追憶の夜想曲
以下はWikipediaより引用
要約
『追憶の夜想曲』(ついおくのノクターン)は、中山七里の推理小説。『贖罪の奏鳴曲』の続編として、『メフィスト』(講談社)にて2012年vol.2から2013年vol.2まで全4回連載され、講談社より2013年11月21日に単行本、2016年3月15日に講談社文庫が発売された。
今までも続編らしきものはあったが、著者の中山は今作こそがデビュー4年目にして「初めての続編」「正統な続編」であると位置づけている。小説家は1作1作にキャラクターの魅力もテーマも全てを投入しているため次を書いても味が薄まるという考えから、以前から”続編”を書くことには抵抗があった。『贖罪の奏鳴曲』に関しても書き終えた時点では続編の構想は無かったが、編集部から「是非続編を!」とリクエストされたことと、自分でも『贖罪の奏鳴曲』に関しては未完で、シリーズではなくきちんとその後を書かなければいけないという思いがあったため、執筆を決めた。前作の最初のプロットでは御子柴は死んだことになっていたが、後味が悪かったため実際に刊行する際に生死はぼかしており、続編を決めた時に中山は「あぁ、殺さなくてよかった。」と安堵したという。
タイトルや作中に登場するショパンのノクターンはトラウマや思い出を想起させる意味合いで選ばれ、作中では被告人の亜希子と御子柴が共通して背負っている原罪が描かれている。また、家族や親子というのが本作の裏テーマであったため、御子柴の敵役には今まで描いてきたキャラクターの中で最も親子関係がうまくいっておらず、息子・岬洋介との関係に悩む岬恭平に白羽の矢が立てられた。また、内容がドロドロなため、ブラック・ジャックがモデルである御子柴礼司に対し、ピノコを出す感覚でアクセントとして純真無垢な女の子である津田倫子を登場させた。
キャッチコピーは『悪から善へのどんでん返し』。
あらすじ
左脇腹を刺されて生死の境をさまよったものの、3か月後、弁護士の御子柴礼司は無事に職場復帰を果たした。事件を担当した老獪な刑事が気をきかせたのか御子柴の過去は一切伏せられたままで表沙汰にならなかったためである。御子柴は自分への懲戒請求をおさめ、死体遺棄の件についても「物的証拠は何一つない」ということをしらしめて起訴させなかった谷崎完吾の元に顔を出した後、懲戒請求を出した張本人である宝来兼人のオフィスへと向かう。御子柴は宝来の事務所が今まで行ってきた日弁連規定に抵触するばかりか非弁行為にも当たると思われる業務の数々と証拠を持参し、公にしてほしくなければ昨日控訴手続きをしたばかりの津田伸吾殺害事件の弁護を自分と代われという要求を突き付ける。
津田伸吾殺害事件……平凡なただの主婦である津田亜希子が、「他の男性と一緒になりたかったから」という身勝手な動機で夫である伸吾をカッターナイフで殺害。犯行を認めているうえに先日東京地裁で行われた裁判員裁判によって懲役16年の判決が下されたばかりの事件。多少減刑させられたとしても名を挙げられるようなものでも高額な報酬が望めるようなものでも無い。御子柴の真意を測りかね訝しく思いながらも、宝来は要求をのみ、今までの公判記録全てを渡す。
担当弁護士が御子柴に変わったことは、裁判で対峙する検察官・岬恭平の耳にも入る。なぜ御子柴がこの事件に固執するのか疑問に思った岬は、亜希子取り調べの様子を記録した録画映像を確認するが、何度見ても検察側の主張に瑕疵は見当たらない。控訴審の裁判長である三条護の元を訪れ探りを入れるも、やはり御子柴の真意はわからず岬は得体の知れない不安を覚える。一方、御子柴は亜希子と面談し、亜希子の自宅にも訪れ、現場と供述調書を照らし合わせ、義父の津田要蔵や娘の津田倫子から詳しい話を聞き、着々と裁判に備えていた。
そして迎えた控訴審第一回公判。御子柴は冒頭で声高々に、被告人・津田亜希子の無罪を主張する。そしてDVの可能性から正当防衛を主張するが、亜希子が隠していた事実から、岬に簡単に覆されてしまう。亜希子にはまだ隠していることがあり、改めて訪れた津田家の様子にも違和感を感じ、それが突破口になると感じた御子柴は、亜希子の戸籍や母子手帳、そして生家など各所を飛び回る。そして第二回公判で正当防衛の成立要件のうちの急迫性の侵害を立証する。さらに最終弁論では亜希子が9歳の時にかかっていたという病院の元院長・溝端庄之助を召喚し、妹が被害者となった過去のある事件により亜希子はPTSDにかかっていること、それによって先端恐怖症の症状があったことを証言させる。御子柴は現在も亜希子がカッターナイフを握ることもできない状態であり、犯行が不可能であることを立証するが、それと同時にその原因となった事件が実は〈死体配達人〉と称された過去に御子柴自身が起こした事件であることを明るみにせざるを得ず、御子柴は法廷内の全員から指弾され、亜希子からも解任されてしまう。
マスコミが押し寄せる正面玄関を避けて弁護士会館へと向かおうとする御子柴に、要蔵は声をかけ、礼をのべる。同じく追ってきた岬は、亜希子の罪状を犯人隠避に切り替え、あらためて真犯人に正しい裁判を受けさせると意気込むが、そこで御子柴は裁判で明らかにしなかった真相を2人に告げる。
登場人物
御子柴法律事務所・法曹界
御子柴 礼司(みこしば れいじ)
宝来 兼人(ほうらい かねと)
谷崎 完吾(たにざき かんご)
岬 恭平(みさき きょうへい)
津田伸吾殺害事件の控訴審で御子柴と対峙する検事正。55歳。検察官になって四半世紀近くになるが、前の名古屋地検では長をつとめ、今年4月に東京地方検察庁に転任し(事実上は栄転)、次席検事となった。御子柴とは今から数年前にも法廷で対峙したことがあるが、検察側が求刑した懲役15年を執行猶予つきの懲役3年にまで減刑されるという岬の惨敗に終わったため、不倶戴天の敵だと感じている。宝来については人間性そのものを嫌っている。
良く言えば熱血漢、悪く言えば感情的。検察官の本懐は失点なく職務を遂行することではなく、国と国民が正義と信じるものを貫くことだと思っている。
10年近く前に妻を亡くしている。司法試験に合格して将来を嘱望されていたにもかかわらず、音楽家の道を選んだ洋介という一人息子がいるが、数年来没交渉である。
世田谷警察署
その他
溝端 庄之助(みぞはた しょうのすけ)
オーディオブック
2023年9月1日にAudibleで配信開始された。朗読は池添朋文。