銀翼のイカロス
以下はWikipediaより引用
要約
『銀翼のイカロス』(ぎんよくのイカロス、英語: Icarus-Flying on Silver Wings)は、池井戸潤による日本の経済小説。経済専門雑誌『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)にて2013年5月18日号から2014年4月5日号まで連載され、2014年7月28日に単行本化、2017年9月5日に文春文庫より文庫化、2019年12月13日に講談社文庫より『半沢直樹 4 銀翼のイカロス』に改題の上文庫化された。
『オレたちバブル入行組』から始まる半沢直樹シリーズの第4作目で、主人公の半沢が子会社・東京セントラル証券から東京中央銀行に復帰して以降の物語。家族要素のエピソードは描かれていない作品は、前作『ロスジェネの逆襲』と本作のみである。
本作は、2020年7月19日よりTBS系列で放送されたテレビドラマ『半沢直樹(2020年版)』の第二部(後半)の原作にあたる。
Audibleにてオーディオブックが他の半沢直樹シリーズ既刊とともに2018年9月14日より吉田健太郎の朗読で配信された。
あらすじ
プロローグ
ところが、合併直後に東京第一銀行がかつて行っていた不適切融資エリア51案件の1つが発覚し、旧東京第一銀行頭取で合併後は東京中央銀行の副頭取に就任していた牧野 治が逮捕される。調査に乗り出したところで仮釈放されていた牧野が自殺したことで真相は謎のままとなり、東京中央銀行は現在に至るまで行内が分裂する。
序盤
帝国航空に対し700億円超えの融資をしている準主力銀行である東京中央銀行では、不良債権融資先の債権管理を審査部が担当していたが、憲民党と同様に帝国航空の再建計画がまとまる気配がなかった。このまま帝国航空の業績悪化が続くと経営破綻し、債権回収が困難になることを懸念した頭取中野渡 謙は役員会で営業第二部部長の内藤 寛を通じて、過去に伊勢島ホテルの再建実績がある半沢に対し帝国航空修正再建案のフォローをするよう同社の再建担当に任命する。
審査部は旧T(旧東京第一銀行)の旗頭である常務取締役の紀本 平八、その部下で同じく旧Tの審査部次長である曽根崎 雄也が帝国航空を旧T時代より長年担当しており、旧S(旧産業中央銀行)の行員が多数を占める営業第二部への担当替えを「梯子外し」と見なし快く思っていなかった。一方、帝国航空では社長の神谷 巌夫、財務部長の山久 登の両名は利益よりも大義を優先するあまり、今回起きている経営危機に対する危機感が希薄であった。
曽根崎が帝国航空と馴れ合いの関係を続けていたことを知った半沢は毅然とした態度で挑み、このままでは追加融資が出来ないこと、大義よりも利益を優先するべきであることを伝えた上で、地に足のついた抜本的なリストラや赤字路線の廃止を含めた経営再建案を掲示し、後がないと認識した帝国航空は渋々ながらも半沢の再建案を受け入れる。
中盤
銀行にとって不利益でしかなく、経営再建を正しく行うべきだと半沢は要求を拒絶するが、常務である紀本はなぜか受け入れることを前提に行内で話を進めていた。帝国航空のメーンバンクである開発投資銀行の谷川 幸代もまた債権放棄を拒絶する旨を上層部に伝えるも、民営化を恐れていた上層部は債権放棄を呑むことを決定する。
タスクフォースは「憲民党の否定ありき」と言いながら、その再建内容は有識者会議が策定したものとほとんど同じであり、さらに帝国航空にも費用を付け回すなど横暴を働く。
半沢は債権放棄を拒絶すべく動くが、中途で前回帝国航空を正常債権とした金融庁が自身の責任を免れるべくヒアリングを行い、黒崎 駿一が検査官として着任し、金融庁に提出された再建案と実際の再建案が大きく異なることを指摘する。真相は曾根崎が帝国航空から渡された再建案を改竄して金融庁に提出したというものであり、曾根崎は紀本の後ろ盾のもと帝国航空の錯誤として処理しようとするも山久は拒絶し、曾根崎は出向となり金融庁からは東京中央銀行に対し業務改善命令を出す。
業務改善命令と共に、「航空行政への影響を考慮せよ」との所見が付いたことで東京中央銀行の役員会では債権放棄を呑むべきであるという論調が強まり、内藤と紀本の議論の末「債権を放棄するが、開発投資銀行が債権を放棄した際には同調する」との内容で決着された。
しかし銀行団による債権放棄表明の当日、開発投資銀行の民営化は閣議で決定され谷川の尽力もあり開発投資銀行は債権放棄を拒絶し、同時に東京中央銀行も債権放棄を拒絶、タスクフォースの目論見は大きく躓く。
終盤
一方、灰谷は紀本の指示を受けて問題の融資とその他隠蔽している融資が無事であることを書庫センターで確認するが、それが元となり今まで発見されなかったほかも含めた不可解な融資を富岡が発見し、半沢も知るところとなる。問題の融資は箕部のファミリー企業舞橋ステートに転貸され、同社はその費用で舞橋空港の建設予定地を購入して大儲けをしていたのだった。同時に、その資金は選挙資金として箕部に流出していたことも発覚する。
灰谷は富岡を追うが、富岡の正体は頭取直轄の融資調査担当であり書類を押さえられて身動きができなくなった灰谷は半沢と富岡に全てを話し、紀本が中心となって全てが行われていたことが証明される。
紀本が債権放棄に協力的であったのは、かつて舞橋の地元企業の破綻処理に携わっていた乃原がこの件をもとに脅迫していたからであった。なおも債権放棄を呑ませたい乃原は中野渡にこの融資のことを伝え、債権放棄か信用を瓦解させるか選ぶよう迫る。
ラスト
未だに旧派閥で争いあう東京中央銀行で真の行内融和を進めたかった中野渡は債権放棄ではなく、全てを公にしてわだかまりをなくすことを選んだのであった。紀本にもその旨を伝え、観念した紀本は調査に協力し、隠蔽していた融資を世間に公表することとなる。
紀本は辞任し、中野渡は半沢に対し感謝の念を述べると同時に頭取を辞することを明かした。
登場人物
東京中央銀行
10年前に東京第一銀行と産業中央銀行が合併してできた大手銀行。今なお出身銀行ごとに派閥があり、東京第一出身者を旧T、産業中央出身者を旧Sと呼び、出世のための人脈作りが活発に行われている。
半沢直樹
紀本平八
灰谷英介
牧野治
旧Tで元副頭取。旧東京第一銀行頭取で、合併後は東京中央銀行の副頭取に就任していた。しかし合併直後に発覚した詐欺事件で旧東京第一銀行の不適切な無担保融資が関与していたことが判明し、それに絡んで特別背任罪で逮捕されるも、保釈中に自宅で自殺した。中野渡は彼の自殺は「東京第一銀行の行員のために真実を隠ぺいするため」と認識しているが、一方で牧野のことを国際感覚に秀でた優れたバンカーとして評価し、しがらみに囚われて抜け出せなくなったのだと考えている。
同じ池井戸潤の作品である花咲舞シリーズ『不祥事』の続編に当たる、第2作『花咲舞が黙ってない』にも旧東京第一銀行の頭取として登場しており、会長の高橋らが管理する不適切な融資(エリア51)に苦しめられる。
帝国航空
開発投資銀行
進政党
衆院選での勝利により政権与党となった政党。「クリーンな政治」を掲げている。
白井亜希子
帝国航空再生タスクフォース
白井大臣が立ち上げた帝国航空の企業再生のための諮問機関。