聖石の使徒
以下はWikipediaより引用
要約
『聖石の使徒』(せいせきのしと)は、前田珠子による日本のライトノベル。イラストは山本鳥尾が担当している。コバルト文庫(集英社)より2001年8月から2011年4月まで刊行された。
ストーリー
世界最北の大陸・豊珠の中でも北にある国・玉濫。その中でもさらに北部にあるアスカニーリ神殿で修行中の、聖石の子供・アラクセイトとソラミイノは、ある依頼のため派遣されてきた、2人の珊瑚の使徒と共に「凍ってしまった」不凍湖へ行くことに。
だが、旅の途中で、世界を蝕む瘴気を放つ、喪月神の執念ともいうべきものにアラクセイトが攫われてしまう。彼女は、以前にも喪月神による神隠しに遭っていた。その影響で能力をうまく制御できなくなっていたアラクセイトだが、火事場の馬鹿力とも言うべき強運で本来の力を取り戻し、事件を解決に導く。
その後、珊瑚の使徒たちと共に世界を旅することになった2人は、ある事件をきっかけに、2人の鋼玉の使徒と公には存在の明かされていない金剛石の子供・ガネルオージェに出会う。更に地神神殿に立ち寄った際、ソラミイノに急な知らせが届いた。知らせを受けて、珊瑚の使徒とアラクセイトを伴い自宅へ戻った彼女の前には、行方知れずになった5年前と変わらぬ姿の兄が。
数日後、変わってしまった現実を見て、再度行方をくらました兄を追うため、ソラミイノは家出を決行する。が、それはアラクセイトに読まれていたどころか、珊瑚の使徒たちや神々の思惑があって成功したものだった。
途中で再会したガネルオージェを加え、手配されているはずの地神神殿には極力立ち寄らない旅を続ける一行は、ソラミイノの兄の体を乗っ取り復活を遂げた喪月神に対抗できるのか。
登場人物
主な登場人物
アラクセイト(アーク)
石墨の子供。癖のない紫紺の髪と黄燈色の瞳を持つ15歳の少女。火神・イイタールの娘で、精霊を見ることが出来る。ソラミイノとは神殿でのルームメイト。ソラミイノより神殿に来るのは3年も遅かったが、ぐんぐん成績を上げ、同じクラスになる。頭の回転自体は速いのだが、ソラミイノが神殿内で優遇される理由を「成績がよくて面倒見もいい優等生だから」だとしか考えていなかったほど天然な性格が災いして、危なっかしいところがある。が、天然ゆえに無意識に核心をついた発言をすることも。
神殿に入る前は子供石を薪代わりにすることで家族を凍死から守っていたため、鋼玉の使徒2人からもらった極上の子供石を見て「何粒あれば越冬できるか」を考えてしまうなど、金銭感覚がいささかおかしい。また、ごくありふれた石を抱いてきたため、母親から何度も「卑屈になってはいけない」と言われており、「わたしなんか」は禁句として口にしない。しかし、事あるごとに「能力をまともに制御できない自分が使徒に選ばれるはずはない」と思っており、神殿を出た後は自分の能力を家計の助けにしようと考えている。
喪月神の瘴気を浄化することの出来る炎を発生させられるほどに強い火神の加護を受けているため、度々喪月神に狙われる。また、4年前に喪月神による神隠しに遭って以降、急に能力の制御が出来なくなり、自分の子供石を薬湯に変えられないほど技術面で落ちこぼれてしまっている。そのためもともとの学習意欲に加え、最低限の成績を確保するべく勉強したので、知識は豊富。第1巻の事件中に、強運によって本来の力を取り戻したが、その力は本人が思う以上に強まっており、現在も制御しきれていない。そのため度々力を暴発させてしまい、「素直で可愛い危険物」「天然ぽややんの火薬庫」などと評される。
瘴気を浄化する際、自身の子供石である石墨ではなく、何故か様々な色の金剛石を生み出すが、普段でも精神を集中させすぎた場合、「一部だけ金剛石に変化した石墨」を生むことがある。
ソラミイノ(ミイノ)
砂金水晶の子供。白金色の髪と青緑の瞳を持つ15歳の少女。火神の娘ではないがそこそこ強い加護を受けているため発火能力を持ち、精霊を見ることも出来る。神殿での修行も1年年長者のクラスで好成績を収める優等生で、寮での室長。その実力から近々使徒となる可能性の最も高い子供とみなされている。
面倒見のよい性格から、アラクセイトには同い年であるにも拘らず「頼りになるお姉さん」として見られている。本人は、3年遅れてやってきたにもかかわらず、あっという間に同じクラスになったアラクセイトをライバル視したくてたまらないのだが、天然で大ボケをかます性格と、神隠し以降の落ちこぼれ度合いのため危なっかしくて眼を離せず、世話を焼いているというのが真相。
実家は神殿の有力者であるストリーヴ一族。その影響からなるべく逃れるため、7歳で神殿に入った時はあえて辺境の神殿を選んだらしい。
兄の体を奪った喪月神に攫われ、月神気の満ちた場所にいたためか、月神気を扱う力を得た。現在は三度姿をくらました兄を追って行方不明。
ガネルオージェ(ガネル)
金剛石の子供。黒色の髪と銀灰色の瞳をもつ。ある事情から一時的に体の成長が遅くなっており、20歳を過ぎているにも拘らず15歳前後にしか見えない青年。
美陶における、とある事件の当事者としてトリノアーク・ナウルニールと出会い、その監督下に置かれることに。武器に、紅玉を埋め込んだ長剣と青玉を埋め込んだ短剣、青玉を埋め込んだ針を持つ。これらの石は彼の師匠格である2人の子供石である。また、自身の子供石を埋め込んだ剣を使う場合もある。
現在公式には金剛石の子供(あるいは使徒)は見つかっていないため貴重な存在だが、ある事件の際、師匠の言いつけを守らなかったため現在破門の身であり、壊れかけた、師匠の子供石を埋め込んだ腕輪を直すため、彼らの子供石を持つアラクセイトらに同行している。神殿に籍を置いておらず、師匠コンビと各地を転々としていたため、3人の中では一番世慣れている。
聖石の子供
シャラクセイタ(セイタ)
サラナゲイダ
シオルリイダ
エーメンティア
姫刀自(ひめとじ)
聖石の使徒
セイタマール(セイ)
血赤珊瑚の使徒。朱色の髪と褐色の肌を持つ長身の男性。2歳年下のカーラトーニとペアを組む。治癒能力に特化する者の多い珊瑚や真珠の使徒の中で、このペアは攻撃に特化している異質なペアである。寡黙で、物事を過激な方向へ誘導しがちなカーラトーニのストッパーと思われがちだが、実はそうでもない。
アラクセイトとソラミイノの師匠格。特殊な宿命を授かっていたため、神殿の巫女による神託を受け、生まれてすぐに親元から離され、使徒名を授かる。少年時代から既に長身だった。
自身の子供石を柄にはめ込んだ剣で瘴気を宿した相方の体を斬ることで、瘴気のみを浄化するが、その相方が喪月神の瘴気に侵されていた場合、体ごと斬られて死ぬことになるため、陰では「狩人」とも呼ばれる。しかし本人は最初の相方がその宿命で命を落とす際に初めて知った。
初めてペアを組んだ相手をその宿命によって失ってから、伽羅の最後のパートナーとして呼ばれ、しばしの間行動を共にする。自分の能力が原因で相方を失うことを恐れていたため、その仕事が終わった後はペアを解散するつもりだったが、度重なる懇願に根負けし、「女にならない」という条件でペアを続行するが、伽羅が女になってしまったことで一時苦悩する。
水の加護を受ける珊瑚の使徒だが、聖石が赤いので、若干相反する炎の属性も持つ。そのため、珊瑚の使徒でありながら、水の力はあまり強くなく、カーラトーニと比べると感覚も弱い。
カーラトーニ(カーラ)
黒珊瑚の使徒。黒髪黒瞳の美女。感覚が非常に鋭い。水の加護が強すぎたため、性別が流動していた過去を持ち、当時神殿では神聖文字で「伽羅(から)」と呼ばれていた。その力の強さは、暴走状態になった際に同じ水の守護を持つ黒真珠の使徒を溺死させかけたほどらしい。また、セイタマールと出会う14歳頃には既に使徒として認められていたが、性別が定まっていなかったために使徒名を名乗ることが出来なかった。
特殊な存在であるため神殿の外にはほとんど出たことがなく、最初は自分の容姿についても頓着していなかった。性別が定まる前に度々ペアを探しているが、無鉄砲な部分のある性格と力の強さ故に悉く失敗、最後の相手としてセイタマールに出会う。セイタマールとのペアがうまく行かなければ籍を置く神殿の「籠の鳥」となるため、正式にペアを組むことをセイタマールに懇願し続けていた。セイタマールと初めて組んだ2年後、当初籍を置いていた神殿から、セイタマールが籍を置く那八の神殿に籍を移すことに。しかしその直前に、16年もの間流動していた性別が定まってしまう。
当初は常に敬語で話していたが、「落ち着かない」と言われたためセイタマール相手の時は普通に喋るようになった。その後、セイタマールの以前の相棒がたおやかな女性であったと聞き、その人を思い出させないようにしたいと、性別が定まった際に預けられた妓楼の女達に相談し、鉄火な口調を教わり、台本も書いてもらった。以来、神秘的な容姿に似合わない鉄火な口調で話す。
瘴気を自らの体に集め、体ごと相方の剣に切らせて浄化する。相棒の苦しみを理解しており、「絶対に堕ちない」ことを自らに課している。
ナウルニール(ナニィ)
トリノアーク(トリノ)
ネイドアーク(ネイド)
ラークラーニ
ウォルセイイ
アリオーニ
シャークネーニ(シャーニ)
神
神の名の終わりが「イ」音であれば女神、「ウ」音であれば男神で、これに則り、聖石の使徒の使徒名も定められる。
極稀に人間の子供の名付け親となる神もおり、その子供は神の真名を与えられ、(聖石の子供でなくとも)名付け親になった神の眷属である精霊に愛されることとなる。
また、精霊たちはそれぞれの神の子供として呼ばれる。(火の精霊 → イイタールの子供、風の精霊 → イーオダールの子供など)
アイルトーリ
アスカニーリ
その他
ワレンアイノ(ワレン)
イイオーン
ファヴラン・ストルール
砂金
ファーリィン(ファー)
ヴァディリン
ヴィクティーン
用語
聖石(せいせき)
神々から使徒と定められると、その聖石に神殿関係者にしか分からない神紋が印される。この神紋と同じものを、顔料を使い、半身である子供の手に描く儀式を行うことで、その絆を強め、正式な使徒と認められる。印される神紋は、大抵はひとつだけだが、アラクセイトとソラミイノの聖石には複数印されるという特殊な事態が起こった。
聖石の子供(せいせきのこども)
使徒に選ばれずとも自身の能力を制御する術を学ぶ必要があるため、聖石の子供はそうと判明した時点で神殿へ預けられるのが一般的。また神殿内の学習院では、能力の制御方法の他に薬草などの扱いも学ぶ。使徒になれなかった者はその後神殿を出て、能力を活かして生計を立てることが多い。
聖石の使徒(せいせきのしと)
原則、お互いの能力を発揮して瘴気を浄化できる相手とペアを組んで行動するが、トリノアークらのように瘴気を感知する能力が低いペアには、感知役の使徒が仕事の間だけ加わる。また、基本的に籍を置く地神神殿に持ち込まれる依頼を受けて派遣されるが、重大事になると他地域の神殿からの依頼を受けて派遣されることもある。ただし、彼らであっても瘴気を浄化するのは難しい。
神々の思惑によっては不老長寿となることもある(師匠コンビはいずれも不老長寿らしい)。
聖石の子供石(せいせきのこどもいし)
精霊たちはその属性によって好む石が異なり、使徒たちが精霊に頼みごとをする際のお礼としても利用されるため、規律を無視して仲間内で子供石をやりとりすることも多い。
「玉響」と呼ばれる、子供石同士をぶつけあい澄んだ音を出して周囲を浄化する方法があるが、この浄化法はぶつける石の強度や、広範囲の浄化が難しいという問題もあってあまり行われない。
薬湯(やくとう)
神殿(しんでん)
木霊(こだま)
地名・国名
バルヴァローズ
豊珠(ほうじゅ)
玉濫(ぎょくらん)
被黄(ひおう)
玻瑠(はる)
針羅(しんら)
美陶(びとう)
灰豊(はいほう)
樹翁(じゅおう)
楠下(だんげ)
迷わずの森
一族の者以外が踏み込むと、迷ったあげく森から攻撃を受けて出られなくなるか、出られても五体満足とはいいがたい状態になるらしい。そのため、逆の「迷わず」という名がつけられた。
麗矢(れいや)
緋芭(ひば)
芭蕉(ばしょう)
春には神殿で大祭が催され、その際には普段出回らないような聖石の守り石も出回ることで有名。
那八(なや)
響波(きょうは)
白谷(はくや)
聖石
硬度の高い石を抱いて生まれた子供ほど、「瘴気を感知する能力が低い」とされる。石の種類と色によって属性(地・水・火・風)が異なり、それぞれの精霊たちが好む。血赤珊瑚のように水属性でありながら若干火属性を持つものなどもある。
石墨
翡翠
瑪瑙
赤瑪瑙
紅玉
青玉
黄玉
金剛玉
金剛石
緑柱石
月長石
柘榴石
杉石
水晶
砂金水晶
煙水晶
紅水晶
紫水晶
黄水晶
淡水真珠
菫青石
血赤珊瑚
既刊一覧
- 前田珠子(著) / 山本鳥尾(イラスト) 『聖石の使徒』 集英社〈コバルト文庫〉、全11巻
- 「其は焔をまとう者」2001年7月27日発売、ISBN 4-08-614886-2
- 「其は力を放つ者」2001年11月2日発売、ISBN 4-08-600025-3
- 「其は天秤をかざす者」2001年12月21日発売、ISBN 4-08-600052-0
- 「其は天秤をかざす者II」2002年6月1日発売、ISBN 4-08-600102-0
- 「其は水に遊ぶ者」2002年12月25日発売、ISBN 4-08-600204-3
- 「其は水に遊ぶ者II」2003年3月28日発売、ISBN 4-08-600249-3
- 「揺籃の瞳」2004年7月27日発売、ISBN 4-08-600458-5
- 「蒼の組木箱」2005年4月28日発売、ISBN 4-08-600540-9
- 「狩人の爪」2007年10月2日発売、ISBN 978-4-08-601077-1
- 「狩人の覚悟」2010年4月27日発売、ISBN 978-4-08-601403-8
- 「狩人の宝」2011年4月28日発売、ISBN 978-4-08-601521-9