轟拳ヤマト
以下はWikipediaより引用
要約
『轟拳ヤマト』(ごうけんヤマト 英語表記:Thunder Knuckler YAMATO)は、飯島祐輔による日本の漫画作品。全5巻の単行本として描き下ろされた。
大陸を結ぶ巨大な橋と「大艦機」と呼ばれる人型有人兵器が存在する20世紀の世界を舞台とした作品。コミック版『新・旭日の艦隊』最終巻に本作の予告が掲載された。
元々は全6-7巻程度の予定で執筆していたが、諸事情により全5巻での完結となった。そのため、伏線の回収が十分に行われなかった箇所がある。
あらすじ
先史文明の遺した遺産――全ての大陸を結ぶ巨大な橋とロボット・テクノロジー――が富を生む世界。人々は橋を利用して海運を充実させ、文明の発展と共に橋に鉄道を通し繁栄した。しかし、繁栄は争いをも生み出してしまい、橋と港という富の支配を巡り人々は戦争を繰り広げた。人々はロボット・テクノロジーを兵器に転用し、大艦機と呼ばれる人型兵器を生み出してしまった。
「ロシアに不凍港を!!」
そのスローガンを掲げ、スターリン率いるソビエト連邦はヨーロッパへの侵攻を開始した。しかし、その手始めとして侵攻したポーランドにおいて、ソ連軍機は突如現れた謎の大艦機によって破壊されてしまう。その機体の名はヤマト。日本が誇る新鋭機であった。パイロットのジンは、かつてスターリンによって両親を殺された過去を持つ少年だった。ジンたち日本軍はソ連のヨーロッパ征服の野望を防ぐため、ソ連軍との戦いに臨む。
登場人物
日本
左 甚十一郎
本作の主人公。仲間からは「ジン」と呼ばれている。江戸時代の名工・左甚五郎の6代目の子孫。父の甚十郎は世界的な大艦機研究の第一人者だった。8年前に両親と共にノモンハンにある先史文明の遺跡調査に参加するが、その日の夜にソ連軍の襲撃を受け両親を殺され、調査団の中で唯一の生き残りとなる。両親の死後は治武地博士に引き取られる。
幼い頃から父の研究所で大艦機に触れて育ったため、大艦機の扱いに関しては誰にも引けを取らない。人一倍正義感が強く、非道を行うソ連軍に容赦しないが、後先考えずに行動するため危機に陥ることも多く、小柳によく怒られている。両親の仇であるスターリンやネボガトフを前にすると、冷静な判断が出来なくなる。乙女心が分からない朴念仁のため、香恋とよくラブコメを展開する。
予告版と本作では容姿が大きく異なる。また、作中でも途中から容姿が大きく変化している。
香恋
本作のヒロイン。先史文明の生き残りであるメイド型アンドロイドで、正式名称は「カレンQX275362SP」。先史文明の崩壊に際し、後々の文明に知識と経験を伝達する役目を託され眠りに付く。ノモンハンの遺跡から掘り起こされ日本に運ばれ、ジンによって起動させられ、以後はジンを「マスター」と認識し、付き添っている。ジンに対し好意を抱いているが、朴念仁なジンには想いが届かず、よくラブコメを展開している。
最終決戦ではムサシの処理速度を上げるために自身を接続して並列処理を行う。その影響で稼働時間が大幅に減少したというが、ジンの人生分くらいの時間は残っているらしい。
自己修復機能が内蔵されており、多少の怪我は自力で治せる。また、機体としての性能は大艦機並であり、ソ連軍部隊を1人で壊滅させる程の力を持つ。しかし、作中の時代では技術レベルが違いすぎて小指一本の複製も出来ず、香恋のもつ情報をアウトプットするにも手間が掛かりすぎて不可能。逆に彼女が知らない「料理のレシピ」などをパンチテープで情報化することで再現している。
小柳 彦九郎
楠 運平
頭領
治武地博士
ソ連
スターリン
ドブロツウォリスキー教授
ネボガトフ中佐
アメリカ
ヨーロッパ
カヴェンディッシュ
整備主任
登場兵器
大艦機デザインは長谷川光司が担当している。また、各大艦機は現実世界の戦艦をモデルとしている。
日本
無資源国のため「量より質」の少数精鋭主義を採っており、機体の性能は各国の中でも高い。その代わり、ヨーロッパ戦線には物質転送で参戦しているため、時間の制約がある。
ヤマト
高い運動性と破壊力を誇り、クロンシュタット級3機を1機で撃破している。また、蒸気機関の他に第二エンジンとしてガスタービンエンジンを搭載している。作中では上記のクロンシュタット級3機の他にディミトリー・ドンスコイ、ガングート級2機、"変なウラル"を撃破しており、作中一の大艦機撃破数を誇る。しかし、ガスタービンエンジンは発動するまでの間は無防備な状態になるため、シベリアでのディミトリー・ドンスコイとの再戦では、その隙を突かれ大破させられる。
ムサシ
長門
長谷川曰く「日本刀はロマンで付けた」とのこと。
山城
雪風
青葉
三笠
ソ連
永久凍土での運用を前提としているため、凍結防止用の蒸気パイプが露出しているのが特徴。攻撃力重視の重武装を基本としており、そのため機動性が犠牲になっている。
ディミトリー・ドンスコイ
ジンには「ゴミ取り権助」と呼ばれている。
"変なウラル"
なお、"変なウラル"は長谷川の命名。
スターリン機(仮称)
クロンシュタット級
個別の名称としてはオレーグとブイスツルイが登場。
ガングート級
ボロジノ級
レニングラード
「ガリレオ計画」の発動に必要なロケットの制御ユニットであり、シベリアのロケット群と対になる兵器。レニングラード内部に侵入したジンと、彼との決闘に夢中になったマニコフスキーによってロケットを破壊されてしまい、「ガリレオ計画」は実行不可能となり失敗する。
アメリカ
工業力を背景にした大量生産を前提としており、複数機による戦術を基本としている。現在はノースカロライナ級、サウスダコタ級、アイオワ級、モンタナ級を建造中。
アイオワ級
作中では義勇軍としてアイオワとウィスコンシンが登場している。
星条旗砲
イギリス
アメリカ同様に複数機による運用を前提として設計を行っているが、軍縮条約の範囲内での設計をしているため、米ソの機体に比べて性能に劣る。
キング・ジョージ五世
ドレッドノート
フランス
「スマートに」「華麗に」をコンセプトに設計している。また、機体サイズを隠すためにマントを羽織っている。
リシュリュー
マジノ線を防衛するために配備されている。
ダンケルク
マジノ線
ドイツ
日本と同様に少数精鋭を基本としている。
ビスマルク
シャルンホルスト
イタリア
ロマン派の流れを汲んだ重厚なデザインになっている。長谷川によると「かませらしく無駄に強そうにした」とのこと。
ローマ
コンテ・ディ・カブール
航空兵器
本作の航空兵器は飛行船が中心であり、機体の上部・下部に大砲を搭載した「空中戦艦」による艦隊戦が行われている。戦闘機は各国とも開発途中であり、エンジン出力が足りず高度2000mまでしか飛行出来ない。日本は戦闘機を飛行船に搭載して発進、相手より高空から切り離すことで一度だけの急降下攻撃を行う戦法を使った。
登場国家
日本
ソ連
本作における首都モスクワは党本部を筆頭に全てスターリン様式の建築が成され、ニューヨークのような摩天楼群を形成している。
また、本作におけるソ連の標章は現実世界と同様の「鎌と槌」ではなく、鎌と星を組み合わせたものになっている。
アメリカ
イギリス
フランス
ドイツ
イタリア
用語
先史文明
地球外から飛来した未知のウイルスによって人口が最盛期の0.00002%にまで激減し、文明の維持が不可能となり崩壊する。後々の文明のために世界各地に文明の知識や経験を託したアンドロイドたちを遺した。
アンドロイド
香恋のように次の文明のために知識と経験を伝える役目を託されたアンドロイドが何体か存在する。その内の一体はソ連国内に存在し、ドブロツウォリスキーが発掘調査を行っていたが、連載が予定より早く終了してしまったため、この伏線が回収されることはなかった。
橋
文明の発達に伴い、橋を道しるべとして船が建造され海運が発展する。1888年に大西洋横断鉄道が開通したことにより橋を有効活用出来るようになったが、それによって鉄道ターミナル駅・港を持つ国とそうでない国との間に格差が生まれてしまい、その領有を巡って戦争が勃発するようになる。
シベリア - アラスカ間を繋ぐベーリング海峡の橋は崩落しており、後述の「ガリレオ計画」の遠因となった。
大艦機
先史文明が遺した遺産(アンドロイドのチップ)を基に開発が進められた。初めて戦場に投入されたのは南北戦争であり、当時は六足歩行だったが、元々遺跡から発見された残骸が人型だったこともあり、文明の発達に伴い二足歩行の兵器となる。
各国の大艦機は火器を内蔵していないが、これは内蔵することによってトラブルが頻発し、コストが掛かるためである。そのため、大艦機の火器は専ら携帯型(ハンドガン砲やライフル砲)である。第一次大戦後に二度に渡って軍縮条約が締結され、大艦機のスペックに制限が定められたが、ヨーロッパ諸国が軍縮条約を履行しているのに対し、米ソ日といった国々は軍縮条約を無視した建造を行っている。
物質転送
日本、ロンドン、シカゴ、ニューデリー、ブエノスアイレス等に転送施設が存在するが、日本以外の施設は数十万年の間に全て機能が停止してしまい、本来の機能を果たせない。ただし、エネルギーを送信し続けることで短時間、疑似的に実体化させることが出来る。
日本はこの装置を戦争難民の人命救助のために使用することを決め、ジンたちをヨーロッパに派遣しソ連軍の侵攻を阻む。ただし、実体化出来る時間は質量に反比例するため、大艦機は10分も実体化出来ない。
「ガリレオ計画」
ソ連国内では最高機密とされており、計画の内容はスターリン、ドブロツウォリスキー、一部の最高幹部のみしか知らない。
単行本
- 飯島祐輔 『轟拳ヤマト』 中央公論新社〈C★NOVELS COMICS〉全5巻。
- 2006年11月25日発売 ISBN 4-12-003785-1
- 2007年1月25日発売 ISBN 978-4-12-003786-3
- 2007年6月25日発売 ISBN 978-4-12-003828-0
- 2007年11月25日発売 ISBN 978-4-12-003893-8
- 2008年5月25日発売 ISBN 978-4-12-003943-0