紅 (漫画)
以下はWikipediaより引用
要約
『紅』(くれない)は、清水としみつによる日本の漫画。少年画報社の『ヤングキング』で1999年から2002年まで連載された。単行本は既刊8巻であるが、現在絶版。
概要
清水としみつは、『青空少女隊』や『イーグルドライバー』など、戦闘機を題材にした漫画を多く手がけている。それらの戦闘機漫画はギャグが多く、どちらかというと明るい内容のものだったが、本作は主人公や舞台の設定など全体的にシリアスな雰囲気でまとめられている。また連載していたのが青年漫画雑誌だったためか、女性の裸体が描かれるなど性的描写も多い。
中東にある外人部隊が舞台だったり、国際的な民間軍事会社が暗躍するなど、『エリア88』の影響を強く感じさせるが、話の内容は『エリア88』よりは重く、話の中身も不幸な終わり方をする傾向が強い。
戦闘の展開は、中距離ミサイルを使った現代的な戦闘よりもドッグファイトに傾倒している。またそのドッグファイトにおいても、実戦では使われない曲芸のような飛び方を多用するという、動きのある絵による面白さを重視したものになっている。このようなことが実際の航空戦ではありえないことは確かであるが、同様の傾向は小林源文などが描く写実路線の架空戦記、および実際の現代戦を扱った漫画を除いては、おおむね『ファントム無頼』や『エリア88』以降の国内戦闘機漫画作品ではまま見られるものである。
当初は一話完結の話が多かったが、連載が進むにつれて複数話にわたって続いていくようになった。その後、編集長の交代により、アンケートの評価が低い、また余りにマニアックという理由で連載打ち切りとなった。これに対して作者の清水は「乗ってたマンガだけに、残念です」とコメントしている。
あらすじ
エジプト、シナイ半島。この地に所在するロシアの民間軍事会社「カチューシャ」の基地に、「赤い死神」と呼ばれるエースパイロットがいる。名はナオミ・オブライエン中尉。彼女は元IRA(アイルランド共和軍)のテロ工作員で、旅客機2機を爆破するなどのテロ行為を成功させた実績を持つが、逮捕されて懲役1000年の刑を受ける。だが、彼女の実力を見込んだカチューシャは政府機関と取引し、彼らがナオミの身元を引き受け減刑する代わりに、カチューシャが行っている世界の様々な裏仕事につかせる。ナオミは赤いステルス塗料を塗った戦闘機を駆り、各国政府の依頼を受けて要人やスパイの暗殺、軍事目標の破壊や偵察などを行っていく。
登場人物
カチューシャ
ナオミ・オブライエン中尉
ロシアの民間軍事会社「カチューシャ」に所属する戦闘機パイロット。元IRAのテロリスト。旅客機爆破の罪により累積1000年の刑に服することになったが、カチューシャの仕事を引き受けることで刑の減免と高額の報酬を受け取っている。キリアムという入院生活を送る弟がおり、報酬は主に彼の入院費用に使っている。表向きはパリの会社に勤めていることになっており、絵描きを志してパリで暮らす恋人の公彦にも本当のことは明かしていない。母親は日本人。
カチューシャが日本の企業と契約してステルス塗料の実戦評価を行っており、ナオミが搭乗する機体表面にはこれが塗られている。その塗料が赤く、またナオミの戦闘技術が優れていることから、カチューシャ内部や裏社会では「赤い死神」として知られている。
最初はMiG-29に搭乗していたが、交戦中にエンジンを損壊し飛行不能となりこれを喪失。次にミラージュVにのるが、ホワイトメースのデュポン中尉に撃墜される。最後は再びMiG-29に搭乗する。
フランツ・ロイベンシュタイン大佐
カチューシャの航空部隊の指揮官。かつて東ドイツ空軍のパイロットであったが、秘密警察(シュタージ)に勤める恋人が上官に脅迫され彼を陥れたことから、ソ連のアフガニスタン侵攻に義勇兵という形で追いやられた過去を持つ。ナオミなどに厳しい任務を課すが、部下たちを思いやっているような言動も度々見られる。個人的にドイツのクラシック機を蒐集しており、それらを基地内に分散して隠し持つ。
自身が航空機を操縦して出撃することはほとんど無いが、ホワイトメースの総攻撃の際には自らMiG-21に搭乗して(地下格納庫からのJATOによって)出撃し、F-15Eとも互角に近い戦いを繰り広げるほどの技量を持つ。アフガン侵攻時代の乗機はSu-25。
ホワイトメース
ヴィシュヌ・サミール・シン少佐
元々はインド空軍の戦闘機パイロットだったが、ナディアにスカウトされてホワイトメースに移籍する。インド空軍時代にナオミと交戦するも振り切られ、ホワイトメースに入ってからは自分は実質的な相打ちになるなど、幾たびかナオミと戦う。ホワイトメース移籍後の最初のナオミとの戦闘で負傷した際に右目を失う。
赤い死神と戦うためにホワイトメースに移籍し、勝手に出撃(事実上脱走)した茉莉花を凌駕する腕を見せ、撃墜可能であったにもかかわらずあえて見逃すなど、強い敵との戦いを何よりも欲する純粋な戦士。出世欲・金銭欲は皆無で、技術的にも精神的にも優秀なパイロット。
搭乗機はインド空軍ではミラージュ2000で、ホワイトメースに移籍後はSu-27。移籍後の一時はF-22にも搭乗したことがある。
ピエール・デュポン大尉
フランス人で、登場時は中尉。プライドが高く、嫌味で、上昇志向が強く、利己的な性格。ホワイトメースの指導者である将軍に個人的に進言してカチューシャに攻撃を仕掛けたり、ナオミと空中戦を挑むなど実績を上げることに勤しむが、実力以上に自分を大きく見せたいという虚栄心が強い。また自分の失敗をもみ消す為に部下の機を撃墜するなど、自己中心的な人物が多いホワイトメースの中でもかなり卑怯な行動をする。ミラージュVに乗るナオミに対するに最新鋭機のラファールを組織に要求したことから、シン少佐には訓練生並みの腕だとバカにされる。実際にナオミと交戦した際には機体性能の差もあって撃墜に成功し、赤い死神を殺したと戦果報告をしたものの、ナオミは脱出して生存していた
ハミルからは「ヒゲのラファール野郎」、ダイアナからは「ヒゲオヤジ」とあだ名を付けられる。
搭乗機体はF-15→ラファール。
リン・カスケード少尉、ダイアナ・カスケード少尉
アメリカ空軍
航空自衛隊
飛矢間三四郎はイーグルドライバーの主人公であり、青空少女隊にもカメオ出演のような形に登場した、清水の戦闘機漫画ではお馴染みのキャラクター。これら過去の作品での飛矢間は腕は立つがお調子者という、清水のギャグを象徴するような明るいキャラクターであった。しかし紅ではどこか陰のあるベテランパイロットといった佇まいで、作品の雰囲気にあわせてかそれまでとは全く違うキャラクターになっている。また青空少女隊では航空自衛隊史上最年少の1佐として登場していたがこの作品では2佐となっており、見た目もそのころと比べて年齢を経ているようであるから、過去の作品と世界観を共有するのであればなんらかの理由で降格されたことになる。ただし紅とイーグルドライバー及び青空少女隊が同一世界観かは分からないので、パラレルな世界観で過去作品とは異なる飛矢間三四郎とみることもできる。
三島藤次郎2等空尉
飛矢間とともにスクランブルを行ったパイロット。母親思いである一方、失言癖があり、しばしば上官である飛矢間2等空佐より忠告を受ける。ナオミの懐柔・引き抜きを決意したロマノーヴァの依頼を受け、ナオミらをスパイしようと試みる。その後ロマノーヴァとは別の思惑(ハミルの再抹殺)で暗躍していたアメリカ空軍大佐(ホワイトメース幹部でもある)より接触を受け、大佐が用意した通常のステルス塗料を塗ったF-15に乗る。しかし、赤いステルス塗料の機密を探っていた某国工作員(女性の殺し屋)にホテルで襲撃され負傷したハミルは想定空域に現れず、代わりにナオミがテスト飛行で姿を見せる。競合組織のエース ナオミの撃墜で組織での序列が上がる事を優先させる事に急遽気を変えた大佐の指示を受け、ナオミを倒そうと東京上空で戦闘を仕掛ける。しかし反撃を受けて機体は損壊。飛行継続が不可能になり、己の持つ自衛隊員としての矜持に従い、民間人に害が及ばぬ様、河川に機体を落として自身は直前で脱出しようとする。しかし射出座席が事前に細工済みで作動させられずそのまま墜落、死亡。
ソ連空軍
民間人
用語解説
カチューシャ
ナオミをFBIから身請けするなどアメリカ政府にも一定の影響力を持つが、保有する航空機はF-5E/F タイガーIIやMiG-21、Su-17/20/22などの旧式機が大半で新鋭機はMiG-29数機(訓練用の複座型も保有)のみ、シン少佐との空戦でナオミのMiG-29が墜落した後の代替機にミラージュ5をあてがう有様であり、経済状態はさほど潤沢ではない。ホワイトメース(デュポン)による総攻撃で基地は壊滅的状況に破壊され、組織の決定で基地再建は断念される。実戦部隊部門の解散も決まるが、直後に赤いステルス塗料の軍用機転用実績をめぐる開発メーカーへの報告・実地検証の為、ナオミ、フランツ、ハミルの三名は日本(航空自衛隊小松基地)へ向かう。
ホワイトメース
ステルス塗料
フランツのクラシック機コレクション
フランツがカチューシャ施設内随所に秘匿した私物の第二次世界大戦中ドイツ機コレクション。フランツ不在の際、何度もサイラスと部下達に発見されては、勝手にレストア・試乗(大概、飛行中に故障・爆発)されている。
- メッサーシュミット Me163 "コメート" - ナオミが搭乗するも機体爆発。
- メッサーシュミット Me262 "シュヴァルベ" - サイラスに偽造されたフランツとの逢い引きコラージュ写真を恋人に送付すると脅されたナオミが搭乗する直前、愛機の異変に気付いたフランツが奪還。ほんの一時、恍惚感を味わった後、機体爆発。
- バッヘム Ba349 "ナッター" - まだ見ぬ祖国日本を一目見たくカチューシャからの脱走を試みる茉莉花に奪われるのを阻止するため、サイラスにより遠隔爆破。