鉄鼠の檻
以下はWikipediaより引用
要約
『鉄鼠の檻』(てっそのおり)は、日本の小説家・推理作家である京極夏彦の長編推理小説・妖怪小説。百鬼夜行シリーズ第4弾である。第9回山本周五郎賞の候補作となった。
あらすじ
『姑獲鳥の夏』事件の後、久遠寺嘉親は東京を離れて箱根山中の旅館「仙石楼」に居候する。昭和28年2月、骨董商の今川雅澄は、「明慧寺」の僧侶との商談のために仙石楼にやって来る。また飯窪季世恵・中禅寺敦子・鳥口守彦は明慧寺を取材するために仙石楼に到着する。彼らの眼前に、突然足跡もなく、僧侶の他殺死体が出現する。また別ルートで、中禅寺秋彦と関口巽も箱根入りしていた。中禅寺は古書鑑定のために外出し、関口は宿で「歌う幽霊少女」や「鼠の僧」の怪異談を聞く。
仙石楼は死体発見で騒然となり、警察が呼ばれるも、久遠寺老は独断で探偵榎木津礼二郎に連絡してしまい、混乱を恐れた鳥口は、関口を仙石楼に連れていく。被害者は明慧寺の僧侶と判明し、取材班と警察は寺入りする。だが2人目の僧がさらに殺され、別の僧・桑田常信は次は自分が殺されると怯え出す。
登場人物
主要登場人物
シリーズでは今川雅澄と益田龍一の初登場となる。
中禅寺 秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)
明慧寺
小坂 了稔(こさか りょうねん)
60歳。四知事・直歳。臨済宗。外界と関わりを持つ唯一の僧侶で、他の知事からは破戒僧と言われていた。昭和3年入山。
元々は鎌倉の立派な寺の僧だったが、上に疎まれて明慧寺に島流しにされてきた。明慧寺での暮らしが気に入らず、世間に曝して寺を壊そうとしていたとされ、常々寺を開いて経済的に自立すべきと云っていた。
「無戒」こそ真の禅だと考え、何につけても反発し否定してかかる人物で、島流しになったのもその性格が災いしたためであった。小手先の技術になっていた公案を禅の堕落だと嫌い、朝課に出る以外は野放図で、立場を良いことに月に一度は山を降り、発見された書画骨董を売り払う事業に手を出していた。
今川と骨董品の受け渡しを約束していたが、行方不明になり、4日後に坐禅を組んだまま凍り付いた撲殺遺体が仙石楼の庭に忽然と現れる。第1の犠牲者。
中島 祐賢(なかじま ゆうけん)
桑田 常信(くわた じょうしん)
和田 慈行(わだ じあん)
大西 泰全(おおにし たいぜん)
杉山 哲童(すぎやま てつどう)
菅野 博行(すがの はくぎょう)
仁秀(じんしゅう)
鈴(すず)
仙石楼
飯窪 季世恵(いいくぼ きよえ)
久遠寺 嘉親(くおんじ よしちか)
笹原・松宮の関係者
松宮 仁(まつみや ひとし)
松宮仁一郎の息子。地元住人との交流を欠かさず、父とは諍いが絶えなかった。父のやり方に反発して学校を退学、地元民の色眼鏡に悩みながらも地域の活性化に奉仕していた。昭和14年末に父と大喧嘩して家を出たため事件には巻き込まれなかったが、父親との不和と不在証明がなかったことを理由に一度は逮捕されてしまい、境遇に同情した地域住民の嘆願書もあって証拠不十分で不起訴になった後は、懇意にしていた僧侶の勧めで底倉村の禅寺で出家した。
好青年の僧侶。法名は仁如(じんにょ)。世話になった僧の死後はかつて了稔が属していた鎌倉の禅寺にいたが、数ヶ月前からある目的のために旅に出ている。明慧寺を訪れた帰りに、敦子・鳥口と邂逅する。
笹原 宋吾郎(ささはら そうごろう)
松宮 仁一郎(まつみや じんいちろう)
笹原 武市(ささはら たけいち)
山内 銃児(やまうち じゅうじ)
警察
山下 徳一郎(やました とくいちろう)
用語
箱根山連続僧侶殺害事件(はこねやまれんぞくそうりょさつがいじけん)
明慧寺(みょうけいじ)
どこの法系にも与しない独立寺院で、宗旨も檀信徒もないとされており、臨済宗と曹洞宗の僧侶が混在して修行を行っている。貫主以下に幹部として四知事と、僧侶が30人ほどいる。普通の寺院では知事の任期は1年だが、人材がいないので特定の人物が延々と役目に就いている。
交通の要所である箱根宿の目と鼻の先にありながら、江戸期の記録には寺の名前が存在せず、契約上で本末関係を結んだことを示す末寺帳にさえ載っていないなど、江戸幕府が行った元和の寺院法度などの宗教統制を掻い潜っており、明治政府の神祇省廃止に伴う一宗一管長制にも記録がない。しかも明治4年の寺領没収もされず、無檀家であるにも関わらず廃寺処分も受けていない。
実は宗教統制が厳しかった時代は廃寺になっていて、仙石楼の造園に来ていた和田智念禅師が明治28年に発見したことがきっかけで再興された。その後、開発目的で企業が山を購入するなど紆余曲折を経て、大正15年から各教団の僧侶が派遣されてくる。所属する僧侶は各教団から調査のために遣わされていて、檀信徒からのお布施ではなく、各教団、各宗派からの援助金と托鉢、畑の作物によって経営を成り立たせている。
仙石楼(せんごくろう)
本館は2階建てで、旅館と云うより料亭のような雰囲気がある。別棟の大浴場が地滑りで半壊した後、観光客の増加に対応するため明治21年に増築して一般湯治客用の新館とした。庭には天然の柏の巨木が生えていて、建物より樹の方が古く、その樹に合わせて智念禅師が造園したと云われている。
明慧寺とも縁があり、戦前までは檀家の参拝者らしき人々や地方から来た僧侶が泊まっていたこともあった。2階の8部屋それぞれに掛け軸として貼ってある十牛圖は、明慧寺の法塔の裏で発見されて寄贈されたもの。
できたのは江戸後期だが、箱根の宿場からは離れていて、旧街道からも外れ、箱根七湯からも他の集落からも遠いため、大正時代くらいまでは極一部の人間にしか知られておらず、戦後の現在も知る者は少ない。元は初代稲葉治平が小田原藩主大久保家との取り引きで造った秘密の高級湯治場で、小田原藩の秘密裏の庇護の下、藩の要人や外国人を含む賓客のための保養所として機能していた。旧名称は「仙石廓」と云い、その名の通り秘密の遊廓としての営業もしていたが、ご一新で小田原藩との関係が断たれた後は高級温泉旅館として営業を続けることを余儀なくされた。立地条件は甚だしく悪く、一般客を多数獲得できる程のセールスポイントを持っていなかったものの、隠密で訪れた要人を受け入れると云うそもそもの機能だけは多くの筋から珍重されたので、ある程度はパトロンもおり、昔は外人保養地に近かったことから、客の5割が外人だった時もある。
書誌情報
- 新書判:1996年1月、講談社ノベルス、ISBN 4-06-181883-X
- 文庫判:2001年9月、講談社文庫、ISBN 4-06-273247-5
- 分冊文庫判:2005年10月・11月、講談社文庫、 ISBN 4-06-275206-9、 ISBN 4-06-275207-7、 ISBN 4-06-275208-5、 ISBN 4-06-275209-3
- 四六判(愛蔵版):2018年1月、講談社、ISBN 978-4-06-220776-8
漫画
志水アキにより漫画化され、『少年マガジンエッジ』で2017年から2018年まで連載された。
書誌情報
- 京極夏彦 / 志水アキ 『鉄鼠の檻』 講談社〈KCマガジンコミックスデラックス〉、全5巻。
- 2017年8月17日発行 ISBN 978-4-06-393256-0
- 2017年11月16日発行 ISBN 978-4-06-510489-7
- 2018年4月17日発行 ISBN 978-4-06-511326-4
- 2018年8月17日発行 ISBN 978-4-06-512741-4
- 2018年11月15日発行 ISBN 978-4-06-513861-8