猫のゆりかご
以下はWikipediaより引用
要約
『猫のゆりかご』(ねこのゆりかご、Cat's Cradle)は、1963年に出版されたアメリカの作家カート・ヴォネガットのSF小説。世界を滅ぼす力を持つ発明品「アイス・ナイン」を巡る物語であり、科学や宗教、国家などを独特のユーモアを交えながら風刺している作品。作者の代表作であり出世作である。
シカゴ大学は、ヴォネガットの元々の修士論文を却下したが、1971年に本作をもってヴォネガットに人類学の修士号を授与している。
あらすじ
語り手のジョーナは原子爆弾が日本に投下された日についての本を執筆するため、原爆の開発者である故人フィーリクス・ハニカー博士の息子である小人のニュートに手紙を書く。その後、ハニカー博士の過ごしたニューヨーク州イリアムに取材に赴き、かつての上司ブリード博士から、ハニカー博士はあらゆる液体を固体化するアイス・ナインという物質のアイデアを語っていたと聞く。しかしブリード博士はそんなものは実在しないと語る。
その後、ジョーナはハニカー博士のもう一人の息子、フランクがサン・ロレンゾ共和国という南国の独裁国家の写真記事に写っているのを見つけ、サン・ロレンゾに取材に行く。飛行機の中で、ミントンという新任アメリカ大使の夫婦と、クロズビーという実業家の夫婦、そしてニュートとその姉アンジェラと出会う。サン・ロレンゾはライオネル・ボイド・ジョンスン(ボコノン)とマッケーブ伍長という入植者によって開拓され、ボコノンがはじめたボコノン教が普及している。現在のサン・ロレンゾの独裁者はマッケーブ伍長の元召使であるパパ・モンザーノであり、パパの養女である美女モナにジョーナは一目惚れする。しかしモナは次期国王であるフランクと結婚する予定だった。
サン・ロレンゾに着くと、パパ・モンザーノが病のため倒れる。ジョーナは、慈善病院を経営しているジュリアン・キャッスルと、その息子でホテルの経営者であるフィリップ・キャッスルと出会う。やがてジョーナはフランクに呼び出され、自分の代わりにサン・ロレンゾの大統領になってくれと依頼される。ジョーナは承諾し、モナを許嫁とする。
ジョーナの大統領就任式の直前、病床のパパ・モンザーノはアイス・ナインを飲んで自殺する。アイス・ナインは実在し、ハニカー博士が死んだ際に、3人の子供たちが分け合って手元に持っていたのだった。ジョーナたちは死体を始末し、就任式の前のセレモニーに向かう。しかしセレモニーに使用する飛行機がパパの死体がある城に衝突し、海に落下する。その瞬間、全世界の海がアイス・ナインに汚染され凍りついてしまう。
ジョーナとモナはシェルターに逃げ込む。数日後、地上に出るとそこは生命が死に絶えた世界となっていた。住民たちは皆死んでおり、モナも自殺する。生き残ったのはジョーナの他、クロズビー夫妻とフランクとニュートだけだった。彼らだけの自給自足の生活が6ヶ月続いた後、ニュートと共に車を運転していたジョーナはボコノンを発見する。ボコノンは『ボコノンの書』の最後の章を書いたと語る。
主な登場人物
ジョーナ
フィーリクス・ハニカー
アンジェラ・ハニカー・コナーズ
ライオネル・ボイド・ジョンスン(ボコノン)
フィリップ・キャッスル
用語
アイス・ナイン
サン・ロレンゾ共和国
「民主主義に殉じた百人の戦士の日」として第二次大戦時に戦死した兵士を称える記念日がある。
ボコノン教
猫のゆりかご
日本語訳
- カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』早川書房〈ハヤカワ・ノヴェルズ〉、1968年。
- カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』早川書房〈ハヤカワ文庫 SF 353〉、1979年7月。ISBN 4-15-010353-4。http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/10353.html。
文化的影響
- グレイトフル・デッドが設立した音楽出版社の名前は、アイス・ナイン・パブリッシング(Ice Nine Publishing)。
- アル・パチーノとコリン・ファレルが出演した2003年の映画『リクルート』に登場するCIAが開発した強力なコンピュータ・ウイルスの名前は、アイス9(ICE-9)。
- 矢作俊彦の小説『ららら科學の子』では、主人公の妹が本書を主人公の荷物に紛れ込ませる。