茉莉花官吏伝
以下はWikipediaより引用
要約
『茉莉花官吏伝』(まつりかかんりでん)は、石田リンネによる日本のライトノベル。ビーズログ文庫 (KAKOKAWA) より2017年7月より刊行されている。『月刊プリンセス』(秋田書店)にて2018年9月号から高瀬わかによるコミカライズが連載されている。2021年5月時点で電子版を含めたシリーズ累計発行部数は60万部を記録している。
また、莉杏と暁月をメインとしたスピンオフ『十三歳の誕生日、皇后になりました。』 がビーズログ文庫に(同)て2018年10月から刊行されている。このスピンオフも『月刊プリンセス』(同)にて2020年3月から青井みとによるコミカライズが連載されている。
あらすじ
平民として白楼国に生まれた茉莉花。そんな茉莉花には「物覚えがいい」というちょっとした特技があった。縁あって後宮で宮女として働くことになった茉莉花はとある事件で官位を持つ女官となる。
ある時、女官長の指示で名家の子息とのお見合い練習の練習相手の代役を務めることに。しかしその場に現れたのは令息本人ではなく、白楼国の皇帝珀陽だった。お見合い練習中に起きた引ったくり事件をきっかけに茉莉花の特技を気に入った珀陽は茉莉花を官吏にすることを決める。
官吏となった茉莉花は次から次へと出される課題をこなし、優しくて押しの強い珀陽の側に行くため東奔西走することになる。
登場人物
声の項はオーディオドラマ版の声優。
主要人物
晧 茉莉花(こう・まつりか)
声 - 高橋李依
本作の主人公。16歳。亜麻色の髪に紫色の瞳。平民の生まれで14歳の時に官位のない後宮の宮女となったが、とある事件で手柄を立て翌年正八品という官位を持つ女官に異例の昇格をした。人より「ちょっと物覚えがいい」という特技がある。茉莉花自身は自分の能力を「ちょっと物覚えがいい」と認識しているが実際は一回見聞きしたものは一度で覚え、忘れることもない。皇帝である珀陽に才能を見初められるきっかけとなったお見合い練習中に起きたひったくり事件では、犯人の特徴を細かに覚えており犯人逮捕に貢献する。その後に珀陽から褒賞として、幼い男子の基礎教養の一つである四書を貰うことになりこれをきっかけに官吏への道を歩むこととなる。科挙試験では第二位の榜眼で合格し官吏となった。
優しく穏やかで気遣いのできる性格だが自己評価が低く、自信のなさから「私は~できるだけ。」と予防線を張っていた。幼い頃から物覚えがよかったため周囲から天才と持てはやされたが、物覚えがいい以上に昇華することができず落胆され、周囲の目を気にしたり、物事に本気で取り組むことに恐れを感じたりするようになった。女官として働いていた際には周りから浮かないように手を抜いて仕事をしており、官吏になってすぐもその性格が影響し周囲から浮かないように行動していた。珀陽にそのことを指摘され考えを改めるようになる。
珀陽からの特別扱いを自覚しており、他の新人官吏から離れて行動できる赤奏国の皇帝暁月の接待や、危険な赤奏国での宰相補佐という仮の役職で上司として指示を出したり、州牧補佐の死亡事件のあった治安の悪い湖州の州牧補佐に任命され事件を追ったり、通常の新人官吏では得ることが出来ない経験を通して成長し出世への道を邁進している。
赤奏国で宰相補佐という役を担うには若すぎるという難点があったが、海成の「晧茉莉花は三十代」という嘘により複雑な思いをしながらも物事を円滑に運べるようになり心ならずも感謝していた。
叉羅国では叉羅国という国を理解するためにアクヒット家で下働きをしながら叉羅の人たちの表情や行動などを記憶して真似し、叉羅国で生まれ育った「ジャスミン」という設定を作り上げた。子星は「完璧に再現すること」が茉莉花にとっての理解であり、白楼国に戻ってきたら叉羅国民視点で土産話が聞けると楽しみにしていた。叉羅国語についてはラーナシュと勉強し始めて2日で日常会話が可能になっていた。
その後のバシュルク国への潜入でも「ジャスミン」の設定を使っており、赤奏国の暁月や叉羅国のラーナシュやシヴァンの手を借りて「ジャスミン・ラクテス」という戸籍や経歴など入念に作り込まれている。
潜入前に珀陽から教わった信仰もどきをバシュルク国で試すと、もどきではなく本当の信仰になってしまい「軍事顧問官の神」となってしまった。その為帰国を決めた茉莉花をアシナは監禁しようとしたが、イルとラーナシュにより助けられることになり、子星と同じく逃げるように潜入先から脱出することに。
自他ともに認める特技は曖昧に笑ってごまかすこと。
茉莉花の経歴は白楼国の上層部によって情報操作されており、"官位を持つ優秀な女官の茉莉花は後宮だけでなく礼部でも手伝いをしており、珀陽からの支援を得て科挙試験を受け現在は官吏として働いている"ということになっている。
珀陽(はくよう)
声 - 島﨑信長
知力と武力に優れた若き白楼国の皇帝。18歳。白金の髪に金色の瞳。白虎神獣の加護を得ており、白虎の姿になることができる。茉莉花の才能に気づき官吏になるよう薦めた張本人。天才の話を理解し、気持ちを理解することができる天才である。暁月から「一石二鳥は絶対に狙う嫌なやつ」と言われているが、しばしば一石が四鳥にも五鳥にもなっている。
過去皇子であった珀陽は力のある後ろ盾を持たず、皇籍を捨て臣下として生きる道を選び、文官登用の科挙試験と武官登用の武科挙試験の両方に合格してしまう。その後突然当時の皇帝が崩御。3歳という幼すぎる皇太子の代わりに皇帝となったのが珀陽である。皇太子が成人するまでの期間限定の皇帝であり、皇太子が成長し万が一昏君になったとしても国を支えられるように優秀な人材を集めていた。茉莉花が翔景からプロポーズされているところを聞いてしまい焦って茉莉花に告白してしまう程度には恋に関して年相応であり、叉羅国での茉莉花の様子がまとめられたラーナシュからの"善意の塊"な手紙を読み気分が下がっていたところに、茉莉花からの贈り物に気づき下がりきった気分が一気に上を向いていた。茉莉花から言われるまで茉莉花の気持ちにはまったく気づいておらず、紆余曲折あったのちに好きな人は珀陽だと言われかなり混乱していた。
茉莉花に対して出会った当初からかなり期待を寄せており、茉莉花の才能を生かすためにどのように使おうか悩んでいた。
鉦 春雪(しょう・しゅんせつ)
茉莉花の太学での学友であり世話係、後に官吏でも同期となる。女の子よりかわいい顔をしている。茉莉花から慕われており何かある度に頼られているが、珀陽と親しい茉莉花を無碍にはできず"出世のため"と言いつつ世話を焼いている。茉莉花と出会った当初は、周囲に線を引いて本気を出さない茉莉花の被害者面に腹を立て、茉莉花の部屋を荒らしたり、私物を池に捨てたりと茉莉花に対する当たりはかなり強かった。その後子星との勉強会を通して茉莉花とは和解してはいるが、茉莉花の抜けている発言に対して度々苛立ちを見せている。茉莉花を「化けもの」と呼んだ最初の人物。珀陽が茉莉花に好意を寄せていることに早い段階から気づいており、そのせいもあって珀陽と関わりを持ちたくないと思っていたが珀陽からは"茉莉花の友人"と認識されているため城内で"偶然"遭遇することになる。珀陽や子星から茉莉花への伝言役として使われることもしばしば。
芳 子星(ほう・しせい)
珀陽の側近で禁色を与えられた文官。科挙試験で首席である状元で合格した天才。適正があって給料が良いからという理由で文官になった。本気を出すと決めた茉莉花に、特殊な能力を持ちながらも科挙試験のための勉強経験のない茉莉花を導くことができるとしたら私かなと思っていた、と二つ返事で茉莉花の家庭教師役を引き受けた。茉莉花のことを教え子の中でも優秀すぎる人と評価している。官吏になる前は科挙試験の勉強の傍ら珀陽の家庭教師をしていたため、皇帝となった珀陽に対していまだに先生のように叱ることが度々ある。茉莉花に子星の考え方を聞かれた際、「難題があっても答えだけがわかってしまう」と答えている。とある国への潜入中に随分と気に入られてしまい「ぜひ宰相に」とスカウトされ慌てて逃げ帰った過去を持つ。
黎 天河(れい・てんが)
封 大虎(ふう・たいこ)
白楼国
挺 蘭香(てい・らんこう)
韋 玉霞(い・ぎょくか)
女官長
赤奏国
暁月(あかつき)
声 - 鈴木達央(第1弾) / 佐藤拓也(第2弾)
赤奏国の皇帝。18歳。赤髪に金眼。倣岸不遜な性格を装った他人をきちんと評価できる人物。顔に似合わず仕事好き。白楼国の珀陽に手を借り、破滅へと向かう赤奏国を救うため皇帝位を簒奪した。珀陽のことを"悪徳高利貸し"と呼び嫌っている。莉杏のことは「ちょうどいいから」という軽い理由で皇后に迎えているが、仲も良く、周囲からは仲の良い兄妹のように見られている。妃を侍らせる珀陽を羨ましがる発言をするものの女性にはたいして興味はないようで、莉杏以外の妃を迎えるつもりもない様子。赤奏国で活躍した茉莉花を最高の待遇で引き抜こうとしたが失敗に終わった。海成と結婚させる手も考えて海成に行動させたがそちらも失敗に終わっている。
虂 莉杏(ろ・りあん)
声 - 河野ひより
赤奏国の皇后。13歳の誕生日に皇后となったばかりの暁月の幼妻。黒髪に翡翠の瞳。素直な性格で暁月のことが大好き。茉莉花のことは友人と思っている。珀陽と茉莉花の仲を応援しており、禁色を目指していた茉莉花に対して海成とともに後押しをする。
舒 海成(じょ・かいせい)
声 - 田丸篤志
赤奏国の文官で吏部侍郎となった青年。暁月により禁色を授けられた未来の宰相。詩歌が得意。茉莉花とは同類で出る杭として打たれないために手を抜いて仕事をしていたが、赤奏国に来た茉莉花を見て考えを改めさせられることに。赤奏国でもし万が一茉莉花が命を落とすようなことがあれば茉莉花の代わりとして白楼国に差し出すと暁月に言われ、その時は仕方ないと言いつつも白楼国の皇帝珀陽とは相性が悪そうだと公言している。茉莉花とは絶対に男女の関係にはならないと主張したが暁月には受け入れてもらえなかった。
叉羅国
アクヒット家
シヴァン・アクヒット・チャダディーバ
叉羅国の司祭でアクヒット家の当主。一人叉羅国の首都に向かう際に襲われた茉莉花を助け、愛人にしようとした。その後、愛人より下働きを希望した茉莉花の望み通り下働きとして雇用し、間諜を誘き出す餌として利用していた。財産を国外に移していることが他家の間諜により王に伝わってしまい罰せられそうになるが、茉莉花の策により助けられた。
間諜やそれに準ずるものを"どぶねずみ"と呼び、茉莉花が白楼国の官吏であるということを明かして以降は"白楼国のどぶねずみ"と呼んでいる。暴言を吐きつつも恩のある茉莉花には協力的であり戸籍の用意など根回しをしてくれるいい人である。
チャナタリ・ムザウル・チャダディーバ
愛人のまとめ役でありシヴァンの右腕。茉莉花が持っていた珀陽から借りた帯飾りのことに触れ、返すか悩む茉莉花に対して珀陽の帯飾りを返さず茉莉花の帯飾りを渡すよう助言した。
ソマラ
アクヒット家の使用人。茉莉花と同室になり最初は警戒していたがすぐ仲良くなり、茉莉花に踊りやビーズを教える。
サミィ
アクヒット家の使用人。茉莉花が使用人たちの真似をしていることに気づきアクヒット家から排除しようとしていた。
シヴァン・アクヒット・チャダディーバ
チャナタリ・ムザウル・チャダディーバ
黒槐国
バシュルク国
アシナリシュ・テュラ
イル・オズト
用語
天庚国(てんこうこく)
大陸内の覇権争いが始まったきっかけに国が4つに割れ、白楼国、赤奏国、黒槐国、采青国となった。
白楼国(はくろうこく)
月長城(げっちょうじょう)
湖州(こしゅう)
赤奏国(せきそうこく)
黒槐国(こくかいこく)
采青国(さいせいこく)
シル・キタン国
叉羅国(さーらこく)
バシュルク国
評価
少女小説研究を行う嵯峨景子は、「自らの能力で将来を切り開いていく少女」を描いた作品群の中において、「能力を活かして思考する少女を描く誠実さ」という点に関しては本作が群を抜いていると評している。
既刊一覧
小説
- 石田リンネ(著) / Izumi(イラスト) 『茉莉花官吏伝』 KADOKAWA〈ビーズログ文庫〉、既刊15巻(2023年10月14日現在)
- 「皇帝の恋心、花知らず」2017年7月15日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-734704-5
- 「百年、玉霞を俟つ」2017年12月15日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-734705-2
- 「月下賢人、堂に垂せず」2018年4月13日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-735087-8
- 「良禽、茘枝を択んで棲む」2018年8月10日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-735088-5
- 「天花恢恢疎にして漏らさず」2019年2月15日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-735490-6
- 「水は方円の器を満たす」2019年5月15日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-735489-0
- 「恋と嫉妬は虎よりも猛し」2019年10月15日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-735779-2
- 「三司の奴は詩をうたう」2020年3月15日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-735780-8
- 「虎穴に入らずんば同盟を得ず」2020年11月14日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-736407-3
- 「中原の鹿を逐わず」2021年5月14日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-736574-2
- 「其の才、花と共に発くを争うことなかれ」2021年11月15日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-736842-2
- 「歳歳年年、志同じからず」2022年3月15日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-736953-5
- 「十年飛ばず鳴かず」2022年10月15日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-737212-2
- 「壺中の金影」2023年3月16日初版発行(同日発売)、ISBN 978-4-04-737402-7
- 「珀玉来たりて相照らす」2023年10月14日発売、ISBN 978-4-04-737687-8
- 石田リンネ(原作) / Izumi(イラスト) 『十三歳の誕生日、皇后になりました。』 KADOKAWA〈ビーズログ文庫〉、既刊8巻(2023年5月15日現在)
- 2018年10月15日発売、ISBN 978-4-04-735324-4
- 2019年8月15日発売、ISBN 978-4-04-735608-5
- 2020年6月15日発売、ISBN 978-4-04-736145-4
- 2020年11月14日発売、ISBN 978-4-04-736146-1
- 2021年7月15日発売、ISBN 978-4-04-736694-7
- 2022年3月15日発売、ISBN 978-4-04-736954-2
- 2022年7月15日発売、ISBN 978-4-04-737103-3
- 2023年5月15日発売、ISBN 978-4-04-737488-1
漫画
- 高瀬わか(作画) / 石田リンネ(原作) / Izumi(キャラクター原案) 『茉莉花官吏伝〜後宮女官、気まぐれ皇帝に見初められ〜』 秋田書店〈プリンセスコミックス〉、既刊8巻(2023年9月14日現在)
- 2019年5月25日初版発行(5月16日発売)、ISBN 978-4-253-27456-2
- 2020年3月25日初版発行(3月16日発売)、ISBN 978-4-253-27457-9
- 2020年11月25日初版発行(11月16日発売)、ISBN 978-4-253-27458-6
- 2021年7月25日初版発行(7月15日発売)、ISBN 978-4-253-27459-3
- 2022年3月25日初版発行(3月16日発売)、ISBN 978-4-253-27460-9
- 2022年10月25日初版発行(10月14日発売)、ISBN 978-4-253-27461-6
- 2023年3月25日初版発行(3月16日発売)、ISBN 978-4-253-27462-3
- 2023年9月25日初版発行(9月14日発売)、ISBN 978-4-253-27463-0
- 青井みと(作画) / 石田リンネ(原作) / Izumi(キャラクター原案) 『十三歳の誕生日、皇后になりました。』 秋田書店〈プリンセスコミックス〉、既刊5巻(2023年7月13日現在)
- 2020年11月16日発売、ISBN 978-4-253-27436-4
- 2021年7月15日発売、ISBN 978-4-253-27437-1
- 2022年3月16日発売、ISBN 978-4-253-27438-8
- 2022年11月16日発売、ISBN 978-4-253-27439-5
- 2023年7月13日発売、ISBN 978-4-253-27440-1