絡新婦の理
以下はWikipediaより引用
要約
『絡新婦の理』(じょろうぐものことわり)は、京極夏彦の長編推理小説・妖怪小説。百鬼夜行シリーズ第五弾である。
書誌情報
- 新書判:1996年11月、講談社ノベルス、ISBN 4-06-181932-1
- 文庫判:2002年09月、講談社文庫、ISBN 4-06-273535-0
- 分冊文庫判:2006年1月・2月、講談社文庫、 ISBN 4-06-275288-3、 ISBN 4-06-275289-1、 ISBN 4-06-275316-2、 ISBN 4-06-275317-0
あらすじ
聖ベルナール女学院には、「蜘蛛の悪魔」を崇拝し、冒涜のために売春を行う秘密サークル「蜘蛛の僕」が存在した。麻田夕子は売春が露見しそうになり、邪魔者に悪魔の呪いをかける。すると相手は本当に死んでしまう。呪いの噂を聞いた渡辺小夜子は、自分を慰み物にしている男性教師を殺して欲しいと、悪魔に願う。呉美由紀は、悪魔なんていないと一喝するも、夕子が呪った前島八千代と、小夜子が呪った本田幸三が、呪ったとおりに殺される。そこに理事長の織作是亮が、美由紀が売春組織の一員と思い込み、金をよこせと脅迫してくる。小夜子は、今度は是亮を呪う。
房総半島を訪れた伊佐間一成は、骨董商の今川雅澄と共に、骨董鑑定のために近在の旧家・織作家の屋敷へと赴く。だがそこで織作是亮が絞殺される。
刑事木場修太郎は、4人を殺した連続殺人犯「目潰し魔」の捜査に奔走する内、友人の川島新造が何らかの手がかりを持っているのではないかと踏む。しかし新造は「蜘蛛に訊け」と謎めいた言葉を残して行方をくらませる。木場は手がかりを辿って川島喜市から織作家へと行き着き、伊佐間たちと合流する。しかし川島新造と高橋志摩子は真犯人の計略にはまっており、志摩子は殺されてしまう。
増岡弁護士は、聖ベルナール女学院の不祥事対処について相談するために、榎木津礼二郎の探偵社を訪れる。だが榎木津は不在で、探偵助手の益田龍一が人探しの依頼を受けたところであった。増岡と益田は連れたって中禅寺秋彦のもとを訪れ、2人の目的の趣旨に「目潰し魔」「織作家」という共通項がある偶然を不思議がる。中禅寺は「不思議なものか」と言いつつも「その偶然はすでに、誰かの張った蜘蛛の巣の上に乗っていないか?」「僕ら3人は網に掛かっている」と述べる。
やがて益田は榎木津に伴って聖ベルナール女学院に赴き、美由紀から話を聞く。今川は、織作家にかけられた天女の呪いを解くよう、中禅寺に憑物落しを依頼する。
登場人物
主要登場人物
伊佐間 一成(いさま かずなり)
今川 雅澄(いまがわ まさすみ)
益田 龍一(ますだ りゅういち)
中禅寺 秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)
犯人
蜘蛛(くも)
聖ベルナール女学院
呉 美由紀(くれ みゆき)
2年3組。13歳。水産会社社長令嬢。女学院パートの視点人物。
ひょろひょろと背が高く、腕も脚も長い。気骨があり、友人が困っているのを放っておけない質だが、鈍感で細かな機微には長けておらず、心中を察するのは苦手。
親友の渡辺小夜子の身を案じて行動するうち、学院内で起こった事件に巻き込まれてしまう。悪魔などいないと考えつつ、黒い聖母らしき人影を追って本田の殺害現場を目撃、小夜子が校舎屋上から飛び降りるのを見て気絶するが、目を覚ますと何故か小夜子ではなく夕子が転落死したと告げられ、売春組織との関連を疑われて是亮や海藤に厳しく尋問されて金銭を要求される羽目になる。誰にも言えず、藁にもすがる思いで祖父に相談し金を頼む。
続編の『今昔百鬼拾遺』シリーズにも主人公として登場する。
渡辺 小夜子(わたなべ さよこ)
麻田 夕子(あさだ ゆうこ)
本田 幸三(ほんだ こうぞう)
織作家
織作 五百子(おりさく いおこ)
織作 雄之助(おりさく ゆうのすけ)
織作 真佐子(おりさく まさこ)
織作 茜(おりさく あかね)
織作 葵(おりさく あおい)
織作 碧(おりさく みどり)
織作 是亮(おりさく これあき)
出門 耕作(でもん こうさく)
奈美木 セツ(なみき セツ)
織作 伊兵衛(おりさく いへえ)
織作家の近在
呉 仁吉(くれ にきち)
興津町鵜原の元漁師。63歳。美由紀の祖父で、出門耕作の友人。境だが稚気に溢れ、純朴で善良な性格をしており、僻みや中傷から発する愚考を嫌う。
12歳から海に出て44年間漁師をしていたが、56歳の時、蘇我の友人を訪ねた際に千葉空襲に巻き込まれ足を痛めて引退した。以降も海から離れることを嫌い、息子夫婦が転居した後も、錆びたトタン葺きも寒々しい粗末な一軒家に一人で住み続けている。息子の仕送りで生計を立てているので働く必要はないが、至って元気で暇を持て余しているので、細細と干物などを作っている。
趣味は漂流物の蒐集で、神像や土器陶器、古銭などを大量に保管している。この癖のせいで妻には随分叱られて、取っ組み合いの喧嘩をしたこともあった。
釣り旅行に来ていた伊佐間と親しくなり、自宅に宿泊させる。美由紀に相談されたことで、蒐集品を売却して金を工面することを決め、伊佐間の戦友である今川を招く。
目潰し魔事件関係者
平野 祐吉(ひらの ゆうきち)
川島 新造(かわしま しんぞう)
川島 喜市(かわしま きいち)
矢野 妙子(やの たえこ)
川野 弓栄(かわの ゆみえ)
山本 純子(やまもと すみこ)
前島 八千代(まえしま やちよ)
多田 マキ(ただ マキ)
高橋 志摩子(たかはし しまこ)
降旗 弘(ふるはた ひろむ)
人探し関係者
杉浦 隆夫(すぎうら たかお)
警察
磯部(いそべ)
用語
婦女目潰し殺人事件(ふじょめつぶしさつじんじけん)
聖ベルナール女学院(セイントベルナールじょがくいん)
社会的地位の高い金持ちの家庭の子女や、家柄の善い旧華族や士族の令嬢などが多くを占め、地位も名誉もない一般家庭の娘の入学は難しい。一応は名門校であるが、房総半島の端の人里離れた辺境という悪過ぎる立地条件のため知名度は低い。
施設は校舎の他に果樹園、温室、畑、厨房棟、食堂、聖堂、礼拝堂、ジェノヴァのパラッツォ・ムニシピオを模した3棟の寮棟、特待生専用の個室棟、教員棟から構成され、生徒の間では七不思議が噂されている。元々天然の泉があったところに建てられたので、今も敷地の真ん中には噴水がある。
学校名は校舎を建てたフランス人建築家ベルナール・フランクに由来し、12世紀フランスの聖ベルナールとは無関係。
呪い(のろい)
黒い聖母(くろいせいぼ)
蜘蛛の僕(くものしもべ)
織作家(おりさくけ)
元々千葉県勝浦の素封家で、一説には植村忠朝が勝浦城に入った万治2年にはもう家があったと云う。天女の羽衣を売った大金で長者になった云う天人女房譚が伝わっており、天女の血筋なので女が多く産まれ、男を祟り殺すので入り婿が早死にすると云う噂も囁かれる。
網元でも豪農でもないが昔から金持ちで、先々代・嘉右衛門が興した織作紡織機は明治から大正にかけて力織機の大量生産で儲け、明治35年には先代・伊兵衛が「御殿」「蜘蛛の巣館」などと呼ばれる邸宅を建てた。地元民からは僻まれていたが、伊兵衛は聖ベルナール女学院を創設するなど地元に貢ぐようになったため、今では土地の名士として信頼を勝ち取っている。
織作御殿
木材は黒く塗装され、石造りの門柱も煉瓦造りの塀も黒く、真鍮の部分も黒く変色して、まるで書割のように影色に塗られている。中は瀟洒で細密な凝った意匠が施されているが、やはり漆喰以外の木材部分は皆黒く塗られている。洋館であり乍ら、勝浦城のようにまるで侵入を拒むが如き立地から戦国時代の城のような印象を与える。前庭の中は一面に桜の木が80本以上も植えられており、苔生した墓石群が並ぶ墓所もある。
敷地に四角く建っているが、立体的、且つ放射状に部屋があり、各階の各部屋を廊下や階段が縦横無尽に繋いでいると云う複雑怪奇な設計で、隣の部屋へ行くにも階段の昇降が必要なこともあるなど、正に迷路か蜘蛛の巣のように入り組んでいる。館には幾つか開口部があり、その出入り口の数だけ部屋の連なる筋がある、と云う構造になっており、2つの扉のうちひとつが外に向けて開いている部屋を起点とし、部屋の大小や階層は関係なく、扉が2つの部屋は全て単なる通路、廊下と階段は扉同士を繋ぐ長い接点、正面から入って螺旋階段に至る吹き抜けのホールも含めて扉が4つある部屋は交差点に過ぎず、筋の終点が家の中心となっている。
大量の書物や骨董品も所蔵しており、中には植村恒朝から下賜された牧谿作の達磨などの名品もあるが、雄之助が騙されて買った贋作も多い。
漫画
志水アキにより漫画化され、「マガジンSPECIAL」で連載された。
書誌情報
- 京極夏彦 / 志水アキ 『絡新婦の理』 講談社〈KCマガジンコミックス〉、全4巻
- 2015年10月16日発行 ISBN 978-4-06-395521-7
- 2016年4月15日発行 ISBN 978-4-06-395653-5
- 2016年10月17日発行 ISBN 978-4-06-395787-7
- 2017年3月17日発行 ISBN 978-4-06-395903-1