小説

誰か Somebody




以下はWikipediaより引用

要約

『誰か Somebody』(だれか サムバディ)は、宮部みゆきの長編推理小説。杉村三郎シリーズ第1作。

概要

2003年11月14日に単行本が書き下ろしで実業之日本社から発売された。2001年に刊行された『模倣犯』以来2年振りとなる現代ミステリー作で、次作『名もなき毒』へと連なる杉村三郎シリーズ1作目である。本作は1958年(昭和33年)に発表された美空ひばりの歌謡曲「車屋さん」がベースとなっており、本楽曲も作中の要素として登場している。

2005年8月に光文社からカッパ・ノベルス版が発売された。2007年12月6日に文藝春秋から文春文庫版が発売され、解説を杉江松恋が務めた。

2013年の杉村三郎シリーズのドラマ化作品『名もなき毒』で、第1話から5話までの第1部として映像化された。

あらすじ

今多コンツェルン会長・今多嘉親の個人運転手を務める梶田信夫が自転車にはねられ死亡した。同コンツェルングループ広報室編集者で嘉親の娘婿の杉村三郎は嘉親に頼まれ、未だ捕まっていないひき逃げ犯逮捕のきっかけになればと、父の伝記を書きたいという梶田の2人の娘に協力することになる。

だが話を聞くと、伝記に意欲的な妹の梨子とは対照的に、姉の聡美は父がタクシー運転手となる以前の過去があまり褒められたものではないと言う。そして、自身が幼少期に父を憎む何者かに誘拐されたことを理由に、梶田の半生が公になることを怖れ、伝記出版に反対的だった。

聡美の意志を汲んだ上で伝記を作るため、三郎は梶田の過去を調べていき、そして伝記作成と並行して、梨子や広報室アルバイトの椎名と共に、ひき逃げ犯に関する情報集めにも力添えする。だが、三郎達の活動の末に、梶田の過去から意外な波紋が投げかけられることになる。

登場人物

杉村三郎

今多コンツェルングループ広報室編集者兼記者。
今多嘉親

今多コンツェルン会長。三郎の義父。
杉村菜穂子

三郎の妻。嘉親の娘だが、母親は画廊を経営していた愛人だった。
園田瑛子

グループ広報室室長兼編集長。
椎名()

今多コンツェルングループ広報室アルバイトで、新聞学科専攻の女子大生。通称「シーナちゃん」。175cmの長身で、小学校から地元のバレーボールクラブに所属しており、明朗かつはつらつとした性格。高2の頃から交際している九州の大学に通う男性と遠距離恋愛をしている。梶田の死亡事件解決を促すためにチラシ配りを提案し、自らもその行動に積極的に協力する。パソコンの扱いにも長け、仕事も優秀にこなしていたが、次作『名もなき毒』では学業の都合により広報室を辞めてしまったことが語られている。
梶田信夫()

今多嘉親の専属運転手だったが、自転車にひき逃げされて死亡する。彼の乗る車の中で三郎は嘉親に菜穂子との結婚の許しを貰っており、その後心からの祝福の言葉を送ったことから三郎から恩義を感じられている。妻は5年前に子宮癌(ドラマでは乳癌)で死去。普段は個人タクシーの運転手をしているが、タクシー会社に勤務する前は「トモノ玩具」に勤務しており、それ以前には故郷の栃木県の水津という村を飛び出し上京し、所帯を持ちながらも職を転々としながら街金の使い走りで競馬のノミ行為をするなど浮き沈みの激しい生活を送っていた。
梶田聡美()

32歳。梶田信夫の長女。落ち着いた女性で礼儀正しいが、極度の心配性。4歳の頃に父を恨む者に誘拐されたという経験があり、その人物が絡んでいる父の生前の職歴を公にしたくないことから伝記出版には反対的であり、また父は本当は意図的に殺されたのではと疑念を抱いている。
梶田梨子()

22歳。梶田信夫の次女。大学入試には全て落ち、現在はフリーターをしている。姉とは対照的に活発で人懐っこい性格。両親が一度中絶をしたことを経て授かった子供であるため、聡美曰く両親に多く甘やかされてきた「いちばん星」。父の命を奪ったひき逃げ犯に自分が殺した父の事を思い知らせ、尚且つマスコミなどに取り上げられることで早期逮捕のきっかけになればと父親の伝記を作ることに積極的な意思を傾けている。
浜田利和()

聡美の婚約者。都内のコンピュータソフトウェア会社勤務。外見的な要素や普段の仕草から健康的な印象を与える男性。
友野栄次郎()

梶田が勤めていた八王子市の玩具製作会社(現在は玩具屋として経営)「トモノ玩具」の経営者1年前に脳梗塞を発症して以来、孫娘に店を任せている。戦時中に兵器の部品を製作していた父の会社を継ぎ、玩具製造業に転身し成功していたが27年前の工場での失火騒動により閉鎖、その後は工場の土地の残りを担保に建てたマンション経営を成功させた息子に触発され、玩具屋を始めた。闊達な好人物だが、補聴器が必要なほど耳が遠いため声が大きく、また記憶力に自信を持つが脳梗塞以来覚えている過去の内容に齟齬が出てくるようになった。
友野文子()

栄次郎の嫁。義父の栄次郎とは丁々発止に何でも言い合える仲。実家は大森の町工場を経営していたという。
木内()

財界人御用達の会員制クラブ「遊楽倶楽部」のスタッフ。
野瀬祐子()

かつて「トモノ玩具」で事務として働いていた女性。

書籍情報
  • 単行本:2003年11月、実業之日本社、ISBN 978-4408534497
  • 新書判:2005年8月、光文社カッパ・ノベルス、ISBN 978-4334076177
  • 文庫本:2007年12月、文春文庫、ISBN 978-4167549060
オーディオブック

2023年5月19日よりAudibleで配信された。ナレーターは井上悟。