累
以下はWikipediaより引用
要約
『累 -かさね-』は、松浦だるまによる日本の漫画、およびその映像作品。『イブニング』(講談社)にて、2013年10号から2018年17号まで連載された。醜い顔でありながら卓越した演技力をもつヒロインが、口づけをした相手と顔と声を入れ替えることができる口紅の力を使い、他人の顔を奪いながら舞台女優として活躍していく姿を描く。スピンオフ小説『誘 -いざな-』もあわせて記載する。
2009年と2012年にイブニング新人賞でそれぞれ優秀賞を受賞した松浦だるまの連載デビュー作。松浦が初投稿作『チョコレートミントの初恋』の後、二作目の構想中に得た「キスをしたら顔が入れ替わる」というアイデアを元に、「口紅」というキーアイテムや「美醜」というテーマ、そして怪談『累ヶ淵』と、自身も経験したことのある「演劇」の要素を足していくという形で作られた。
累計発行部数は12巻の時点で200万部を突破。2015年には第39回講談社漫画賞の一般部門にノミネートされたほか、全国書店員が選んだおすすめコミック2015で9位、次にくるマンガ大賞2015「これから売れて欲しいマンガ」部門で10位、マンガ大賞2015で10位に入るなどの評価を受けている。
2014年12月16日には主人公の母親「誘」の成り立ちを描いたスピンオフ小説『誘 -いざな-』が出版されている。
2017年に実写映画の製作が発表され、2018年9月7日に公開された。
あらすじ
今は亡き伝説の女優・淵透世の娘・淵累は、亡き母とは似ても似つかない醜い容姿が原因で周囲の人間から心無い仕打ちを受け続けてきた。そんな累はある時、母が遺した一本の口紅に「口づけをした相手と顔を入れ替える力」があることを知る。その力を使って舞台に立った累は、母譲りの演技力を発揮して芝居の楽しさや美貌から得る喜びを覚えると同時に、母も他人の顔を奪って生きていたのだと直感する。
やがて母の協力者・羽生田釿互と出会った累は、彼の協力の元、無名の美人女優・丹沢ニナの顔を奪って女優として活躍していく。しかしそこに「本物の淵透世」の娘・野菊が現れる。野菊は母からすべてを奪い死に追いやった誘(累の母の本名)を恨み、彼女の娘である累への復讐を考えていた。野菊は自身の素性を隠して累に近づき、累が女優・咲朱として活動するための協力者として振る舞うが、羽生田によって素性と思惑を看破され、監禁されてしまう。
累に高校時代の先輩でもある女優・五十嵐幾とダブルキャストの舞台の仕事が入る。しかし上演前日、野菊が自身の情夫・天ヶ崎祐賭と五十嵐幾の協力で累の元から逃亡する。野菊を失い咲朱として活動できなくなった累は、消息を絶つ。累は自身のルーツである母の足跡を辿り、一つの決意を固める。それぞれの想いを胸に再び対峙した累と野菊は、「次の舞台を最後にする」という累の約束の元、咲朱を復帰させる。
こうして母と母の出生の地である「朱磐」の伝承をモチーフにした舞台・『暁の姫』に美しい巫女の役として臨むことになった累だったが、稽古を続けるなかで幾が演じる醜い鬼女に自らの姿を重ねてしまい、演技が出来なくなる。その結果『暁の姫』は公演中止となるが、累の意志と誘の遺志を受け入れた羽生田によって『宵暁の姫』として再始動。累は「累」そのままの姿で鬼女役として舞台に立ち、「累」として舞台を演じきる。
だが、舞台を降りた累を待っていたのは丹沢ニナの母親・紡美による復讐だった。累は口紅の永久交換で体丸ごと入れ替えられ、「女優・淵かさね」殺しの汚名を着て、余生を送ることを受け入れる。
登場人物
主要な人物
淵 累(ふち かさね)
本作の主人公。目を背けたくなるような醜い顔と、小学5年時に西沢イチカとの諍いで出来た右頬の大きな傷跡が特徴的である。その外見が原因で周囲から虐げられ続けたため、自身の容姿にコンプレックスを抱いている。
母親譲りの突出した演技力と演劇や舞台に対しての執着を持ち、母の遺品である「口づけをした相手と一定時間顔を入れ替える力を持った口紅」を使い、他人の顔を奪いながら女優として名声を得ていく。徐々に女優としての顔と内面にズレを感じ演技ができなくなるが、最後は自身と向き合い「累」として舞台に立った。しかし、すべての真相を知った丹沢紡美に復讐され、世間から忘れ去られることになった。
女優・丹沢 ニナ(たんざわ ニナ)
累が同名の若手女優「丹沢ニナ」の顔を得て成り代わった姿。烏合の演出作品『かもめ』で主役を演じたこときっかけに脚光を浴び、「淵透世の再来」と評されるほどの女優として活躍したが、ニナの死亡に伴って顔が使えなくなったために姿を消し、世間的には失踪という扱いを受ける。
野菊(のぎく)
丹沢 ニナ(たんざわ ニナ)
若手美人女優。眠り姫症候群を患っている。女優として世に名声を残すことと、自身が女優を目指すきっかけとなった演出家・烏合の演出作品に出るという夢が諦められず、累に自分の顔と名前を貸し、「女優・丹沢ニナ」として活動させていく。
結果として望みは全て叶うものの、烏合をめぐって累と対立。烏合が惹かれていたのが「女優・丹沢ニナ」であったことや「女優・丹沢ニナ」が自分の実力以上に活躍したこと、また眠り姫症候群が徐々に悪化し自身がほぼ活動できなくなったことで全てを「女優・丹沢ニナ」に乗っ取られたと感じて精神を病み自殺を図る。
一命を取り留めて植物状態となった後は累と羽生田によって「女優・丹沢ニナ」の「材料」として利用され続けていたが、ある日意識のみを取り戻し、自分の意志に唯一気づいた野菊に頼んで自殺を遂げる(殺害される)。その後彼女の遺体は羽生田によって秘密裏に処理されたため、世間的な扱いは死亡ではなく失踪となっている。
五十嵐 幾(いがらし いく)
羽生田 釿互(はぶた きんご)
天ヶ崎 祐賭(あまがさき ゆうと)
誘(いざな)
累の母。故人。累と同様の醜い容姿の持ち主。
朱磐という村の出身で、村に残る「丙午の年に生まれた醜い女児は殺す」という因習を受けて殺されそうになっていたという過去をもつ。朱磐で顔を交換する力をもつ朱顔料を入手したのち、羽生田を除く村人全員を殺害して村に火を放って街へと出る。そこで小劇場で活動する劇団員・透世と出会い、彼女の顔を使って「女優・淵透世」として名声を得ていく。
「女優・淵透世」に惹かれた演出家・海道与と恋人同士となり結婚もするが、累を出産したことで誘と透世の関係が露見し、以降は仮面夫婦として過ごしていた。最期は与により川へ落とされた累を助けて死亡したとされていたが、この際死亡したのは「本物の淵透世」であり、誘自身は与により監禁され徐々に衰弱するも、なかなか死なないことに業を煮やした与の命を受けた羽生田により「本物の透世」だと思われたまま殺されている。
淵 透世(ふち すけよ)
野菊の母。故人。小劇場で活動する劇団員で、女優を任されていた。しかし演技は拙く、本人は役者よりも衣装の制作に強い意欲を持っていた。劇場にて空腹で倒れた浮浪者の誘を介抱し、その美貌と人の甘さから誘の標的となる。
口紅の効果を知った当初は「自分自身が演技するよりも劇団の仲間や客が喜ぶし自分も衣装の制作ができる」と誘が自分の顔を使って舞台に立つことをむしろ応援していたが、想い人である与が「女優・淵透世」となった誘と結婚したことから複雑な思いを抱き、与が「女優・淵透世」の真相を知るように仕向ける(ただし仕向けたと羽生田が推測しているのみで真意は不明)。
その後は誘を拒絶する与と関係を持ち野菊を儲けるにまで至るが、誘のような才能も知性も持っていないとして失望され、「女優・淵透世」の「材料」として地下室に監禁されるようになる。
誘の計らいで累とともに与のもとから逃げ出そうとするが、川へ落とされた累を助け、周囲の人間には「女優・淵透世」だと思い込まれたまま濁流に飲まれて死亡した。
その他の人物
西沢 イチカ(にしざわ イチカ)
淵 峰世(ふち みねよ)
累の伯母で、母を亡くした累の未成年後見人。血縁的には「本物の透世」の姉であるため、野菊の伯母に当たる。表向きは姪の累を手厚くいたわる聡明で心優しい伯母を演じているが、実際は利己的な性格で、誘の遺産のみを目当てとして累のことは冷遇していた。累(顔を入れ替えられ、累だと思われているニナ)が植物状態となった際も、延命や介護を渋るなどの冷淡な態度を示す。
丹沢 紡美(たんざわ つぐみ)
烏合 零太(うごう れいた)
雨野 申彦(うの のぶひこ)
海道 与(かいどう あたえ)
富士原 佳雄(ふじはら よしお)
平坂 千草(ひらさか ちぐさ)
用語
口紅
顔を永久交換するためには「日紅」に両者の「月紅(血液)」を塗ってくちづけすることが必要。永久交換すると顔だけでなく全身が入れ替わる。
書誌情報
- 松浦だるま 『累 -かさね-』 講談社〈イブニングKC〉、全14巻
- 2013年10月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-352485-7
- 2014年1月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-352497-0
- 2014年5月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-354516-6
- 2014年10月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-354539-5
- 2015年3月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-354564-7
- 2015年7月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-354583-8
- 2015年11月20日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-354598-2
- 2016年4月22日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-354615-6
- 2016年8月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-354632-3
- 2016年12月22日発行(同日発売、ISBN 978-4-06-354649-1
- 2017年6月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-354667-5
- 2017年10月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-354691-0
- 2018年4月23日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-511133-8
- 短編小説付き特装版 同日発売、ISBN 978-4-06-511252-6
- 2018年9月7日発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-512567-0
- 松浦だるま『松浦だるま「累」画集 紅虹』 2018年9月7日発売、ISBN 978-4-06-513569-3
- 短編小説付き特装版 同日発売、ISBN 978-4-06-511252-6
小説『誘 -いざな-』
『誘 -いざな-』は、『累 -かさね-』のスピンアウト小説。2014年12月16日に星海社から発売。著者は原作漫画の作者・松浦だるまであり、同氏の小説家デビュー作となっている。刊行の際にはミステリー作家の綾辻行人からコメントが寄せられ、「漫画家離れした本格的な文章力」として絶賛された。
あらすじ(小説)
とある雷雨の夜、朱磐(あけいわ)という村に一人の醜い女児が生まれる。「いざな」と名付けられたその少女は、村に伝わる「丙午の年に生まれた醜い女児は殺せ」という因習に沿って殺されそうになっていたが、母・かづらと出産に立ち会った助産師・平坂千草によって助けられ、その存在を隠されながら育つ。そうして18歳まで成長したいざなは、ある日自分を匿っていたがために千草が村八分にされていたということを知ってしまう。朱磐村の因習や村人たちに激しい憎しみを覚えたいざなは、村に伝わる朱顔料「日紅(ひべに)」の力を使い、朱磐の人間たちに復讐をする。
登場人物(小説)
いざな
平坂 千草(ひらさか ちぐさ)
槻 かづら(つき かづら)
朱砂野 釿互(すさの きんご)
槻 笹江(つき ささえ)
槻 浪乃(つき なみの)
海道 凪(かいどう なぎ)
書誌情報(小説)
『誘 -いざな-』 著 - 松浦だるま / 絵 - 松浦だるま / 発行 -星海社〈星海社FICTIONS〉
- 2014年12月15日発行(2014年12月16日発売)、ISBN 978-4-06-139910-5
実写映画
2018年9月7日に公開。佐藤祐市監督、土屋太鳳と芳根京子がダブル主演を務めた。
第18回ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭で「観客賞」を受賞。
キャスト
- 丹沢ニナ - 土屋太鳳
- 淵累 - 芳根京子
- 烏合零太 - 横山裕
- 淵峰世 - 筒井真理子
- 丹沢紡美 - 生田智子
- 富士原佳雄 - 村井國夫
- 淵透世 - 檀れい
- 羽生田釿互 - 浅野忠信
スタッフ
- 原作 - 松浦だるま『累-かさね-』(講談社「イブニングKC」刊)
- 監督 - 佐藤祐市
- 脚本 - 黒岩勉
- 音楽 - 菅野祐悟
- 主題歌 - Aimer「Black Bird」(SME Records)
- 製作 - 石原隆、市川南、吉羽治
- プロデューサー - 上原寿一、橋本芙美、片山怜子
- ラインプロデューサー - 武石宏登
- 撮影 - 谷川創平
- 美術 - 相馬直樹
- 照明 - 李家俊理
- 録音 - 田中靖志
- 装飾 - 田口貴久
- 編集 - 田口拓也
- 人物デザイン監修・衣装デザイン - 柘植伊佐夫
- スクリプター - 松澤一美
- 音響効果 - 岡瀬晶彦
- 選曲 - 藤村義孝
- キャスティング - 川村恵
- 助監督 - 加藤文明
- 制作担当 - 持田一政
- 配給 - 東宝
- 制作プロダクション - 共同テレビジョン
- 製作 - 映画「累」製作委員会(フジテレビジョン、東宝、講談社)