白暮のクロニクル
以下はWikipediaより引用
要約
『白暮のクロニクル』(はくぼのクロニクル)は、ゆうきまさみによる日本のミステリー漫画。『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2013年39号から2017年26号まで連載された。
不老不死の特徴を持つ「オキナガ」と呼ばれる人々が溶け込み生活する社会で、オキナガに関わる厚生労働省職員の主人公と、オキナガが関連する事件などを描くミステリードラマ。
WOWOWの「連続ドラマW-30」枠にて実写ドラマ化され、2024年より放送及び配信予定。ゆうきまさみ作品初の実写ドラマ化である。
あらすじ
西暦2015年。厚生労働省の新卒公務員・伏木あかりは、保健所での研修中に殺人事件に出くわしてしまう。殺害された男は、「オキナガ」と呼ばれる吸血鬼に似た特性をもった「不老不死」の人間だった。日本でも推定10万人が存在するというオキナガは、いわれのない差別や中傷、生活保護費の受給や保護施設の好待遇など様々な問題を抱えながらも、社会に溶け込んでいた。
厚労省大臣参事・竹之内唯一からの辞令で、あかりはオキナガの監督を行う部署「夜間衛生管理課」に配属される。直接の上司となった久保園幹也に連れられて訪れた洋館にある私設図書館「按察使文庫」で出会ったのは、見た目は18歳そこそこながら80年以上生きているオキナガ・雪村魁。魁と共にあかりは、「オキナガ案件」と呼ばれる長命者がまつわる事件に関わっていく。
そんな中で、魁自身が個人的に追い続けている事件が、12年に一度の未年のクリスマスごとに70年間にわたって続けられている連続殺人事件であった。60年前には、魁の幼馴染であり「あかりの祖母」にあたる女性・長尾棗も、連続殺人犯「羊殺し」の犠牲となっていた。羊殺しは70年にも渡って犯行を続け、殺害した被害者の内臓を持ち去るなど、オキナガと思われる特徴を残していたのだ。
やがて、無邪気なセーラー服姿の美少女・桔梗が、あかりの前に現れる。しかし、桔梗は実は男性であり、500年以上前に竹之内に血分けされてオキナガとなり、日常的に人殺しを繰り返していた生粋の殺人狂であった。はたして、桔梗こそが連続殺人犯・羊殺しなのか?
クリスマス前日の12月23日、羊殺しが狙っているのが「大柄な女」であったことが判明した直後、桔梗によってあかりが拉致されて行方不明となる。魁は手がかりを元にして、桔梗の潜伏場所を発見するが、他者を傷つけることに躊躇の無い桔梗に返り討ちにあう。魁は左腕を切断され、薬物も使われたことで仮死状態となる。その後、蘇生してあかりとも合流するが、体力が低下したことで再び昏倒仕掛けた魁をあかりが血を与えたことで回復。魁は、桔梗を拘束することに成功する。
その後、羊殺しによって殺害された伊集幸絵の幼い息子で、その後に行方不明となっていた伊集市哉が生存しており、桔梗と関わりがあったことが判明する。さらに、戦後に羊殺しを見たという柘植章太によると、桔梗とは異なり「背がスラっと高く、ボーヤと呼ばれていた」という。もう一人の羊殺し、伊集市哉はいったい誰なのか?
登場人物
主人公
雪村 魁(ゆきむら かい)
オキナガ。見た目は10代後半の若者だが、実年齢は88歳。按察使 薫子が運営する私設図書館「按察使文庫(あぜちぶんこ)」の住み込み司書。
竹之内 唯一と私的な繋がりを持ち、外部協力者として「オキナガ案件」と呼ばれる事件の解決に当たる、本作のホームズ役。その一方で、個人的にも、かつての恋人・棗を殺した犯人、12年ごとに現れる殺人者「羊殺し」を追っている。
過去の壮絶な経験から、気に入らない相手や非友好的な相手には不遜な態度を崩さない性格となっており、世間的な折り合いよりも自身の価値観を優先するところがある。頭の回転は速く、事件への追及は鋭いが、強引に事を進めがちな面もあり、竹之内に叱責されたり、助手役のあかりと対立したりといった場面もある。また、警察にはその性格を逆手に取られ、度々「公務執行妨害」の名目で逮捕されている。
普段の服装は黒づくめ、礼服に関しても薫子からのお仕着せのみと、服装には頓着しない。老人らしく電子機器には疎く、スマートフォンさえ電話機能しか使わないという有様だった。しかし必要に迫られればわずかな期間で基本的な知識は身につけるなど、モノ覚えは早い。
昭和2年(1927年)生まれ。昭和15年(14 - 15歳)頃から3年ほど神戸で暮らす中で、棗と互いに意識しあう間柄となる。昭和19年、出張したままの父親を呼び戻すため沖縄に渡航するが、昭和20年4月に父親は住みこんでいた社屋に米軍の攻撃を受けて死亡。自身は現地で招集され、砲撃の至近弾を受けて瀕死となっていたところを、竹之内から血を与えられてオキナガとなった。
終戦後、竹之内らと共に本土に戻される途中、神戸に差し掛かったところで脱走。棗と再会するが、日に当たり過ぎたための熱傷で心停止を起こし、表向き死亡とされる。その後、収容された奥多摩の「国立蘇生症療養所」で来間嘉一郎の研究資料として麻酔なしで生体解剖され、その恐怖と苦痛から白髪となった。
伏木 あかり(ふせぎ あかり)
並の男性を軽く上回る長身と、立派な眉毛を持つ女性。26歳(8月生まれ)。厚生労働省に入省したばかりの新卒公務員。渋谷区保健所での研修中にオキナガの殺害事件に遭遇したことを切っ掛けに夜間衛生管理課(夜衛管)に配属され、魁のパートナーとしてオキナガ絡みの事件解決にあたる。本作のワトソン役。
都内の医科大卒だが、研修中に患者(特に自分より幼い子供)の死を直視できず、医師免許は未取得となっている。仕事は丁寧だが、細かいところに凝り過ぎて時間がかかるタイプ。
正義感が強く、お人よし。かつ、やや天然気味な性格の持ち主で、そのため苗字をもじって「ふしぎ」とからかい気味に呼ばれることがある。
魁の恋人であった長尾棗の孫だが、配属が決定するまで竹之内さえもその事実を知らなかった。桔梗の逮捕後、思うところあって医師免許を取るために休職。最終話前半(2020年)で夜衛管付きの医官として復帰、再び魁とコンビを組む。
エピローグとなる最終話後半では、本編の時代から数十年後、2064年のあかりが登場。すでに退職して長野県に隠居しており、体調を崩して入院した折に、少年の容姿のままの魁から見舞いを受けている。第一巻のプロローグ部分で、ベッドに横たわって雪村魁に語りかけているのは、この時の彼女である。
主要人物
竹之内 唯一(たけのうち ただひと)
オキナガ。厚生労働省大臣官房参事を勤める男性。夜間衛生管理課を統括する責任者。外見は30歳前後の青年だが、実際はオキナガの中でもかなりの古株。本人の言によると1600年に渡って日本国に仕えている。
文系な見た目ながら、あかりよりも長身で武術の心得もあり、戦時中はオキナガによる陸軍独立強襲歩兵「富士部隊」を率いる隊長を務めていた。
長年の経験から、相手の年齢や立場には関係なく敬語で話し、丁重な態度で接する。しかし精神年齢的には30歳前後の若さを保っているため青臭い部分も多く、それを意志の力で抑えているところがある。
魁に自らの血を与えてオキナガにした人物であり、身寄りのない魁を按察使文庫に預けるなど世話を焼く一方で、夜衛管の嘱託としてオキナガ案件の解明にあたらせる。
按察使 薫子(あぜち かおるこ)
オキナガ。按察使文庫の経営者で、見た目は20代半ば~後半の美女だが、150年ほど生きている。資産家の令嬢で、自身もかなりの資産を持ち、その運用収益で文庫の維持・管理と自身や魁の生活費を賄っている。親族が持っている薬品会社「アゼチ化学」ではオキナガ用に血液の代用品となるサプリメント等の開発も行っている。
明治の半ば頃に洋行(海外旅行)に出た際、現地で事故にあったことが原因でオキナガになったという経歴の持ち主。父親が彼女を何とかして元に戻そうと、古今東西の知識を求めて集めた書籍が、按察使文庫の基礎となった。普段は明るくゲーム好き(しばしば魁を無理やり付き合わせている)で無邪気な女性だが、ときおり発情して魁に夜這いをかけたり、迫ったりする(魁曰く「病気」)。基本的に情の深い人物で、魁や実藤のことも息子のように見ていた。
久保園 幹也(くぼぞの みきや)
高萩 稟子(たかはぎ りんこ)
伏木の親族
伏木 修介(ふせぎ しゅうすけ)
津野田 棗 / 長尾 棗(つのだ なつめ / ながお なつめ)
あかりの父親である修介の実母。実家は神戸で商店を営んでいたが空襲で両親と兄を失い、妹の綾音と2人きりになる。魁とは相思相愛だったが、魁がオキナガとなった事実は伏せられて疫病で死亡したと聞かされた。その後、妹の嫁入りを見届けて自身も著述業をしている津野田英明と結婚、昭和30年3月には子供(あかりの父・修介)も生まれた。同年の12月、光明苑閉鎖の新聞記事に魁の名前を見つけ、連絡を取って再会するが、その帰りに「羊殺し」に遭遇して殺された。
魁と別れてから結婚するまでの間は有馬の温泉旅館で中居として働いており、殺害された際には当時の週刊誌にあることないことを書きたてられた。遺骨は横浜の市立霊園に無縁仏として葬られている。棗の死は「羊殺し」に対する魁の執念の原点であり、「羊殺し」の被害者の資料の記述中に、あるいは魁の回想や夢などで、繰り返し登場する。
刑事
唐沢(からさわ)
鳴宮 涼子(なるみや りょうこ)
その他の人物
巻上 良三(まきがみ りょうぞう)
来間 嘉一郎(くるま かいちろう)
叶 一生 / 加納猪助(かのう いっせい / かのう いすけ)
時任 希梨香(ときとう きりか)
オキナガ。岐阜県の過疎高齢化が進む集落「矢尻沢」に引っ越してきた、時任夫妻の娘を名乗る少女。しかし記録上は17年前に誘拐され、その1年後に遺体で発見されている。
実は400年ほど生きている古株のオキナガで、「希梨香」本人ではない。叶も敬語を使うほど貫禄があるが、見た目の年齢が10代前半なため社会的な生活基盤を持てず、人間の保護者を作ってはそれらの下を渡り歩く「ヤドリギ」として暮らしてきた。矢尻沢は元々彼女の故郷で、村は何らかの嫌疑がかかった結果、焼き討ちにあって全滅。かろうじて息のあった彼女に、通りすがりのオキナガが血を与えた結果なりあがった。村の跡地に住み着いた者たちの子孫が現在の矢尻沢の住人となっている。
保護者役の時任夫妻と共に呼び集めたオキナガで新しい村を作ろうとしていたが、叶の展覧会を中心に呼び集めたオキナガの1人が生保詐欺に引っ掛かる、更には叶自身も集落側と揉めて早々に出ていくハメになるなど、予定外の展開も起きて失敗に終わった。その後は長野県にある長命者施設「光明苑」に収容されたが、外見年齢が災いし、外出もできない状態に不満を漏らしている。
時任 淳史(ときとう あつし)
村上 淳資(むらかみ あつし)
オキナガ。IT工房「C's CORRIDOR」社長。吸血鬼同好会サイト「カインの裔」の管理人でもある。長髪に無精ひげ、度の強いビン底眼鏡とうだつの上がらない風体だが、メガネの下のまなざしはあかりも驚くほど鋭く、それなりに身だしなみを整えると様変わりする。
出身地は越前の美浜。1838年生まれの177歳。25歳の時、攘夷運動に参加するために上京するも運動は攘夷から倒幕に移行し、連絡係として活動中に幕府側の武士(曰く、新撰組か見廻組)に斬られた際に血分けされてオキナガとなった。
近代においても民権運動などに関わり、1970年代には学生運動の過激派闘士だったという筋金入りの反権力主義者だが、作中の時代である2015年には、今は自分たちの活動が認められなくとも、最終的に歴史の結果として表れれば良いとする境地に至っており、魁を感心させた。
茂森 久三(しげもり ひさみつ)、遊佐 勘九郎(ゆさ かんくろう)、羽鳥 真也(はとり しんや)、羽鳥 彩(はとり さい)、真島 耕介(まじま こうすけ)
矢板 創(やいた そう)
梶田 直(かじた すぐる)
蕪木 正(かぶらぎ ただし)
柘植 章太(つげ しょうた)
オキナガ。魁の横浜在住時代の弟分で、昭和11年(1936年)4月生まれと歳は9つ下。当時としては柔弱な性格が災いしていじめられっ子だった。米軍によって都市部に行われた大空襲からかろうじて生き延び、戦後は男娼として身体を売って暮らしていた。昭和30年、棗と待ち合わせて会った日から3日後、再び伊勢佐木町を訪れた際に再会する。
魁への憧れから、手柄を立てて助手にしてもらおうと考え、ある事件に深入りしたために瀕死の重傷を負う。魁によって血分けを施されオキナガとなって生き延びるが、昏睡状態が続いていた。
2015年の夏、訪れた魁が帰った直後、60年ぶりに意識を回復。自身を襲った人物の記憶を取り戻したことで「羊殺しの共犯者」の存在が浮かび上がる。
谷名橋 藤太(やなはし とうた)
須本 美和(すもと みわ)
紫堂 邦明(しどう くにあき)
入来神父(いりき-しんぷ)
数馬 涼(かずま りょう)
鈴川 なえ / 鈴峰 苗子(すずかわ なえ / すずみね なえこ)
鳥飼 誠(とりかい まこと)
伊集 幸絵(いじゅう さちえ)
雀城 英了(ささぎ えいりょう)、杉江 寿(すぎえ ひさし)、殿岡 辰巳(とのおか たつみ)
桔梗 凪人 / 山階 茜丸(ききょう なぎと / やましな あかねまる)
オキナガ。見た目16 - 17歳の少年で時折女装した際には元の名から「あかね」と名乗ることもある。「桔梗 凪人」という名は昭和28年に市哉と観た映画「最后の銃声(市哉の父である「深井欣哉」の作品)」の登場人物から引用したもの。
寛正2年(1461年)生まれ。生まれつき生き物を殺す性癖をもち、それを疎んだ親に閉じ込められていた。応仁の乱のドサクサに紛れて両親を殺害。唯一の理解者であった異母姉と美人局紛いの強盗殺人をしながら暮らしていたが、乱が終わりかけた頃、姉と共に隠れ棲んでいた屋敷を夜盗に襲われ、死にかけていた所を当時「宿禰(すくね)」と名乗っていた竹之内に血分けされ、成り上がった。しかし以降も男女を問わぬ殺人を繰り返し、事実を突き止めた竹之内に斬られた上で心臓に鉄杭を打ち込まれるが、右胸心だったらしく死亡していなかった。
その後、500年間の動向は不明ながら昭和になった頃、光明苑の所長となった来間と接触している。昭和18年のクリスマス、旧按察使守忠邸で伊集幸絵殺しを目撃し、母の死体を見つけてしまった市哉に呪いともいえる言葉を吹き込む。昭和20年12月時には新見慎吉を始めとする浮浪児グループと共に行動しており、グループが保護されてからは再び市哉と共に別行動をとる。昭和30年の津野田棗を皮切りに12年に一度の「羊殺し」を繰り返していた。
2015年、光明苑で起きた火災現場に現れ、「魁の兄」と名乗る(血分けでの血縁上では、竹之内を父とする兄にあたるため)。その数日後、東京であかりの前に現れる。未登録の野良オキナガと聞いたあかりからは長命者登録をすすめられるが前述の理由を(一部隠蔽した上で)話し、「クリスマスが終わるまで」という約束で竹之内には報せない旨の言質をとり、12月22日にあかりを誘い出し拉致。着々と羊殺しの準備を進め、場所を突き止めた魁も罠にはめて仮死状態に落とす。しかし、意識を取り戻したあかりに抵抗され、蘇生した魁にも粘られた結果、最終的に倒され竹之内と共に駆け付けた唐沢に逮捕された。
松永 / 真田(まつなが / さなだ)
オキナガ。富士部隊では副隊長を務めていた。階級は大尉で魁からは今もそう呼ばれている。戦時中は父方の姓である「真田」を名乗っていたが、戦後は不都合が生じたらしく、母方の「松永」に改めた。竹之内の声掛けで羊殺しの捜索に参加するが、魁から内通者の存在を知らされた際にあえて見当違いの場所を捜索する囮として動いた。
伊集 市哉(いじゅう いちや)
伊集幸恵と映画監督・深井欣哉との間に生まれた婚外子。母・幸恵の元で養育されていたが、昭和18年のクリスマスに惨殺された母の遺体を目撃してしまう。その場に居合わせた茜丸によって「母は眠っているだけだが、傷ついた身体で目覚めることが出来ない。だから傷ついた内臓を手に入れて捧げよう」と吹き込まれる。母の死後は父方の親戚に引き取られていたが、茜丸からオキナガは死んでも生き返る姿を実演で見せつけられる。その後、何らかの事件に巻き込まれた際に助け出した茜丸と共に出奔。戦後は孤児のグループ内で「ボーヤ」と呼ばれていた。孤児グループが官憲に保護された際には茜丸と共に離脱し、「実藤寿一郎」という別人の名を手に入れる。
昭和30年に茜丸と「羊殺し」を実行するが、精神的ストレスから深酒して遭遇した柘植章太と一夜を共にするも、事件前に姿を目撃していた章太にパススケ―スを抜かれて呼び出される。首尾よく呼び出した章太が魁と連絡を取ろうとしたのを引き留めて瀕死の重傷を負わせたのは彼だった。
昭和31年頃から按察使薫子邸(後の按察使文庫)で執事として働き始め、60年に渡って勤め続けていた。2015年の事件では茜丸こと桔梗に対して、これ以上の殺人は止めてほしいと懇願していた。
桔梗の逮捕後、竹ノ内が母・幸恵の遺骨を別荘に移したのち、折を見て埋葬する話が出たことで遺骨を取り戻そうとした現場を魁とあかりに押さえられ、自らが伊集市哉と認めるも日に当たり過ぎて倒れた魁と同時に心臓発作を起こして収容された病院で亡くなった。享年78。
行動を起こす前、竹ノ内に郵送した手紙で自らの犯行を明かしており、それは1991年の事件で逮捕・処刑された片上乙也の冤罪を証明できる内容だったが、反オキナガ派閥による保護法の改悪とも言える法案を通さないために握り潰さざるを得なかった。
オキナガ
概要
不老不死の種属。「長命者」とも呼ばれ、日本には10万人ほど存在すると言われる。現代でも住民登録を行わずに暮らしている者も多いため、総数はあくまで推定。都内で登録されている者で1000人ほど。その存在を秘密にされている訳ではないが、一般人の大部分は「そう言う存在もいる」という程度の認識で警察など公官庁職員も詳しくはなく、後述の特性などから吸血鬼とごっちゃにされている。いつ頃から存在しているかは古株のオキナガも知らない。
病菌の類に罹患しても大抵の病気は発症しないため、自覚なしに疫病の感染源になってしまうこともある。自然死した者が存在しないため、寿命があるのかどうかも不明だが、不死と言っても老衰による自然死や疾患による病死がないと言うだけで、後述の「正しい殺し方」を実行すれば死ぬ。実年齢が200年を越えるあたりが精神的な谷となるらしく、人によっては延々と鬱状態が続き、自殺に至ることがある。
現代日本では厚労省の元、長命者援護法(後述)による保護と管理を受けており、オキナガとなった者は夜間衛生管理課での登録、旅行や転居・転職といった何らかの行動をする際には事前に申請を届け出ることが義務付けられている。窮屈な生活を嫌う未登録者も少なくないが、そのために他人の戸籍を売買して使用するなど、法を犯して検挙される者もいる。
普通の人間がオキナガに変化することは「成って」「あがる」と表現される。これは人間としてそこから先はなく、「上がり」となるため。肉体はもちろん、精神も成長も老化もしなくなる。
能力
脳か心臓のどちらか(もしくは両方)を完全に破壊されない限り、最長でも三日以内に自力で蘇生する生命力を持ち、四肢が切断されたとしても固定しておけば自然と接合する。この場合、欠損した部分がなくても傷口を埋めるように治る。身体に食い込んだ凶器なども治癒するにしたがって体外に押し出されるため、治りきる前に抜くことでかえって大出血するのを考えて自然と抜けるまでそのままにしていることが多い。毒物などを盛られた場合は蘇生するまでの間に排出され、経口で服毒した際には蘇生時に纏めて吐き戻す。極端に体力を消耗すると数日間眠り続ける。また、オキナガは基本的に常人より体温や血圧が低く、真冬でも意識して吐かないと吐息が白くならない。
身体からはある種のフェロモンが発せられており、反応する人間を引き寄せたり興味を持たれやすい。これは肉体関係を結ぶと更に顕著になり、すれ違う程度の接触でもオキナガを見分ける事が出来るようになる。
紫外線アレルギー
オキナガにとって確実な自殺方法の一つとして「日のあたる場所で首を吊るなどして夜明け前に仮死状態になり、そのまま直射日光に身体を晒して焼いてしまう」があり、身体が炭化するまで焼けてしまうと、まず蘇生しない。
食事
オキナガにとって血液は酒類のような一時的な強壮剤的効果もあり、体力を消耗した際にも衝動が高まるが、食欲よりはむしろ性欲に近い衝動で恋愛感情とも通じている部分があり、誰彼かまわずという訳ではない。10巻199Pの描写では門歯と犬歯の間に出し入れ可能なトゲのような牙があり、これを突き刺すことで出血を促す。相手との同意の上での吸血なら相手は気持ち良いらしい(そのため、特定のパートナーを持つオキナガもいる)。
喫血する(血を吸う)際には、首筋よりも腕の静脈から吸うことが多い。これは、頸動脈などに傷を付けるとよほど慣れていなければ出血を抑えられず、相手の命にかかわるから。また、薬物などが体内に入ると血の味が悪くなるため、供血者の嗜好品に関しては酒やタバコなど、内服薬に関しては風邪薬程度でも嫌う者がいる。
これらのことから吸血鬼と混同されやすいが、吸血鬼と違って後述の「血分け」を行わない限り、血を吸われただけでオキナガになることはない(吸う量も多くて300-400cc未満と献血程度)。
血分け
「血分け」を行うことはオキナガにも負担が大きく、適応者の割合からくるリスクから特定の相手に行うということは少なく、偶々行きあたった死にかけの人間に血を与えてみることで仲間を作る形が多く、血分けされた方も半ば本能で血を呑んでいる。そのため、自分に血を与えたオキナガが誰なのか知らない者も多いが、研究から体内の「オキナガ因子」を照合することで、どの系統のオキナガかは判別可能となっている。また、極めて珍しいが羽鳥兄妹のように、直接血のつながりのあるオキナガも存在する。このことから、なりあがるかどうかも本人の体力などより、オキナガの血に適応する「何か」が働いていると考えられていたが、これも研究からオキナガに成り上がる長命化因子は「母親から受け継がれる」ことが判明している。
オキナガは見た目の年齢が大体20 - 40代くらいの者が多いが、希梨香のように10歳前後の子供や、中には60を過ぎた老人と言ってもいい年齢でオキナガとなった者もいる。
社会性
かつてオキナガの多くは人里から適度に離れた場所で自給自足の生活を送っていたが、近年は人の出入りは頻繁な割に隣人に対して無関心な都市部で暮らす者も多い。それでも一か所に住み続けるのは難しく、時折噂になって引っ越しを繰り返す者が少なくない。中には居場所を求め、知り合った者同士で独自のコミュニティを作ろうとするオキナガもいる。
なりあがった時代や環境などによっては字の読み書きもできず、寝食が保証される収容施設から出たがらない者もいる。近現代に生まれ、それなりの教養を持っていても人間関係を始めとして就職には様々な障害が伴うため、村上は自ら起業している。
ヤドリギ
現代では子供のオキナガは光明苑など専門の施設に入所することになっている。入所した者は特定の要件を満たすか、許可を得た上で保護者役の看護人同伴でのみ外出できる。
反オキナガ勢力
前者はネットなどを利用した流言飛語からオキナガに直接危害を加える者が存在し、後者はマスコミによる宣伝活動から法改正によるオキナガの管理法強化を目論んでいる。
オキナガに対する感情の源泉は様々だが、特に大きいのはオキナガが「不老で殺されない限り死なない」という部分であろう。
用語
夜間衛生管理課(やかんえいせいかんりか)
按察使文庫(あぜちぶんこ)
長命者援護法(ちょうめいしゃえんごほう)
未登録者は「野良オキナガ」とも呼ばれ、発見されると大まかな身元調査の後に光明苑などの施設に収容され、社会生活能力の有無に応じて登録証が発行される。だが、野良オキナガたちの多くには援護法の内容自体がよく知られておらず、一度施設に収容されたら二度と出られないと誤解されている部分もある。
厚労省内部では、定期検査などの義務を緩和し自由度を上げようとする竹之内と、もっと締め付けを厳しくすべきと主張する健康局や衛生局との綱引きが繰り返されている。
光明苑(こうみょうえん)
入所している理由は様々で、前述の例以外にも精神を病んでいる者から、借金から逃げてきた者もいる。特に深刻なのが「自分よりも若い身内や知り合いが存命」な場合で、年々老いていく身内と面会するたびに愁嘆場が繰り広げられる。それなりの社会生活能力があることを証明すれば登録証が発行されるが、公立学校制度が出来る前の生まれで「文字の読み書きが出来ない者」も存在し、衣食住が保証されていることもあって出所率は高くない。
元は奥多摩・武蔵野にあった施設で「蘇生症療養所」と呼称されていたが昭和31年(1956年)に閉鎖、一部は長野県に移転した。バブル期にばらまかれた予算で豪勢なプールなども存在するが、予算を削減されてからは生活設備の維持にも苦労している。2015年12月5日、何者かに放火されて建物が半焼する。
物語後半の2064年には「病院」の看板が掲げられ、オキナガではない伏木あかりも入院していることから、なんらかの制度改革が行われた模様。
喜寿苑(きじゅえん)
聖ヨハネ教会(せい-ヨハネ-きょうかい)
羊殺し(ひつじごろし)
週刊パトス(しゅうかんパトス)
Cafeくれまちす
純喫茶ボナンザ(じゅんきっさボナンザ)
書誌情報
- ゆうきまさみ 『白暮のクロニクル』 小学館〈ビッグコミックス〉、全11巻
- 「犬は眠れぬ羊と踊る」2014年2月4日発行(2014年1月30日発売)、ISBN 978-4-09-185847-4
- 「霧の中の輪舞(ロンド)」2014年5月5日発行(2014年4月30日発売)、ISBN 978-4-09-186164-1
- 「雲の上の灯(ともしび)」2014年8月4日発行(2014年7月30日発売)、ISBN 978-4-09-186289-1
- 「Vの聖痕」2015年1月14日発行(2015年1月9日発売)、ISBN 978-4-09-186660-8
- 「絶望の楽園」2015年5月5日発行(2015年4月30日発売)、ISBN 978-4-09-186879-4
- 「壁のない迷宮」2015年9月2日発行(2015年8月28日発売)、ISBN 978-4-09-187174-9
- 「銀幕に揺れる影」2016年1月2日発行(2015年12月28日発売)、ISBN 978-4-09-187365-1
- 「血に煙る聖夜」2016年5月3日発行(2016年4月28日発売)、ISBN 978-4-09-187596-9
- 「大きな羊は美しい」2016年9月4日発行(2016年8月30日発売)、ISBN 978-4-09-187736-9
- 漫画小冊子『ドラゴン急流』付き特別版、ISBN 978-4-09-159236-1
- 「大きな羊は美しい2」2017年2月4日発行(2017年1月30日発売)、ISBN 978-4-09-189261-4
- 「春の陽の陰」2017年7月5日発行(2017年6月30日発売)、ISBN 978-4-09-189535-6
- 漫画小冊子『ドラゴン急流』付き特別版、ISBN 978-4-09-159236-1
テレビドラマ
2024年3月からWOWOWの「連続ドラマW-30」枠にて放送・配信予定。主演は神山智洋。
キャスト
主要人物
- 雪村魁 - 神山智洋
- 伏木あかり - 松井愛莉
周辺人物
- 竹之内唯一 - 竹財輝之助
- 唐沢 - 高橋努
- 実藤寿一郎 - 大林隆介
- 按察使薫子 - 伊藤歩
- 久保園幹也 - 光石研
スタッフ
- 原作 - ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
- 脚本 - 小山正太、山崎太基、田中しおり
- 音楽 - 富貴晴美
- 監督 - 中川和博、佐々木豪
- プロデューサー - 高江洲義貴(WOWOW)、廣瀬眞子(WOWOW)、皆藤一(共同テレビ)、歌谷康祐(共同テレビ)
- 制作プロダクション - 共同テレビジョン
- 製作著作 - WOWOW
オリジナルドラマ |
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金曜日よる00:00のドラマ |
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金曜日よる11:00のドラマ |
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金曜日よる11:30のドラマ |
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東海テレビ×WOWOW共同製作連続ドラマ | 犯罪症候群 | ミラー・ツインズ | 准教授・高槻彰良の推察 | ギフテッド | ||||||||||||||||||
放送枠未定 | |||||||||||||||||||
関連項目 |
2015年 | |
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2016年 | (なし) |
2017年 | |
2018年 | |
2019年 | |
2020年 | |
2021年 | |
2022年 | |
2023年 |
MOZUスピンオフ 大杉探偵事務所
(なし)
予兆 散歩する侵略者
遠藤憲一と宮藤官九郎の勉強させていただきます | コートダジュールNo.10
アフロ田中 | 東京二十三区女 | 虫籠の錠前
殺意の道程 | 2020年 五月の恋 | ぴぷる〜AIと結婚生活はじめました〜
FM999 999WOMEN'S SONGS | 文豪少年!〜ジャニーズJr.で名作を読み解いた〜 | がんばれ!TEAM NACS | 松尾スズキと30分の女優 | こころのフフフ | 准教授・高槻彰良の推察 Season2 |前科者 -新米保護司・阿川佳代-
にんげんこわい | 今どきの若いモンは | ダブル
松尾スズキと30分強の女優 | ドラフトキング | ギフテッド Season2
2020年 | |
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2021年 |
ワケあって火星に住みました〜エラバレシ4ニン〜 | 有村架純の撮休 | 異世界居酒屋「のぶ」 | 竹内涼真の撮休
ペンションメッツア | 世にも奇妙な君物語
2021年 | |
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2022年 | |
2023年 | |
2024年 |
川のほとりで | 向こうの果て | 男コピーライター、育休をとる。 | グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ
神木隆之介の撮休 | ヒル | 異世界居酒屋「のぶ」Season 2 〜魔女と大司教編〜 | ワンナイト・モーニング | DORONJO / ドロンジョ
異世界居酒屋「のぶ」Season3~皇帝とオイリアの王女編~ | ながたんと青と-いちかの料理帖- | ドロップ | にんげんこわい2 | アオハライド Season1 | 東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-
アオハライド Season2
2021年 | |
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2022年 | 薄桜鬼 | 青野くんに触りたいから死にたい | 椅子 | オカルトの森へようこそ | 早朝始発の殺風景 |
2023年 | 杉咲花の撮休 | ウツボラ | ああ、ラブホテル〜秘密〜 | オレは死んじまったゼ! |
出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと | ひとりで飲めるもん! | 演じ屋 | キン肉マン THE LOST LEGEND
薄桜鬼 | 青野くんに触りたいから死にたい | 椅子 | オカルトの森へようこそ | 早朝始発の殺風景
杉咲花の撮休 | ウツボラ | ああ、ラブホテル〜秘密〜 | オレは死んじまったゼ!
犯罪症候群 | ミラー・ツインズ | 准教授・高槻彰良の推察 | ギフテッド
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