューシュ(フランス語版)とのラジオ対談
私は、批判の書を書いたのである[中略]クローデルは、この書が、プロテスタンチスムの批判、つまり、徳をそれ自体のために愛することの批判であることを私に覚らせた 。 [中略]私の問題は、人間の目的は神なのか、人間なのか、ということであった。はじめ私は、人間の目的は神だと考えた。そのうち、次第に問題をずらして、人間の目的は人間だと考えるようになった。
批評
ジャック・リヴィエール 1911年 "Études" より
これについては語りたくないほどな書物、読んだことさえ人に話したくないほどな書物、あまりに純粋であり、なめらかなるがゆえに、どう語っていいかわからないほどな作品。これこそまさに一息に読まれることを必要とする作品。愛をもって、涙をもって、ちょうどアリサがある美しい日に、ぐったりと椅子に腰をおろして読むように
遠藤周作 1977年 『キリスト教文学の世界』の解説
これは読者を「酔わせる小説」なのです。/何という巧妙な方法を使い、老獪な手段をめぐらしてジッドは読者を酔わせるようにしていることでしょう。/ジェロームはアリサを聖女にみたて、彼女の清らかさにふさわしい男となるため自らの欲望を抑えました。
一方、アリサの心理にたって考えてみましょう。/アリサの場合も、この困惑と当惑の心が彼女を自分以上の者に背のびさせました。/恋人のジェロームのためにアリサは聖女になろうとしました。/アリサは自分を聖らかな女とみる恋人の夢想にあわせるべく、自分で自分の心をだますようになってしまったのです。
日本語訳
- 『狭き門』(山内義雄訳)新潮社 現代仏蘭西文芸叢書1 1923年
- 『狭き門』(山内義雄訳)新潮文庫 ISBN 4-10-204503-1 1954年8月3日
- 『狭き門』(川口篤訳)岩波文庫 ISBN 4-00-325582-8 1938年12月15日
- 『狭き門』(淀野隆三訳)角川文庫 1954年6月10日
- 『狭き門』(新庄嘉章訳)河出新書 1955年1月1日
- 『狭き門』(村上菊一郎訳)旺文社文庫 1970年
- 『狭き門』(中村真一郎訳)講談社文庫 1971年
- 『狭き門』(竹内道之助訳)成瀬書房 1976年12月
- 『狭き門』(中条省平訳)光文社古典新訳文庫 ISBN 978-4-334-75306-1 2015年2月10日
- 『狭き門』(山内義雄訳)新潮文庫 ISBN 4-10-204503-1 1954年8月3日