野望の王国
以下はWikipediaより引用
要約
『野望の王国』(やぼうのおうこく)は、原作:雁屋哲、作画:由起賢二による日本の漫画。『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)にて1977年から1982年まで連載された。
概要
暴力による日本制覇の野望を抱く二人の青年の姿を描いたバイオレンス・ピカレクスロマン。独特な劇画調の絵柄やエキセントリックな表現は、相原コージの『サルでも描けるまんが教室』の画風の元ネタにもなった。単行本はゴラクコミックスより全28巻、愛蔵版全14巻刊行。単行本は長く絶版状態が続いていたが、2002年より同社から「完全版」全9巻として復刊。コンビニコミック「Gコミックス」が2巻まで刊行。電子書籍では「完全版」全27巻が刊行されている。
漫画評論家の呉智英は中世の美術・文化様式「バロック」に準えて過剰な装飾を施す傾向のある漫画、異様な迫力を放つ漫画を「馬鹿<バロック>漫画」と称しているが、本作はその5指に入るものと位置付けている。呉は、主人公格の二人が日本制覇の野望を抱きながらなぜか川崎市の征服に固執する点、その野望のために肉親を殺害し、戦時並みに街を焦土と化し数千人近い死傷者を出す点、東大法学部を優秀な成績で卒業するほどの知力を有しながら政治家や官僚にはならず暴力に固執する点など、あまりの効率の悪さが本作の魅力とし、「何人殺しても進まない日本制覇。このペースでは日本制覇するのに300年はかかるだろう」と推測している。
原作者の雁屋が手がけた前作『男組』に見られたような、「対決の結果どのような理想社会を実現するか」というようなテーマは本作にはまったく見られない。そのため登場人物のほとんどは権力を手に入れようとする悪人ばかりである。またヤクザや学生組織、軍隊、警察、宗教組織などの入り乱れる大規模な戦闘、凄惨な拷問シーンなど、過激なバイオレンス描写が頻出する。
雁屋・由起の原作・作画コンビは今作の後も漫画ゴラク誌上において同様の題材である『獅子たちの荒野』を発表している。
あらすじ
東大法学部で政治学を修める橘征五郎と片岡仁。二人は学業で優秀な成績を収め、大学フットボールでも東大チームを優勝に導くなど教授や同窓生たちから注目を浴びていた。だが卒業後の進路を問われ、二人は研究室に残るのでもなく官公庁や一流企業に就職するのでもなく、「自分たちの野望を達成するため」に社会に出ることを宣言し、周囲を啞然とさせる。そんな折、二人のもとに征五郎の父、橘征蔵の死の報せが届く。征五郎は神奈川県随一の勢力を誇る暴力団・橘組の組長の息子であった。
征蔵亡き後、苛烈な跡目争いを経て新たな組長となった兄・征二郎の補佐として征五郎と片岡はさまざまな権謀術数を駆使し、暴力で日本を制覇するという野望実現のため暗躍する。だが強力な野心を持つ若手警察官僚・柿崎憲、謎の新興宗教団体を率いる白川天星など、独自の野望と執念を持つ人物たちも登場して互いにぶつかり合い、混迷を極める展開となる。そして征五郎はいつしか巨大な存在の兄・征二郎を倒さなければならない宿命と兄への愛情との矛盾に葛藤し、片岡もまた征二郎・征五郎の妹・文子との愛に苦悩する。
征五郎と片岡が掌握しようとする裏の暴力機構であるヤクザと、柿崎が代表する表の暴力機構である警察との対決、および双方の内部での抗争を通じ、最終的に誰が日本の暴力機構を握り日本を支配するのかが物語の焦点となる。
登場人物
橘家・橘組関係者
橘 征五郎
東京大学法学部政治学科4年で中本研究室在籍、本編の主人公。
頭脳だけでなく、体力も抜群であり関東学生リーグで万年最下位だった東大アメフト部を日本一に導き、さらにはオールアメリカン大学選抜チームとの試合にも勝ち、東大アメフト部を文字通り世界最高にまで押し上げた。
母親は神奈川県下最大の暴力団・橘組組長である橘征蔵の2番目の愛人・芳子。大侠客であった征蔵の方針で、妾腹ながら橘姓に入ったが、少年時代より本妻の子供たちからいじめられた過去がある。幼少期の辛い体験が、征五郎の暴力至上主義の原点となった。同じ妾腹同士であり、少年時代に可愛がってくれた異母兄征二郎を慕っているのだが、これが橘組の実権を握るためには兄征二郎を抹殺しなければならないという内面的な苦悩となる。橘組内若獅子会会長。
登場時の髪型は当時の大学生に普通にみられる男性レイヤードカットであったが、後半では完璧なマレットになっている。
片岡 仁
橘 征二郎
徳田 栄治(徳田 徳一)
橘 文子
赤寺 十郎
橘 征一郎
橘 征四郎
その他暴力団関係者
警察関係者
柿崎 憲
30歳、東大法学部卒。東大法学部を首席で卒業後、国家公務員上級試験に合格し、警察庁に入ったキャリア官僚。作中で本来入るべき大蔵省に入らなかったのは、国家権力をより直接的に利用するためと語っており、この世を支配するのは暴力であるという征五郎たちと同じ認識を持っている。 狡知に長けた悪魔的な人物であり、性格においては自らの利益しか考えず友情や親愛の情など一切持たず、悪漢ぞろいの登場人物の中でもひときわ異彩を放つ。その姿は作中で「狂った悪魔」と形容されており、本作における最大のライバルである。
橘征二郎を倒す、という共通の目的から物語序盤では征五郎たちと組み征二郎を追い詰めるが様々な暗闘を経て敗北、プライドも引き裂かれ物語中盤以降ではその行動の破天荒さに拍車がかかり、彼を利用することに限界を感じた征五郎たちに裏切られ発狂、テレビの生放送中であるにもかかわらず射殺事件を起こし逃走。完全に失脚したかに見えたが日本最大の実力者、大神楽了造に取り入ることに成功し、再び復讐のため橘組壊滅に突き進む。
射撃の腕も抜群であり、多勢を相手に単独で戦ったりと戦闘力においても屈指の存在。
右翼
小田
立馬 国造
日本最大の黒幕・小田の後を継いだ右翼の大頭目。もみ上げを残して剃り上げられた頭と軍服という出で立ちの巨漢で、身長3m以上はあるかのような描写をされている。小田と同じく大神楽によって裏社会の統率を取るよう金と権力を与えられ、最大の暴力団連合「保神会」の会長に大神楽の独断で就任。大神楽の前でこそ道化のような役回りとなっているものの、日本最大の暴力団を操るとともに自衛隊の中にも数多くの私兵を隠し持っておりその軍事力は他と一線を画す規模となっている。 小田のようなカリスマ性には欠ける小心者だが執念深く、身体的な戦闘力も凄まじい。 事あるごとに堂々とした全裸の描写があり、裏切り者たちには自ら全裸で金棒を用いて処刑を行う。また女たちを侍らせての鍼灸を好み、効果が出てくると男性器を激しく勃起させ女たちを担いで去っていくなど、己の肉体に誇りを持っている様子。
政界・財界の人々
松山 康一
浜岡 達雄
宗教関係者
白川 天星
東京大学法学部の学生でアメフト部における征五郎、片岡の後輩。母親は新興宗教団体「救国教団」の教祖白川玉堂。その息子という事で信者からは若神様と呼ばれ崇拝されているが、本人自身は宗教を単なる人間支配の道具としか考えていない。 「自分は世界でいちばん美しい」などと独白し、全裸でベッドに横たわって鏡に魅入るなどかなりのナルシスト。だが一人で橘組の屈強な組員数人を倒すなど格闘にも長じている。
登場当初は征五郎・片岡の協力者であったが物語の最後半でその真の狙いが明らかとなる。
救国教団の教義は不明だが、教団独自の洗脳された信者で構成された戦闘部隊を持ち教祖が信者と乱交パーティを開くなど、反社会的かつ狂信的な性格を持つ団体である。
書誌情報
- 普及版 野望の王国(ゴラク・コミックス)
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 1巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1977年8月。ISBN 4-537-00635-8。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 2巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1977年8月。ISBN 4-537-00636-6。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 3巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1977年9月。ISBN 4-537-00637-4。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 4巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1977年10月。ISBN 4-537-00638-2。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 5巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1978年1月。ISBN 4-537-00639-0。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 6巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1978年3月。ISBN 4-537-00640-4。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 7巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1978年5月。ISBN 4-537-00643-9。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 8巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1978年7月。ISBN 4-537-00644-7。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 9巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1978年9月。ISBN 4-537-00645-5。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 10巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1978年11月。ISBN 4-537-00646-3。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 11巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1979年1月。ISBN 4-537-00647-1。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 12巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1979年3月。ISBN 4-537-00648-X。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 13巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1979年6月。ISBN 4-537-00649-8。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 14巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1979年8月。ISBN 4-537-00650-1。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 15巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1979年8月。ISBN 4-537-00752-4。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 16巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1979年10月。ISBN 4-537-00753-2。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 17巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1979年12月。ISBN 4-537-00754-0。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 18巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1980年2月。ISBN 4-537-00755-9。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 19巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1980年4月。ISBN 4-537-00756-7。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 20巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1980年6月。ISBN 4-537-00757-5。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 21巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1980年11月。ISBN 4-537-00758-3。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 22巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1981年8月。ISBN 4-537-00669-2。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 23巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1981年11月。ISBN 4-537-00670-6。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 24巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1982年2月。ISBN 4-537-00671-4。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 25巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1982年4月。ISBN 4-537-00672-2。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 26巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1982年6月。ISBN 4-537-00673-0。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 27巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1982年8月。ISBN 4-537-00674-9。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 28巻、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1982年9月。ISBN 4-537-00675-7。
- 愛蔵版 野望の王国(ゴラク・コミックス)
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 1、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1988年6月。ISBN 4-537-03171-9。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 2、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1988年7月。ISBN 4-537-03177-8。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 3、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1988年8月。ISBN 4-537-03183-2。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 4、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1988年9月。ISBN 4-537-03190-5。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 5、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1988年10月。ISBN 4-537-03196-4。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 6、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1988年11月。ISBN 4-537-03201-4。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 7、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1988年12月。ISBN 4-537-03209-X。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 8、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1989年1月。ISBN 4-537-03215-4。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 9、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1989年2月。ISBN 4-537-03221-9。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 10、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1989年3月。ISBN 4-537-03225-1。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 11、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1989年4月。ISBN 4-537-03231-6。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 12、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1989年5月。ISBN 4-537-03236-7。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 13、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1989年5月。ISBN 4-537-03534-X。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Violence 14、日本文芸社〈ゴラク・コミックス〉、1989年6月。ISBN 4-537-03539-0。
- コンビニコミック版(Gコミックス)
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Vol.1 野望燃ゆ編、日本文芸社〈Gコミックス〉、2001年6月。ISBN 4-537-15012-2。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『野望の王国』 Vol.2 血の野望編、日本文芸社〈Gコミックス〉、2001年10月。ISBN 4-537-15020-3。
- 完全版 野望の王国(ニチブンコミックス)
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『完全版 野望の王国』 1巻、日本文芸社〈Nichibun comics〉、2002年9月27日。ISBN 4-537-10124-5。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『完全版 野望の王国』 2巻、日本文芸社〈Nichibun comics〉、2002年9月27日。ISBN 4-537-10125-3。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『完全版 野望の王国』 3巻、日本文芸社〈Nichibun comics〉、2002年10月26日。ISBN 4-537-10134-2。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『完全版 野望の王国』 4巻、日本文芸社〈Nichibun comics〉、2002年11月27日。ISBN 4-537-10143-1。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『完全版 野望の王国』 5巻、日本文芸社〈Nichibun comics〉、2002年12月26日。ISBN 4-537-10152-0。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『完全版 野望の王国』 6巻、日本文芸社〈Nichibun comics〉、2003年1月9日。ISBN 4-537-10163-6。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『完全版 野望の王国』 7巻、日本文芸社〈Nichibun comics〉、2003年2月27日。ISBN 4-537-10172-5。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『完全版 野望の王国』 8巻、日本文芸社〈Nichibun comics〉、2003年3月27日。ISBN 4-537-10180-6。
- 雁屋哲原作、由起賢二劇画『完全版 野望の王国』 9巻、日本文芸社〈Nichibun comics〉、2003年4月24日。ISBN 4-537-10191-1。