理想のヒモ生活
以下はWikipediaより引用
要約
『理想のヒモ生活』(りそうのヒモせいかつ)は、渡辺恒彦によるオンライン小説、ライトノベル。『小説家になろう』にて2011年より掲載を開始。これを原案として、ストーリーなど大幅に改稿・先行した文庫本がヒーロー文庫(主婦の友社 → イマジカインフォス)より刊行されている。イラストは文倉十。メディアミックスとして、日月ネコの作画による漫画版が『ヤングエース』(KADOKAWA)にて2017年3月号から連載されている。また、アニメ化企画も進行中である。
2023年12月時点で電子版を含めたシリーズ累計部数は470万部を突破している。
あらすじ
半ブラック企業に勤める山井善治郎は、休日のある日突然異世界に召喚され、その世界の大国カープァ王国の女王である美女アウラに求婚される。カープァ王国は長い戦乱で直系の王族が女王アウラ唯一人となってしまい国家存亡の危機期に瀕していたが、実は召喚された善治郎は150年前に駆け落ちしたカープァの王族の血統を引いていたのだった。
女王アウラが善治郎に保障した結婚の条件とは、王家の血統を残すための子作り以外何もする必要のない、自堕落な生活をしてくれる婿であった。美人の女王と結婚できなおかつ『ヒモ生活』。あまりにも『おいしすぎる条件』に不信を抱いた善治郎だったが、アウラ側の「子作り以外、特に政治的には何もして欲しくない」という裏の事情を見抜く。身寄りもなく、ただ働き続けるだけの毎日に嫌気が刺していた善治郎はあっさりとアウラの求婚を受け入れ、一か月後には異世界での女王の配偶者・王配としての理想のヒモ生活が始まるのだった。
異世界の文化や環境と現代日本人の感覚に戸惑いながらも後宮で良好な関係を築く善治郎とアウラ。しかし男尊女卑の気風が強いカープァ王国において、女王と王配の微妙な立場、血統のための側室取りの圧力など、周囲が2人を放ってはおかなかった。隙があれば、カープァ王家の血統を守り増やすため善治郎に側室を取らそうとする勢力や善治郎自身を自らの傀儡にしたい勢力の様々な陰謀や思惑もあり、善治郎はアウラと共に否応なくそれらに対処する羽目になっていく。また、150年前に駆け落ちしたカープァの王族と子孫・善治郎の秘密が明らかになると、事態と思惑はカープァ王国を大きく飛び越えていく。そんな中、ついにアウラが妊娠、善治郎も『血統魔法』に目覚めるのだった。
シャロワ・ジルベール双王国との交渉、街道の異変、北大陸からの来訪者など、次々と発生する事件にも自身を顧みずアウラと家族を第一に行動する善治郎だが、図らずもカープァ王国と女王アウラにとって都合がよくまた有能な人間であることを証明してしまう。またアウラは妻として善治郎の望みを喜ぶも、女王として国益のため嫌がる善治郎に側室取りを画策せざるを得なくなる。アウラの政治基盤とカープァ王国の未来のため、善治郎の理想のヒモ生活は徐々に軌道修正が迫られるのだった。
ウェブ版と書籍版
本作は『小説家になろう』掲載版(以下ウェブ版)と書籍版ではストーリーの展開や分量が大きく異なる。ウェブ版は4巻相当を超えた分で更新が停止しており、書籍版も4巻までは大幅な書き足しや配役・ストーリーの変更などが行われている。また5巻相当分からは大きく異なる展開となり、特に決定的な分岐として、書籍版では北大陸からフレア王女が来航しストーリーの中心となっていく。
登場人物
カープァ王国
カープァ王家
山井善治郎→ゼンジロウ・カープァ
本作の主人公。物語開始時点で24歳。身長172センチメートル。
現代日本でブラック企業に就職して疲弊した生活を送っていたが、ある日アウラにより異世界に召喚され、唯一人残された王家の彼女と結婚してカープァ王国初の王配となる。実は5代前のカープァ王国の王子が善治郎の世界に駆け落ちした結果生まれた子孫の一人で、王家の血を持つ者しか使えないとされる「時空魔法」に適性を持つ。また、駆け落ち相手であるシャロワ王家の血も引いており、南大陸の王族としては非常に稀有(≒タブー)な存在である。
現代日本人としての価値観を持ち、異世界では異端として扱われ評価は二分される。アウラやフレアは女性を対等に扱う善治郎を高く評価するが、国内貴族や戦士など特に武力を重んじる人物からは侮られる傾向がある。また、側室をめとることや家族を政争に巻き込むことに強い拒否感を持つ。
王配となる前の社会人の経験から、相手の裏の思惑を推測する洞察力と状況に応じた適切な判断力を兼ね備えており、王族としては不慣れながら、その場に応じた立ち居振る舞いができる。加えて現代日本から持ち込んだ知識と所持品を王国のために役立てており、本人の意図に関わらず功績を挙げ続けている。結婚にあたりパソコン、エアコン、冷蔵庫、テレビ、ゲーム機といった電化製品を持ち込み、自身の生活空間である後宮の侍女たちに徐々に影響を与えてゆく。
アウラ・カープァ
本作のヒロインであり、カープァ王国の女王。物語開始時点で25歳。長身(身長170センチメートルくらい)かつ巨乳(を通り越して爆乳と呼ぶに相応しい大きさ)で、褐色の肌と紅色の長髪。先の戦乱で軍を率いるなど武人としての身体能力も有するが、カープァ王国では男勝りで女性としての魅力が低いとされる。誠実かつ理性的な人柄で政治家として有能であり、女王として国を治めるだけの決断力・判断力を持つ。
先の長い戦乱で次々と死亡した親族の後を継いで即位し、カープァ王家の唯一の生き残りとして、血統魔法である「時空魔法」を次代に残す王族としての責務を負う。結婚当初、善治郎には子作り以外に何もしないこと(ヒモ生活を送ること)を望んでいたが、アウラを愛し、常にアウラに配慮を心がける善治郎の人柄に感銘を受け、次第に夫として全幅の信頼を寄せるようになる。一方、女王として国益を優先させるために善治郎に不便を強いることがあり、その度に葛藤を抱いている。
カルロス・善吉・カープァ
カープァ王家の従者
ファビオ・デウバジェ
後宮侍女
ギジェン侯爵家
マルケス伯爵家
ラファエロ・マルケス
ガジール辺境伯家
ルシンダ・ガジール
シャロワ・ジルベール双王国
イザベッラ・ジルベール
フランチェスコ王子
ボナ王女
ルクレツィア・ブロイ
ブロイ侯爵家の養女。初登場時の年齢は15歳であり、外見は年齢よりも幼く見える。
初登場は8巻で、善治郎が双王国に来訪した際の世話係を務める。王族として生まれたが、シャロワ王家の血統魔法である「付与魔法」が発現しなかったため、ブロイ侯爵家の養女に出された。侯爵家と実の家族からは愛情を持って育てられたものの、侯爵家の人々を始め周囲には王族として一歩引いた敬意で敬われる一方で実際の身分は貴族であり、王族でも貴族でもなく何者にもなれない現状に耐え切れなくなっており、加えて周囲の期待に応えるためにも王族への復権に執着し善治郎の側室入りを狙う。しかし、あまりにも必死さや態度が露骨に表れることから善治郎からは少々苦手意識を持たれている。
ブルーノ三世
ラルゴ王子(ラルゴ・シャロワ)
ウップサーラ王国(北大陸)
フレア・ウップサーラ
スカジ(ヴィクトリア・クロンクヴィスト)
ナバラ王国
設定・用語
舞台背景
善治郎が召喚された異世界は、世界そのものの通称は明らかにされていない。北大陸と南大陸に分かれており、南大陸はランドリオン大陸という名称がある。善治郎が召喚される数年前まで、南大陸では大陸全土におよぶ長い戦乱が続いていた。
魔法
一般人により広く使用されている四大魔法と、王族のみが使用できる血統魔法が存在する。北大陸と南大陸の間柄は「南魔北技」と言われ、南大陸の人間の方が魔力量が多く魔法を扱うことに長けているとされる。
南大陸では王族は血統魔法を使えることが絶対条件であり、血統魔法を使えない者は王族より外され、身分が低い者でも血統魔法が使えれば王族として迎えられる。それ故、他国の王族との結婚は血統魔法を盗むことにつながり、国力に重大な影響を与えるためタブーとされている。一方で北大陸では絶対条件ではなく、血統魔法を使えない王族も多数存在する。
血統魔法、時空魔法
治癒魔法
付与魔法
飛行魔法
解得魔法
雷撃魔法
探心魔法
操緑魔法
光魔法
力魔法、創造魔法、契約魔法、操魂魔法、自由魔法、覚醒魔法、圧縮魔法、破棄魔法、記録魔法、星魔法
国家
カープァ王国
ターバンやサリーのような伝統的な民族衣装を持ち、国民の大半は褐色の肌に黒い髪をしていて砂糖や香辛料が特産。設定からインドがモデルと思われる。
典型的な封建制国家であり、王国に対する納税の義務以外は王国が一切介入することが出来ないなど地方領主の独立性が極めて高いため、貴族たちが脱税を行っていても反発を恐れて容易に締め付けることが出来ないなどカープァ王家の王権はお世辞にも強いとは言えないものとなっている。
王家の血統魔法は「時空魔法」。王家の紋章は「開かれた扉」と「砂が上に流れる砂時計」。
シャロワ・ジルベール双王国
シャロワ王家・ジルベール王家は古くは北大陸の移民であり、王侯貴族とそれに随伴してきた移民たちと現在の領土の先住民である四部族(現在は四公爵家)が共存する形で建国された経緯がある。
北大陸出身という出自から王家を始めとする移民たちは南大陸人と違い肌が白く金髪などの明るい髪といったコーカソイド系の風貌をしているが、血統魔法を有する両王家以外は長い年月で南大陸人との混血も相応に行われてきたため、現在も移民の大半は北大陸の住民たちと見た目的には全く変わらないものの南大陸人の血もそれなりに混ざっており、中には南大陸人寄りの見た目をしている者も存在する。
また、元々の先住民も北大陸人との混血により肌は褐色の一方で金髪や赤毛、赤や青の瞳といった風貌をしている者もいる。
シャロワ・ジルベール両王家間や王家と四侯爵家、または四侯爵家同士など国内での対立の種も多いが、長い歴史の中で度々行われてきた婚姻や混血により移民と先住民による人種・民族対立は薄いものとなっている。
先住民の四部族(四公爵家)はそれぞれエレハリューコ族長家・リーヤーフォン族長家・エレメンタカト侯爵家・アニミーヤム侯爵家となっており、エレハリューコ族長家・リーヤーフォン族長家は王国成立以前からの砂漠の放浪民としての生活スタイルや服装を維持しており、王族とも一歩引いたスタンスを取っている。一方でエレメンタカト侯爵家・アニミーヤム侯爵家は王族の影響を受けて定住生活を行っており、北大陸由来の衣服を日常的に身に付けている。そのため四公爵家は二つの陣営に分かれて対立状態にあるが、昔ながらの生活を維持する二侯爵家に比べて巨大な金山を有するエレメンタカト侯爵家と塩湖を持つアニミーヤム侯爵家との経済格差が開いてしまっており、それに伴う人口差が倍以上に開いてしまっている点がより対立を深刻化させ、特大の火種になりかねない状況となっている。
シャロワ王家の血統魔法は「付与魔法」、ジルベール法王家の血統魔法は「治癒魔法」。シャロワ王族は魔道具を作る職人としての気質が強いものが多く、政治的センスの有無に関わらず王位には関心の薄い者が多い。
ウップサーラ王国
北大陸でも有数の技術先進国とされ、魔法よりも科学技術が旺盛で、4本マストの帆船建造技術や鉄の鋳造などがある。しかし人口は少なく国力はカープァより格段に低い。
地名や地形からスウェーデンをモデルにしていると思われる。
ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国
政治体制は共和制を敷いており、国内の全貴族が一票を持つ国王自由選挙を経て、貴族全体の承認を受けて国王が決定される。国王は象徴的存在であり、内政は立法府が行っている
形式上は王族であれば誰でも立候補が可能だが、現実には王位継承権第一位の者しか立候補しない慣習がある。
名前や歴史的背景からポーランドがモデルと思われる。
教会
北大陸で大きな勢力を持つ宗教。古代竜族を神聖なものとして信仰の対象とする一方で、南大陸に住む人間を、古代竜族の怒りに触れ流刑された罪人達の末裔として卑下の対象としている。教えの解釈の違いにより、さらに「爪派」と「牙派」に宗派が分かれている。
竜種
異世界に広く存在する生物。南大陸では、一部の種類の竜は家畜として運用されている。
走竜
鈍竜
肉竜
小飛竜
既刊一覧
小説
- 渡辺恒彦(著) / 文倉十(イラスト) 『理想のヒモ生活』 主婦の友社 → イマジカインフォス〈ヒーロー文庫〉、既刊15巻(2023年12月28日現在)
- 2012年10月31日第1刷発行(9月28日発売)、ISBN 978-4-07-284078-8
- 2012年12月31日第1刷発行(11月30日発売)、ISBN 978-4-07-284084-9
- 2013年4月30日第1刷発行(3月29日発売)、ISBN 978-4-07-288700-4
- 2013年9月30日第1刷発行(8月30日発売)、ISBN 978-4-07-292190-6
- 2014年5月31日第1刷発行(4月28日発売)、ISBN 978-4-07-296354-8
- 2014年12月31日第1刷発行(11月29日発売)、ISBN 978-4-07-410241-9
- 2015年10月31日第1刷発行(9月30日発売)、ISBN 978-4-07-403086-6
- 2016年7月31日第1刷発行(6月30日発売)、ISBN 978-4-07-417935-0
- 2017年6月30日第1刷発行(5月31日発売)、ISBN 978-4-07-424639-7
- 2018年1月31日第1刷発行(2017年12月28日発売)、ISBN 978-4-07-429074-1
- 2018年8月10日第1刷発行(7月31日発売)、ISBN 978-4-07-433868-9
- 2019年5月10日第1刷発行(4月30日発売)、ISBN 978-4-07-437228-7
- ドラマCD付き限定特装版 同日発売、ISBN 978-4-07-437671-1
- 2020年4月10日第1刷発行(3月30日発売)、ISBN 978-4-07-442815-1
- 2021年10月10日第1刷発行(9月30日発売)、ISBN 978-4-07-447913-9
- 2023年12月28日発売、ISBN 978-4-07-456480-4
- ドラマCD付き限定特装版 同日発売、ISBN 978-4-07-437671-1
漫画
- 渡辺恒彦(原作) / 文倉十(キャラクター原案) / 日月ネコ(作画) 『理想のヒモ生活』 KADOKAWA(角川コミックス・エース)、既刊18巻(2023年9月4日現在)
- 2017年7月26日初版発行(7月25日発売)、ISBN 978-4-04-106001-8
- 2017年12月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-106393-4
- 2018年6月4日発売初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-106841-0
- 2018年11月2日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-107482-4
- 2019年2月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-107829-7
- 2019年6月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-108233-1
- 2019年10月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-108704-6
- 2020年2月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-108705-3
- 2020年6月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-109476-1
- 2020年11月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-109463-1
- 2021年3月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-109464-8
- 2021年7月2日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-111461-2
- 2021年12月3日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-111462-9
- 2022年4月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-112486-4
- 2022年9月2日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-112628-8
- 2022年12月28日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-113261-6
- 2023年6月2日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-113620-1
- 2023年9月4日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-114032-1