翔んで埼玉
以下はWikipediaより引用
要約
『翔んで埼玉』(とんでさいたま)は、魔夜峰央による漫画。『花とゆめ』(白泉社)1982年冬の別冊および、1983年春の別冊・夏の別冊に3回に分けて連載された。
2019年2月22日に実写映画版の第1作が公開、続編は当初の予定から1年以上延期された後(詳細は#第2作を参照)、2023年11月23日に劇場公開された。
制作の背景
作者の魔夜は地元の新潟に住んでいたが、仕事が増えてきたため東京に引っ越すことを考えた。そこで、『パタリロ!』の掲載誌である『花とゆめ』編集長(当時)に相談したところ、「どうせ(関東地方に)出てくるなら同業者(漫画家)が多く住み交通の便が良い西武線沿線がよかろう」というアドバイスを得た。そのため魔夜は1978年 - 1979年ごろ、新潟から埼玉県所沢市に転居した。
転居前の魔夜は都会の関東地方に住めると浮かれていたものの、魔夜の出身地の新潟市と比較しても、当時の所沢市はまだそれほど開発されていない関東の一地方都市に過ぎず、さらに魔夜の自宅から車で10分もかからない距離の近所に、その編集長と上司に当たる白泉社の編集部長の2名が居住していることが判明した。「編集部から締め切りを催促されたり、連載打ち切りを通告しに来るかもしれない」という極度のストレスの中、4年間も地方都市の所沢に住み続けざるを得ず、その合間に憂さ晴らしとして執筆したのが本作品である。
自分が住んでいる埼玉県を「おちょくる面白さ」を狙ったものの、第3話まで執筆した後に魔夜がついに我慢の限界がきてしまい、神奈川県横浜市に転居する。その後も本作の連載を続けようと思っていたが、単に「埼玉県に対する悪意のある作品となってしまう」懸念から漫画連載を中断、「未完の漫画作品」となった。
ただし、魔夜によればそれは表向きの理由で、真の理由は「本当のことをいうと描けないんです。いま埼玉をディスってごらんと言われても、私の中にそういう部分がない」点を挙げている。また、連載時の状況について「一時的な気の迷いだったんでしょうね。錯乱していたのかもしれない。おっかない看守がふたりいて、独房の片隅で何とか自分を発散したい、ここから逃げ出したい!と、もう半狂乱で描いていたんでしょうね。相当追い詰められていたのではないかと」と語った。
なお、本作品では埼玉県以上に茨城県も「日本の僻地」という酷い描かれ方をしているが、これは魔夜の妻でバレエダンサーの山田芳実が茨城県出身であることから「身内の地元ならば少しぐらいおちょくってもいい」と考えたためである。ただし後日、本作品を起因として妻が親戚からクレームをつけられたという。魔夜は地域をおちょくるネタをよく使い、「埼玉と茨城に挟まれた」千葉県もパタリロにおいて『僻地』とされ、酷い描かれ方をしている。
反響
1986年に、白泉社より短編集『やおい君の日常的でない生活』に収録される形で刊行されたが、このときはあまり話題にならなかった。また、この本のあとがきに、魔夜は本作が未完になったことへの懸念を示していた。白泉社版の単行本は後に絶版となった。
2015年2月に、魔夜峰央の娘で、魔夜の広報を担当する山田マリエ(現在は漫画家として活動)が、Twitter上で本作に言及した。このことをきっかけに、本作がネット上で徐々に注目されるようになっていく。2015年9月に、当時龍谷大学の講師であった中井治郎が、当時絶版だった『やおい君の日常的でない生活』を取り寄せ、Twitter上で本作の一部を解説付きで詳しく紹介したことにより、本作の衝撃的な内容がネット上で話題になった。
宝島社編集者(当時)の薗部真一によると、ネット上での本作に関する盛り上がりを見た「このマンガがすごい!」の複数の選者から、本作をぜひ復刊すべきとの推薦コメントが寄せられ、2015年12月に本作が宝島社から復刊されるに至った。本作の内容は2015年11月2日にテレビ番組『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系列)でも取り上げられ、このことによりさらに大きな反響を呼んだ。宝島社は当初、初版2万5000部の発行を計画していたが、反響の大きさを見て、部数を20万部へと増刷した。
2016年2月時点で発行部数は50万部を突破した。本作のヒットを記念して宝島社は埼玉県各市の市長にコメントを依頼し、所沢市・行田市・飯能市の市長からコメントが寄せられた。埼玉県知事(当時)の上田清司も「悪名は無名に勝る」と肯定的なコメントを出している。作者の魔夜は発表30年以上を経た後の好反響について「なぜ売れているのか分からないが、この作品をきっかけに、他の作品も注目されればうれしい」と語った。
魔夜は本作が復刊される前、厳しい経済的苦境に立たされていた。出版不況などにより印税が減少し、愛用の腕時計などを売却して自らの生活費を捻出せざるを得ない状況まで追い込まれていた。仕事場の家賃も7~8年近く滞納した結果、累積滞納額は約1200万円にも上り、滞納を長年容認してきた大家からもついに退去を求められた。このことは、娘の山田マリエが自身の漫画でも取り上げている。しかし、2015年に本作が復刻されて大ヒットしたため、魔夜のもとには多額の印税収入が一気に入り、滞納していた家賃などの借金を全額返済することができたと、2019年6月18日放送のNHK「ごごナマ」で魔夜本人が語っている。
その後も本作の勢いは止まることがなく、映画公開後の2019年8月25日に投開票された埼玉県知事選挙の啓発広告として、埼玉県選挙管理委員会が本作品を採用した。「無関心は、ださいたま!」などと自虐的に知事選への投票を促すYouTube動画が15万回再生されたり、投票率も32.31%と16年振りに30%台を回復するなどの反響を呼んだ。さらに、10月27日に投開票された参議院埼玉県選挙区補欠選挙の啓発広告でも採用された。
2021年、作中の代表的なセリフである「埼玉県人には、そこらへんの草でも食わせておけ!」にちなんで、春日部市のスーパーや飲食店で4月1日から「そこらへんの草天丼」などのグルメが出始め話題となっている。なお、「そこらへんの草」は雑草ではなく、埼玉県産の新鮮な野菜を使用している。
魔夜によると埼玉県民から本作品に対するクレームは、2015年時点では「まだ無い」とのこと。本作は、2019年に実写映画化された。制作したフジテレビと東映では当初、埼玉方面からクレームが来る可能性を懸念していたものの、上映後には埼玉県民や埼玉県、県内自治体から本作を応援する声が多数届いたことに驚き、2023年に実写映画2作目が公開された。詳しくは#映画1作目制作の経緯を参照。
あらすじ
出身地・居住地によって激しい差別が行われている、架空世界の日本。東京都区部の名門校・白鵬堂学院に麻実麗という男子学生が転入してくる。容姿端麗で都会的な物腰を身に着け、学問・スポーツ共に優れた麗に学院の学生たちは魅了され、当初は麗に反発していた生徒会長・白鵬堂百美も、やがて麗を慕うようになる。
しかし、麗の正体は埼玉県で一・二位を争う大地主・西園寺家の子息だった。麗の父親は大金を使って麗を東京都の丸の内で証券会社を経営する麻実家の養子にし、さらにアメリカ合衆国に留学させることで都会的な物腰を身につけさせ、ゆくゆくは麗を政治家にして、埼玉県民に対する差別政策を撤廃させようと目論んでいたのだ。
だが、デパートで麗が埼玉県出身の家政婦おかよを庇ったことにより、麗もまた埼玉県出身であることが露見する。麗は百美に別れを告げて、所沢市へと戻り埼玉県民解放のための抵抗運動を始める。一方、百美は自宅を訪れた政界の実力者・階階堂進が地方出身者に対する差別政策を維持するために、麗のレジスタンスグループを殲滅しようと話しているのを耳にする。
百美は麗に危険を知らせるために所沢市へと向かい、麗を自分が勉強部屋代わりに借りている東京都心のマンションに匿う。しかし、マンションの住民にサイタマラリヤの患者が発生したことで、マンションに警察の手が伸びる。やむなく麗は百美を連れて埼玉県民居留地に身を隠すが、所沢でサイタマラリヤに感染していた百美が発症してしまう。埼玉県民居留地にやって来る医師などおらず、やむなく麗は百美を助ける代わりに警察への出頭を申し出る。しかし、警察の代わりに麗の身柄を拘束しに来た階階堂の部下は約束を反故にし、百美を助けようとはしなかった。
麗と百美が絶体絶命のピンチに陥る中、伝説の埼玉県民・埼玉デュークの部下が現れ、階階堂の部下を蹴散らし、さらには百美を助けるための血清を麗に渡して去っていく。危機を救われた麗と百美は埼玉デュークを探すための新たな旅に出る。(未完)
登場人物
麻実 麗(あさみ れい)
白鵬堂 百美(はくほうどう ももみ)
白鵬堂学院自治会長。名前も外見も女性風だが、れっきとした男性(いわゆる男の娘)。学院の理事長の孫で、当初はそのことを鼻にかけて横暴な態度をとっていた。しかし、隙がないために友達が出来ないことを麗に指摘され、さらに麗にキスされたことで(アメリカ生活が長い麗にとっては「挨拶代わり」だったが)、同性ながら麗に対して激しい恋心を抱くようになり、それを機に性格も丸くなり、弱者に対して憐みの心を持つようになった。麗に対する恋心から、麗の運動を支援する。
実写映画版では、苗字が「檀ノ浦」に、父親の職業が東京都知事に変更されている。学校やデートでは白いロングブーツを履いている。原作と同じく、髪型はボブカットで左目の下にほくろがある。
おかよ
階階堂 進(かいかいどう すすむ)
田麩(でんぶ)警部
用語解説
映画版で追加された主要な用語は#用語解説_(第1作)、#用語解説_(第2作)を参照。
埼玉県
埼玉県民は作中世界の10年ほど前までランプといろりで生活しており、作中世界の現代においてようやく電化が始まったが、埼玉県民は電気の存在に慣れていない。
埼玉県民の中では比較的文化水準が高いと思われる麗の父親ですら、俳句を満足に詠むことが出来ず、常識的な慣用表現を理解できない。
埼玉の若者は慎太郎刈りや進駐軍放出のジャンパーを最新のファッションと思っており、「マシーン」と呼ぶヤンマー耕うん機に乗っている。
東京都と埼玉県の間には関所があり、埼玉県民は通行手形がないと関所を通過できない。東京都内では埼玉県民は徹底的に差別されており、東京都で病気や怪我をしても、医師にかかることを許されず、百貨店への立ち入りを禁止されており、埼玉県民居住区での生活が義務付けられている。
実写映画版では、四方を陸に囲まれた海なし県であるため、海を持つことと埼玉県産のサザエを名物とすることが埼玉県人の悲願となっているが、このことが「海のある県」である千葉県との対立要因ともなっている。また、埼玉県人は深谷市の名物である深谷ネギを時に武器として手にする。
実写映画版第2作『琵琶湖より愛をこめて』では、東京との抗争に勝利するも埼玉県人やさいたま市民の意見がまとまらずに連帯性を欠いたままとなっている。埼玉県内に鉄道の路線を有するが路線も心も東京とネズミーランドしか見ていない代表者たち「路線族」も登場し、武蔵野線の建設を阻止するが、これに対処すべく麗が「埼玉に海を造る」という埼玉県人の悲願を達成すべく動き出す。そのための第一歩として海に面した関西の和歌山県を目指したことがきっかけで、関西の地域間抗争に巻き込まれることになる。
東京都
白鵬堂学院
茨城県
県庁所在地は水戸市。奥秩父から常磐線で荒野を三日三晩乗って着くところで、人口1,000人に満たない寒村である水戸市が、なぜ市なのか日本七不思議の一つとされる。
土地が痩せているため大豆しか取れず、納豆が主食である。さらに納豆以外の産物はないため非常に貧しく、県民の多くは埼玉県に出稼ぎに行っている。しかし茨城県は埼玉県より格下のため、埼玉に出稼ぎしている茨城県民は、埼玉県民から奴隷のような扱いで強制労働に従事させられている。
実写映画版には直接登場しないが、千葉県内を走る常磐線の列車に藁づと納豆が積まれているほか、隣接する千葉県と合わせて「チバラキ」と呼ばれる場面がある。
作者の魔夜峰央の妻でバレエダンサーの山田芳実は茨城県出身である。
新潟県
埼玉狩り
映画1作目の追加要素として、通行手形を所持せずに東京都内に入り込んだ不法侵入者の「隠れ埼玉県人」を割り出す機能を有する特殊監視カメラが都内各所に設置されており、実際に「隠れ埼玉県人」が発見された時は、「埼玉警報」が発令される。
武装ガードマン(SAT)
踏み絵
映画第1作では踏み絵の対象が、埼玉県のシンボルであるしらこばとの焼き印が入った草加せんべいに変更されている。
サイタマラリヤ(マラリアのもじり)
映画第1作では「サイタマラリア」と呼ばれており、感染すると埼玉の「さ」の字の形をした赤斑が皮膚の表面に現れる。
書誌情報
- 魔夜峰央「翔んで埼玉」『やおい君の日常的でない生活』白泉社〈ジェッツコミックス〉、1986年8月1日。ISBN 4-592-13093-6。
- 魔夜峰央『翔んで埼玉』宝島社〈このマンガがすごい! comics〉、2015年12月24日。ISBN 978-4-8002-4939-5。
- 魔夜峰央(監修)『翔んで埼玉 アンソロジー 埼玉解放戦線調査報告書』宝島社〈このマンガがすごい! comics〉、2023年12月8日。ISBN 978-4-299-04907-0。 - 公式アンソロジー。
実写映画
第1作
2019年2月22日公開。二階堂ふみとGACKTのダブル主演。なお、壇ノ浦百美役の二階堂は初めての男役を演じる。
原作が未完であることに鑑み、原作をベースとした「伝説パート」と、後年に埼玉在住のある一家が伝説と化した悲劇を聞いたことがきっかけとなり、郷土への愛を深めるという映画オリジナル展開「現代パート」が交錯する構成となる。埼玉県への対抗組織に属する千葉県出身キャラクターも登場する。
冒頭しばらく「埼玉県民として見ていられないくらいのひどさで埼玉を痛めつけ」県民にとっては不愉快な場面が続くが、公開直前の2月7日には、埼玉県知事上田清司(当時)へ表敬訪問し“公認”も得た。2月22日の封切初日には、埼玉県の『埼玉新聞』が特別号、協賛企業が「埼玉県民が愛する“高級野菜の種”」を上映館で配布するなど、埼玉県では歓迎一色となっている。
埼玉県出身者、千葉県出身者が多数キャスティングされている。ただし、主役の二階堂ふみ・GACKTは、いずれも沖縄県出身である。物語の額縁となる現代パートだけは、全員が設定どおりの埼玉、千葉出身者で固められた。
映画1作目制作の経緯
本作のプロデューサーの若松央樹(フジテレビ)は『電車男』(2005年)の制作時に、当時の同僚だった武内英樹と初めて協働し、また脚本家の徳永友一とも協働しており、このチームが後に本作映画版を制作することになる。若松と武内は『のだめカンタービレ』(2006年)などの人気ドラマで共に仕事をしていたが、徐々に協働の機会が減ってきたため、たまに2人で酒を飲みながら「また馬鹿なことやりたいね」「一緒に映画をやりませんか」と話していた。
その後、若松はフジテレビの映画制作部署に移動となり、武内と協働で映画を制作する機会がやってきた。若松は最初、映画原作として別の作品を提案したが、武内が「若松、これ面白いからちょっと読んでくれない?こっちやれないかな」と書店に平積みされていた本作のマンガを持ってきたのが、本作映画版が制作されることになったきっかけである。
若松も本作マンガ版を読んでみたところ、上述のとおり埼玉に対する激しい「ディスり」マンガの上、作者の魔夜峰央の都合によりわずか3話で未完として終わっていた。仮にドラマ化した場合、せいぜい15分程度で終わる短い内容だったため、若松は武内の提案に大変困惑した。
未完のため、映画として制作するためには新たな結末を用意する必要があった。そこで、若松は武内と何回も飲みに行って、千葉県出身の武内の「埼玉VS千葉で最終的に盛り上がる!」というアイデアを聞かされた結果、若松も「(映画として)なんとかなるかな…」と同調し、映画企画として成立させる方向に動き始めた。
しかしフジテレビ内には、コンプライアンスの視点から特定の地域である埼玉県を「ディスる」本作の映画制作に反対する声も強く、本作の企画は難航した。最終的に若松・武内のコンビなら面白い映画を作ってくれるだろうとの上司の判断により本作の制作にゴーサインが出された。
若松は『電車男』で武内と協働した際に、武内の「爆発的な演出力」「独特の世界観」を目の当たりにしており、本作において武内との協働を開始した際にも『電車男』当時のノリに近い印象で、「笑い」としての自信があった。日本のコメディ作品の数が足りないと感じていた若松は、独特の「武内ワールド」で冒険したいと考えるようになった。
本作1作目のエンディング曲にははなわのファーストアルバム「HANAWA ROCK」(2003年)の4曲目に収録されている『埼玉県』を使用することが決定したが、この歌の歌詞には、埼玉県について事実と異なる内容や卑猥な内容が一部含まれていた。そのため、コンプライアンス上の観点から弁護士を入れて『埼玉県』の歌詞の一部を修正した曲を『埼玉県のうた』として作成するとともに、ディスりをフォローするためのカップリング曲として『咲きほこれ埼玉』を収録した。『咲きほこれ埼玉』はテレビ埼玉開局40周年記念ソングに起用されるとともに、再録版の『ニュー咲きほこれ埼玉』が本作2作目のエンディングに採用された。
ただし、キワモノ的な内容の本作だけに、1作目が公開されるまでは若松・武内とも埼玉県民から暴動が起きるのではないかと、大変な不安を感じていた。そこで、観客などからのクレーム対応の想定問答集を作成し、フジテレビと東映の関係部署向けに配布した。しかし、本作の公開後にはこの懸念は全くの杞憂であったことがわかった。苦情はほとんど来ず、逆に埼玉県の様々な方面から「よくやってくれた」といった評価を多数得た。1作目は興行的にも大成功だったため、続編の制作が決定した。2作目の制作経緯については該当項目を参照。
あらすじ(第1作)
日なたで卵を焼くことができるほど暑い夏のある日、埼玉県熊谷市に住む菅原家の一家は、娘の愛海の結納のため、父の運転する自家用車で東京都内に向かっていた。結婚を機に、東京都に引っ越して東京都民になりたいと愛海がはしゃいでいると、カーラジオのNACK5で、都市伝説を題材にしたラジオドラマが始まった。それは「埼玉解放の伝説の人物・麻実麗」の物語だった。
19XX年、東京では埼玉への迫害が続いていた。埼玉県人は通行手形なしでは都内に入ることもできず、過度に虐げられた生活を余儀なくされている。そんな東京の中でも、代々東京都知事を生み出してきた超名門校・白鵬堂学院に、海外から麻実麗という美少年が転校してきた。
差別を受ける埼玉出身のZ組生徒をなぜか庇い立てする麗に、不快感を抱く生徒会長・壇ノ浦百美は、全校生徒の前で東京各地の空気の匂いを当てさせる「東京テイスティング」という無理難題を吹っかけて、麗に恥をかかせようとするが、麗はそれを見事クリア。逆に百美は麗に心惹かれるようになってゆく。
しかし麗と百美のデート中に、麗の家政婦おかよがSAT(Saitama Attack Team、埼玉急襲部隊)に追われているところに出くわす。おかよは埼玉県民でありながら東京都内を歩いていたために逮捕されそうになっており、彼女を助けたものの、SATが差し出したシラコバトの絵柄が入った草加せんべいを踏み付けられなかった麗も埼玉県人であることが発覚してしまう。しかも彼は埼玉の通行手形制度の撤廃を目標とする地下組織「埼玉解放戦線」の一員だった。埼玉に対する激しい拒絶反応に苦しみながらも、愛する麗と共に逃避行を続ける百美。そしてこの騒動の陰では、埼玉より先に通行手形制度の撤廃を狙う「千葉解放戦線」が蠢いており、やがて事態は埼玉対千葉の全面戦争へと発展してゆく。
埼玉解放戦線、千葉解放戦線は流山橋付近の江戸川を挟んで対峙するが、実は百美が群馬県の赤城山で歴代の東京都知事が不正に蓄財した金塊を発見したことにより、事前に和解が成立しており、両軍は合流して東京都内に攻め込む。そして百美が不正蓄財を暴露したことにより、壇ノ浦建造は失脚する。百美と麗は埼玉デュークが計画していた、これといった特色のない埼玉の文化を、秘密裏に日本全国に広める「日本埼玉化計画」を開始する。
このドラマを聞きながら、埼玉出身の父・好海と千葉出身の母・真紀が夫婦喧嘩を始めてしまうが、埼玉と千葉の和解の顛末を聞いて感涙に咽びつつ仲直りする。それを傍から見ていて呆れる愛海だったが、婚約者の春翔も、結納会場に向かう自動車のカーラジオで同じドラマを聞いていて埼玉愛に目覚め、東京ではなく春日部市に新居を構えることを決意したと知り、愕然となる。そして、麗と百美は「世界埼玉化計画」に向けて動き出すのであった。
用語解説(第1作)
原作が未完になっているため、映画版では原作にない多数の設定が新規追加されている。
関東地方
千葉県
特産品はピーナッツで、なおかつ海を持っていることが千葉県人の誇りであると同時に、埼玉県を見下す要因ともなっている。千葉で捕らえられた埼玉県人たちは身体の穴という穴にピーナッツを詰め込まれたうえで、九十九里浜での地引網労働を強制されている。千葉県内の常磐線沿線にヌーの群れが出現し鉄道をさえぎることもある。
東京都よりも都会指数が低く、東京都民から見下されているという点では埼玉県と同じで、百美が埼玉県人の肩を持つ麗に大恥をかかせようと課した試練である「東京テイスティング」に難問として東京都内でも都会指数が著しく低い西葛西を仕込むも期待に反して正解された際には、A組の女子生徒たちからそもそも西葛西は東京ではなく千葉の中にあると思っていたとの発言があった。
原作には登場しない千葉県を追加要素として取り上げた理由について、監督の武内英樹(千葉市出身)は「千葉と埼玉は永遠の好敵手。(原作は未完であり、)その先の物語を考えた時、何とか千葉を盛り込みたいと思った」と語っている。
群馬県
神奈川県
栃木県
キャスト(第1作)
カッコ内はキャストの出身都道府県。
伝説パート(第1作)
関東の人々
壇ノ浦 百美(だんのうら ももみ) - 二階堂ふみ(沖縄県出身)
麗に惹かれた後は完全に埼玉を見直して埼玉県の肩を持つ。
麻実 麗(あさみ れい) - GACKT(沖縄県出身)
阿久津 翔(あくつ しょう) - 伊勢谷友介(東京都出身)
建造の裏の顔を知ったことで、彼が千葉県の通行手形制度を端から撤廃する気が無いと悟り、最終的には警察に連行される彼に向かって「もう少しであなたに騙されるところでしたよ」と決別の言葉をぶつけた。
壇ノ浦 建造(だんのうら けんぞう) - 中尾彬(千葉県出身)
埼玉解放戦線や隠れ埼玉県人を弾圧する一方で千葉解放戦線については翔に対して「東京に尽力すれば通行手形を撤廃する」との口約束で、私兵として重用しているが、その本心は通行手形制度そのものを悪用して私腹を肥やしていることから、通行手形制度の対象地域が減れば減るほど利益も減ることから先の口約束を守る気は無い。
強欲で狡猾な半面、麗や翔とは違って最前線には身を置かず、埼玉解放戦線と千葉解放戦線が和解して東京へと押し寄せているとの報が入ってからも自らは本拠地の東京都庁から一歩も出ずに、現場を警察やSATの人間に任せきりにしていた。
息子の百美の不正告発時は、自身含む歴代都知事の不正を認めて百美に土下座してマスコミに告発しないでくれと懇願するが、百美は告発してしまう。
壇ノ浦 恵子 - 武田久美子(東京都出身)
埼玉デューク - 京本政樹(大阪府出身)
西園寺 宗十郎 - 麿赤兒(奈良県出身)
中盤に麗には実は弟の埼玉デュークが麗の実父(自分は麗の伯父)である秘密を打ち明けている。
おかよ - 益若つばさ(埼玉県出身)
下川 信男 - 加藤諒(静岡県出身)
埼玉県人の青年 - 間宮祥太朗(神奈川県出身)
神奈川県知事 - 竹中直人(神奈川県出身)
山田 昌子 - 宮澤竹美
東郷 修 - 鈴木勝大
岩村 智史 - 福山翔大
浜野 さざえ - 小沢真珠
浜野 あわび - 中原翔子
A組女子 - 高月彩良・秋月三佳・田中明・搗宮姫奈
猿橋 - 岡山天音
埼玉の支部長たち
その他の人物
現代パート(第1作)
この時代はかつてのような埼玉・千葉・東京・神奈川の激烈な争いも終わり(?)、どの地域に住んでもどの会社に勤めても特に迫害はない。
菅原家
ラジオドラマ初期では母の真紀が千葉県出身であることを貶されて爆発し両親が壮大な夫婦喧嘩を始めてしまうが、終盤では埼玉と千葉が完全に融和してさらに絆が強くなる。
菅原 好海 - ブラザートム(埼玉県出身)
父。埼玉生まれの埼玉育ちであり、郷土の熊谷市に誇りを持つ。埼玉県には海がないが両親からの伝統で、「海を好む」という意味で好海と名付けられた。「スガワラ工務店」の経営者。
菅原 真紀 - 麻生久美子(千葉県出身)
母。千葉県出身。一応夫に合わせて埼玉愛もそれなりにあるが、「チバラキの野郎」と貶されると、千葉県と茨城県と一緒にされたくないという強い思いもあり、優しい性格が一変する。
菅原 愛海 - 島崎遥香(埼玉県出身)
娘。自分が埼玉県出身であることを疎ましく思っており、父親の埼玉愛には冷めたツッコミを返す。婚約者との結婚の結納を控えていて、これを機に東京都に住もうと考えている。
菅原 好海 - ブラザートム(埼玉県出身)
菅原 真紀 - 麻生久美子(千葉県出身)
菅原 愛海 - 島崎遥香(埼玉県出身)
五十嵐 春翔 - 成田凌(友情出演)(埼玉県出身)
しかし愛海は『クレヨンしんちゃん』好きではないので、春日部市の利点を享受できず不満に思う。
らじっと(埼玉県出身)
冒頭のナレーター - パックン
Special Thanks(写真出演)
- YOSHIKI(千葉県出身)
- 高見沢俊彦(埼玉県出身)
- 真木よう子(千葉県出身)
- 桐谷美玲(千葉県出身)
- 反町隆史(埼玉県出身)
- 竹野内豊(東京都出身・埼玉県育ち)
- 小倉優子(千葉県出身)
- 小島よしお(沖縄県出身・千葉県育ち)
- 市原悦子(千葉県出身)
- 阿久津学 / エンペラー千葉 - JAGUAR(千葉県出身)
- 阿久津翔の父親で、かつての千葉解放戦線のリーダー。東京に追随する方針から埼玉デュークと敵対し、彼との斬り合いによって彼の顔に刀傷を負わせた。その後は歴代都知事に執事として仕え、息子に跡を譲った。劇中では翔が所持する写真として登場する他、回想シーンでは若き日の彼自身も登場するが、後者は顔がはっきり映らない。
- 阿久津翔の父親で、かつての千葉解放戦線のリーダー。東京に追随する方針から埼玉デュークと敵対し、彼との斬り合いによって彼の顔に刀傷を負わせた。その後は歴代都知事に執事として仕え、息子に跡を譲った。劇中では翔が所持する写真として登場する他、回想シーンでは若き日の彼自身も登場するが、後者は顔がはっきり映らない。
スタッフ(第1作)
- 監督 - 武内英樹(千葉県出身)
- 原作 - 魔夜峰央(新潟県出身)「このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉」(宝島社)
- 脚本 - 徳永友一(神奈川県出身)
- 音楽 - Face 2 fAKE(Achilles Damigosギリシャ出身 実家埼玉県、Oh!Be千葉県出身)
- 主題歌 - はなわ(埼玉県生まれ・佐賀県育ち)「埼玉県のうた」(ビクターエンタテインメント)
- 挿入歌 - さいたまんぞう「なぜか埼玉」
- 製作 - 石原隆、村松秀信、遠藤圭介
- プロデューサー - 若松央樹、古郡真也
- 撮影 - 谷川創平
- 照明 - 李家俊理
- 録音 - 加藤大和
- 編集 - 河村信二
- 美術 - 棈木陽次
- 美術プロデューサー - 三竹寛典、古川重人
- 美術進行 - 森田誠之
- 装飾 - 竹原丈二
- 人物デザイン監修 / 衣装デザイン - 柘植伊佐夫
- 衣装 - 田中まゆみ
- ヘアメイク - 塚原ひろの、千葉友子(二階堂ふみ)、タナベコウタ(GACKT)
- VFXプロデューサー - 赤羽智史
- ミュージックエディター - 小西善行
- サウンドエディター / フォーリーアーティスト - 伊東晃
- 記録 - 渡辺美恵
- 監督補 - 森脇智延
- 助監督 - 楢木野礼
- 制作担当 - 碓井祐介
- アソシエイトプロデューサー - 片山怜子、高木由佳
- ラインプロデューサー - 関口周平
- 配給 - 東映
- 制作プロダクション - FILM
- 製作 - 映画「翔んで埼玉」製作委員会(フジテレビジョン、東映、テレビ埼玉)
受賞(第1作)
第19回ニッポン・コネクション
第62回ブルーリボン賞
第43回日本アカデミー賞
第38回藤本賞
海外における評価(第1作)
イタリアで開催の第21回ウディネ・ファーイースト映画祭で上映され、武内英樹監督が『テルマエ・ロマエ』シリーズの2作に続き3度目のマイ・ムービーズ賞(ネット投票による観客賞)を受賞した。
第23回ファンタジア国際映画祭・アジアン最優秀長編作品賞・金賞受賞を果たした。
テレビ放送(第1作)
回 | 放送日 | 放送時間(JST) | 放送局 | 放送枠 | 備考 | 視聴率 | 出典 |
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1 | 2020年2月8日 | 土曜 21:00 - 23:20 |
フジテレビ | 土曜プレミアム | 『ヲタクに恋は難しい』公開記念、地上波初放送、完全ノーカット。 ゲスト - 高畑充希、山﨑賢人。解説ナレーター - バッキー木場。 関東地区は20:54に『まもなく翔んで埼玉』を別途放送。 |
16.7% | |
2 | 2022年10月1日 | 土曜 21:00 - 23:15 |
本編放送前にGACKTがVTR出演し、続編の撮影再開を報告した。そして2023年に公開を決定した。 | 6.2% | |||
3 | 2023年11月18日 | 土曜 21:00 - 23:15 |
最新作『飛んで埼玉〜琵琶湖より愛を込めて』公開記念。 | 7.5% |
第2作
2023年11月23日に『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』(とんでさいたま びわこよりあいをこめて)のタイトルで公開。第1作に引き続き、ダブル主演を二階堂ふみとGACKT、脚本を徳永友一、監督を武内英樹、プロデューサーを若松央樹が務めている。
2021年8月11日、続編『翔んで埼玉II(仮)』の制作決定が発表された。撮影が同月下旬に始まったが、主演のGACKTが重度の発声障害により活動を無期限休止することになったのを受け、撮影全体が一時中断となった。2022年10月1日、映画第1作のフジテレビでの放送前にGACKTがVTR出演。芸能活動を再開し、本作の続編撮影も再開することを報告した。2023年6月28日、同年11月23日に劇場公開されることが発表された。
監督の武内英樹が原作者の魔夜峰央に語ったところによると、この撮影中断期間を活用して何度も大阪や京都に行ってネタを大量に追加収集し、脚本に反映させている。
第2作の舞台が滋賀県に決まった経緯
プロデューサーの若松央樹によると「(1作目の)興行では関東のシェアが70%ぐらいだったんですが、意外と関西のほうではそんなに当たってなかった」。また、1作目の公開後に「関東以外の地域の方から、ああいう映画をうちのところでもやってほしい」という声が多数寄せられたため、2作目の舞台を関西地方にすることが決まった。
本作の公式パンフレットに掲載されている制作者対談によると、最初の段階で「麗が埼玉県に海を作るため、和歌山県の白浜を目指す」というプロットが決まった。そこでシナハン(シナリオ・ハンティング)のため、関西地方では最初に和歌山市に行ったが、和歌山市では1作目を上映していた映画館がわずか2館程度しかなく、和歌山県では『翔んで埼玉』のことをそもそも誰も知らないということが判明した。そのため、和歌山県だけを舞台にしても話が広がらないと判断し、改めて大阪で取材を行った。
監督の武内は「関西で埼玉的なところはどこなんだということでいろいろと話を聞くと、結構奈良という意見が多かったんです。でも関東の感覚からいうと奈良ってすごいというか。平城京があるし、奈良時代もある。なかなかディスりづらいなと。」と述べており、プロデューサーの若松も「関東の人たちにとって奈良は修学旅行でも行く場所ですし、埼玉っぽいイメージがなかった」と述べている。そのため、制作側には本作の舞台を奈良県より滋賀県にするほうが良いのではないかという方向性が見えてきた。
武内は「そんな中で滋賀に行ったんですが、ここは琵琶湖以外、何もないなと思って」「かつ滋賀のフィルムコミッション(滋賀ロケーションオフィス)にアテンドしてもらったんですけど、そこの方々がものすごい熱心で。ぜひうち(滋賀県)をディスってくださいと」と言われたという。さらに、「調べてみると、滋賀ナンバーがゲジゲジと言われていることや、京都の人たちにかなりディスられているという自負が皆さんにあるようなことがわかってきて」、制作側ではこれだけ滋賀県側の情熱があるなら作品の中でもディスりやすいと判断し、本作の舞台の中心を滋賀県にすることを決定した。和歌山県も本作のプロット上重要な役割を果たすが、奈良県に関する描写はほぼ割愛されている。
あらすじ(第2作)
さいたま市役所職員の内田智治は、妻・直子と臨月の娘・依希をさいたま市役所の軽ライトバンに乗せ、猛暑の中「埼玉県市町村対抗綱引き大会」が行われる熊谷市の熊谷あおぞら競技場へ向かっていた。その途中、カーラジオのNACK5から流れる「都市伝説・第II章」で、埼玉の新たなストーリーが語られる。
前作で埼玉県民の自由と平和を勝ち取った埼玉解放戦線の麗と百美だったが、「埼玉には横のつながりがない」という問題が新たに生じていた。百美は埼玉を横に繋ぐ武蔵野線の建設を提案するが、埼玉県内に鉄道路線を持つ路線族たちは東京やその先にあるネズミーランドにばかり目が向いており全く協力する気配がない。そこで麗は「越谷に海を作る」ことで路線族たちの心を一つにすることを考え、ビーチに必要な白い砂を手に入れるために和歌山県の白浜へ向かうことにする。阿久津が居ないことを不審に思いつつも千葉解放戦線の助力で船を用意してもらい和歌山へ出航する。
和歌山の救助依頼無線が来た直後に嵐に遭遇し船は難破、麗はメンバーと離れ離れになり和歌山の海岸へ流れ着く。そんな麗を助けたのが滋賀解放戦線のリーダーの桔梗 魁だった。白浜は大阪の植民地となっており、魁は白浜タワー(別名:アポロンタワー)に囚われている和歌山の姫君救出のために白浜に来ていたのだった。しかしふたりは大阪の戦闘員に見つかり、滋賀まで逃げ帰る。
麗は魁から大阪府知事・嘉祥寺 晃が支配する関西の現状や、京阪神地方の人間に滋賀県人・和歌山県人・奈良県人が虐げられている様子を知らされる。滋賀・和歌山・奈良の人間は、かつての埼玉と同様に京阪神地方に行く際に通行手形を要求されていた。そして、幼い頃マイアミビーチで子守唄として聞かされた「琵琶湖周航の歌」と、それを歌っていた女性の言葉「あなたは大きくなったら滋賀を救うのです」の記憶が蘇り、弟の魁に協力し滋賀を解放することを決意する。
兵庫県西宮市の大阪甲子園球場は大阪府の管理下に置かれており、地上は野球場があるが、地下には大阪名物の粉もん工場と、京阪神地方に反逆した他地方出身者の収容所が設置されていた。
嘉祥寺を倒すため甲子園球場に乗り込んだ麗は、魁の裏切りにあって嘉祥寺に捕らえられ「粉もん依存症」にさせられてしまい、甲子園球場の地下に幽閉される。監獄内には遭難時に別れた埼玉解放戦線のメンバーたちがおり、彼らの協力で粉もん依存症を克服した麗は甲子園を脱出して滋賀へ逃げ帰り、その出自を聞かされたことで魁とも和解する。
嘉祥寺への対抗策として麗は「大阪で栽培されている粉の実を枯らすために瀬田川の水門を閉じて琵琶湖の水を止め、淀川を渇水させる」という作戦を提案する。滋賀解放戦線のメンバーからは「生まれ育った滋賀が水没する」ということで当初は反対されたが、魁の説得によって他県の解放戦線メンバーも含めて全員納得し作戦は遂行され、滋賀県は水没した。しかし魁の計らいにより近江牛や米の種は事前に水没を回避しており、種として残してあったので、後の復興の役に立つ。
水門を破壊するため嘉祥寺は京都市長、妻である神戸市長と共に滋賀へ乗り込み、激しい戦闘を繰り広げるも、滋賀解放戦線の秘密兵器「とびだしとび太」などの前に劣勢となり、ふたりの市長を切り捨てて撤退する。
しかし嘉祥寺の狙いは別にあり、大量の「粉」を搭載した通天閣ミサイルを東京へ撃ち込み、東京を丸ごと大阪にするのが真の計画であった。
嘉祥寺の不在を突いて甲子園球場に戻った麗は、地下の粉もん工場を壊滅させて大阪府の本拠地に乗り込むが、時すでに遅くミサイルは発射されてしまう。麗からの連絡を受けていた百美は路線族たちを動かし、埼玉県で密かに開発していた行田市の迎撃ミサイルを発射させ、大気圏外で衝突させることにより大阪側のミサイルを破壊することに成功する。この一連の出来事が明るみに出たために嘉祥寺は逮捕され、通行手形も撤廃、滋賀・奈良・和歌山は完全に解放された。
一方、迎撃ミサイル発射の重責を共有した埼玉県の路線族たちの心は一つになり、武蔵野線が開通された。武蔵野線は埼玉県民が大好きなネズミーランドにちゃっかり直通しており、埼玉から千葉にあるネズミーランドに電車1本で直接アクセスできるようになった。
直子は両親が滋賀県出身であったこともあり、たまたま綱引き大会に居合わせた大阪出身の女性に対して、現実世界と都市伝説を混同して攻撃を始める。そしてこのストーリーを聞いた直子や他の与野の人たちが感動している最中、依希が産気づいてしまうが、大阪出身の女性は実は大変人情深い助産師であった。依希の夫も遅れて出産の場に駆けつけ、さらにこの助産師の手により、依希は無事出産を迎える。しかし、都市伝説にかぶれてしまった依希の夫は突然、自分の子供の名前を「とび太」にすると言い始めるのであった。
用語解説(第2作)
関西地方
『琵琶湖より愛をこめて』の主要舞台となる地域。東京を頂点とする前作の関東と同様に、大阪・京都・神戸が権力の座に君臨し、滋賀や和歌山の様な都会指数の低い地域が差別の対象となる、超地域格差社会が存在する。
滋賀県
なお、劇中の滋賀県は滋賀解放戦線の初代リーダーの通称が「滋賀のジャンヌダルク」であったり、現リーダーの桔梗魁の異名が「滋賀のオスカル」であるという、フランス色を帯びたものとして描かれている。また、滋賀解放戦線のメンバーである近江兄妹という形で、滋賀の旧名である近江の名も登場する。
大阪府
京都府
兵庫県
和歌山県
奈良県
現実世界の奈良県に生息するのはニホンジカであり、高緯度地域に生息するヘラジカではない。
三重県
その他の用語(第2作)
埼玉県市町村対抗綱引き大会
粉
大阪甲子園球場
とびだしとび太
劇中の「とび太」は滋賀解放戦線側の秘密兵器かつ主力兵器であり、武器や盾として使われる。また、敵の京阪神連合に対する滋賀独立戦線の兵力倍増の欺瞞作戦の道具としても大活躍するが、戦闘の犠牲(破損)になったとび太も多い。
実は、制作側では「とび太」が滋賀県の名産品であることを当初全く知らず、滋賀県でのシナハン(シナリオ・ハンティング)の過程で「とび太」との出会いがあり、本作に「とび太」を出演させることを決定した。
本作では久田工芸が製造した100体と、美術部が撮影用に一回り大きく製作した50体からなる、合計150体の「とび太」が撮影に使用された。また、公式パンフレットの後半ページの縁の部分に「とび太」の絵柄が多数敷き詰められている。本作での「とび太」利用に当たり、制作側は久田工芸を直接訪問し、利用許諾を得ている。
水晶玉
うみのこ
滋賀作
平和堂HOPカード
ネズミーランド
キャスト(第2作)
伝説パート(第2作)
関東の人々
前作からの登場人物
路線族
JR埼京線代表 - 山中崇史(埼玉県出身)
JR京浜東北線代表 - ゴルゴ松本(TIM、埼玉県出身)
西武新宿線代表 - 杉山裕之(我が家、埼玉県出身)
西武池袋線代表 - 谷田部俊(我が家、埼玉県出身)
東武東上線代表 - デビット伊東(埼玉県出身)
東武伊勢崎線代表 - はなわ
白鵬堂学院の野球部の男 - 戸塚純貴(岩手県出身)
関西の人々
桔梗 魁(ききょう かい) - 杏(東京都出身)
近江 美湖(おうみ みこ) - 堀田真由(滋賀県出身)
近江 晴樹(おうみ はるき) - くっきー!(野性爆弾、滋賀県出身)
滋賀のジャンヌダルク - 高橋メアリージュン(滋賀県出身)
滋賀解放戦線員 - 津田篤宏(ダイアン、滋賀県出身)
和歌山の姫君の仮の姿 - トミコ・クレア(サンフランシスコ出身)
和歌山の姫君の真の姿 - 天童よしみ(和歌山県出身)
嘉祥寺 晃(かしょうじ あきら) - 片岡愛之助(大阪府出身)
演じる片岡愛之助と神戸市長役の藤原紀香は夫婦であり、役柄も夫婦役である。
神戸市長 - 藤原紀香(兵庫県出身)
京都市長 - 川﨑麻世(京都府京都市生まれ、大阪府枚方市育ち)
京都の女将 - 山村紅葉(京都府出身)
元大阪府知事 - モモコ(ハイヒール、大阪府出身)
粉物工場で働く労働者A - ゆりやんレトリィバァ(奈良県出身)
粉物工場で働く労働者B - akane(大阪府出身)
施設長 - 竹原芳子(大阪府出身)
京都人の女 - 坂下千里子(京都府京都市生まれ、宇治市育ち)
京都人の男 - 本多力(京都府京都市出身)
阪流(はんりゅう)ブーム 伝説パートの世界ではなぜか日本全国で大阪文化が不自然に大流行しており、『大阪ラブストーリー』『大阪に不時着』などの阪流ドラマが大ヒットするとともに、阪流アイドルOTB(Osaka Takoyaki Boys)がビルボードランキングを獲得している。
北村一輝(大阪府大阪市出身)- 阪流ドラマのキャストとして登場。
山本高広 (福岡県北九州市出身)- 阪流ドラマ『大阪ラブストーリー』の主役「完治」として登場。
現代パート(第2作)
内田家
内田 智治 - アキラ100%(埼玉県出身)
内田 直子 - 和久井映見(神奈川県出身)
若月 依希 - 朝日奈央(埼玉県出身)
若月 健太 - 瀬戸康史(福岡県出身)
埼玉県知事 - 村田雄浩(東京都出身、埼玉県越谷市育ち)
与野チームの関係者 - くわばたりえ(クワバタオハラ、大阪府出身)
与野の妻 - 菊池麻衣子(東京都出身、埼玉県育ち)
大宮の男 - ノッチ(デンジャラス、愛媛県新居浜市出身)
浦和の男 - ニクまろ(埼玉県戸田市出身)
Special Thanks(第2作)(写真出演)
- 菅田将暉(大阪府箕面市出身)
- 戸田恵梨香(兵庫県神戸市出身)
- 北川景子(兵庫県神戸市出身)
- せんとくん(奈良県マスコットキャラクター)
- 加護亜依(奈良県大和高田市出身)
- 明石家さんま(和歌山県和歌山市生まれ、奈良県奈良市育ち)
- 西川貴教(滋賀県彦根市生まれ、野洲市育ち)
- 地元・滋賀県への郷土愛が大変強い人物であり、滋賀県の音楽イベントのプロデュースなども行っている。
- 藤原紀香(兵庫県西宮市出身だが両親は和歌山県出身)
- 劇中では、和歌山県「初代 紀の川市フルーツ大使」のPR大使を過去に務めていたことが地域対決で判明し、大阪府知事の嘉祥寺から「産地偽装」と罵られる。神戸市長役として出演しているにもかかわらず、本作の地域対決であえて「和歌山代表」として写真登場することを提案したのは、藤原本人である。藤原紀香は両親が和歌山県出身で、和歌山県を流れる河川・紀の川の「紀」の字をとって「紀香」と命名された。常日頃から藤原は「和歌山は私の人生と切っても切れない、“第二の故郷”」と公言している。
- 桓武天皇(第50代天皇)
- 奈良の平城京から京都の平安京に遷都を行った歴史上の人物。公式パンフレットの制作者対談によると、京都の代表人物を決めるのがきわめて難航したという。そこで、京都代表を天皇家の紋章である「菊花紋章」だけにする案が出たものの、これもいろいろと物議を醸す可能性が考えられた。その結果、1300年前の歴史上の人物なら誰も怒らないだろうということで、地域対決の京都代表が桓武天皇に決まった。
- 地元・滋賀県への郷土愛が大変強い人物であり、滋賀県の音楽イベントのプロデュースなども行っている。
- 劇中では、和歌山県「初代 紀の川市フルーツ大使」のPR大使を過去に務めていたことが地域対決で判明し、大阪府知事の嘉祥寺から「産地偽装」と罵られる。神戸市長役として出演しているにもかかわらず、本作の地域対決であえて「和歌山代表」として写真登場することを提案したのは、藤原本人である。藤原紀香は両親が和歌山県出身で、和歌山県を流れる河川・紀の川の「紀」の字をとって「紀香」と命名された。常日頃から藤原は「和歌山は私の人生と切っても切れない、“第二の故郷”」と公言している。
- 奈良の平城京から京都の平安京に遷都を行った歴史上の人物。公式パンフレットの制作者対談によると、京都の代表人物を決めるのがきわめて難航したという。そこで、京都代表を天皇家の紋章である「菊花紋章」だけにする案が出たものの、これもいろいろと物議を醸す可能性が考えられた。その結果、1300年前の歴史上の人物なら誰も怒らないだろうということで、地域対決の京都代表が桓武天皇に決まった。
エンドロール(第2作)
- ミルクボーイ
- 滋賀県に関する漫才ネタをエンドロールで披露する。ミルクボーイの持ちネタの中に「滋賀」があり、それを本作に取り入れたものである。ただし、本作のエンディングの漫才台本は埼玉県も出てくる内容に若干修正されている。ミルクボーイの内海崇は兵庫県出身、駒場孝は大阪府出身であるが2人とも大阪芸術大学卒業で、本作の原作者の魔夜峰央の大学の後輩にあたる。
- 滋賀県に関する漫才ネタをエンドロールで披露する。ミルクボーイの持ちネタの中に「滋賀」があり、それを本作に取り入れたものである。ただし、本作のエンディングの漫才台本は埼玉県も出てくる内容に若干修正されている。ミルクボーイの内海崇は兵庫県出身、駒場孝は大阪府出身であるが2人とも大阪芸術大学卒業で、本作の原作者の魔夜峰央の大学の後輩にあたる。
その他の情報(第2作)
- 主役のGACKTは、自ら積極的に公表していないものの、中高生時代を滋賀で過ごしている。監督の武内によると「GACKTが中高生の頃に滋賀に住んでいたことを最大限使うべき」という意見に基づき、「埼玉解放戦線の麗が実は埼玉と滋賀のハイブリッドだった」「麗が幼少期を滋賀で過ごした」という映画オリジナルの新規追加設定が生まれた。
- さいたま市の大宮駅西口にある商業ビル「アルシェ」社長の中島祥雄からは「浦和と大宮は、勝敗を絶対につけたらダメですよ。負けた方の客を失いますからね」とのアドバイスを制作側が受けた。その結果、本作の綱引き大会ではさいたま市役所職員の内田が細工をして、大宮と浦和を引き分けに持ち込むという脚本が作られた。なお、中島は本作にカメオ出演している。
- 本作のパンフレット巻末には架空の関西の広告(大阪・コナモン工場の求人、山村紅葉演じる京女将のお店、京都人の本音がわかる「シンポケトーク」)と、実際の埼玉県企業の広告(FM放送局のNACK5、スーパーマーケットのベルク、行田タワー)をあえて混在させてある。
- 冒頭に登場する原作者・魔夜峰央の周りでダンスを踊っているのは、前作と同様に所沢に本拠を置く世界的に著名な「NBAバレエ団」と魔夜峰央の家族(妻と息子・娘)である。
- 本作で 通天閣をミサイルとしてパロディ描写しているのは、通天閣内のエレベーターに流れていた「通天閣発射映像」が元ネタである。当初、通天閣ミサイルを迎撃するのに川口市のタワーマンションを用いることを想定していたが、監督の武内がネット検索で「行田タワー」を発見し、迎撃ミサイルとしての採用が決まった。通天閣と行田タワーをミサイルとしてパロディ描写するに当たり、通天閣の社長と行田市の市長・副市長から許諾を得ている。
- 埼玉県で唯一のタワーである「行田タワー」(正式名称は「古代蓮の里展望タワー」)は現在、海のない埼玉県で田んぼアート観賞用として使われている。
- 綱引き対決のシーンには大宮アルディージャと浦和レッズのOBが出演している。
- 本作の大阪粉もん工場で「551蓬莱」と「たこ家道頓堀くくる」が実名協力してくれたのは片岡愛之助の貢献によるものであると、監督の武内は語っている。
スタッフ(第2作)
- 監督 - 武内英樹
- 原作 - 魔夜峰央
- 脚本 - 徳永友一
- 音楽 - Face 2 fAKE
- 主題歌 - はなわ「ニュー咲きほこれ埼玉」(ビクターエンタテインメント)
- 製作 - 大多亮、吉村文雄、川原泰博
- プロデューサー - 若松央樹、古郡真也
- 撮影 - 谷川創平
- 照明 - 李家俊理
- 録音 - 金杉貴史
- 編集 - 河村信二
- 美術 - 棈木陽次
- 美術プロデューサー - 三竹寛典
- 美術進行 - 森田誠之
- 装飾 - 竹原丈二
- 人物デザイン監修 / 衣装デザイン - 柘植伊佐夫
- 衣装 - 大友洸介
- ヘアメイク - 塚原ひろの、千葉友子(二階堂ふみ)、タナベコウタ(GACKT)
- VFXスーパーバイザー - 長崎悠
- VFXプロデューサー - 赤羽智史
- ミュージックエディター - 小西善行
- サウンドエディター / フォーリーアーティスト - 伊東晃
- 記録 - 赤星元子、松村陽子
- 監督補 - 楢木野礼
- スケジュール - 尾崎隼樹
- 制作担当 - 武田旭弘、辻智
- アソシエイトプロデューサー - 加藤達也
- ラインプロデューサー - 齋藤健志
- 配給 - 東映
- 制作プロダクション - FILM
- 製作 - 映画「翔んで埼玉」製作委員会(フジテレビジョン、東映、テレビ埼玉)
関連カテゴリ
- 分割提案
- 修正依頼
- 漫画作品 と
- 1982年の漫画
- 魔夜峰央の漫画作品
- 花とゆめ
- ギャグ漫画
- LGBT関連漫画
- ボーイズラブ漫画
- ディストピア漫画
- 埼玉県を舞台とした漫画作品
- 茨城県を舞台とした漫画作品
- 高等学校を舞台とした漫画作品
- 差別を題材とした漫画作品
- クーデターを題材とした作品
- 未完の漫画作品
- 宝島社の出版物
- 2019年の映画
- 2023年の映画
- 漫画を原作とする映画作品
- 日本のコメディ映画
- 日本のLGBT関連映画
- LGBT関連コメディ映画
- ゲイ関連映画
- 差別を題材とした映画作品
- ディストピア映画
- クーデターを題材とした映画作品
- 高等学校を舞台とした映画作品
- 埼玉県を舞台とした映画作品
- 千葉県を舞台とした映画作品
- 群馬県を舞台とした映画作品
- 東京を舞台とした映画作品
- 調布市で製作された映画作品
- 日野市で製作された映画作品
- 東京都港区で製作された映画作品
- 新宿区で製作された映画作品
- 練馬区で製作された映画作品
- 豊島区で製作された映画作品
- 埼玉県で製作された映画作品
- 市川市で製作された映画作品
- 茨城県で製作された映画作品
- 群馬県で製作された映画作品
- 高崎市で製作された映画作品
- 前橋市で製作された映画作品
- 栃木県で製作された映画作品
- 静岡県で製作された映画作品
- 伊東市で製作された映画作品
- 宇都宮市で製作された映画作品
- 相模原市で製作された映画作品
- 藤沢市で製作された映画作品
- フジテレビ製作の映画
- 東映製作の映画作品
- テレビ埼玉製作の映画