花宵道中
以下はWikipediaより引用
要約
『花宵道中』(はなよいどうちゅう)は、宮木あや子による日本の連作短編小説集作品。第5回(2006年度)女による女のためのR-18文学賞大賞・読者賞受賞の表題作含む5編を収録し2007年2月22日に新潮社より刊行、1編を加え2009年9月1日に新潮文庫より文庫化された。江戸時代末期の新吉原を舞台に遊女たちの叶わぬ切ない純愛を描いた官能小説。
江戸吉原の小見世・山田屋が舞台。5部構成で、それぞれ主人公が異なる。最新号より、第6部「大門切手」の連載がスタートした。
2009年より斉木久美子作画で『女性セブン』(小学館)で漫画化、2014年に表題作を原作として豊島圭介監督、安達祐実主演により映画化された。
収録作品
あらすじ
登場人物
山田屋
朝霧(あさぎり)
第一部「花宵道中」主人公。本名はあさ。姐女郎は霧里。同期は桂山の姐女郎・椿山。
長屋女郎であった母を持ち、虐待を受けて育つ。七つの頃に母を亡くし、山田屋へ引き取られる。容姿は、弥吉(後述)の亡き娘に瓜二つ。
14歳の頃、霧里(後述)の禿になるが、小柄な体型だったため霧里と菊由(後述)から年齢を聞かれて正直に答えた所、「女将(お勝)に勘違いされている」と驚愕された。
地味で小柄な上、幼い顔立ちだが熱を帯びると体に赤い斑点が浮かび上がることで「花が咲く」と人気女郎に。八津に連れ出された縁日で半次郎と出会う。その時に身に着けていた草履の鼻緒が半次郎の染めたものであった縁からやがて恋仲となる。
半次郎が殺人犯として指名手配にあい音信不通になったため、唐島屋からの身請けを承諾。しかしその後に再会した半次郎と激しく愛し合った末、死刑になった彼を追ってお歯黒溝に身を投げた。
生前、まだ新造だった頃の妹女郎・八津(後述)を抱こうとした大島屋(後述)に五文銭を投げつけた一件が、亡くなった今でも吉原中の語り草になっている。
茜(あかね)
霧里(きりさと)
第三部「青花牡丹」主人公。半次郎の姉。
幼い頃に母は自殺し、父は霧里を強姦し、借金を残し出ていった。
元は京都島原の大見世・『きよみ屋』の呼出女郎だったが、その美しさから霧里目当てに見世変えをする客が増えてしまい、客を取られた菫太夫の怒りを買って江戸吉原へとばされる。吉原でも気位の高さから客にも女郎にもウケが悪く、菊由と妹女郎の朝霧以外には敬遠されていた。
晩年は実父である吉田屋藤衛門と肉体関係にならざるを得なくなる悲劇に見舞われる。
労咳にかかった菊由を最後まで陰で看病していたが、自身もそれが伝染。最後までその事を朝霧に教えなかった。「美しいと言われて幸せな時などあったやろか」と漏らすほど、美貌に反比例した薄幸の人生を終えた。
実弟である半次郎に対して恋に近い特別な感情を抱き、死の間際に彼の幻を見る。
八津(やつ)
緑(みどり)
三津(みつ)
第五部「雪紐観音」準主人公。本名はみや。
実家は貧乏で誘拐犯の父を持ち、その父は八津の姉である水蓮を攫い吉原に売り飛ばした。
第1巻序盤では、「こうやって白いおまんまに毎日ありつけるだけで、ありがてえって思ってるよ」と話す場面があり、貧しかったためか廓での暮らしを苦にしていない。「十六夜時雨」で病に倒れ、亡くなる間際、八津に「おらのお父 村の娘っ子さらって人買いに渡してたんだ」と八津の姉(水蓮)を攫ったのは自身の父親である事を告白。
気風のよい性格だが体は弱く、梅雨時になると体調を崩し、そのまま原因不明の衰弱死をする。
今作の主役クラスでは唯一恋こそは無かったが、自分を恋慕う緑とは関係を持ち、生きた証を残したいと望んだ。また、緑の「初めて」の人でもある。
桂山(かつらやま)
江利耶(えりや)
若耶麻(わかやま)
絢音(あやね)
宇津木(うつぎ)
若尾(わかお)
芳野(よしの)
松野(まつの)
玉鬘(たまかずら)
弥吉(やきち)
山田屋お抱えの、古株髪結い。駆け出しの頃は、大見世で髪結いをしていた。早死にした娘に似ている朝霧を可愛がっており、朝霧が身投げした時は号泣した。第4部で年齢の限界がきて二番弟子の三弥吉にバトンタッチする。
実は山田屋女将・お勝の幼馴染で将来を誓った仲だった。同じ長屋で育ち、お勝(勝野)が初見世を迎えるのと同時期に髪結いとなり、お勝(勝野)の横兵庫を結う。お勝(勝野)から「道中 見ていってよ」と告げられるが、自分以外の男に抱かれるという事にショックを受け、泣き崩れる。
年季明けを迎え、「川の向こう」にある長屋(焼失後)に戻って来た、勝野(お勝)と再会するが、すでに結婚し子供がいたため、気まずく別れた(その子供が、後に早死にした娘である。)。
引退後、妻に先立たれてからは一人暮らし。第6部では年に一度、お盆に線香を上げにやって来る。弔いを終えた後、お勝(勝野)に「川の向こうに 戻んねえか」とプロポーズした。その一年後、吉原からお勝を迎え、彼女と余生を過ごす。
女将
第六部「大門切手」主人公。かつては山田屋で遊女だった。本名はお勝。廓名は勝野。
実は弥吉と幼馴染で将来を誓った仲である。大工の父を持ち、いわゆる「貧乏人の子沢山」で育ち、口減らしのため吉原へ売られてきた。
幼い頃からどこか冷めた性格で、両親の夜の営みを見て育ち、兄弟姉妹の子守りを続けることに嫌気が差し、「このままではいずれ父を殺してしまうだろう」と思っていた。
初見世後、いくら客とお開帳(客と閨を共にすること。)しても、何にも感じない事から、「これは この仕事をするには好都合だ」と割り切って、仕事をしていた。が、弥吉の事を思い考え込むようになり、姐女郎・松野(前述)から釘を刺される。一度は年季が明けて吉原を出たものの、住んでいた長屋は火事で焼けてしまっていた上に、家族の消息は分からず弥吉が結婚して子供までいることを知り、絶望し、再び吉原に戻った経験がある。そして、そのまま遣り手⇒女将となった。
山田屋が中見世だった頃に、花魁道中を経験している。霧里世代から緑世代まで山田屋を仕切ってきた女主人。
物語終盤、弥吉に「川の向こう」へ戻らないかとプロポーズされ、女将である自分の立場を思い断念しかけたが、ちょうどその時に江利耶(前述)が号泣しながら『山田屋』へ戻ってきた事から彼女の女将としての資質を見出し、あと1年待って欲しいと告げ、(おそらく)1年後のお盆。弥吉と2人で大門を出て行った。
角海老楼
水蓮(すいれん)
看板女郎。八津の実姉。
幼少期、三津の父に誘拐され吉原に売られた。廃れた「ありんす言葉」を使う。仕事に支障をきたさないことを条件に、間夫である平左との逢引を大目にみてもらっていた。
その現場をたびたび見ていた茜とやがて接触。「愛し合っているあんた達が好き」「好きでもない男と寝るのが嫌だ」と泣く茜に思うところがあった模様。「お開帳は、目を瞑って愛しい人を心に想いながら他の男に抱かれるんだ」と諭し、平左と自身の情事を見せる。
年季明けの間近、抗えない身請けが決まったのを期に、利用していた茶屋の主人の協力のもと平左との足抜けを果たした。
実妹の八津には1度だけ逢っている。八津の方は認識できていなかったが、水蓮は以前から妹だと見抜いていた。足抜け後は「修善寺に行く」とだけ書いた文を寄越し、その後の消息は不明。
萬華楼
笹川(ささがわ)
客
吉田屋藤衛門(よしだやとうえもん)〈芳之助〉
唐島屋庄一郎(からしまやしょういちろう)
大島屋卯之助(おおしまやうのすけ)
間夫
半次郎(はんじろう)
朝霧の間夫。霧里の弟。幼少名は東雲。
父・芳之助の意志とは無関係に作られた子供であり、認知もされていない。
小さい頃から可愛い容姿をしていたため、母に売られる形で医師から性被害を受けていた。この医師が坊主だったことから霧里は坊主を嫌悪するようになる。
錯乱した父に強姦される姉を助けようとした際、顔に大きな切り傷を負う。それでも相当な色男。
当初は父の借金のために陰間茶屋へ売られる予定だったが、姉の尽力で養子にもらわれた。染物屋の職人になるが、沙耶に仕組まれた事件で負った怪我で離職。沙耶の陰謀を知ってからは夜の営みを拒否するようになり、恨みを募らせた沙耶から彼女の父である『萩尾屋』主人に「半次郎は陰間」と讒言され、京中に陰間と言いふらされて離縁。京の染物業界を追放された。
行商で江戸にやってくるが、取引相手が実父とわかり、さらに父が遊女である姉を抱いたと知り殺害。逃亡していたが、朝霧に自分の染めた着物で花魁道中をさせてやるために戻る。「お前はその体に咲く花を他の誰にも見せなくていい」と言うも最早逃げる気は無く、朝霧と最初で最後の情事に浸った末に捕まり、絞首刑となる。
三弥吉(みやきち)
その他の人物
藤緒(ふじお)
沙耶(さや)
菫(すみれ)
駒方屋(こまがたや)
きよみ屋女将(きよみやおかみ)
末吉(すえきち)
書誌情報
- 花宵道中(2007年2月21日発売、新潮社、ISBN 978-4-10-303831-3)
- 花宵道中(2009年9月1日発売、新潮文庫〈新潮社〉、ISBN 978-4-10-128571-9)
漫画
斉木久美子により漫画化され『女性セブン』(小学館)に連載され、小学館フラワーコミックスαスペシャルより刊行、同社小学館文庫より2015年8月6日に文庫化された。全6巻。
書誌情報(漫画)
斉木久美子(原作:宮木あや子)、小学館〈フラワーコミックスαスペシャル〉 全6巻
2010年02月20日発売、ISBN 978-4-09-133136-6
2010年05月10日発売、ISBN 978-4-09-133286-8
2010年08月10日発売、ISBN 978-4-09-133400-8
2010年11月10日発売、ISBN 978-4-09-133567-8
2011年02月10日発売、ISBN 978-4-09-133399-5
2014年10月16日発売、ISBN 978-4-09-136626-9
斉木久美子(原作:宮木あや子)、小学館〈小学館文庫〉 全6巻
2015年8月6日発売、ISBN 978-4-09-406195-6
2015年8月6日発売、ISBN 978-4-09-406196-3
2015年8月6日発売、ISBN 978-4-09-406197-0
2015年8月6日発売、ISBN 978-4-09-406198-7
2015年8月6日発売、ISBN 978-4-09-406199-4
2015年8月6日発売、ISBN 978-4-09-406200-7
映画
2014年11月8日公開。R15+指定作品。主演の安達祐実は、劇場版『家なき子』(1994年)以来20年ぶりの映画主演となる。
公開に先立ち、2014年8月21日よりカナダで開催される第38回モントリオール世界映画祭のワールド・グレイツ部門で上映され、2回の上映共に客席はほぼ満員で、監督の豊島圭介は現地に赴き質疑応答も行った。
劇中で安達はオールヌードに初挑戦している。また、その撮影シーンも収録されたこの映画の公式オフィシャルブック『安達祐実 秘花』も2014年9月22日に発売された。
キャスト
- 朝霧:安達祐実
- 半次郎:淵上泰史
- 八津:小篠恵奈
- 江利耶:三津谷葉子
- 絢音:多岐川華子
- 若耶麻:立花彩野
- 大島屋卯之吉:松田賢二
- 中村映里子
- 弥吉:不破万作
- 霧里:高岡早紀
- お勝:友近
- 吉田屋藤衛門:津田寛治
スタッフ
- 原作:宮木あや子「花宵道中」(『花宵道中』〈新潮文庫〉所収)
- 監督:豊島圭介
- 脚本:鴨義信
- 音楽:かみむら周平
- エンディングテーマ:黒色すみれ『ラピスラズリ』
- 製作プロダクション:東映京都撮影所
- 製作:東映ビデオ
- 配給・宣伝:東京テアトル