蛮勇引力
以下はWikipediaより引用
要約
『蛮勇引力』(ばんゆういんりょく)は、山口貴由による日本の漫画。『ヤングアニマル』(白泉社)にて2001年8号より2002年22号まで連載された。
あらすじ
西暦2051年、スーパーテクノロジー・神機力を独占する徳川神機力産業の台頭により、人類の社会は大きな変革の時を迎えようとしていた。首都・東京は神都と名を改め、そのシステムを高度にハイテク化、衣食住の全てを神機力に統一依存することによって、かつてないほどに機能的に運営されるようになっていた。しかし一方で、神機力を嫌う者、神機力を受け容れない者は容赦なく社会から排除され、消滅させられようとしていた。
その神都に1人の男が現れる。名は由比正雪。神機力は人の心を蝕む敵であるとし、ただ己が五体のみを武器として1人神都に立ち向かう、蛮勇なる者である。
正雪の強さとカリスマ性とに呼応して、神都中の浪人者(失業者)達が続々と蜂起するのに対し、神都は更に自らの機能性を高くすることで彼らの徹底的な排除を行う。しかし、正雪を危険視するあまり、追い込んだ浪人者達を更に追い込んだことが引き金となって、却って死に物狂いの反撃を招いてしまう。排除された人の力の坩堝から得た、人の底力の精髄とでもいうべき仲間達と共に、正雪の、そして人間の、神機力への逆襲が始まった。
神都からの刺客、護衛を次々と撃破して行く正雪達は、満身創痍となりながらも、ついに徳川神機力産業総帥・徳川惑星との一騎討ちにまでこぎつける。仲間達を、恩人を、妻を、同士を、そして己の五体と心・魂までをも失いながらも、徳川惑星を一刀両断の元に倒し、神機力の全てを停止させ、それに頼り切った文明に引導を渡し、そして正雪は国常立尊と融合し竜となって天に昇った。
他作品との関係
『エクゾスカル 零』の連載にあたって行われた後年のインタビューによれば、時系列としては『覚悟のススメ』→『開花のススメ』→『衛府の剣』→『蛮勇引力』→『鉄腕探偵リッカ』→『大帝戦記レオクロス』(→『エグゾスカル 零』)という順で、『覚悟』の時代に破壊された世界が『開花』の時代に復興を始め、『衛府』の時代に新エネルギーでほぼ復興を遂げたが、『蛮勇引力』の時代に由比正雪らによって再び崩壊した、という流れになっている。
登場人物
本編の登場人物の名前の多くは、慶安の変に関連した実在の人物名から採られている。
浪人者
神機力により手作業を奪われ職を失った者達の中でも、特に神機力を拒む者達。神都における「職能転換」とは、体内にマイクロ神機を埋め込むことであるため、彼らにとっては再就職の道は事実上閉ざされたも同然である。路上生活を営み、残飯を漁ったり自販機を荒らしたり等して糊口を凌いでいるが、服装はほぼ全員、背広で固めているのが大きな特徴である。また例外無く、靴の裏をすり減らしている。
由比正雪(ゆい しょうせつ)
神機力抹殺のために神都に現れた浪人者。27歳。外見は長髪の精悍な若者で、短刀と鉄靴を身につけ、胸に「敬人尊野蛮」・背中に日本を守る龍(護国吽龍)の文身を背負う。敵陣ではサングラスを着用。生身の人間ながら、その身体能力は極めて高く、膂力や頑健さは勿論、感覚や直感といった知覚や、知性そのものまでも超人的水準を誇る。性格は極めて蛮性に富み、敵であれば抹殺はおろか追い剥ぎ暴行までも辞さないが、反面、仲間とみなせば己が身を捨ててでも助ける。また、匠の技の鑑定眼を有するほか、自身も研刃(とぎ)技を身につけており、短刀の手入れを自ら行う。極めて強力なカリスマ性を有するため、強靭な精神を持つ者を(本人の意思に関係無く)その周囲に引き寄せる。出身は静岡県駿河湾の漁村。
神都
西暦2051年現在での東京。神機力の正式導入に伴い改名される。「敬神」をかたどった超巨大な都庁を持つ。存在理由は、表の目的は理想都市、裏の目的はE-ウイルスに対する防疫都市、真の目的は人類を神機力と融合させるための中枢にして前線基地となることである。その性質上、都内の随所で人間同士の肉体接触を廃する構造が築かれている(自動改札、手元まで商品が出て来る自動販売機、接客業でのメイドロボット使用、外出の必要の無いホームセキュリティ等)。
徳川惑星(とくがわ わくせい)
徳川神機力産業の総帥。政財界の巨魁にして日本の首領。「千年に一人天にあらずして雷を操るもの世に出ずる」と度々口にする通り強力な電撃を自在に操り、神機の特異性も彼の電力を動力源にしている為である。齢百にして心技体に憂いなく(高速思考、真型覚醒服、強化骨格、神機刀)、E-ウィルスに対抗する都市を作るため、神機の中枢である国常立尊を建造した。人類は進化しウィルスによる絶滅の危機に勝利すべきだと考え、背中に人類愛を背負い、人類と神機の融合、神機による完全防疫都市建造を目指し強硬な計画を実行し、徹底管理社会の下はぐれ者は隔離地域に収容するか粛清した。国常立尊初号機試運転の際静岡県の漁村沖の実験場化に反対した由比入鹿の夫を暗殺し、夫を殺された入鹿に襲われるが、それを返り討ちにし、自らの精を流し込んだ。正雪はその時の子。正雪に神の機のすべてを注ぎ込み、自らの右腕にしようとするが、その体に刻まれた敬人尊野蛮と、護国吽龍の文身に阻まれ、花鳥風月によって両断される。
中曽根まり(なかそね まり)
石原十兵衛(いしはら じゅうべえ)
渡桂馬(わたり けいま)
松平伊豆守信綱(まつだいら いずのかみ のぶつな)
神機力都知事。石原の戦死後、都知事として信任される。全身が神機力によるアンドロイドで心臓部は取り外し可能なクリスタルの馬。これは選挙の際にまりに託され、彼女が信綱の対正雪政策に疑問を持った時、また正雪を打倒し平和が訪れた時に壊すよう言い含めた。ミスは一千万年に一度レベルの頭脳と圧倒的な戦闘力を誇り、演説用ボディで和を装備した丸橋と互角に戦い、支援攻撃として信綱の巨大な頭部のような観測衛星「松平伊豆守 子機」からのイリジウム弾砲撃で多数の人間を殺傷した。やすらぎ侵攻の際は不可視の罠と支援攻撃で正雪と丸橋を瀕死に追いやるが、徳川惑星とその親族には攻撃できないようプログラムされており、自身はそのことを知らされていなかった為正雪への砲撃要請が謀反と認識され自己崩壊、頭部を除き正雪に粉砕された。後に徳川惑星から戦闘用ボディ「銀河」を譲り受け強靭な攻撃力と自己再生する装甲を手に入れる。激闘の末張孔堂の逸品を備えた正雪の攻撃をあえて受け、前回の衝突で自分がシステムの一端に過ぎないと思い知ったこと、あの時人間だったならばと神機にあるまじき思想が芽生えそれを刈る為背信行為と知りながら正雪討伐の妨げとなる徳川保護プログラムを除去しこの場に臨んだこと、それでも正雪も丸橋も不屈の闘志を見せ自分に勝利し、神の機こそ人類唯一の光明だと思っていたがままならない人間だからこそ生み出せる可能性もあることに気づいたこと、人類の行く末を惑星と正雪の戦いの果てに見たことを告げ、死亡した。同時に心臓部もまりの眼前で砕け、最期の神機力で惑星の悪行を告発した。
やすらぎ
神都湾に作られた失業者区画。神機力によらず、風力発電と自給自足で細々と生活している。神都側は自治の名目で隔離することにより自滅するものと期待しているが、人間性の坩堝となっているが故に、皮肉にも存外安定した自治制度を有している。
丸橋忠弥(まるばし ちゅうや)
比良部貝蔵(ひらぶ かいぞう)
張孔堂
東京に存在した職人集団。和風の店舗の中に四種の職種が存在し、江戸時代からの匠技をもって商売していた。2041年、東京が神都と改名するのに伴い業務停止勧告を受け、解散。正雪が15歳から17歳まで修行を積んだ店でもあり、解散後、正雪を故郷に帰して自分達は徳川惑星を襲撃したが、返り討ちにあい壊滅した。なお、全員が胸に「敬人尊野蛮」の五文字を文身している。 それぞれの職人が機械では再現不可能な域の作品を制作し、彼らが作り研いだ刃物などは最新の神機すら両断する威力を誇る。
海老浜巻(えびはま まき)
用語
神機力
徳川神機力産業によって開発された新エネルギー。その正体は総帥・徳川惑星の体内で操作される生体電流を機械増幅したものである。その性質のゆえか、神機力を動力源とする高等ロボットは生物の如き特性を有し、論理性・先見性はおろか情緒・霊感までをも備える。反面、人間の神経に強い侵食力を有するため、神機力に接する人間は神経・脳・精神を蝕まれてゆき、人間性を喪失して生ける機械の如き様相を呈するようになる。その最終目的は、20世紀末に出現した流行性特異感冒(インフルエンザ)・E-ウイルスによる人類絶滅を阻止し、人類を神機力との融合種(機械人類)とすることである。
国常立命(くにとこたちのみこと)
神都除染車(しんとじょせんしゃ)
ひまわり
申牙(しんが)
白銀(しろがね)
以心(いしん)
蛮種
人間の生物的特性を極めて強く有する者達に対する、神機力側の蔑称。人外の能力は備えないが、その身で行う人間技のことごとくが超人的水準に達しているのがその特徴である。
由比入鹿(ゆい いるか)
万力(まんりき)
潜水唱(かづきしょう:正式名称不明)
イルカの背筋(イルカのはいきん:正式名称不明)
由比正雪(ゆい しょうせつ)
肉体的には神都の全機能に介入できるが、思想的には神機力を全否定する、「神機力に刃向かう運命」を宿す者。神機力を「神」としたとき間違い無く「魔」に該当する。詳しくは浪人者参照。
潜水唱(かづきしょう:正式名称不明)
耐電体質(たいでんたいしつ:正式名称不明)
自動解体プログラム(じどうかいたいプログラム)
丸橋忠弥(まるばし ちゅうや)
石頭(いしあたま:正式名称不明)
馬鹿力(ばかぢから:正式名称不明)
臨界終息(りんかいしゅうそく)
イルカイダー
万力(まんりき)
潜水唱(かづきしょう:正式名称不明)
イルカの背筋(いるかのはいきん:正式名称不明)
匠
人間の手による技能体系の総称。原始的技術の精髄で、その実力は超科学技術の結晶たる神機力に勝るとも劣らない。
原子力決死隊(げんしりょくけっしたい)
和(やまと)
音波ソナー(おんぱソナー)
削岩刃(さくがんじん)
治(はる)
書誌情報
- 山口貴由 『蛮勇引力』 白泉社 《ジェッツコミックス》 全4巻
- 2001年10月発売 ISBN 4-592-13396-X
- 2002年4月26日発売 ISBN 4-592-13397-8
- 2002年9月27日発売 ISBN 4-592-13356-0
- 2003年1月29日発売 ISBN 4-592-13424-9
- 山口貴由 『蛮勇引力』 愛蔵版 白泉社 《ジェッツコミックス》 上下巻
- 2007年9月28日発売 ISBN 978-4-592-14349-9
- 2007年9月28日発売 ISBN 978-4-592-14350-5