翼を持つ者
以下はWikipediaより引用
要約
『翼を持つ者』(つばさをもつもの)は、高屋奈月による日本の漫画作品。『花とゆめ』(白泉社)にて1995年から1998年まで連載されていた。単行本は全6巻(2010年7月現在絶版)。白泉社文庫より全3巻。
あらすじ
戦争で廃墟が増え、文明の利器は一部の富裕層しか使えず、巷には「名無し」と呼ばれる名字のない孤児たちが屯している。人心は荒み、格差社会や軍事政権が当たり前となった22世紀末の地球。人々の願いを叶えるという『翼』を探し求める寿と擂文・シラギの旅と、彼らを取り巻く人々の織り成す物語。
登場人物
主要人物
寿(ことぶき)
主人公。孤児院育ちで、名字の無い「名無し」の少女。16歳。辛い生活の中でしたたかに生きてきた割に真っすぐな性格を持つ反面、精神年齢は幼い。軍のマザーコンピュータ「エフ」の無法者リストに登録されていた元・盗賊。
6歳まで孤児院で育つが、村人の多くは「名無し」を人間とは見てくれず、辛い思いをしてきた(そのため、同じ境遇の孤児達には優しい)。ある事件で孤児院が放火され、体調を崩していた院長と他の子供達が亡くなり、居場所を失って流れの盗賊となった。辛い境遇の中でただ前を見て、必死に生き延びてきたため、この世界で暮らす、何処か諦めたような目をした一般的な人々とは異なり、倖せを掴もうと努力し、諦めることをよしとしない。どんな状況でも諦めず、希望を捨てない瞳が周囲の人々を惹きつける。
赤子の頃に孤児院の前に捨てられ、そのときの唯一の持ち物が「Dear Daughter」と刻まれた金時計だった。それは院長の薬を買うための代金として、医者の男の手に渡っていたが、10年経った作中中盤で返される。当時、医者のところへ行っていた事が、皮肉にも彼女の命を救った。
身軽で力が強く、逃げ足も速いため作中ではしばしば「サル」と呼ばれる。定住地と定職を求めて放浪しているが、街の人々も自身の生活で手一杯なためなかなか見つからず、職運がないことを度々嘆く。
読み書きできるのはわずかな単語のみで、ほぼ完全に近い文盲。
『翼』にかなえてもらいたい夢は、「擂文・シラギ(後述)の頭につけられた起爆装置をはずすこと」。
擂文・シラギ(らいもん シラギ)
13歳で大学卒業資格を取得し、17歳で軍のマザーコンピュータ「エフ」の侵入不可能なセキュリティ・システムを設計した、元エリート軍人。右利きだが、拳銃は左手でも使える。コンピュータの扱いにも長け、簡単なハッキングや情報操作はお手の物。
両親のほかに弟が2人いる家庭で育つが、幼い頃から親に甘えたことはなく、子供らしい感情を知らない子供で、村が飢饉に襲われた際、「人間が1人減ればその分暮らしが楽になる」と淡白に考えて家出し、軍に入るため上流家庭の養子になろうとロス・コープル(後述)と取引した。
試験をトップの成績で通過して軍に入ってから、当時少尉だったヒルト・ギル(後述。こちらもトップ通過者だった)に目をかけられるようになるが、「生きる理由が見つからない」と自殺を図ったことが2度あり、1度目はヒルトや十夜がいる前で拳銃で頭を打ち抜こうとし、右目を負傷(この事件がきっかけで警吏隊長に降格)、2度目は手榴弾を使ったため、本人は意識不明の重体、巻き込まれた数人も重傷に陥った。
辺境の警吏隊長時代に出会った寿に惹かれてやや強引に軍を脱退。3ヵ月後に再会し、共に旅を始める。寿の前では軽い性格だが、周囲に興味が湧かないと、かつてのように無気力かつ虚ろな目になり、暴走する。また、その頭にはヒルトによってつけられた起爆装置がある。そのためか頭に触れられることを嫌がる。
自分にとっては寿を中心に世界が回っていると言い切るほどに寿が好きで、寿を傷つけた相手には容赦がない。寿のためなら頭の起爆装置が反応する国境付近まで行くような無茶もする。「エフ」に登録されていた寿のデータを見てから、孤児院の跡地に墓を作り、花を植えたらしい。
騒動の際に爆発物を使うのが好きらしく、度々手榴弾などを投げ込んで、建物を破壊する。
また、ロスの養子となってから、彼が経営するコープル社の拳銃を改造するが、その際のデータがいずれ養父に奪われることを想定し、セキュリティを複雑なゲームにしていたり、拳銃の構造自体を製造から一定期間経過後に自動で壊れるようにするなどの策を弄していた。
『翼』になれなくなった六呂(後述)の代わりの片翼兼軍の新たなマザーコンピュータとしてその頭脳を狙われ、1度は拉致されて機器に繋がれるも、奪還に乗り込んできた寿らの手で救出される。その際、国内のコンピュータ機器全てをハッキングし、それらのディスプレイに寿の名前をいくつも浮かび上がらせた。その後、接続されていたコードは脳科学者である山本(後述)の手で外されたが、頭の起爆装置だけはパスワードが分からず、外せなかった。
抄華(しょうか)
アデリィート・ウィルソン
ニールス軍
ヒルト・ギル
フィーア・マイシェル
『翼』関連
鈴(りん)、鈴(すず)
六呂(りくろ)
『翼』の正体である人工生命体。双子の姉・花陽(かよう)がいる。
寿と擂文の危機を救うために度々少年の形態で現れ、ある時、寿に「『翼』の手がかりは東にある」と告げる。
20年ほど前にニールス軍のマザーコンピュータ「エフ」に改造されており、擂文とは、彼がヒルトによって「エフ」の整備役を与えられて以来の友人であり、擂文の心が変化した過程も知っている。なお、「エフ」にされた時点で『翼』にはなれなくなった反面、コンピュータ機器を自由に操ることができるようになった。
更なる改造や解剖調査を避けるために、人間の形態を模して行動できることは擂文以外の人物には伏せられていた。
軍が擂文を手に入れ、新たなマザーコンピュータとした後は廃棄される予定であったため、擂文奪還作戦の際に内部から手引きし、最後は自爆した。そのCPUの破片は彩によって拾われ、その後寿の手に渡る。
花陽(かよう)
その他
ロス・コープル
アン・リィン
用語・地名
翼(つばさ)
「幾千もの光を放ちながら、とある町の大地から現れ、町の人々の願いを全てかなえて消えた。それは今も大地のどこかに眠っており、手に入れればどんな願いもかなう。」
とされる。軍事国家であるニールスは、国家の強大化の手段として『翼』を探している。
『翼』の正体は、かつて日本で研究・開発された、特殊な周波数の音波によって人々を洗脳する機能を持つ人工脳である。
その成功例2体が21世紀に勃発した大戦を終結させるために、あらゆる言語を統合し、世界を「日本」として統一した(2体の詳細は六呂・花陽の各項を参照)。
翼教(つばさきょう)
エフ
擂文・シラギが17歳当時(寿と出逢ってすぐの頃)にセキュリティシステムを設計した。インターフェイスのビジュアルは、寿そっくりの妖精。正解のパスワードを入力してもブロックがコンピュータウイルスへ変化し、侵入者を30秒以内に逆探知して「エフ」に報告、しかも侵入者のパソコンのプログラムを全て破壊するという、外部からの侵入が不可能とされるブロック機能を持つ。
ブルー・ローズ
狄(てき)
ヤンの寿たちに対するある恩義から、度々行動を共にする。
人型(ひとがた)
怪力、超能力に似た特殊能力を使ったり、内蔵した爆弾を射出し攻撃するなどの能力を備えた型が登場するが、外見、知能、所作などは人間そのものの描写がなされている。
作中に登場した人型は全て10歳前後の子供の姿をしており、仲間達と共に主人が残した贈り物を護り続けてきたが、長期間稼動するタイプではなかったため、次々とバッテリーが切れて機能停止するか、ヒルトら軍の介入が原因で壊されてしまう。それらは寿らによって集められ、彼らが護っていた樹の下に埋められた。
ニールス
公にはされていないが、内乱中の隣国・ハンヒニへの銃器密輸などを軍が率先して行い、利益を上げている。
ルアン
ハンヒニ
ドゥヴニ
日本
書誌情報
単行本
- 高屋奈月 『翼を持つ者』 白泉社 〈花とゆめコミックス〉 全6巻(2010年7月現在絶版)
文庫版
- 高屋奈月 『翼を持つ者』 白泉社 〈白泉社文庫〉 全3巻
ドラマCD
『HCD 翼を持つ者』
『花とゆめステップ増刊』1998年1月15日号に掲載された番外編「暗黒姫」の前後に本編の後日譚としての展開を付け足した形の内容。
CDの後半に寿、擂文・シラギ、ヒルト・ギルのおまけボイスが3種類ずつ収録されている。
配役
擂文・シラギ - 緑川光
抄華 - 田中敦子
晴 - 檜山修之
コクサイ - 保志総一朗
アデリィート・ウィルソン(アディ) - 南央美
フィーア・マイシェル - 岩男潤子
ヤン・蛟 - 森久保祥太郎
ヒルト・ギル - 松本保典
十夜・イグラム - 三木眞一郎
六呂 - 根谷美智子
ヤンの部下 - 伊藤健太郎