闇のギース
以下はWikipediaより引用
要約
『闇のギース』(やみのギース)は、SNKの格闘ゲーム『餓狼伝説』シリーズと『龍虎の拳2』に登場するギース・ハワードを主題とした天獅子悦也 による日本の漫画で、『ギース・ハワード外伝』の続編。新声社のゲーム雑誌「コミックゲーメスト」に1996年から1997年にかけて不定期に掲載された 。単行本は、新声社からゲーメストコミックスとして1997年に全1巻として発売されている。
『餓狼伝説3』直後から『リアルバウト餓狼伝説スペシャル』までを扱っているが、SNK公式設定とは異なる。
概要
生身のギース・ハワード自身が登場していないのが特徴である(回想シーン等は除く)。ビリー・カーン、山崎竜二、ブルー・マリーが主要人物となり、テリー・ボガードの出番も増えている(以上の5名は、「あらすじ」にて紹介され、名前が赤文字で記されている)。フランコ・バッシュとホンフゥも再登場。他には望月双角(赤文字の5名以外で、唯一カラーページで紹介されている)と秦兄弟(秦崇雷・秦崇秀)が新規に加わっている。
『餓狼伝説3』のキャラクターで登場していないのはアンディ・ボガード、ジョー・ヒガシ、不知火舞、ボブ・ウィルソンの4人。『リアルバウト餓狼伝説』及び『リアルバウト餓狼伝説スペシャル』で追加されたキャラクターは、ビリーを除き登場していない。
ストーリー、初出誌
SIDE:I BILLY(「コミックゲーメスト」1996年7・8月合併号、「ビリー・カーン外伝」から改題)
その後、ギースは姿を見せず、ビリー・カーン以下、ギース機関メンバーに音声で指示を出していた。それを見て「亡霊のようだ」と嘲笑する秦王龍。彼こそは2200年前に秘伝書を記した人物であり、秘伝書に霊体となって宿っていたのだった。3本揃ったため、ビリーにもその姿はハッキリと見える。ギースは取り合わず、ビリーに秘伝書の破棄を命じるのだった。
港から落とし、潮流に乗せて1万メートルの深海に沈め処分する、それがギースのいつものやり方だった。秘伝書も海の藻屑となろうとしている…ビリーは、それを目の前にして、ヴォルフガング・クラウザーの最期を思い出していた。と、秘伝書を収めた箱から、瘴気のようなものが噴出した。
ビリーは10年前の出来事を思い出していた。ギースと出会った最初の日。工場でビリーが大暴れし、20人以上を負傷させラインを停止させたところに、ギースが姿を現したのだった。ビリーの才能を評価したギースは、部下になるかどうかの選択を迫る。ビリーは鉄パイプを振るい、ギースに襲いかかったが、軽くいなされ、当て身投げを食らって得物を壊されてしまう。窮地に陥ったビリーに、ギースが詰め寄った。そしてビリーの望みを問いただす…だが、ビリーは違和感を覚えた。何かが記憶と違う。
そこで呪文が割って入った。ビリーの記憶を使い、秦王龍が心理攻撃を仕掛けていたのだ。それを妨害したのは、望月双角だった。秘伝書の始末を引き受けようとする望月。だが、ビリーはそれを拒んだ。両者の戦いが始まる。棒術使いとしてはビリーの方が秀でている、それを認めた望月は、術をかけた。鬼の幻影に襲われるビリー。異形の鬼はビリーからの攻撃を受け付けず、だがビリーにはダメージを与えてくる。追い詰められたビリーだったが、鬼がガラスに映らないことにヒントを得、催眠術と見破る。
秘伝書を手放せば、人々はギースへの脅威を薄れさせ反乱を起こす。とは言え、所持していたままでは、運命の男・テリーによってギースは破滅する…そう断言する望月に。動揺するビリー。
激闘の中、追い詰められたビリーに呼応して秦王龍の霊が目発動し、彼に憑依しようとするが、ビリー自身の覚悟がそれを抑え込む。それを見極め、望月は秘伝書の処理を一時的に見送り、ビリーに託したのだった。
SIDE:II MARY(「コミックゲーメスト」1997年6月号-7月号、「竜二」前編、後編から改題)
ギースが秘伝書を揃え、フランコ・バッシュは息子を取り戻し、ホンフゥは逮捕を諦めない。そして秦兄弟の姿…夢の中で、山崎竜二の前に彼らの姿が浮かんでは消えていった。さらにもう一人、反町の兄貴の姿。夢から覚めた山崎は、転がり込んでいる娼婦・ジュリア反町の部屋を出、路地裏に座り込み、酒を煽る。そこへ現れたのはブルー・マリーだった。ギースが姿を消してから数か月、その生死を確かめるよう要請するマリーに対し、敵意をむき出しにする山崎。「勝手にやらせてもらう」と言い残して去る山崎の背に、「それも予想通り」と呟くマリー。
ギース機関では、ギース本人が姿を見せないまま、ビリーが指示を出していた。支部は撤収、資金は海外のタックスヘイブンへ移す。一方、大統領の指示で、ギース機関幹部が次々と逮捕されていた。その末路は気にせず、ただ裁判を長引かせるため、検事には過去のスキャンダルを使った脅しを、捜査員には家族を人質に、証人候補は抹殺、と、容赦ない命令を下していくビリー。その冷徹な様に、部下たちはギース健在を確信していた。
山崎がギース機関の支部を強襲。対策を講じるため、ビリーはフランコ・バッシュの家を訪れ、居候同然のホンフゥに山崎の居場所をリークする。山崎を待ち伏せしたホンフゥだったが、山崎には勝てず、敗退してしまう。そこにたどり着いたマリーは、近くにギースが居ると感じた。しかし、その「気」を発していたのはギースではなくビリーだった。
ホンフゥはジュリアの家宅捜査を令状なしで行っていたが、マリーに香港警察からの帰還命令を告げられる。警察組織を離れても山崎を追う、と言い残し去るホンフゥ。ジュリアは山崎の過去を問いただす。彼の犯罪歴を聞いてもなお、山崎の元へ駆け付けようとするジュリア。
ギース機関の本部は移設、ビリー以外の部下はそちらに移った。邪魔者を片付けてから追う、というビリー。橋で待つ彼の前に、山崎が姿を現す。殺意と狂暴さが渦巻く闘いが繰り広げられ、ついに山崎の動きが止まる。とどめを刺そうとしたビリーの前に飛び出したジュリアは、棍をまともに受け、致命傷を被る。乱入者にビリーが躊躇した隙に、短刀を抜きジュリアを盾に突進する山崎。短刀が棍を滑り、ビリーの喉元に迫る。その時、秘伝書から「気」が立ち上った。それはギースの姿をしており、奥義を炸裂させて橋を破壊し、ビリーの窮地を救った。ギースの肉体は滅び、その「気」だけがビリーに救われ、秘伝書に宿っているのだった、秦王龍さえも押しのけて。ビリーと山崎は痛み分けた。山崎はジュリアの死にも動ぜず、ギースを追うことに喜びを感じていた。
ジュリアが山崎を庇って死ぬことは、マリーには予知できていた。そのために連れてきたのだ。山崎を今後も利用するために、今死なれては困るから。ブルー・マリーに任務に生きる、非情の女だった。
SIDE:III TERRY(「コミックゲーメスト」1997年9月号-10月号)
一方、秦兄弟は、廃墟となったギースタワーの一室にいた。ギースの生死を確認するためである。ギースの肉体は確かに外へ転落している、だが、残された「気」があまりにも大きい。真偽を確認すべく秘伝書を呼び寄せようとしたが、部屋には結界が貼られていた。望月の仕業である。
マリーは望月と協力し、テリーを探し出す。そのテリーは迷いを持っていた。ギースは転落の際、テリーの手を払っていた。それが呪いとなり、テリーを縛っていたのだ。「ギースに本当に勝ったのか?」という迷いとなって。望月との闘い、マリーの説得を経て、テリーはギースとの決着を望み、ギースタワーへ向かう。
タワーでは秦兄弟が「気」を浪費して、やっと秘伝書を呼び寄せていた。それを持ってきたビリーは、結界を破壊。ギースの宿った秘伝書を見せる。それを取り戻そうとする兄弟と戦うビリー。優位に立ったものの、兄の「気」を吸い取った弟に苦戦。そこにテリーが現れ、秦(弟)との戦いが始まる。望月の協力で秦王龍の魂を破壊したテリーは、ギースとの最後の戦いを繰り広げる。その果てに、秘伝書は消滅し、テリーの迷いも吹っ切れていた。
事件は終わったが、ビリーがネットワークを介してギースの指令を出し続け、ギースは「幽霊」として存在し続けた。秦兄弟は記憶をなくし、本国へ送還を待つ身、望月とテリーはそれぞれ旅立っていった。任務のために手を血で染めてきたマリーは、それを見送るしかなかった。
登場人物
テリーから双角まではカラー口絵の登場順、それ以外は本編登場順。リンクがなく、特に説明のない人物はオリジナルキャラクター。
テリー・ボガード
ギース・ハワード
本作の主軸に位置する人物だが、直接の登場シーンはなく、セリフ、回想シーン、幻影などの形態で扱われる。
表面上は紳士的な実業家だが、実態はサウスタウンを牛耳ってきた裏社会のボス。初登場の『餓狼伝説(1)』(1991年)のラストボスであり、ここで敗北して転落死した、と見られていたが、シリーズ第3作『餓狼伝説スペシャル』(1993年)での再登場を経て、第4作となる『餓狼伝説3』(1995年)で完全に復活した。
「SIDE:I BILLY」は『餓狼伝説3』直後の話であり、ギースタワーは炎上したものの、ギース自身は助かり、3本目の秘伝書も入手している。ただし、本人は姿を現さず、音声のみで指示を与えているところから、傷が重く隔離施設で治療中と思われる。
このエピソードでビリーの回想に登場する10年前のギースは、短髪のオールバック、という点では『餓狼伝説』シリーズの姿だが、衣装は『龍虎の拳2』のスーツだった。また、当て身投げを使用している。
「SIDE:III TERRY」では、前述のナイトメア状態でテリーと戦っている(『リアルバウト餓狼伝説スペシャル』の再現)。
ビリー・カーン
「SIDE:III TERRY」では秦兄弟と対戦。2対1にも関わらず相手を翻弄していたが、秦崇雷の「気」を吸い取り、完全体に近づいた秦崇秀により窮地に追い込まれる。テリーの参戦により虎口を脱した。
望月の見解では、ギースに父親としての存在を求めていた模様。
ブルー・マリー
山崎竜二
望月双角
秦王龍
ホンフゥ
フランコ・バッシュ
ジュリア反町
秦兄弟(秦崇雷・秦崇秀)
本シリーズでは初登場となる。『餓狼伝説3』で初登場した少年たちで、秦王龍の子孫。先祖の魂を宿しているため、少年の姿からは想像もできない「気」と技を使いこなす。
「SIDE:II MARY」には、山崎の悪夢として2コマのみ登場。本格的な登場は「SIDE:III TERRY」のみ。秦王龍の3人の息子のうち、空龍と海龍が潜んでいる(兄が空龍、弟が海龍)。
ギースタワーの焼け跡に潜入し、秘伝書を取り戻そうとしたところを、望月の結界により封じ込まれた。ビリーにより結界が破られ脱出するが、兄弟2人がかりでもビリーに追い詰められている。この時、兄が弟に「気」を与えるよう命令したが、逆に弟から「気」を吸収されてしまう(この時点で兄は廃人同様になっている)。
兄の「気」を奪った弟はビリーを圧倒するが、乱入してきたテリーから霊体にダメージを与えられ、望月の協力で霊体が消滅、弟もただの少年に戻ってしまった。
事件後、兄弟はその言動が精神障害によるものと判断され、本国に送還されることとなった。兄は車椅子姿で、意識がない模様。
秘伝書の設定
前作『ギース・ハワード外伝』と異なる部分がある。
「SIDE:I BILLY」
「SIDE:II MARY」
ビリーがギースの死に際し「気」のみ秘伝書の力で救出できた、と語る。秦王龍の魂は排除(吸収)されている。
「SIDE:III TERRY」
正伝無道流口伝(望月の言)によると、「不死身の完全体を作る方法を完成させ、秘伝書に暗号として隠した」。マリーと望月が想像したところでは、秘伝書の暗号はクローン技術についてであり、3兄弟は秦王龍の息子ではなくクローン。
2200年前、秦王龍を秘伝書に追い込んだのは我々(秦崇雷(空龍)の言)。
書誌情報
- 天獅子悦也『闇のギース(ギース・ハワード外伝シリーズ)』 新声社〈ゲーメストコミックス〉、全1巻
- 1997年1月発売、ISBN 978-4881994115