漫画

自殺島


漫画:自殺島

作者:森恒二,

出版社:白泉社,

掲載誌:ヤングアニマル,

レーベル:ジェッツコミックス,

発表期間:2008年11月14日 - 2016年8月26日,

巻数:全17巻,

話数:全168話,

漫画:無法島

作者:森恒二,

出版社:白泉社,

掲載誌:ヤングアニマル,

レーベル:ヤングアニマルコミックス,

発表期間:2019年2月8日 - 2022年7月22日,

巻数:全6巻,

話数:全54話,



以下はWikipediaより引用

要約

『自殺島』(じさつとう、Suicide Island)は、森恒二による日本の漫画。『ヤングアニマル』(白泉社)にて、2008年22号から2016年No.17まで連載された。単行本は14巻までのレーベルはジェッツコミックスで、15巻以降はヤングアニマルコミックスでの刊行となる。

日本近海の孤島を舞台に、政府によりこの島に送りこまれた自殺未遂常習者達が、命の意味と向き合いながら生きていく物語である。作中では、食糧を確保するため登場人物達が狩猟採集をする姿が描かれており、前作『ホーリーランド』と同様に、作者の経験を交えながら図解付きでサバイバルに関する説明がなされている。森恒二は実際に何度も南の島に足を運んで、海で突き漁をしたり、京都で猟師と一緒に山に入ったりしており、その時の経験があるから狩りのシーンも自信をもって描けたと語っている。

続編として、前日譚にあたる『無法島』が同誌の2019年No.4から2022年No.15まで連載。

あらすじ

プロローグ
主人公の青年セイは自殺未遂を繰り返した末に、「生きる義務」を放棄した意思を示す書類にサインをする。病院のベッドの上で意識を失ったセイは、目が覚めた時、自分がまだ生きており、そして自分と同じ自殺未遂者たちが周囲に何人もいることに気付く。そして、ここが自殺を繰り返す“常習指定者”が送り込まれる島「自殺島」であることを知る。
その直後、絶望して飛び降り自殺をするグループが現れ、落下して死に損ねた者のおぞましい姿を目の当たりにし、ひとまず自殺することを踏みとどまる。死ねないならば生きるしかない、矛盾を抱えた彼らのサバイバル生活が始まる。
序盤
リーダーシップの取れるリョウと、知的で冷静沈着なカイが中心となり、『山側のグループ』が出来る。バナナや漁網を見つけたことから当面の食糧問題は解決したと思った矢先、水温が下がりすぐに食料不足に直面するようになり、塩により干物を作ろうと画策する。
野生のシカの群れに遭遇したセイは、大自然の中に自分の居場所を見出すようになり、弓矢を手にしてシカを狩猟するようになる。そこで、かつて『無法島』と言われた時代に囚人として送られてきた先住者に遭遇し、シカ肉の燻製を手伝ってもらい、子犬のイキルを譲ってもらう。その後、猟のできるセイの命を狙おうとする集団を返り討ちにしたセイは、謝罪したケンに猟を教えるようになる。
一方、リョウ達はイカダを作って『自殺島からの脱出』を図ろうとするが、自衛隊の船にぶつけられてイカダは半壊して、島に追い返されてしまう。希望を絶たれたリョウは、リーダーの座から降りて孤立して生きようとする。理性的な言動をするスギが、次のリーダー役を務めるが、働かないメンバー達から食料を奪われるようになる。(第4巻まで)
中盤
暴力で支配しようとするサワダが率いる『海側のグループ』が出現し、嫌気がさしたナオが『山側のグループ』に逃げてくる。彼らは、恐怖政治を行うサワダによってマインドコントロールされ、女性メンバー達との乱交をしたりしていた。快楽主義のサワダは、当初は自身のグループ内だけで満足していたものの、それに飽きて『海側のグループ』を敵視するようになっていく。
また、精神的に追いつめられた生存者たちに対して、カイは親身に声をかけて「無理しなくていい、楽になっていい、一緒に逝ってあげる」と巧みに自殺するよう誘導したり、時には自殺に見せかけて絞殺していた。
一方、かつて義父から性的虐待を受けていたリブは、自然と共生をするセイを見て、次第に自身が生きることを肯定するようになり、セイとリブは互いに惹かれていき恋人同士になる。
その後、ナオの身柄や食料などの奪い合いを発端にして、『海側のグループ』との争いへと発展していく。カイの指揮による女を使った騙し討ちに対して、セイによるサワダ暗殺の失敗など、双方の攻防が続き、最終決戦に『サワダの村』への急襲作戦が決行される。しかし、それを予期したカイは逆に、本拠地にしている学校へと全員で乗り込んで乗っ取ってしまう。
仲間を人質に取られたものの、最終的に逃亡するサワダにセイは矢を射り、負傷して海に逃れたサワダはサメによって食われてしまう。『海側のグループ』を許したセイ達は、いくつかの取り決めをして、今後は距離を取りつつも交流することになる。(15巻まで)
終盤
ナオの出産を通して、セイは生きる意味を「命のバトン」を繋いでいくことだと理解し、自殺はいけないことだと確信する。
幽閉していたカイの口車に乗せられ、リョウが刺されて死亡し、カイによってリヴが人質に取られてしまう。開けた平野で猟犬のイキルをヒモで繋いだ上で、武器を捨てて投降することを迫られるセイだったが、そこを偶然通りかかった先住者の助けを得て囮となってもらい、射程内に近づいて弓を射てカイを殺害し、リヴを助け出す。
その後、自殺島は政府の特別自治区見直しにより解放され、「イキルの島」と改名。特別自治を保ったまま未遂者などの社会復帰プログラムに活用されることになり、スギは島との仲介役として活動し、セイを始めとした中核メンバーは島に残り、物語は幕を閉じる。

世界観

この作品中の日本は、国民はIDによって政府に管理されており、そのIDが剥奪されるということは日本国民としての権利と義務を失うことを意味している。舞台は基本的に島の内部とその周辺の海域に限定されており、日本本土での様子は登場人物の過去の回想、または「凶悪犯罪が増加している」、「自殺者が急増しているが彼らを支援し立ち直らせるための予算が不足してきている」など、伝聞や噂の形でのみ語られている。

自殺島

何人もの自殺未遂の常習者達が送り込まれた孤島。家屋や廃校舎、生活物資など、かつて人が住んでいた形跡があるが、従来の住民は既に残っていない様子である。家屋の中には何体もの白骨死体が残されており、山中にも自殺したと思われる死体が発見された。

自然に囲まれており、多くの草木や動物が生息し、食用に適した果実なども自生している。天敵がいないためか、鹿の数も多く、猪による農作物の食害も発生している。島の住人が飼っていたらしい鶏などの家畜も生息し、畑地だった場所から残された農作物が発見されることもある。セイ達が住む島の北西に「小さな離島」があり、そこには野生化したヤギの群れが生息しており、捕食者のいない環境で増えすぎたヤギによって、離島の植生は食べ尽くされそうになっていた。

政府の人間によって立てられたと思しき看板に、この島に送り込まれた者達はIDを剥奪されて、国民としての権利と義務を失ったことと、この島と周囲の近海1キロメートル以内より外に出ることを禁じる旨が書かれている。日本近海にあるようだが、正確な位置や島名は不明。狩猟のために山に入ったセイが出会った男の話によると、この島はかつては凶悪犯達が送り込まれ、お互いに殺し合いをした「無法島」であったという。

なお、自殺島の存在は政府によって隠蔽されているが、本土ではネット上の噂として知られている。

自殺島マップに描かれた地図が、八丈島と八丈小島にそっくりと言われている。

登場キャラクター

本作では名前がわからない人物、明かされていない人物が存在する。本項では名前が明らかになっている人物のみ紹介する。

主人公とヒロイン

セイ

本作の主人公。自殺未遂の常習者。背の低い青年で物語開始当初は19歳。オーバードラッグとリストカットによる自殺未遂を繰り返し、「生きる義務」を放棄した「常習指定者」となる。その後、意識を取り戻した時、他の常習指定者達と共に自分が見知らぬ孤島に放置されていることに気付く。
学生時代に出会った先輩の青山から弓矢のことを教わり、その知識を基に試行錯誤を重ねながら自作の弓矢を完成させる。その弓を使って狩猟をするようになり、それを通じて命の意味を再認識していくようになる。
リヴ

常習指定者の1人。セイが島で目覚めた際に近くにいた、長い髪をした美しい女性。本名は「マリア」だが、本土での過去を思い出すため、この名で呼ばれることを嫌がっている。「リヴ」というのはセイが考えた名前で「セイ(生)」や「イキル(生きる)」と同じ「Live(生きる)」という意味を込めてつけたもの。
島で過ごした最初の夜が明けた後、セイを誘って廃校舎の屋上から投身自殺を図るがその場は思い留まる。以後、島で精一杯生きようとするセイを見続け、次第に惹かれていく。
母親がロシア人のハーフ。10歳の時、母が自分を置いて故郷のロシアに帰った後、暮らしが荒んでいった父親の元から、父の親戚の家に預けられる。そこで養父から性的虐待を受け続け、その仕打ちに対して心と体を切り離し人形のようになることで耐えてきた。義務教育を終えた後、家を出て一人暮らしを始めるが、男性と付き合っても過去の記憶が甦り、養父への性的虐待を受けていた時と同様に人形のようになってしまい、それが原因でどんな男性が相手でも上手くいかず別れてきた。
イキル

セイが狩猟のパートナー(猟犬)として飼うことにした子犬。元は山奥に1人で潜み暮らしていた男が飼っていた犬の中の1匹。

山側のグループ

カイ

常習指定者の1人。セイが自殺未遂をした後に送致された施設で出会った青年。セイより1歳年上。冷静な視点で物事を見据えている。リョウと共にグループの指導者となり、農作物による食糧の確保を目指すが、他のメンバーとは一線を引いた態度が多い。
しかしその本性は「人間という種族に生きる価値など無い」という歪な価値観の持ち主であり、悩みを抱える者に近付き、優しく接しながらも、絶望を煽るようなことを吹き込み、グループの人間を次々と自殺に追いやっていたことが判明する。そのことに気づきながらもセイ達はカイを止められず、カイに心を寄せ彼を信奉する者達もグループ内に増えていったが、ミキを飛び降り自殺に追い込もうとしたところをセイ達に発見された際に、これまでの所業とさおりを殺害したことを追及され、集落を追放される。追放された際、セイ達が住んでいた廃校舎を燃やして、彼らを殺そうとする行為におよび、その後は食料も得られず困窮していたが、紆余曲折あってサワダの一派に加わる。自殺島に連れてこられた当初や山側のグループが成立し始めた当初こそ、その一見広い知識で頼りにされるが、結局彼の知識は実体験や生活を通じた経験に裏打ちされた深い知識では無く、浅い知識であることが徐々に仲間達に見透かされる。それでもグループメンバーが彼を排除することは無かったが、内に秘めたプライドの高さや前述の価値観などから、生きることの意味を見いだし始めたセイたちを心から認めることができずに、自ら精神的な孤立を深めていくことになる。
サワダの死後は海側のグループからも見放され、学校のトイレに閉じ込められていたが、収穫祭の夜にリョウを唆して殺害し、リヴを人質に脱走。最期は牧草地帯の丘でセイに腹を射抜かれ、自身の行動の原理は皆に置いて行かれたという劣等感から変質した殺意であることを伝え、ホッとしたような顔(曰:先住者)でセイに看取られながら死亡する。
トモ

長い髪を後ろで束ねている青年。セイと仲が良い。過去に沖縄で暮らしていたことがある。
小さな街の医者の家に生まれ、両親と妹がいるごく普通の家庭に育った。しかし、中学生になったころから自分が性同一性障害であることに気付き、悩んでいた。隠し持っていた女物の服が見つかったことを機にそのことを告白してみたものの、父親からは理解されず「化け物」呼ばわりされる。父親は障害を無理矢理矯正しようと試み、このことが原因で家庭崩壊していった。
セイが自分の性同一性障害のことを知りながらも全て受け入れてくれたことを機に、グループの全員の前で告白。グループの女性達はそのことに既に気付いており、また他の面々も戸惑いながらも受け入れた様子である。
カイの作戦に基づいた襲撃の際に人質として捕らわれ、セイ達が助けに行くが、心は女であることを見抜いたサワダに抱かれ、そのことを認めたくない一方で自分を女性として扱ったサワダを否定しきれず、戻れずにいたが、最後の抗争で、人質として利用されていたところを助けられる形で戻ってきた。
リョウ

未遂者とは思えぬ程、活力に満ちた青年。グループのリーダー格となり、皆を引っ張る。明るくて人懐こく、女性からの人気も高い。
かつて同棲していたエリという恋人を交通事故で亡くして以来、エリの元へ行くことばかり考え、彼女が事故死した交差点で何度も自殺を試みたが、それでも死ねなかったという過去を持つ。
自分の死に場所を自分で決めたいという思いから本土への帰還を望み自作の筏で有志と共に本土へ戻ろうと試みるが、哨戒していた巡視艇に筏を破壊された。なんとか島に帰り着くものの、それからは心を閉ざし1人で漁をしていたが、セイの説得で再びグループに戻ってくる。
仲間想いで、人を傷つけることを嫌がっており、港側のグループとの抗争が激化してきたことを機に、リーダーの座をリュウに譲る。
港側との抗争が終結し、集落が平和になっても尚、過去の未練に苦悩していたところ、幽閉されていたカイに懇願され、トイレから出してしまい、背後から刺され、致命傷を負う。命が尽きる前に、集まった集落の皆に感謝の想いを伝えきったところで、エリはすぐ傍にいたという幻影を見て息を引き取った。
よく被っていたバンダナはセイに託され、セイとリヴの間に生まれた子供が被っている。子供の名前も"リョウ"である。

スギ

眼鏡をかけた青年。本名は「杉村(すぎむら)」。自殺島のことを知っていた。グループの中でも頭が良く、塩を採る際に塩田を提案し、リョウが筏で本土へ戻ろうとしたときには自作の方位磁針を彼に渡すなど、知恵袋的な存在となる。
本土にいた際、首吊り自殺を試みて失敗した過去を持つ。子供のころから人と接することが苦手で、大学を出た後「1人で幸せを得る」ために文筆業になることを志す。しかし、そこでも人とのコミュニケーション能力が必要であるという現実にぶつかり、自殺へと追い込まれていった。
島解放後は「自殺島の日々」を出版、ベストセラーになる。収入の殆どを島の運営費に寄付してしまった。
タナカ

初めて漁をする前日に皆で協力することに期待を抱いていたが、その夜、電気コードで首を吊って自殺してしまった。
ミノル

実家は農家で、経験を活かして農作業に従事する。本土にいたころは、農作業に意味が見出せずに家を出たが、その後も生き甲斐になるようなことを見つけられなかったという過去を持つ。島に来てからは、作物を食べてくれる人たちと身近に接することが多くなったことに充足感を得るようになる。
サワダグループの女性による襲撃で数箇所の刺し傷を負い、以降は看病されながら休んでいたが、稲田がモノになるかどうかの大切な時期に休んでいることはできないと周囲の反対を押し切って働き出す。日に日に体は弱っていったが、リョウの用意したソファに座って皆に指示を出しながらどうにか稲田の完成を見届ける。最後は黄金の波の中、ずっと言えなかった感謝の言葉を両親に伝える幻想を見ながら満ち足りた顔で死亡した。
ボウシ

髪を長く伸ばし、常に帽子をかぶっている男性。自分の名前を嫌っているため、「ボウシ」と名乗っている。当初は肥満気味の体型だったが、次第にやつれていく。人に誇れる物が何も無く、セイを「持たざる同志」と呼んでいた。他にできることが無いからという理由で農作業の手伝いをしていたが、やがて島での生活や狩猟採集に必要な道具を考案し作成することでグループに貢献していくようになる。サワダグループとの抗争においてはグループの武装化のため盾や槍なども作製する。
サワダグループの女性による襲撃で親友だったミノルを失い、それから数日間は一心不乱に武器の作成に勤しむ。ナットを撃ち出せば一斗缶を貫通するほどの威力を持つスリングショット、それを上回る弓矢用のスリングショット、戦車などを作成し、サワダグループに対して激しい殺意を向けるようになる。これらの武器は皆に開戦を決意させるきっかけにもなった。
中盤からタエと両想いになり、かなり精神的に成長するが、彼女のことになると冷静さを失うことも多い。「持たざる者」として通じるものがあるのか、セイにも理解できなかったカイの歪みを鋭く非難し、一度も冷静沈着な態度を崩すことのなかったカイを酷く動揺させた。
ケン

仲間と共にセイを襲い、肉を奪おうとした男。この島で生きようとするセイの姿を見て改心し、セイの理解者となる。セイの協力で弓を作成し、狩りにも同行するようになる。元は港側のグループにいた。ナオに惚れている。
父親は親戚の保証人になったため多額の借金を抱えており、ケンが物心ついた時には利息を返すためだけに働いているような状態だった。そんな父親を見て育ったため、何もやる気が起きず、本土で暮らしていた時はただ死ぬまでの日々を漫然と過ごすだけであった。
吉村(よしむら)

セイを襲い、肉を奪おうとしたが、夜の山中で恐怖にかられ、パニックに陥って大怪我をする。自分のしようとしたことを悔やみ、セイに謝罪しようとしていたが、その前に怪我が元で死亡する。
青木(あおき)

セイを襲い、肉を奪おうとしたが失敗。グループに逃げ戻った後、セイを孤立させるべく、真相を捻じ曲げて皆を扇動しようとするが、嘘が発覚し逆に自分が孤立する。居場所が無くなったことに怯えていたが、「何者か」に自殺を促された後、翌朝に縊死体となって発見される。
ヨネダ

顎髭を生やした、頬のこけた男。リョウがグループから離れていた時期、食料の採集には加わらず、他の無法者たちと一緒になってグループのみんなから食料を奪って過ごしていた。リョウが復帰した後はグループから孤立しかけていたが、リョウのとりなしで仲間の輪に入り、生活を共にするためにルールにも従うようになっていった。ナオを気に入っており、しょっちゅう彼女の元を訪れている。朝に弱く、寝坊を繰り返して漁に失敗しリュウに度々怒鳴られている。
タエ

本土では看護師をしていた。(作中ユミと呼ばれている場面があるが、それ以降はタエと呼ばれている。)
怪我人が出た際に看病をすることが多い。本人曰く、患者の死に耐え切れずに看護師の仕事をやめてしまったという。
道具を作成しグループに貢献していくボウシに好意を抱くようになる。
ミキ

髪を肩まで伸ばした、そばかすが特徴的な女性。素潜りが得意。リョウに好意を抱いており、リョウが筏を作って島を出ようとした時も行動を共にした。
本土にいたころは、男性依存が原因で恋人に去られ、以後も同じように別れを繰り返していく内に精神的に追い詰められて、服薬による自殺未遂を行うようになった。
リュウ

本名は「リュウジ」。好戦的な性格で、過失ではあるが同じグループの人間をケンカの末に殺してしまったこともある。
港側のグループとの抗争が激しくなってきた際、争いを厭ったリョウからリーダーを任される。
24歳の時、結婚を機に独立して従業員3人の小さな運送会社を立ち上げた。少しずつ営業成績も上がり子供も産まれ、すべて順調にいっているように思えたが、不況のあおりで経営が苦しくなり給料が下がると従業員は全員辞めてしまった。その後は寝る間も惜しんで業務の全てを1人で行ってきたが、居眠り運転で事故を起こし5人の死傷者を出してしまう。莫大な債務が残り妻からも離婚届が送られてきたリュウは、気力を無くし刑務所内で自殺未遂を3度繰り返した後、自殺島へと送り込まれることになった。
レイコ

眼鏡をかけた女性。奔放な性格の妹とは正反対に、幼少のころから周囲に迷惑をかけない「いい子」であることを心がけてずっと過ごしていた。しかし、妹が普通に結婚し幸せな家庭を築いたころから実家での暮らしに居心地の悪さを感じるようになり、ついにはいつまでも結婚しないことを両親から窘められたことで今までの「いい子」だった自分の全てを否定されたように感じ、精神の均衡を崩して自殺未遂を繰り返すようになっていった。 ナオを連れ戻そうとやって来た海側の男達に巻き込まれる形で狙われるが、ナオの機転で廃病院の屋上まで辿り着き、狼煙をあげてセイ達に知らせ危機を免れる。この時にナオと仲良くなり、妊娠中に自殺を図ったナオを慰めるなど、彼女の理解者となる。収穫祭の夜にリュウに告白し島解放後に結婚。ナオと島唯一の食堂を営む。
さおり

何かと相談に乗ってくれていたカイに恋愛感情を抱く。カイに自殺を促された際、もう少し頑張ってみようと自殺を思い留まろうとするが、絞殺される。死後、首吊り自殺に偽装されるが、スギが他殺と気付く。
ナオ

港側のグループからセイ達のグループに移動した女性。自称「癒し担当」で、この島で売春をして生活してきた。挑発的な服装で、島にいる他の女性達とは違う雰囲気を持つが多くの未遂者達と同様、手首にリストカットの痕がある。本土にいたころは母子家庭で、愛情を求める限り多数の男性と性交渉するなどしていた。
妊娠が発覚すると、女としての自分はもう必要とされないと思い込み、崖から海へ飛び込んだり、さらには自分の腹を刺そうとするなどの行為におよぶが、いずれも救出もしくは説得され、未遂に終わる。
作中の終盤、女性達の助けもあり、女の子を出産する。
鈴木 ノリオ(すずき ノリオ)

眼鏡をかけ、太った体型をした男性。セイ達が島に送られてきてから約半年後に島に新たに送り込まれてきた者達の1人。
その容姿から、本土では周囲の人間に蔑まれ続けてきたという過去を持つ。女性と性行為をしたくてサワダのグループへの参加を希望するが、カイの提案でセイかリョウを殺害するよう命じられる。初めての殺人行為に躊躇っていたところを、織田に説得され殺害を取りやめ、以後はセイ達のグループで生活する。
スズキ タツヤ

セイ達が島に送り込まれた時から登場しており、生活を共にしていた。
長い間名前を明かしていなかったが、港側から逃げてきた振りをした女性達の内の一人にナイフで刺され、死亡する直前に名を名乗った。
サユ

長い黒髪の女性。本土にいたころは服飾をしていたらしい。廃校のカーテンでケン達の衣服を作る。タエとリヴのウェディングドレスも廃病院のシーツとカーテンで作成した。

海側のグループ

サワダ

港側のグループのリーダー。島に来た初日に、セイ達と別れ何人かの者達と山の中に入っていき、その後の消息はしばらく不明となっていた。この間に、ニワトリやヤギなどを発見するなど食料の確保を率先して行い、他の面々を導くリーダーとなる。
その後、サワダは「暴君」となっていき、大勢の女性を囲って男性メンバー達の相手をさせたり、さらには人間の死体をも食べるようになり、そのためにグループに所属している人間達からはカリスマ視される一方で怖れられている。ナオに執着し、自分のもとに連れ戻すようグループのメンバーに命じ、これがグループ間抗争の火種となる。
本土にいたころは麻薬の売人だったが、自分で商品に手を付けてヤクザに追われる日々だった。セイ達と別れた後もバナナを奪うために殺人を犯し、女性を強姦するなどし、ついに「本能を満たせればそれでいい」という完結した死生観を持つようになったという。
最後の抗争にて、集落を捨て山側の男達の襲撃の隙をついて山側の集落を乗っ取り、学校の校舎で人質を取ることで有利な状況に持ち込むが、ロープを使って屋上から侵入してきたセイ達に不意を突かれ、一転して追いつめられる。さらに矢傷を負い、やむを得ず夜中の海に逃げ込んだ結果、サメに喰われるという最期を迎えた。
一連の抗争が終結した後、「自分の臆病さを隠すために、島で得たカリスマ性を利用して凶暴になっていった弱い男」であったことがナオの口から語られた。

その他

青山 英子(あおやま えいこ)

セイと同じ学校に通っていた女生徒。弓道部部長で図書委員。セイに弓矢のことを色々教える。しかし教師との許されない恋愛に苦悩し、ある日投身自殺する。
島に送られて間もないころ、セイは目が覚めた際に傍にいた女性(後のリヴ)に彼女の姿を重ねていた。
エリ

かつてリョウと同棲していた恋人。出会う以前は寂しい環境にあったらしく、リョウとは「似た者同士」だった。3年ほど生活を共にしたが、ある日バイクで2人乗りをして走行中、交差点で居眠り運転の車と衝突し、死亡した。
リョウは彼女を想い続けており、彼女の死はリョウの度重なる自殺未遂のきっかけとなった。
先住者

セイ達が島に送られてくる以前から山の中に潜み暮らしていた男。本土で人を殺して自殺島(当時は無法島と呼ばれていた)に島流しにされたとのこと。島内で争いが激しくなる前に山中に逃れ、半野生化した野菜を拾い集めて畑を作り、隠遁生活をしていた。初めての鹿狩りで山へ入ったセイが偶然住居を発見。肉の半分と引き換えに燻製の作り方を教え、子犬(後のイキル)を譲る。その後冬になり畑の作物が全滅してしまい、セイを頼ろうと山を下りる。途中でリヴを人質にとったカイと対峙するセイに出会い、囮役となりリヴの救出に貢献。島解放後は来訪者へ農業指導とサバイバル術の指導をしている。
織田(おだ)

ルポライター。自殺島を取材するために、自殺未遂者たちに紛れて政府の船に乗せられて島に上陸を果たした。上陸後はセイ達のグループに加わって生活を共にする。島解放後に出版した潜入ルポはスギの本に押されて売り上げが伸びず。新たなネタを探して奮闘中。
ハナ

レイコの妹。真面目な性格の姉・レイコとは正反対の奔放な性格で両親を困らせていた。高校卒業後はフリーターとして暮らしていたが、アルバイト先の正社員の男性と結婚。(所謂「できちゃった結婚」)結婚後は実家近くのマンションに住み、誕生した子供を連れて頻繁に実家を訪れるようになる。幸せな家庭を築いた事により、両親との関係は良好になるが、彼女が結婚出産した事により、未だ独身でいるレイコが両親から結婚や出産を急かされるようになった事が原因で姉のレイコが精神のバランスを崩してしまう。

書誌情報
  • 森恒二 『自殺島』 白泉社〈ジェッツコミックス〉、全17巻
  • 2009年8月28日発売、ISBN 978-4-592-14621-6
  • 2010年1月29日発売、ISBN 978-4-592-14622-3
  • 2010年6月29日発売、ISBN 978-4-592-14623-0
  • 2010年11月29日発売、ISBN 978-4-592-14624-7
  • 2011年4月28日発売、ISBN 978-4-592-14625-4
  • 2011年9月29日発売、ISBN 978-4-592-14626-1
  • 2012年3月29日発売、ISBN 978-4-592-14627-8
  • 2012年9月28日発売、ISBN 978-4-592-14628-5
  • 2013年5月29日発売、ISBN 978-4-592-14629-2
  • 2013年11月29日発売、ISBN 978-4-592-14630-8
  • 2014年5月29日発売、ISBN 978-4-592-14631-5
  • 2014年10月29日発売、ISBN 978-4-592-14632-2
  • 2015年5月29日発売、ISBN 978-4-592-14633-9
  • 2015年11月29日発売、ISBN 978-4-592-14634-6
  • 2016年6月29日発売、ISBN 978-4-592-14635-3
  • 2016年10月28日発売、ISBN 978-4-592-14636-0
  • 2016年10月28日発売、ISBN 978-4-592-14637-7
  • 森恒二 『無法島』 白泉社〈ヤングアニマルコミックス〉、全6巻
  • 2019年9月27日発売、ISBN 978-4-592-16501-9
  • 2020年3月27日発売、ISBN 978-4-592-16502-6
  • 2020年8月28日発売、ISBN 978-4-592-16503-3
  • 2021年4月28日発売、ISBN 978-4-592-16504-0
  • 2022年3月29日発売、ISBN 978-4-592-16505-7
  • 2022年9月29日発売、ISBN 978-4-592-16540-8