邪魅の雫
舞台:湘南,
以下はWikipediaより引用
要約
『邪魅の雫』(じゃみのしずく)は、講談社から発行されている京極夏彦の長編推理小説・妖怪小説。百鬼夜行シリーズ第九弾である。
講談社からは2005年9月に発売と発表されたが、作者には連絡をせずに講談社が無断で発表したことだった。その時点では原作が未完成で、結局発売は1年ほど延期された。
単行本は通常版に加え、本作の舞台となった大磯・平塚地区限定で特別装丁版が発売された。
書誌情報
- 新書判:2006年9月、講談社ノベルス、ISBN 4-06-182438-4(大磯・平塚地区限定特装版 ISBN 4-06-182508-9)
- 文庫判:2009年6月、講談社文庫、ISBN 978-4-06-276371-4
- 分冊文庫判:2009年6月、講談社文庫、 ISBN 978-4-06-276372-1、 ISBN 978-4-06-276373-8、 ISBN 978-4-06-276374-5
あらすじ
榎木津礼二郎と縁談のあった家々が、次々と破談を申し出てくる。また婚約者の一人の妹が大磯海岸で変死する。陰謀を疑う今出川欣一は、益田龍一に探偵調査を依頼し、益田は榎木津に伏せて調べ始める。
青木文蔵は、東京江戸川で商社社員が毒殺された事件を捜査していた。容疑者と目される男は行方不明。大磯の女学生毒殺と連続殺人認定され、またなぜか公安まで動いており、捜査は迷走する。青木は木場の助言から「特殊な毒」と目しており、中禅寺秋彦はかつて十二研で開発された毒があることを教える。
続いて、ある女性が毒殺され、「私」西田新造・江藤徹也・大鷹篤志の3人はそれぞれが彼女を喪失する。
登場人物
主人公たち
大鷹 篤志(おおたか あつし)
主人公の一人。元長野警察の刑事。胡乱な馬鹿。倫理も道徳も弁え正義感も人一倍あり、ある程度の社会性も、記憶力も理解力も人並みにはあるが、複数の情報を関連付けて論理を構築し、纏めて順序立てることが出来ない。悪人ではないが善人でもなく、愚鈍で要領が悪く気も利かず、思い込みが激しく場の空気が読めない上、目下の者には無意識に高圧的な態度を執る癖がある。
「白樺湖新婦連続殺人事件」で知人が殺されたことにショックを受けて警察を辞め、故郷を離れる。放浪の末に大磯にたどり着き、世話になった真壁恵から「もう一人の真壁恵」の身辺警護を依頼される。しかし相手の行動が呑み込めてきたと云う自身の慢心と油断で警護対象から目を離してしまい、その隙に何者かに恵を殺害されてしまい、犯人だと疑われて大磯海岸の保養所で潜伏生活を強いられる。
主要登場人物
中禅寺 秋彦(ちゅうぜんじ あきひこ)
関口 巽(せきぐち たつみ)
主要登場人物は百鬼夜行シリーズを参照。
縁談関係者(益田)
宇都木 実菜(うつぎ みな)
来宮 秀美(きのみや ひでみ)
今出川 欣一(いまでがわ きんいち)
毒殺事件関係者(青木)
澤井 健一(さわい けんいち)
一人目の毒殺被害者。宮川商事と云う神保町にある倒産寸前の小さな商社に勤める商事社員。
戦時中は防疫給水部隊に所属し、満州に派遣されていた。5年前の帝銀事件で取り調べを受けており、事件容疑者として勾引されたことで勤めていた有楽町の宝飾店を馘にされ、以来酒に溺れてアル中となり、転職後も容器に入れた酒を携帯し、仕事中に隠れて常時酒を飲んでいた。また公安の郷嶋刑事にマークされている。
8月20日午後6時前後、江戸川の今井橋付近で毒殺される。1箇月程前から私用と称して頻繁に会社を抜けて外出していたらしく、給料の支払いが2箇月程滞っていたにも拘らず、財布には8000円と云うそれなりの額の現金が入っていた。また、「シズカ」か「シズコ」と云うガールフレンドの存在が確認されている。
来宮 小百合(きのみや さゆり)
赤木 大輔(あかぎ だいすけ)
ヤクザの下っ端。栃木出身。36歳。貧相に身体は痩せているが、短く買った髪を逆立てて、顔は丸く額は広く、二重瞼の切れ長の眼がやけに目立ち、口の周りだけ髭が濃い、特徴のある顔付きの男。女好きだったとされる。
もとは北関東を拠点とする広域暴力団の組員だったが、兄貴分の女と一緒に遁げようとしたのが事前に暴露て、落とし前をつけるために回されたヤバい仕事でドジを踏んでしまい、小指を1本詰めて神楽坂の山代会という組の預りとなった。
澤井が殺害された当日には現場をうろつき誰かを尾行する姿が目撃されていること、名前は違うが被害者の交際相手らしき女性とよく似た「ミナ」と云う女性を2週間前に引っ掛けていたこと、事件当日から失踪していることなどから、小松川署では有力な容疑者と見ていた。小百合との接点がなかったために表向きは連続毒殺事件の容疑者から外されるが、その後の調査で彼女と一緒に買い物をしていたと云う証言が出た。
大磯平塚の住人
宇津木 実菜(うつぎ みな)
原田 美咲(はらだ みさき)
松金 あやめ(まつかね あやめ)
大仁田 良介(おおにた りょうすけ)
後藤 なべ(ごとう なべ)
岩崎 宗佑(いわさき そうすけ)
西田 豪造(にしだ ごうぞう)
警察
郷嶋 郡治(さとじま ぐんじ)
藤村(ふじむら)
用語
邪魅
事件のあまりの筋の通らなさに、山下警部補は「邪悪な魔物がいるような気さえする」と零すと、関口は邪魅と答え『今昔画図続百鬼』の解説文を引用する。
「しずく」
理論上は完成したが、開発は敗戦前に中止されたので、実験も生産もされず、研究成果が破棄されたはずの、存在しないはずの毒物。名前は陸軍の暗号名であり、中禅寺秋彦は十二研絡みで知っていた。公安の郷嶋郡治は回収破棄の密命を帯びており、その任務を「幽霊退治」と表現した。
大磯平塚連続毒殺事件
第1の事件は宮川商事に勤める澤井健一が8月20日の午後6時頃に江戸川河川敷で殺害された「商社社員殺人事件」で、他殺の線も睨んで本庁が乗り出して来ただけでなく、公安一課も捜査に参加する。第2の事件はその1週間後の27日午前11時頃に大磯町の海岸で来宮小百合が殺害された「女学生殺人事件」で、同様の手口であったことから連続殺人として警視庁と神奈川県警察の合同捜査本部が立ち上げられた。その後、真壁恵を名乗って平塚で生活していた宇津木実菜が、9月5日の午前7時30分から8時の間に自室で同一の毒を飲まされて殺害されるが、名前も前の住所も出鱈目だったため身元不明として処理される。
小松川署では赤木大輔を有力な容疑者として捜査していたが、合同捜査本部が置かれてからは女学生との接点が見当たらず、表向きは容疑者候補から外された。