花よりも花の如く
以下はWikipediaより引用
要約
『花よりも花の如く』(はなよりもはなのごとく)は、能をテーマとした成田美名子による漫画。2001年5月号より『月刊メロディ』で連載が開始されたが、同誌は本作連載中の2006年に隔月刊誌『MELODY』にリニューアルした。2017年3月時点で累計発行部数が200万部を突破している。
概要
作者の前作『NATURAL』に登場した榊原西門の兄である能楽師・榊原憲人(正しくは「のりと」だが、概して作中では「けんと」と呼ばれている)を主人公としたスピンオフ作品。前作完結後に「外伝」として「花よりも花の如く」「天の響」の2編が描かれた後、正式に連載が始まった。
外伝登場時は主人公は内弟子になる直前であったが、単行本第2巻収録「風天」で内弟子修行期間を終え、玄人の能楽師として独立。能楽界に生きる人々の日常、創風会所属の若手能楽師たちの心の動きなどを描いている。
作中での時間はゆっくり進行し、2001年連載開始時の憲人の年齢は23歳であったのに対し、2016年15巻時点ではまだ29歳になるところである。
登場人物
相葉家の能楽師たち
榊原憲人(さかきばら のりと)
主人公。幼少期から古典芸能の世界に生きる。シテ方能楽師。六世相葉左右十郎の外孫。2歳時より子方として修行し、22歳の時に相葉左右十郎の内弟子となる。初シテは『経正』。3巻で『石橋』、5巻で『猩々乱』を披いている。
名前の由来は「祝詞」。家族を含む周囲の人間からは音読みの「けんと」と呼ばれている。弓道もたしなむ。音楽はジャズが好き。
西門という弟と彩紀という妹がいる。西門とは仲の良い兄弟ではあるが、西門が養子に出されたことを巡り葛藤を抱えている。
顔の造作は悪くないらしいが、弟妹に比べ地味で目立たない。普段眼鏡をかけているため、家族から「のび太」呼ばわりされている。ある時期からコンタクトレンズに変えてイメチェンした後から、主に妹・母に「カッコよくなったんじゃないか」と評されるほど、内面も変化している。
2時間ドラマ『石に願いを』に能楽師として準主役で出演したのが縁で、共演者であり主役でもある俳優・藤井琳を弟子に取ることになった。ドラマ出演後から、NPO法人に協力したり自分の会を立ち上げたりするなど、次第に活動の幅を広げ始める。
狂言師の宮本芳年の妹・葉月と知り合ってから彼女のことが気になり始め、『石に願いを』に共演後、2人で春日大社に行った際に、彼女に対する気持ちが恋愛感情であることに気付く。「好きです」と告白した後、しばらく関係がギクシャクするようになるが、明石に相葉家の菩提寺を探しに行った際に、彼女と偶然プラネタリウムで出会ったことから気持ちが通じ合うようになる。それもあって、家族から「最近、しょっちゅう葉月さんの話をしてる」と指摘されるようになる。
9巻において、匠人の「お礼参り」に同行した道成寺にて、左右十郎のある冗談めいた発言がきっかけになって、30歳になる2年半後に『道成寺』を披くことになった。その後、盲目の武内望と知り合ったことがきっかけで自分なりの解釈を得て『弱法師』のシテに挑んだ際は、母に「じいじ(=曽祖父)の弱法師に似てる」と評されている(本人は曽祖父と同居したことがなく、舞台も見ていない)。14巻において、小学校卒業記念に埋めたタイムカプセルに入れた未来の自分宛の手紙と亡き恩師の手紙を読んで、『道成寺』への取り組みの気持ちを新たにする。
相葉尋人(あいば ひろと)
相葉匠人(あいば たくと)
創風会所属の能楽師たち
渡会直角(わたらい なおずみ)
森澤楽(もりさわ がく)
憲人の弟弟子。内弟子として連雀に住込み修行中。父親も創風会所属の能楽師、森澤陸。子方時代の後に奈良県に引っ越したため能から遠ざかっていたが、高校卒業後に戻ってきて内弟子となる。
髪は生まれつきの茶髪。子方時代は黒く染めて隠していたものの、諸事情から中学を境に地毛で通すと決意。能楽師の道に進む時にはそれが議論の種となったが、理解者を増やし、ゆっくりと受け入れられていった。
性格は寡黙で大人しく、やや天然でマイペース。語彙数が少ないのと天然ボケとが相俟ってトンチンカンな受け答えをすることもしばしば。その一方で他人の気持ちを察して行動することも上手い。
ある場所にいる時、その場所にかつて存在した人間の「思い」が感じられるという不思議な能力を持つ。その不思議な力は幼い頃からあり、心配した両親の依頼でとある僧によって封じられた(正確には左目だけで見た時のみはっきり見えるようになった)。
直角と同じように彩紀が気になるらしいが、思うように声をかけられないでいる様子。なお、彼女が赤子の頃から姿を幻視しており、ずっと気になっていた少女が兄弟子の実妹と知って困惑している節もある。
その他の能楽師たち
宮本芳年(みやもと ほうねん)
五十嵐市祐(いがらし いちすけ)
中澤隆生(なかざわ りゅうせい)
シテ方だが、病気がちで地謡に専念している。憲人の曽祖父や相葉尋人とは戦中戦後の仲間。娘が嫁に行き、現在は妻と2人暮らし。
強面とは裏腹に優しい紳士。口ヒゲを生やしており、海人から「ゴッホ先生」と愛称を命名され、憲人からもその名で呼ばれることがある。 憲人のテレビドラマ出演には「『道成寺』も披いてないのに賛成できん!」と反対していた。
憲人の曽祖父が戦後『道成寺』を披いたときは地謡で舞台に出ており、そのときの若女の面の白拍子の美しさにひとしおの思い入れがある。その若女の面は相葉家が引っ越したときに紛失していたが、憲人が京都で偶然買い戻しており、憲人の勧めもあって弟子の発表会の番外で半能『井筒』を若女の面で舞った。
ジャズからクラシック、ポップスも聴き、宮本葉月の祖父と仲が良かったこともあり、ときどきジャズバーに彼女のピアノを聴きに訪れていた。そのこともあり、憲人にドラマで共演した葉月との見合いを勧めた。
榊原家の家族
榊原西門(さかきばら さいもん)
榊原彩紀(さかきばら さいき)
榊原高則(さかきばら たかのり)
その他登場人物
宮本葉月(みやもと はづき)
藤井琳(ふじい りん)
創風会
相葉左右十郎家を芸事責任者とする演能団体。現在の当主は相葉尋人。先代左右十郎が真人(1899年生まれ)で先々代左右十郎が和(なごむ、1875年生まれ)。和の代に左右十郎家は明石から東京に拠点を移し、1928年に創風会を結成した。千代田区神田(淡路町)に「連雀能舞台」という自宅兼能楽堂を所有している。
連雀能舞台を最初に造ったのは1930年で、舞台披きでは和と真人が『石橋』を舞った。
相葉左右十郎家
江戸時代から続く古い能楽師の家で、代々の「左右十郎」の書を虫干ししているシーンも描かれている。「創風会」という一門会を組織して活動。前述のように観世流らしき描写があり、また内弟子を取っていることから、観世流の職分家の一つと思われる。
次の代は尋人の息子の匠人であるが、その次は憲人になるのか海人になるのかははっきりしていない。2巻68ページの尋人の台詞では、48年後の「翁付き養老」は憲人がシテを演じるのではないかと言われているので、憲人が名跡を継ぐ可能性もある。一方、5巻26ページでは海人が「(自分が能を辞めたら)けんとにいちゃんが左右十郎を継ぐの?」と発言しているので、匠人から海人に継承される可能性もある。
エピソードと演じられた曲目
- NATURAL外伝 花よりも花の如く
- NATURAL外伝 天の響
(以上、『NATURAL』第11巻に収録)
花よりも花の如く〜鬼の栖〜 | 熊野/紅葉狩/葵の上/経正 |
---|---|
星霜を髪に戴き | 蝉丸/一角仙人 |
お能の国の人だから | 烏帽子折/巻絹/清経 |
大人はなにかをかくしてる | 鞍馬天狗/百万/住吉詣/国栖/安宅/橋弁慶/大原御幸 |
遊びをせんとや生まれけむ | 土蜘蛛 |
とうとうたらりたらりら | 翁付養老 |
風天 | 砧/石橋 |
影に形のよりそいて | 二人静 |
秘密 | 石橋/花筐 |
大王 あん玉 あんこ玉 | 野守/淡路/羽衣/一角仙人 |
光る軌跡 | 恋重荷 |
天気晴朗なれど波高し | 杜若 |
贈る言葉 | 道成寺/善知鳥/望月 |
記憶再生 | 羽衣/石橋 |
仄暗き夢の底より | 猩々乱/望月/屋島 |
石に願いを | 殺生石/藤戸/岩船/弱法師 |
石に願いを メイキング | 弱法師 |
関 | 道成寺/岩船/熊野/賀茂/胡蝶/求塚/春日龍神 |
戒 | 弱法師/蝉丸 |
紐頓の林檎 | 葵上 |
なお、コミックス各巻末に「付祝言」が添えられている。
書誌情報
- 成田美名子『花よりも花の如く』 白泉社 〈花とゆめコミックス〉、既刊23巻(2023年10月5日現在)
- 2003年7月5日発売、ISBN 978-4-592-17441-7
- 2004年5月1日発売、ISBN 978-4-592-17442-4
- 2005年2月5日発売、ISBN 978-4-592-17443-1
- 2006年4月5日発売、ISBN 978-4-592-17444-8
- 2007年8月17日発売、ISBN 978-4-592-17445-5
- 2008年11月10日発売、ISBN 978-4-592-18653-3
- 2009年5月1日発売、ISBN 978-4-592-18654-0
- 2010年7月5日発売、ISBN 978-4-592-18655-7
- 2011年7月5日発売、ISBN 978-4-592-18656-4
- 2012年3月5日発売、ISBN 978-4-592-18657-1
- 2013年1月4日発売、ISBN 978-4-592-18658-8
- 2013年9月5日発売、ISBN 978-4-592-21002-3
- 2014年9月5日発売、ISBN 978-4-592-21003-0
- 2015年5月1日発売、ISBN 978-4-592-21004-7
- 2016年3月4日発売、ISBN 978-4-592-21005-4
- 画集付き特装版 ISBN 978-4-592-21845-6
- 2017年3月3日発売、ISBN 978-4-592-21006-1
- 2017年9月5日発売、ISBN 978-4-592-21007-8
- 2018年11月5日発売、ISBN 978-4-592-21008-5
- 2020年1月4日発売、ISBN 978-4-592-21009-2
- 2021年3月5日発売、ISBN 978-4-592-21010-8
- 2022年12月5日発売、ISBN 978-4-592-21224-9
- 2023年10月5日発売、ISBN 978-4-592-21225-6
- 画集付き特装版 ISBN 978-4-592-21845-6
その他
本作品の監修者は九世観世銕之亟で作中に登場する相葉匠人のモデルでもあるが、九世観世銕之亟の妻である五世井上八千代は、同じ『MELODY』誌に連載されている河惣益巳の『玄椿』に、主人公の師匠として実名でたびたび登場している。
2007年11月6日放送の『マンガノゲンバ』(NHK BS2) で取り上げられ、着物の柄などのスクリーントーンを自作しているなど、作画に対するこだわりが紹介された。
Eテレの番組『にっぽんの芸能』で古典芸能系マンガの特集が行われ、『犬王』『ワールド イズ ダンシング』『能面女子の花子さん』『この音とまれ!』とともに、本作も取り上げられる。
注
MELODY連載中の漫画作品 (2023年12月27日現在) | |
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通常連載 |
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休載中 |
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