草祭
以下はWikipediaより引用
要約
『草祭』(くさまつり)は、恒川光太郎の短篇小説集。5作の短篇から構成され、いずれも「美奥(びおく)」という名の田舎町を舞台にしている。時系列は収録順とは異なり、美奥がかつて「春沢」と呼ばれていた時代の「くさのゆめものがたり」が最古である。また4作で現れる「太鼓腹のおじさん」を始め、複数の作品に違う年齢で登場する人物がいる。
収録作品
「けものはら」(初出:『小説新潮』2007年6月号)
電話がかかってきた翌日の放課後、ぼくが四年ぶりに<けものはら>に行くとそこに春がいた。楡の木の近くで女の死体を発見して驚くぼくに春はそれは自分の母親だと答えた。
「屋根猩猩」(初出:『小説新潮』2007年9月号)
十七歳の九月、私は森が丘高校からの帰り道にある尾根崎公園でタカヒロという名の怪しい少年に出会った。瓦屋根の古い木造家屋が立ちならび、屋根の上に猩猩像を乗せる風習が残っている尾根崎地区に住む彼はある晩、夢枕に現れた猩猩によって守り神に指名されたという。守り神は住んでいる人々に対してささやかな手助けをするのが仕事で、その代りに住民から無償の保護を受けることが出来る。ファミレスでタカヒロと話していた私は、いつも嫌がらせをしてくるクラスの女子三人組にからまれる。
「くさのゆめものがたり」(初出:『小説新潮』2007年12月号)
ある日、叔父を殺してしまってから言葉を失った私はリンドウという名の旅の僧侶に拾われる。テンと名付けられた私はリンドウの里である春沢の寺で暮し、彼の娘である絹代と孫である花梨とも親しくなった。しかし、近くの山には武家崩れの山賊たちが住んでいた。
「天化の宿」(初出:『小説新潮』2008年3月号)
「朝の朧町」(初出:『小説新潮』2008年6月号)
長船さんの故郷は山をいくつか越えた先にある美奥であり、私は彼の口から語られる美奥に魅力を感じていた。彼は自分は町を持っていると言い、ある早朝、私はその不思議な町に導かれる。その町では、長船さんに招待された住人の心の影響を受けて、街並みや現れる人々が変化するのだった。少年の頃、実家の庭にあったプレハブ小屋で模型の町作りに熱中していた長船さんは学校帰りに登った山で鴉が落としていった中に青空がある碧い球を拾った。それ以来、その中の荒野に町を作る力を手に入れたという。
書誌情報
- 単行本 - 2008年11月20日刊行、新潮社 ISBN 978-4-10-313041-3
- 文庫本 - 2011年4月26日刊行、新潮文庫 ISBN 978-4-10-135131-5