陸奥圓明流外伝 修羅の刻
以下はWikipediaより引用
要約
『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』(むつえんめいりゅうがいでん しゅらのとき)は、川原正敏による日本の格闘・歴史漫画、及びこれを原作とする小説・テレビアニメ。
概要
『修羅の門』の主人公・陸奥九十九の先祖である代々の陸奥圓明流の使い手達が史上に名高い猛者と闘い、影に隠れながらも日本の歴史を動かしてきた様を描く連作シリーズ。時代を動かしてきた中心人物の生き様と陸奥の名を背負った主人公との友情や愛情、そしてその時代に生きる人々の想いを通し、「人と人との関わり」にまで踏み込んで、その「刻」を浮き彫りにしている。個々のストーリーは最長でも単行本4冊、多くは1・2冊で完結しており原則としてそれぞれ独立した話となっている。
1995年には作者自身の手によって「宮本武蔵編」が小説化されている。2004年には「宮本武蔵編」・「寛永御前試合編」・「風雲幕末編」3編がテレビアニメ化されテレビ東京系で放送された。
エピソード的には「昭和編」で本編に繋がっているが、作者あとがきによればまだまだ描きたい時代・人物はあり、時間と要望がある限り挑戦していきたいとの事で以下のように連載が行われている。
- 東国無双編 - 2019年6月号から7月号 織田信長編で陸奥を継いだ狛彦を主人公とする。
- 西国無双編 - 2019年8月号から10月号 織田信長編で不破の名を与えられた虎彦を主人公とする。
- 酒呑童子編 - 2024年1月号から6か月連続掲載
初出・収録
初出はいずれも講談社の『月刊少年マガジン』で、1989年7月号以降断続的に発表されている。初期には「修羅の門」との同時掲載もあったが、主に長期連載を一時休載して一編を短期集中連載する形で発表されている。
単行本は〈講談社コミックス月刊マガジン (KCGM) 〉より19巻までと13巻裏の計20冊が発売されており(2011年9月現在)、巻数の表示には大字が使われている。また2003年にはテレビアニメ化に合わせ、「宮本武蔵編」・「寛永御前試合編」・「風雲幕末編」のハードカバー・ハードケース入り愛蔵版が計5冊で発売された(各巻の書誌情報については書誌情報を参照)。2019年5月時点で累計発行部数は1700万部を突破している。
- 収録巻はKCGM版のみ。愛蔵版は書名に編名が含まれている為省略する。
部 | 章名 | 編名 | 話数 | 掲載号 | 収録巻 | 長期連載作品 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 陸奥八雲の章 | 宮本武蔵編 | 3 | 1989年7月号、1990年1 - 2月号 | 壱 | 修 羅 の 門 |
第二部と同時掲載 |
2 | 陸奥出海の章 | 風雲幕末編 | 4 | 1990年8月号・9月号 | 弐 | 第二部と第三部の間の休載時に掲載 | |
1991年8月号 | 参 | 第三部と同時掲載 | |||||
1991年9月号 | 第三部を休載して掲載 | ||||||
3 | (陸奥)雷の章 | アメリカ西部編 | 1 | 1992年10月号 | 四 | ||
4 | (陸奥)圓の章 | 寛永御前試合編 | 5 | 1993年11月号・12月号 | 伍 | 第三部と第四部の間の休載時に掲載 | |
陸奥天斗の章 | 1994年1月号 - 1994年3月号 | 六 | |||||
5 | 陸奥鬼一の章 | 源義経編 | 12 | 1997年1月号 - 12月号 | 七 - 拾 | 「修羅の門」第四部と「海皇紀」の間に連載 | |
6 | 陸奥辰巳の章 | 織田信長編 | 7+1 | 2001年9月号・10月号 | 十一 | 海 皇 紀 |
休載して掲載 |
虎彦と狛彦の章 | 2001年11月号 - 2002年4月号 | 十二・十三(表/裏) | |||||
7 | 陸奥天兵の章 | 西郷四郎編 | 2 | 2003年10月号・11月号 | 十四 | ||
8 | 陸奥左近の章 | 雷電爲右衞門編 | 3 | 2005年9月号 - 11月号 | 十五 | ||
9 | (不破)現の章 | 昭和編 | 5 | 2015年10月号 - 2016年2月号 | 十六・十七 | 「修羅の門 第弐門」と「龍帥の翼」の間に連載 | |
10 | 陸奥狛彦の章 | 東国無双編 | 2 | 2019年6月号 - 2019年7月号 | 十八 | 龍帥の翼 | 休載して連載 |
11 | 不破虎彦の章 | 西国無双編 | 3 | 2019年8月号 - 2019年10月号 | 十九 | ||
12 | 酒呑童子編 | 2024年1月号 - |
宮本武蔵編
『月刊少年マガジン』1989年7月号および1990年1月号・2月号に、本編である「修羅の門」と同時に掲載された。単行本の壱巻および、愛蔵版「宮本武蔵編」に収録。
江戸時代初期を舞台に、陸奥八雲と宮本武蔵の対決を描く。
あらすじ(宮本武蔵編)
陸奥一族の陸奥八雲(やくも)が山茶屋で麦飯を食べていると、突然その土地の若様・吉祥丸が何者かに追われ、林の中から現れる。吉祥丸は八雲の目の前で刺客により斬られそうになるが、刺客がそれと知らずに宮本武蔵へ刀を向けた為、結果として助けられる。武蔵は吉祥丸の家老から用心棒になるよう頼まれるがこれを断り、代わりに目前で刺客が両断されても目を背けず、麦飯の椀に止まった蝿を無造作に箸で摘まんだ八雲を推挙した。文無しであった八雲は山茶屋の勘定5文を払ってくれる事を条件に用心棒になる。吉祥丸は男の格好をしていたが、実は藩主である父を殺して家を乗っ取った叔父に復讐する為、家老に男として育てられた姫であった。家老は刺客に狙われない為女に戻る様に薦めるが吉祥丸は頑として拒否する。そして、吉祥丸が外に出歩いていると叔父に雇われた柳生兵馬が率いる新たな刺客に囲まれるも、八雲がこれを倒す。5文分の働きはしたと、八雲は去っていった。
一年後、女に戻った吉祥丸=詩織は政略結婚させられそうになった為、八雲を追って城を飛び出していた。安芸国で詩織は、再び食事の勘定を払えずにいた八雲と再会するも、安芸国福島家の雪姫が八雲を気に入ってしまった事で、兵法指南役の九鬼一門と八雲との争いに巻き込まれてしまう。詩織を人質に捕り、鉄砲隊まで揃えていた九鬼一門であったが、八雲に悉く倒される。九鬼一門との闘いを見守っていた武蔵は八雲に闘いを挑み、二刀流を持って八雲を追いつめるも、奥義『無空波』に敗れる。しかし、八雲も武蔵の刀を受ける為自身の刀を抜いてしまった為「引き分け」という評を下した。
八雲を新たな兵法指南役に召し抱えようとする雪姫に、詩織の払った飯代の働きが済んでいないと八雲は辞して、詩織と2人で何処かへと旅立つのであった。
登場人物(宮本武蔵編)
武芸者
陸奥 八雲(むつ やくも)
159?年生まれ。飄々としており、掴みどころの無い、正に雲の如き人物。
陸奥圓明流は無手で闘う為、剣等の武器は使わないのだが、武蔵との死闘では、防御の為とは言え、陸奥の歴史上初めて利用してしまう。それ故、武蔵との死闘は「敗北」ではないが「勝利」でもない、「引き分け」というのが八雲による評。
宮本 武蔵(みやもと むさし)
『修羅の刻』に於いて、本来は無手の武術である陸奥圓明流の使い手が刀を抜かされ唯一引き分けた相手。生涯無敗の剣客とされ、鬼神の如き気を発する。また、人物眼も確かなものを持ち、初対面で八雲の実力を見抜いている。
柳生 兵馬(やぎゅう ひょうま)
暗殺、抹殺の手練である実力者。柳生流を脅かす存在を陰で仕留める役目を持つ剣術のみでなく体術も究めた裏柳生という流派の人物で、詩織への刺客として雇われるが用心棒の八雲が放った陸奥圓明流の技・「雷」を受け死亡。
九鬼 数馬(くき かずま)
九鬼兄弟長男。九鬼無双流の使い手。八雲に斬馬剣をかわされた上に殴られ死亡。
九鬼 源次郎(くき げんじろう)
九鬼兄弟次男。九鬼無双流の使い手で、新三郎からは剣の腕はあるいは日本一かと評される程の実力者。但しこれに弟の新三郎は「性格さえまともなら家督を継げた」と付け加えており、本人も自身の素行の悪さを認め、亡き父からも嫌われていた。作中を通して道場の権威争いを他人事の様に傍観している点をみると、本人もその類の政治的な物事に全く興味ない模様。
しかし武芸者としては芯が通っている様で、正々堂々と八雲との一対一の立ち合いを挑んだ。無手の八雲に剣の間合いを悟られない様居合いを使って一撃必殺で仕留めようとするが、抜き手の拳を殴られて体勢が崩れた所を八雲の間髪入れぬ蹴りを受けて死亡。なお、亡き父が遺した「陸奥とは絶対に事を構えるな」という遺言を最期まで気に留めていた。
小説版では、強姦に失敗した新三郎に、抜刀してその恐怖で詩織に貞操を諦めさせる場面があり、漫画版では無かった凶悪な一面が描かれた。
九鬼 新三郎(くき しんざぶろう)
九鬼兄弟三男。九鬼無双流の使い手。「戦いは兵法」とする知略家で、鉄砲まで用意して、周到に準備を重ねた上、多勢を持って八雲と戦う。しかしこの「兵法」の為に詩織を人質に取る卑怯さ(これには源次郎も軽蔑する様な態度を取っている)に八雲は激怒し、陸奥圓明流の技の前に策略は一切通用する事は無かった。最期は八雲に投げられた上、喉に膝を落とされ死亡。
小説版では新三郎の心情がより克明に記され、長男の数馬を八雲に倒させる事で、冷や飯食らいの三男の境遇から抜け出し、九鬼無双流の家督を継いで当主になろうと考えていた。その為に人質に取った詩織を強姦しようとした(詩織の抵抗と源次郎の乱入があり、プライドの高い性格から興醒めして事には至っていない)。
その他(宮本武蔵編)
詩織(しおり)
毒を盛り父を亡き者にした叔父に復讐する為男装し吉祥丸と名乗っていた。用心棒として雇った八雲を最初は嫌っていたが徐々に惹かれていく。宮本武蔵と八雲の決闘の数少ない目撃者。伊織との面識がある。最終的に八雲と結ばれたかは不明。
伊織(いおり)
武蔵を慕い、弟子入りの為に彼の跡を追い旅をする少年。
沢庵宗彭(たくあん そうほう)
諸国を巡っている僧。不思議な男と感じた八雲の居場所を武蔵に教える。
雪姫(ゆきひめ)
八雲に惚れ、詩織の恋のライバルとなる。九鬼一門を兵法指南役に雇っている安芸50万石福島家の姫。
風雲幕末編
『月刊少年マガジン』1990年8月号・9月号(「修羅の門」第二部と第三部の間)及び1991年8月号・9月号(同第三部途中)に「修羅の門」を休載して掲載。単行本の弐・参巻、及び愛蔵版「風雲幕末編」壱・弐巻に収録。
幕末を舞台に陸奥出海と坂本龍馬・新撰組との交流及び闘いを描く。
あらすじ(風雲幕末編)
時は幕末、黒船が来航してから日本は乱れに乱れていた。そんな中、陸奥一族の陸奥出海(いずみ)は江戸の土佐藩邸にて行われた御前試合で坂本龍馬の剣の才能を目の当たりにした。龍馬はずば抜けて強いが優し過ぎて全力を出していない、と感じた出海は本気の龍馬と闘いたいと思い、龍馬の通う千葉道場に居候を決め込む。そして龍馬と出海は友達となった。ある日、龍馬と出海は試衛館へ立ち寄る。そこには剣の天才沖田総司がいた。試衛館は小さな道場であった為、土佐藩邸での試合に参加出来なかった。その事に対し出海が挑発とも取れる無神経な発言をし、沖田の反感を買う。沖田は出海に仕合を挑む。天才ながらも若すぎた沖田は出海との差をまざまざと見せ付けられる。結局この試合は人斬り鬼・土方歳三により止められ、出海はもう少し月日が流れたら再び仕合をしようと沖田と約束をする。土方は出海と龍馬に自分らの前に立ち塞がるような事があれば斬ると言い放つ。試衛館を去った後、出海と沖田の対決を見てついに「本気」になった龍馬は、闘いたいと出海に告げる。闘いの末に敗れた龍馬は剣一筋に生きる事を諦め、世界の海への旅立ちを夢見る。
龍馬は自分の新たな夢を叶える為に幕末の世界を動かし、ついには薩長同盟が成立。しかし、それを良しとしない薩摩の手の者や伊東甲子太郎によって暗殺される。龍馬を守り切れなかった出海は、無為に時を過ごしていたが、沖田との約束を思い出し、病床の沖田と対戦。沖田の三段突きをかわし、死傷する程の蹴りを入れた際に、遺言として土方を「よろしくお願い」された事で、北走する土方を追う様に北海道へ。
五稜郭から単騎で新政府軍本陣まで討って出た土方の前に出海が立ち塞がり闘う。土方の刀を敢えて踏み込み、斬撃の勢いの乗らない鍔元部分を身体で受け止め組み付いた出海の拳を受け土方は敗北。土方はもう思い残す事は無いと新政府軍へ突撃し、銃弾に倒れた。
登場人物(風雲幕末編)
主要人物
陸奥 出海(むつ いずみ)
1839?年生まれ。土佐藩での御前試合で桂小五郎らを破り優勝した坂本龍馬を最強の剣豪と見なし闘いを挑み、紙一重で勝利する。その後龍馬を影で支えていく。龍馬の死後は気力を失いただ海を眺める生活をしていたが、沖田との試合の約束を思い出し戦いに赴く。「西郷四郎編」にも登場しており、陸奥としては最初の再登場を実現している(後に、「東国無双編」で陸奥狛彦が再登場している。また、不破としては、「西国無双編」で不破虎彦が再登場している)。その底の見えない性格はまさに「海の如し」とは龍馬による評。戦う様は「修羅の如し」とは土方による評。
坂本 龍馬(さかもと りょうま)
北辰一刀流塾頭。
北辰一刀流免許皆伝の腕前を持つ。しかし、実際はそれ以上の実力を持つが、その優しさゆえに、自分も知らずに本当の力を抑えている。陸奥出海に負けた後、剣の時代は去ったと悟り自ら剣術を封印。その後、護身用として拳銃を携帯していたが、脅しに使う程度で人を撃つ気はなかった。力で物事を決めるのを嫌い、血を流さずに倒幕しようとする。大政奉還を実現し時代を変えるが、それ故に敵を作ってしまう。龍馬は刀を抜き相手を斬り殺せば切り抜けられたにもかかわらず、最後まで人を殺すことを拒み、伊東甲子太郎に暗殺される。その豪胆な性格、剣技を「海の如し」とは出海による評。
新撰組
近藤 勇(こんどう いさみ)
新撰組総長。
土方、沖田達が尊敬する人物。戊辰戦争の時は土方よりいち早く投降する。
土方 歳三(ひじかた としぞう)
新撰組副長。
通称「冷徹な人斬り鬼」。剣技、用兵は相当な手練であり、戊辰戦争の最後の攻撃では敵陣に単騎で乗り込み掛けた程である。近藤を慕っており沖田と仲が良く、また、他の新撰組隊士からも慕われている。天然理心流ではあるが我流にも近い実戦的な戦法で、出海と死闘を繰り広げた後、思い残す事はこの世に無い、と官軍に突撃し多数の銃弾を受け戦死。
沖田 総司(おきた そうし)
新撰組一番隊組長。
優しい性格で、かなりの美少年。しかし、勝負をする時は人が変わった様に勝負に執着する。天然理心流の使い手で、剣の天才と出海に言わしめる程の人物。龍馬を殺したのが新撰組であると思った出海が屯所に乗り込んだ時、それは誤りであると伝え、去っていく出海に勝負を申し込むが肺を病んでいる事を見破られ、治った時に勝負しようと約束される。戊辰戦争の時は病(労咳)が悪化し自宅療養していたが、出海が来た時には「治った」と言い勝負を挑んだ。ルビは定説とされる「そうじ」ではなく、「そうし」の方が採用されている。
伊東 甲子太郎(いとう きねたろう)
元新撰組参謀。
本作中での龍馬暗殺の張本人。時勢が変わり新撰組を抜けて、武力で幕府を倒すのに邪魔な龍馬の首を手土産に薩摩に取り入る。出海が外で半次郎と戦っている時に、人を斬る事を拒み、最期まで刀を抜かなかった龍馬を斬り殺した。土方にも強いと評価されるの腕だったが、龍馬殺害が伊東一派の犯行だと知った出海の逆鱗に触れ、瞬時に倒され死亡。ルビは定説とされる「かしたろう」ではなく、「きねたろう」の方が採用されている。
その他(風雲幕末編)
西郷 隆盛(さいごう たかもり)
中村 半次郎(なかむら はんじろう)
通称「人斬り半次郎」。示現流の使い手で暗殺や剣はかなりの手練。薩摩藩の人間で西郷隆盛の為なら死ぬ事も厭わず、また、邪魔をする者は消すという人物。龍馬を殺しに行こうとした為出海と闘う。出海に敗れ、止めを刺される直前に出海と龍馬とで撮った写真が出海の懐から落ち出海が取って返した為、一命を取り留める。
千葉 定吉(ちば じょうきち)
坂本龍馬の剣の師。出海の力量を見抜いた剣を理解する人物。ルビは定説とされる「さだきち」ではなく、「じょうきち」の方が採用されている。
千葉 さな子(ちば さなこ)
千葉道場の娘。龍馬に思いを寄せる。形見となった龍馬の片袖は、実際に龍馬が着ていた着物の袖を破り出海に託した物となっている。
蘭(らん)
沖田の看護をしていた、異国の血が混じった女性。自分の髪や目等が日本人と違う事からコンプレックスを抱いている。しかし、沖田に綺麗だと言われた事により沖田に好意を抱く。目前で沖田を殺された蘭は、沖田の愛刀を抱いて出海が土方を追って北へと行く道中に付いて行く。その長い道中で彼に対して憎しみ以外の感情も抱く様になる。函館の地で土方と出海が対決するその直前、仇である出海にも綺麗だと言われる。戦いが終わった後、土方の遺体と共に函館から去る彼に「貴方が死ぬまで付いて行く」と告げる。天兵の母親であるかどうかは明らかにされていない。
おりょう
坂本龍馬に好意を抱いていた女性。後に龍馬の妻となる。
アメリカ西部編
『月刊少年マガジン』1992年10月号に、第三部途中であった「修羅の門」を休載して掲載。単行本四巻に収録。なお、この単行本四巻のみ、他の巻と異なりカバー裏が西部開拓時代風の装丁となっていて裏返して使用することが可能である。
西部開拓時代のアメリカ合衆国を舞台に第二部の主人公・出海の弟である雷(あずま)とインディアン達の交流を描く。
他の部同様に「アメリカ西部編」のみで完結したストーリーとはなっているが、本編は『修羅の門』のストーリーとも深い関わりを持ち、また唯一日本以外が舞台となっている等、『修羅の刻』の中に於いてやや特殊な部となっている。
あらすじ(アメリカ西部編)
1人の男が日本からアメリカに渡り砂漠で行き倒れていた。男は死を覚悟するが、そこにネズ・パース族の酋長マッイイツォが通りかかり、彼から「干し肉」を分け与えられる。男はマッイイツォに雷(あずま)と名乗り、「死ぬことをやめ」てネズ・パース族の村へ向かう事にする。雷はそこで、土地と家族を奪った白人への復讐心に燃える少女、ニルチッイと出会う。ニルチッイは「ドロッイイ」(イタチ / 弱虫野郎の意)の雷を嫌い、彼が止めるのも聞かずに「クー」(復讐)の為自身1人で仇の白人である「死の五人組」の住む村へ向かう。雷もニルチッイを追った。
雷の助力もあり、ニルチッイの復讐は完遂。しかし、アメリカ政府軍はこの復讐行をインディアンの反乱とみなし、騎兵隊による大規模な攻撃がネズ・パース族に加えられる事になった。全滅覚悟で部族の誇りと共に死のうとするマッイイツォらに対し、雷は自分が騎兵隊を食い止めるから、逃げられるのならば逃げる様に進言する。
雷は単独で騎兵隊の大軍に立ち向かい、将軍を殺害する事で騎兵隊の進行を一時停止させた。
全身に銃弾を受け死にゆく雷に、マッイイツォは弱虫扱いした事を涙ながらに詫び、その上で部族を助けた理由を尋ねると、雷は陸奥の家訓である「富める者からの恵みは感謝するだけで良いが、そうで無い者からの恵みの恩を忘れない」事が理由と答えた。そして、将来、この地に陸奥を名乗る者が神に戦いを挑んできたときの助力を請うて息を引き取った。
(修羅の門 第三部へ)
ニルチッイは雷の最期の言葉「死ぬなよ」を守り、再会を信じて130歳以上生きる。彼女の言葉を受け、マッイイツォの名を継いだ若者は「神に戦いを挑んできた」「陸奥を名乗る者」、『修羅の門』の主人公である陸奥九十九に助力する事になる。
登場人物(アメリカ西部編)
(陸奥) 雷(むつ あずま)
出海からも自身に万が一の事があれば「陸奥の“名”」を託せるだけの力を持っていると言われる描写があるが、雷は自分が本来の圓明流の技を使えば簡単に人が死んでしまうと恐れている。その為自らの手で直接人を殺める事を忌避し、物語の最後で騎兵隊に突撃する時まで雹のみで戦い一切打撃技を使わなかった。「雹」(弾丸などを素手で飛ばす技)の速度はワイアット・アープの早撃ち(抜き打ち、quick draw、Fast draw)をも凌ぐ速さ。
ジルコォー・マッイイツォ
ニルチッイ
ワイアット・アープ
リーガン
ベン・トンプスン
ビル・トンプスン
ジェイク
寛永御前試合編
『月刊少年マガジン』1993年11月号から1994年3月号にかけ、「修羅の門」第三部と第四部の間に掲載。単行本伍・六巻及び愛蔵版「寛永御前試合編」壱・弐巻に収録。
江戸時代初期、寛永年間を舞台に、陸奥を名乗る少女・圓と彼女への助力を約束した謎の人物・天斗の2人を中心に、御前試合の顛末を描く。「宮本武蔵編」の続編に当たり、宮本武蔵・伊織親子が再登場している。
あらすじ(寛永御前試合編)
関ヶ原の戦い、大坂の陣。徳川家康が天下を平定してから19年が経った。既に家康はこの世に亡く、3代将軍徳川家光の治世。寛永11年、家光は天下一の武芸者を決める寛永御前試合を開催すべく武芸者を招集する。今の天下に響く剣豪・宮本武蔵に出場を依頼したが、武蔵はそれを断り、養子・宮本伊織を推挙した。
御前試合出場の為の江戸への道中、伊織は柳生の手の者に囲まれる。伊織が彼らを片付けようとした時、突然、陸奥圓(つぶら)を名乗る女が乱入し、伊織に勝負を挑んできた。しかしその時、天斗(たかと)と名乗る男にが猪と共に2人の間に突っ込む。
圓は実は真田幸村の九女であり、武名の高い「陸奥」を騙り出場者を討つ事で御前試合に出場し、試合を観覧する家光を討つ事を目的としていた。
野営の際、何者かに圓が捕らわれてしまう。天斗と佐助は柳生屋敷に乗り込むが、圓を捕えたのは柳生ではなかった。しかし、柳生屋敷で柳生十兵衛三厳に見初められ、天斗も御前試合への参加が決まる。圓を捕えていたのは、南光坊天海であった。天海は松平伊豆守信綱と共謀し、政治権力を増す柳生を潰す手駒として御前試合に送り込む武芸者を探していたのだった。真の目的を知らせず、金のためと思わせ、圓も御前試合への出場が決まった。
御前試合当日。天斗も圓も1回戦は勝ち上がったが、2回戦の圓の対戦相手は十兵衛となった。圓の高い技量は、十兵衛の本気を呼び起こす。勝ち目を見い出せない圓は、含み針で十兵衛を牽制すると、家光に襲い掛かかった。しかし殺害には失敗。圓の身代わりとなり、佐助が死んでしまう。天斗の助けで、家光を人質に立ち去ろうとするが、天斗の前に十兵衛が立ち塞がり、死合いを挑んだ。
登場人物(寛永御前試合編)
試合出場者
陸奥 天斗(むつ たかと)
1613年?生まれ。「宮本武蔵編」の主人公である八雲の子(母が詩織かどうかは明らかにはなっていない。作中で八雲とも面識のある伊織は詩織だと思っている)。圓に協力する形で御前試合に出場する。一見すると飄々としたのんき者だが、内実はまだ見ぬ強者との戦いを強く待ち望んでいる。彼の本性を十兵衛は「俺と同じ、強い者と戦いたいだけの馬鹿」、宮本伊織は「内に化物(けもの)が棲んでいる」と評した。片目を瞑るのが癖と語っていたが、これは後述する十兵衛と同じく、片眼を封じる事で遠近感を封じる(本来の実力を押さえ込む)事が目的であった。
最初は陸奥の一族である事を秘密にしており、圓が陸奥の名を騙っているのを知りつつ同行、御前試合に赴く。
柳生 十兵衛 三厳(やぎゅう じゅうべえ みつよし)
素人には判らないが、佐助曰く「武蔵よりずっと穏やかではあるものの、同じ質の剣気を持つ」という男。その圧倒的な剣気故に、自ら抑える事が難しいと語っている。また、立ち合いに於いて本気を出した際の「気」は武蔵にも匹敵する強烈なものである。冷静だが好戦的な性格で、あくまでも人質だったとは言え主筋である家光の命より天斗と戦う機会を優先する「強い者と戦いたいだけの大馬鹿」と自認している。少し手を合わせた程度で天斗の実力を見抜き、自身と同じく強者を求め続ける本性を察した。歴史上では隻眼だったとされるが、この物語では眼帯を着けているものの実は両眼とも見えている。これは強さを求めるあまり、敢えて片目を眼帯で隠す事で更なる高みを得ようとした為である。天斗との対決でその眼帯を外し、自らが追求した真の剣技を発揮するも敗北(その際、天斗に眼を潰され本当に隻眼になる)。父である宗矩には嫌われており、十兵衛も剣より弁舌で出世した宗矩を内心馬鹿にしている。別れ際に「退屈になったら訪ねてこい…いつでも相手になってやる」と天斗に伝えた。御前試合から年月を経た後に謎の死を遂げる。死因は明らかにされていないが、天斗との2度目の戦いによる可能性が暗示されている。
圓(つぶら)
真田幸村の九女。真田の生き残り。将軍家光の首を狙うため、御前試合への出場を目論んで陸奥を騙り、高名な兵法者に次々と勝負を挑む。
真田家に仕えていた佐助から護身術として忍びの技を仕込まれたが、佐助の想像を超える天稟を持っていた為、遂には佐助が持つ全ての技術を習得するに至った。その為、暗器の扱いや戦闘はかなりの腕前。しかしこの類稀な才能が仇となり、並の武芸者なら適当にあしらっていた十兵衛を本気にさせてしまう。
男勝りな性格で非常に負けん気が強い。一人称は「オレ」。
宮本 伊織(みやもと いおり)
宮本武蔵篇に登場した少年が、武蔵の養子・弟子となり成長した青年。武蔵直伝の二天一流の継承者であり、師の代役として御前試合に赴く。
穏やかな性格の好人物で、天斗が評するところでは「剣の腕は十兵衛に伍するが、人の良さは師の武蔵に似ない」という。伊織自身も天斗や十兵衛の様な「鬼」や「修羅」を自らの内に秘めていないと悟っており、本作中では2人とは戦わなかった。
師である武蔵も、彼の実力について「伊織が負けた場合、この武蔵が負けたと受け取ってもらって結構」と断言するほど信頼を寄せている。天斗が評する通り、一寸の見切りや二刀流などの技を自在に使いこなす剣の達人。試合では柳生兵庫助利厳を二刀を用いた一瞬の早業で倒してのけ、二刀は実戦で使える技ではないという周囲の評価を覆した。
柳生 兵庫助 利厳(やぎゅう ひょうごのすけ としとし)
尾張柳生の頭首で宗矩の甥。
老齢だが相当の手練。新陰流の正統は尾張柳生だと証明し、とって代わるために兵法指南役に命じられている江戸柳生を倒そうと試合に出るが、二回戦で伊織との試合で惜敗。また昔、武蔵が尾張徳川家に仕官しようとした時、「武蔵の剣は凡人に真似できるものではない」と諫め、武蔵の仕官を阻んだという過去を持つ。
東郷 重位(とうごう しげたか)
薩摩藩、島津家に仕える示現流の太祖。
老齢だが十兵衛も認める実力者。その初太刀は自らは「梼の木」にも関かわらず、木刀を一刀に両断する程の威力を持つ。一回戦で天斗と試合をするが己の意地を懸けた初太刀をかわされ、自ら負けを認めて退場。
田宮 長勝(たみや ながかつ)
抜刀田宮流の太祖田宮重正の子。
居合を旨とする流派である為、木刀ではなく例外的に刃引きの刀を用いて御前試合に臨む。その太刀筋の速さは、常人の目には映る事すら無いと評されている。一回戦の圓との対戦前、刃引きであれ刀が命中した際の危険性を警告する。しかし田宮流の特徴である長い柄を足で蹴り戻され、抜刀する事無く敗北した。
小野 忠常(おの ただつね)
小野派一刀流の使い手。
二回戦に出場する。しかし、天斗には程なくやられてしまう。柳生と同様、兵法指南役として試合に臨む。
高田 又兵衛(たかだ またべえ)
宝蔵院流槍術の高弟(後、宝蔵院流高田派槍術の開祖)。
槍を得物に、二回戦に登り詰める。
羽賀井 平馬(はがい へいま)
羽賀井流の使い手。
一回戦にて伊織と試合をするがあっけなく敗退。
山崎 与左衛門(やまざき よざえもん)
一回戦で十兵衛と試合をするが、一瞬のうちに木刀を弾き落され敗北。十兵衛曰く「つまらん相手」。
試合を取り巻く者
佐助(さすけ)
真田幸村配下の熟練の忍者。大坂夏の陣の最後の戦いの直前、幸村から村正を託され、圓を身篭っていた側室、苗を大坂城から逃がす様頼まれた。圓が生まれて苗が死ぬと、親代わりとして圓を育て上げる。最期は圓を庇って亡くなる。家光に投げた苦無はわざと外しており、天斗にその事を告げられた事で圓を翻意させた。
徳川 家光(とくがわ いえみつ)
3代目、徳川家将軍。歴史上では幕府の基盤を固めた人物とされるが、本作ではいざと言う時に失禁・気絶してしまう等気が弱く、圓には失望され天斗からも「首を取る価値も無い」と酷評される。
柳生 宗矩(やぎゅう むねのり)
柳生新陰流の頭首で家光から惣目付に命じられている。柳生の剣を王者の剣、活人剣と謳い剣禅一如を語り将軍家に取り入った。その為、十兵衛や利厳などからその事を馬鹿にされ、政治外交剣、出世の剣と皮肉られている。
南光坊天海(なんこうぼう てんかい)
100に近い年齢でありながら未だ権力を求め、惣目付に命じられた柳生を潰そうと松平信綱と共謀する。
松平 伊豆守 信綱(まつだいら いずのかみ のぶつな)
宮本 武蔵(みやもと むさし)
真田 幸村(さなだ ゆきむら)
源義経編
『月刊少年マガジン』1997年1月号から12月号に掛けて、「修羅の門」第四部終了と「海皇紀」の開始の間に掲載。単行本の七巻から拾巻に収録されている。1年に渡って連載され、単行本も4冊と最長の作品となっている。
平安時代末期を舞台に、陸奥鬼一と源義経の交流を描く。
あらすじ(源義経編)
源氏と平氏の2つの武家。平治の乱の平氏の勝利により、誰もが源氏の滅亡を考えていた。そんな中、源氏勢の若武者「牛若丸」は、平氏勢から追われ逃げ惑っていた。京の五条大橋(作者によれば現在の五条大橋ではなく、京の北東賀茂川を渡って下鴨神社に向かう為の橋、現在の松原橋付近)の下へ逃げ込んだ所で、彼は巨躯を誇る僧兵・武蔵坊弁慶に出会う。牛若丸は弁慶に平氏を討つ大望を打ち明ける。そこへ大橋に夜な夜な現れ、数多くの武士を打ち倒していた為『鬼』と恐れられていた陸奥鬼一が現れ、弁慶と闘う。弁慶は敗れたものの、牛若は自らの命を差し出して弁慶を救おうとする。そこへ平氏の配下の者が牛若を捕らえる為に現れる。牛若は平氏の者共の前で自ら元服を宣言し義経を名乗る。そこで『鬼』の幼女である静が一括すると平氏の配下の者共は逃げ出した。平氏の者の軟弱振りを見た弁慶は平氏を討つ事が万に一つは起こり得ると考えを改め、義経と主従を結ぶ。鬼一から金璽を借り受け、義経と弁慶は奥州平泉へと身を寄せる。
時は流れて、治承4年。兄・源頼朝が挙兵した事を知った義経は、藤原秀衡に迷惑が掛からぬ様に自身と弁慶、平泉に来る途中で配下となった伊勢三郎義盛の3人のみで頼朝に合流しようとするが、秀衡からの命(兄弟本人達の意思もあった)を受けた、義経を慕う佐藤兄弟も行動を共にする事になる。
頼朝は既に一度敗れ、富士川の戦いは後が無い状態だった。そんな中、頼朝の陣に合流した義経らは、鬼一とも再開する。鬼一は「頼朝の運を見る」として、富士川の水面に掌を打ち、寝ていた水鳥の大群が一斉に飛び立たせた。翌朝、源氏の軍はどうにか体裁を整えていたものの、平氏の軍は水鳥に驚いで姿を消していた。
木曾義仲との戦も制し、義経は平氏を討つ為に一ノ谷の戦いに挑む。鬼一が提案した作戦は一ノ谷の裏手の断崖絶壁からの逆落としであったが、義経はこれを遂行する。しかし、その後の屋島の戦いで佐藤三郎嗣信が義経を庇って討死する。
海上へと逃れた平氏を討つ為、熊野水軍の長・熊野別当を鬼一と静が誘拐して来て、義経が口説き落とし味方に付けた。そして壇ノ浦の戦い。義経は勝利を得るものの、鬼一は平氏の強者・平教経と闘い、共に海中へと消えた。
平氏を討つという願いは叶ったものの、大きすぎる義経の功績に頼朝とその妻・北条政子は危惧を抱く。頼朝の許可を得ずに後白河法皇から判官の位を授かったと、義経に追討の命を下した。逃避行の中、義経を庇って佐藤四郎忠信と伊勢三郎義盛が討死し、静は義経の子を身籠っていた事で逃避行の足手纏いとならない様鎌倉幕府に捕まる事を選ぶ。
義経と弁慶は再び藤原秀衡を頼って奥州へと逃れた。息子・虎若を産んだ静も鬼一に合流し、奥州へとやって来る。藤原秀衡が亡くなり藤原泰衡が跡を継いだが、鎌倉幕府からの圧力に耐えられなくなり、義経を討つ事を決意する。衣川館を護る為、弁慶は立ち往生。弁慶との再戦の約が果たされない事を知った鬼一は義経の身代わりとして自らの首を斬った。義経と静、虎若は鬼一に言われた通り、陸奥の隠れ里へと逃げ延びた。時が流れ、虎若が陸奥の名を継いで虎一となった。
登場人物(源義経編)
陸奥一族
陸奥 鬼一(むつ きいち)
陸奥に伝わる金璽を授け義経に奥州へ行くように助言し、義経が奥州藤原家と強い繋がりを持つ切っ掛けを作る。義経が挙兵した後も、度々義経の前に現れ、助言をしたり、時には自ら戦ったりする等、軍師・戦力として義経が数々の戦に勝利する切っ掛けを与える。
その後、頼朝に処刑されかけた甥・虎若を救い合流、共に平泉へ。だが、鎌倉の強大な圧力に屈した藤原泰衡の命で館を襲撃された際に、妹・静に「源氏では無く陸奥として育てろ」と後事を託し、自身は義経の身代わりとなり、再戦の約条を果たす事無く逝った弁慶との勝負を望んで壮絶な最期を遂げる。
静(しずか)
陸奥 虎一(むつ こいち)
鬼一の父
義経の仲間
源 九郎 義経(みなもと の くろう よしつね)
武蔵坊 弁慶(むさしぼう べんけい)
伊勢 三郎 義盛(いせ さぶろう よしもり)
佐藤 三郎 嗣信(さとう さぶろう つぐのぶ)
短気でせっかちな性格。屋島の戦いで義経が自分の落とした弱弓が平氏の手に渡ると馬鹿にされて味方の士気が下がるからと、落とした弓を拾おうとした際、義経を狙った教経の矢から身を挺して庇い死亡。
佐藤 四郎 忠信(さとう しろう ただのぶ)
嗣信と対照的に温和で、冷静な性格。兄と同様に義経に付き添う。吉野山で追っ手に囲まれた時に影武者として義経を逃がす為の囮となり死亡。
源氏勢
源 頼朝(みなもと の よりとも)
その人の目を見て「善き人」であるか判断する義経であったが、富士川の戦いの後に再開した際には義経は感涙で頼朝の目を見る事は叶わなかった。
北条 政子(ほうじょう まさこ)
梶原 景時(かじわら かげとき)
畠山 平次郎 重忠(はたけやま へいじろう しげただ)
土肥 実平(といの さねひら)
土佐坊 昌俊(とさのぼう しょうしゅん)
木曽 義仲(きそ よしなか)
巴御前(ともえ ごぜん)
平氏勢
平 宗盛(たいら の むねもり)
平 教経(たいら の のりつね)
平 知盛(たいら の とももり)
奥州藤原氏
藤原 秀衡(ふじわら の ひでひら)
藤原 泰衡(ふじわら の やすひら)
藤原 国衡(ふじわら の くにひら)
その他(源義経編)
湛増(たんぞう)
鬼一と静の仲介で義経と会い、「馬鹿は嫌いだが、大馬鹿なら話は別」と、その真っ直ぐな人柄に魅せられ源氏に味方する事を決める。
後白河法皇(ごしらかわほうおう)
織田信長編
『月刊少年マガジン』2001年9月号から2002年4月号に掛けて、「海皇紀」を一時休載して連載。単行本の十一巻から十三巻及び十三巻裏に収録。
戦国時代を舞台に、伯父である織田信長の為にと暗躍する陸奥の双子・虎彦と狛彦を描く。陸奥圓明流から不破圓明流が分かれた経緯が明かされている。
最終話は双子のそれぞれに焦点を合わせた表と裏の2話が描かれ、この裏を収録した単行本が十三巻とは別に「十三巻裏」として発売された。最終話以外はほぼ同じ内容だが、連載時に掲載された話から、表裏の視点に合わせて一部描写を抜き取る形で収録されている。
あらすじ(織田信長編)
混沌とした戦国時代。日本各地で戦があり、大大名に小さな家は飲み込まれ消えていっていた。尾張の織田家もその中にいた。名君、猛将として家を守り抜いた織田信秀は病に負け、跡を継いだ大うつけと言われる織田信長は相撲や遊びに明け暮れていた。そんなある日、信長が相撲をしていると陸奥一族の陸奥辰巳(たつみ)が現れた。信長の部下や信長自身も相撲で倒すと、賭けの代金として握り飯を貰うが、自身が賭けの対象だと思った琥珀は辰巳に付いて行き、信長も「鬼」との血縁を求めて琥珀を辰巳に嫁がせた。
数年後、今川義元が上洛すべく軍勢を動かした際に、討って出た信長の前に辰巳の子供、狛彦と虎彦が現れ義元が桶狭間に本陣を構えた事を伝える。野営の為、桶狭間山に本陣を構えていた義元であったが、辰巳の襲撃により山を追い落とされてしまう。その混乱の中、信長の軍が義元を討ち取る。その後、辰巳から琥珀が死んだ事を伝えられた信長は、琥珀への手向けとして天下布武へと本格的に乗り出す。
金ヶ崎の退き口では、殿軍となった木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)に狛彦と虎彦が策を授けると共に助力を行った。
浅井氏・朝倉氏・石山本願寺・甲斐の武田信玄らに信長包囲網を破れずにいる中、武田信玄が動き出す。信長はこれに対する為、狛彦と虎彦に武田信玄と雑賀孫一を討ち取る事を依頼する。狛彦と虎彦は共に「つわもの」である孫一を討つ事には異論が無かったが、只の大名に過ぎない信玄を討つ事は断った。信長は無理強いはしなかったが、浅井・朝倉の押さえに派遣している藤吉郎や自身の勝ちすら覚束ない戦いを行おうとしている事を知ると、虎彦が信玄を暗殺する事を受ける。一方、狛彦は息子の小一が弾込めに協力する事で鉄砲を速射する孫一と死闘を繰り広げるが止めは刺さず、孫一が2、3年は戦場に出ないという約を呑ませ、一時的に信長の窮地を救うに留めた。
その後、戦場で再び狛彦と相まみえ戦い倒れた孫一を信長が無残にも晒し首にした事で狛彦は信長から離れるが、一方、虎彦は信長の下で暗殺を続けた。やがて、本能寺の変。信長を護ろうとする虎彦の前に狛彦が立ち塞がる。人の世の事は(修羅ではない)人同士で決めれば良い。根が優しい虎彦を本気にさせるには、この時しかない……と。
孫一と闘った事で恐怖を知っていた狛彦は、狛彦との対戦で初めて恐怖を知った虎彦に辛勝し、「陸奥」の名を継ぐ。
光秀を討ち、信長の遺体を安土城の焼け跡に埋葬した虎彦は、もう負けたくはないと心情を吐露し、辰巳から「不破」の名を与えられる。
登場人物(織田信長編)
陸奥一族
陸奥 辰巳(むつ たつみ)
若き織田信長と出会い、成り行き上信長と相撲を取るが、完膚無きまで組み伏せ、信長に初めて『恐怖』を教える。その時に、賭けの代償として信長の腹違いの妹・琥珀を妻として貰い受ける。歴代の陸奥伝承者の中で誰と結ばれ子を成したかがはっきりしている珍しい人物。その後、桶狭間の戦いにて窮地の信長の前に現れ助力し、織田軍が勝利する切っ掛けを作る。
桶狭間の戦いの後、姿を現さなかったが、狛彦と虎彦の闘いの後、それぞれの前に現れ、狛彦に陸奥の名を継がせ、虎彦に不破の名を与える。
ちなみに桶狭間の戦いの一月前に妻・琥珀と死別しており、双子が長じた後は一線を退き、妻の墓守をして過ごしていた。
セガのトレーディングアーケードカードゲーム『戦国大戦』にSS(戦国数寄)陸奥辰巳としてカード化されている。
狛彦(こまひこ)
虎彦(とらひこ、不破初代)
狛彦との闘いに破れた後、父によって不破の名を与えられ、陸奥から分家する。
琥珀(こはく)
双子(後の狛彦と虎彦)を産み、自分の名を削ってそれぞれに名付けた。しかし、双子を産んだ事が原因で体調を崩し、双子が5歳になった後に病死。
織田家
織田 信長(おだ のぶなが)
帰蝶(きちょう)
木下 藤吉郎(きのした とうきちろう)
明智 光秀(あけち みつひで)
雑賀衆
雑賀 孫一(さいか まごいち)
狛彦と闘い、その時に指摘された事から「鉄砲を撃つという気配」を消す修練を行い、合戦場で狛彦と対峙した。
蛍(ほたる)
「東国無双編」では狛彦の妻及び八雲の母との描写がある。
小一(こいち)
織田家の敵
本願寺 顕如(ほんがんじ けんにょ)
今川 義元(いまがわ よしもと)
浅井 長政(あざい ながまさ)
武田 信玄(たけだ しんげん)
西郷四郎編
『月刊少年マガジン』2003年10月号・11月号に「海皇紀」を一時休載して掲載。単行本の十四巻に収録。明治時代を舞台に陸奥天兵と西郷四郎の闘いを描く。「修羅の門」第四部へ間接的に繋がる話となっている。
あらすじ(西郷四郎編)
明治時代中期の東京。講道館門下の柔道家・前田光世は、車屋を袋叩きにしていたヤクザを柔道技で倒した、会津訛りの小柄な中年男に出会う。男をかつての講道館四天王・西郷四郎と見た光世は後を付いていき、ある河原まで来ると四郎は、光世に講道館出奔の理由を語り始めた。話は明治15年、四郎が嘉納治五郎に見初められ講道館に入門した日の、見た事もない投げ技を使う子供との出会いに遡る。
登場人物(西郷四郎編)
陸奥一族
陸奥 天兵(むつ てんぺい)
陸奥 出海(むつ いずみ)
講道館
嘉納 治五郎(かのう じごろう)
四郎の天賦の才を見抜き、井上道場から譲ってもらう。元は学士であるが、本物を見抜く心眼を備えている。
西郷 四郎(さいごう しろう)
『修羅の門』、『刻』シリーズには珍しく陸奥よりも身長が低い。5尺そこそこの体格ながら、山嵐や御式内などの技に加え、蛸足や猫など柔道家としての天賦の才を持つ。その事から、嘉納は「私の柔道の結晶」とまで言わしめる。
会津藩出身で会津弁である。実は、家老・西郷頼母の隠し子でもある。
天兵との決闘では、初めは瞬たく暇も与えない様な投げ技で圧倒する。しかし、足を払うだけの技では人は死なないと悟ると同時に、強い者と戦う高揚した気持ちが抑え切れずに、禁じられていた御式内を開放する。自分でも感じていた「鬼の血」をさらけ出し追い詰めるが、天兵が渾身の力で放った「雷」を受け敗北。その時の負傷により、蛸足を失う。その後は、田中十蔵の娘の家で療養して一命を取り留めた。表面的は、嘉納に留守を託されたが出奔、その為に講道館を追放となったという事になっている。
横山 作次郎(よこやま さくじろう)、山田 常次郎(やまだ つねじろう)、山下 義韶(やました よしつぐ)
前田 英世(まえだ ひでよ)
四郎に陸奥の話を聞いた後、どうすれば陸奥に勝てるかと聞くと「道を捨てる事」「実戦」「他国の武技とやってみるのも良い」と言われる。
なお、『修羅の門』には直接登場しないが、養子「前田三郎」がいるとされ、その息子「ケンシン・マエダ」が『修羅の門』第四部(名前が挙がるのみ)、『修羅の門 第弐門』、「昭和編」に登場する。
その他(西郷四郎編)
田中十蔵
田中十蔵の娘
雷電爲右衞門編
『月刊少年マガジン』2005年9月号から11月号にかけて、「海皇紀」を一時休載して連載。単行本十五巻に収録。江戸時代を舞台に雷電爲右衞門と陸奥3代との闘いを描く。本作の執筆以前に発表された本編「修羅の門」第四部には、当時の陸奥が雷電と闘ったという言及が僅かにある。
あらすじ(雷電爲右衞門編)
天明三年(1783年)、小諸藩で行われた祭礼の御前相撲に飛び入りで参加した太郎吉少年は、強烈な張り手で相手を倒して藩内の評判となり、力士を志して江戸へ上る。谷風梶之助の内弟子として数年間稽古を積んだ太郎吉は、やがて雷電爲右衞門の四股名で大相撲の土俵を踏み、圧倒的な強さで最強の力士と謳われる様になった。その評判を聞きつけ部屋を訪れた陸奥左近との出会いから、雷電と三代に亘る陸奥との因縁が始まる。
登場人物(雷電爲右衞門編)
陸奥 左近(むつ さこん)
葉月(はづき)
左近から圓明流の技を教えられ、左近の没後は継承者の証である家伝の刀を差しているが、この刀は継承者以外が『預かる』という形で所有する事もあり、陸奥を名乗るには実力は足りないと自ら認めており、継承者かどうかは定かでない。
陸奥 兵衛(むつ ひょうえ)
兵衛自身は自分の父親を雷電ではないかと思っているが、葉月は否定しており、作者も「明らかにはしない」としている。
雷電 爲右衞門(らいでん ためえもん)
やがて雷電の四股名で最強の力士と呼ばれるようになった頃、仕合を望んで部屋を訪れた陸奥左近と出会い手合わせを行い、左近を頭から地面に叩きつけられない気の優しさに「足りないものがある」と左近と谷風に勝負を預けられる。10年後、「足りないものはもうない」と左近との再戦を望み、巡業にて訪れた出羽国で葉月と再会するが、左近の病死を知り更に20年後の再会を約束して別離。20年後、葉月の連れてきた陸奥兵衛と仕合う。すでに老境であるが、相撲の為に必要とした肉体を「今の自分には重すぎる」として捨てた結果、対陸奥圓明流仕様の肉体に変貌。禁じ手だった張り手を幾度となく叩きこむ死闘の末、止めの斧鉞を受け立ったままこの世を去った。
谷風 梶之助(たにかぜ かじのすけ)
左近が雷電との仕合を望んで伊勢ノ海部屋を訪れた際、雷電に代わって左近と立ち合い、虎砲を受けて重傷を負った。この時の怪我が治り切らない内に風邪をひいて病状が悪化、翌寛政七年(1795年)、雷電に自分の死後10年間相撲界を支え、その後は張り手の使用の解禁も含めした様にしろと遺言を残し、この世を去った。
八重(やえ)
昭和編
「修羅の門 第弐門」の終了を受け、『月刊少年マガジン』2015年10月号から2016年2月号まで連載。実在の日本史の人物に陸奥圓明流が関わる姿を描いてきた従来のシリーズと違い、本編「修羅の門」の前史を描いている。
あらすじ(昭和編)
昭和時代、ある町で起こったヤクザ同士の抗争。極林会の擁する古武術の達人・柏木に押され壊滅寸前となった自分の組を救うべく、組長は旧知の不破圓明流継承者に助けを求めた。要請を受け町を訪れた継承者の息子・現が柏木と立ち合わんとした正にその時、「陸奥圓明流を探している」という鬼の様な目付きをした少年が現の前に現れ、事も無げに柏木を一蹴。現は自分が陸奥に関わりのある者と少年に告げて共に陸奥の里を訪れ、継承者である陸奥真玄が不在の間、成り行きで真玄の娘・静流と三人で共同生活を送る事になる。
登場人物(昭和編)
本作での設定。「修羅の門」におけるキャラクターは修羅の門の登場人物を参照。
(不破) 現(ふわ うつつ)
「ウッちゃん」と名乗って父の旧知の組の用心棒となり、柏木が倒された後ケンシンと一緒に陸奥を訪ね、暫く静流と3人で共同生活を送る。真玄の帰宅後、勝ったら静流を娶る条件で真玄と立ち合おうとしたケンシンに思わず割って入り、成り行きで静流を賭けてケンシンと立ち合う事になる。立ち合いでは、ケンシンの『鬼』に気圧されながらも有り余る技量と身体能力、何より静流を譲りたくないという想いから互角の勝負を演じ、ケンシンが負けを認めた為結果として勝者となった。しかし打倒陸奥を目指してきた不破の一族である事から静流との結婚を拒み、代わりに子供だけを作って真玄宅を後にした。
4年後に再び里を訪ね、自分を父と明かさず息子・冬弥と対面し逗留。その夜、再び静流と契りを交わし、その結果生まれた次男が、次代の陸奥圓明流継承者・陸奥九十九となった。
不破の名を継いではいない為、単行本目次ではアメリカ西部編の雷同様「不破現の章」の「不破」の字が薄く印刷されている。しかしケンシンに姓を訊ねられた時には便宜上不破姓を名乗り、またケンシンとの立ち合いでは闘志と気概の顕れとして敢えて自分を「不破」と名乗っていた。
ケンシン・マエダ
里へ戻ってきた真玄が年老いていた事に失望してブラジルに帰ろうとするが、成り行きで静流を賭けて現と立ち合う事となる。立ち合いでは組み技だけでなく高度な打撃技も駆使して互角の勝負を展開、現の「神威」をかわした時にもつれて2人で川に落ち、溺れた所を静流に救われた。それを敗北したと受け取って静流から身を引き、現、そして真玄を超えるであろう次代の陸奥と戦う事を期待しながら日本を後にした。
(陸奥) 静流(むつ しずる)
現とケンシンから想いを寄せられていた。自身の想いは現にあり、また自身を賭けたケンシンとの立ち合いに現が勝ったことから妻として娶られる事になったが、互いの一族に受け継がれてきた思いから夫婦となる事を拒み、冬弥・九十九の2人の息子だけを儲けた。
陸奥 真玄(むつ しんげん)
柏木 士郎(かしわぎ しろう)
(陸奥) 冬弥(むつ とうや)
陸奥 九十九(むつ つくも)
東国無双編
『月刊少年マガジン』2019年6月号・7月号に、「龍帥の翼」を一時休載して掲載。戦国時代から江戸時代を舞台に陸奥狛彦と本多忠勝との闘いを描く。
あらすじ(東国無双編)
1572年、本多忠勝は、武田信玄との一言坂の戦いにおいて、徳川軍の殿を務め、武田軍の馬場元春隊を撃退する。
1584年小牧・長久手の戦いの際、優勢な秀吉軍を止める為に、本多忠勝は寡兵を率いて出陣する。この時、一人秀吉軍の前に立った忠勝は名槍「蜻蛉斬」の業を見せつけ、秀吉軍の渡河を留めさせる。その忠勝の前に狛彦が現れる。互いに技を交わしつつ、狛彦は無空波を放つものの、忠勝を倒す事は出来なかった。狛彦は再戦を約して別れる。
1600年、関ケ原。退却する島津軍の突撃により、愛馬三国黒を撃たれた窮地の忠勝に島津豊久が襲い掛かる。その時、現れた狛彦が豊久を蹴り倒し、忠勝は難を逃れる。
1610年、家康・秀忠と二代の主君に仕え、漸く隠居が認められた翌年。一人の武士としての忠勝の前に狛彦が現れる。陸奥の名を八雲に譲った狛彦であったが、陸奥として闘いを挑む。
西国無双編
『月刊少年マガジン』2019年8月号から10月号にかけて、「東国無双編」に続けて掲載。戦国時代から江戸時代を舞台に不破虎彦と立花宗茂との闘い、そして宗茂の正室、誾千代と虎彦の出会いを描く。なお、この編のみ、タイトルが『不破圓明流外伝 修羅の刻』となっている。
あらすじ(西国無双編)
1575年、戸次鑑連(道雪)は、その一女である誾千代に城督・城領を与える。
1581年、道雪は、高橋鎮種の長子である彌七郎統虎を養嗣子として迎え、誾千代の婿とした。
その儀が行われた夜、納得していない誾千代は城督と我が身を賭けて、統虎と手合わせを行う。統虎が勝つものの,彼に惹かれなかった誾千代は城督のみを譲ることとした。
1583年、筑前の山中で猪狩りの最中、誾千代は不破虎彦と出会う。兵法者として名高い丸目蔵人と立ち会う為に、肥後に向かう途中で会った虎彦に、誾千代は真剣で襲い掛かるも、あしらわれてしまう。そして、九州一の強者は統虎であると虎彦に告げる。
その後、統虎は大友家の武将として島津軍との戦いに於いて、戦功を上げる。更に豊臣秀吉にも認められ、続く九州平定戦での活躍が認められ、柳川13万石を与えられた。
柳川に移ったある日、統虎と誾千代の前に虎彦が現れた。誾千代に己の強さを認めさせる為に、統虎は虎彦と立ち合った。誾千代はこの勝負に名刀「雷切」を賭け、勝者に身を捧げる事とした。勝負は「雷切」で脇腹を貫かれた虎彦が、そのまま「雷切」を折り、統虎を絞め落した。虎彦こそ自分の婿であると確信した誾千代は、統虎と別れ道雪の血を残す事を決意する。また、狛彦との再戦に踏み切れない虎彦は、不破の血を残すことを決意する。
1600年、関ヶ原の戦いで西軍に参加した左近(統虎)は、九州にて鍋島軍と戦い、さらに加藤,黒田軍と敵の援軍が迫る中、窮地に陥っていた。戦場に於いて虎彦の存在に気が付いた左近は弓を射かけ、馬上より切り掛かるが虎彦に躱されてしまう。兵法者としてのケジメを付けた左近は、誾千代が加藤清正の下に出向き、降伏を申し出た事を知り、戦いを終える事を決意する。
戦後、柳川の所領を失い浪人となった左近であったが、1620年に旧領を回復した。関ヶ原の戦いで敗れ、浪人となった者が所領を回復した例は無く、これは左近だけが成しえた奇跡と言える。
その後、立花宗茂と改名した左近を訪れた虎彦は、誾千代の形見として「雷切」を託した。
不破の血も受け継がれていく事となる。
小説
1995年9月に発売。原作の第一部「宮本武蔵編」を作者である川原正敏本人がノベライズした作品で、挿絵も本人が担当している。
ストーリーの概要は原作と同じだが、八雲と沢庵宗彭の出会いや詩織が九鬼一門に監禁された場面等、原作には無いシーンも追加されている。
テレビアニメ
2004年4月6日から2004年9月28日にかけてテレビ東京系列で放送された。
アニメ化されたのは原作の内、江戸時代を舞台とした物に限定され、第1・2・4部となる「宮本武蔵編」・「風雲幕末編」・「寛永御前試合編」の3編のみ。第8部となる「雷電為右衛門編」も江戸時代を舞台としているが、アニメ化当時には執筆されていなかった。
なお、アニメでの放映順は時代順に変更されており、「第一部 宮本武蔵編」・「第二部 寛永御前試合編」・「第三部 風雲幕末編」となっている。また、アニメ化に先立つ形で、この3部の愛蔵版が放映順と同じ順番で発売されている。
ナレーションは第一部は渡辺浩司、第三部は宮野隆矢。
スタッフ
- 監督 - 三澤伸
- シリーズ構成 - 武上純希
- キャラクターデザイン・総作画監督 - 浜津武広
- 美術監督 - 西倉力
- 色彩設計 - 津守裕子
- 撮影監督 - 森下成一、武原健二
- 編集 - 小島俊彦
- 音響監督 - 松岡裕紀
- 音楽 - 蓑部雄崇
- プロデューサー - 具嶋朋子→森村祥子、板橋秀徳、大井守
- アニメーションプロデューサー - 茂垣弘道
- アニメーション制作 - スタジオコメット
- 製作 - テレビ東京、創通映像、マーベラス音楽出版
主題歌
オープニングテーマ「identity」
エンディングテーマ「夏日星」
各話リスト
部数 | 話数 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 放送日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
第一部 | 1 | 雲の如き男 | 武上純希 | 三澤伸 | 南康宏 | 浜津武広 | 2004年 4月6日 |
2 | 天下無双の器 | 吉川浩司 | 興村忠美 | 4月13日 | |||
3 | 烈風の鎖鎌 | 早川正 | 湖山禎崇 工藤柾輝 |
湖山禎崇 | 工藤柾輝 | 4月20日 | |
4 | 再会 | 武上純希 | 葛谷直行 | 米田光宏 | 小菅和久 | 4月27日 | |
5 | 闇の兵法 | 土屋日 | 山崎友正 | 小林勝利 | 5月4日 | ||
6 | 三本松の果し合い | 早川正 | 南康宏 | 青野厚司 | 5月11日 | ||
7 | 戦いを極めし者 | 武上純希 | 吉川浩司 | 興村忠美 | 5月18日 | ||
第二部 | 8 | 天斗と圓 | 湖山禎崇 | 工藤柾輝 | 5月25日 | ||
9 | その男、梟雄 | 武上純希 早川正 |
米田光宏 | 小菅和久 | 6月1日 | ||
10 | 陸奥を巡る権謀 | 武上純希 | 橋本昌和 | 佐藤雅弘 | 6月8日 | ||
11 | たぎりおちる滝 | 武上純希 早川正 |
土屋日 | 山崎友正 | 滝川和男 | 6月15日 | |
12 | 寛永御前試合 | 早川正 | 吉川浩司 | 興村忠美 | 6月22日 | ||
13 | 継ぐもの... | 武上純希 | 菱川直樹 | 南康宏 | 青野厚司 | 6月29日 | |
14 | 化物(けもの) | 湖山禎崇 | 伊藤秀樹 | 7月6日 | |||
第三部 | 15 | 眠れる龍 | 米田光宏 | 小菅和久 | 7月13日 | ||
16 | 大海の志士 | 早川正 | 松澤健一 | 山本秀世 | 鈴木大 佐藤雅弘 |
7月20日 | |
17 | 新撰組 | 武上純希 | 高林久弥 | 滝川和男 | 7月27日 | ||
18 | 龍の化身 | 吉川浩司 | 興村忠美 | 8月3日 | |||
19 | 漆黒の海戦 | 早川正 | 三澤伸 | 南康宏 | 青野厚司 | 8月10日 | |
20 | 示現流の刺客 | 武上純希 | 高林久弥 | 米田光宏 | 小菅和久 | 8月17日 | |
21 | 我が友、坂本龍馬 | 湖山禎崇 | をがわいちろを | 8月24日 | |||
22 | さらば友よ | 早川正 | 湖山禎崇 | 松本剛 | 滝川和男 | 8月31日 | |
23 | 約束 | 吉川浩司 | 興村忠美 | 9月7日 | |||
24 | 雪の如く | 武上純希 | 米田光宏 | 9月14日 | |||
25 | 北へ | 早川正 | 伊藤秀樹 | 三浦唯 | 小菅和久 | 9月21日 | |
26 | 鬼と修羅 | 武上純希 | 三澤伸 | 浜津武広 | 9月28日 |
書誌情報
いずれも著者は川原正敏、講談社からの発行。
単行本
- 『修羅の刻』〈講談社コミックス月刊マガジン〉、既刊18巻(2019年8月16日現在)
- 1990年2月17日第1刷発行(2月13日発売)、ISBN 4-06-302293-5
- 1990年10月17日第1刷発行(10月11日発売)、ISBN 4-06-302316-8
- 1991年10月17日第1刷発行(10月11日発売)、ISBN 4-06-302345-1
- 1992年12月14日第1刷発行(12月11日発売)、ISBN 4-06-302377-X
- 1994年4月16日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-302423-7
- 1994年5月17日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-302429-6
- 1997年6月17日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-333574-7
- 1997年9月17日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-333589-5
- 1997年11月17日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-333597-6
- 1998年2月17日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-333612-3
- 2001年11月16日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-333795-2
- 2002年2月15日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-333808-8
- 2002年6月17日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-333827-4
- 「裏」2002年6月17日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-333828-2
- 2004年1月16日第1刷発行(1月17日発売)、ISBN 4-06-333919-X
- 2006年1月17日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-371021-1
- 2016年1月15日第1刷発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-392505-0
- 2016年4月15日第1刷発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-392521-0
- 2019年8月16日第1刷発行(同日発売)、ISBN 978-4-06-516827-1
- 「裏」2002年6月17日第1刷発行(同日発売)、ISBN 4-06-333828-2
愛蔵版
- 『愛蔵版 修羅の刻』全5巻
- 「宮本武蔵編」2004年3月23日第1刷発行、ISBN 4-06-364568-1
- 「寛永御前試合編(壱)」2004年4月23日第1刷発行、ISBN 4-06-364574-6
- 「寛永御前試合編(弐)」2004年5月21日第1刷発行、ISBN 4-06-364578-9
- 「風雲幕末編(壱)」2004年6月23日第1刷発行、ISBN 4-06-364581-9
- 「風雲幕末編(弐)」2004年7月23日第1刷発行、ISBN 4-06-364587-8
- 「宮本武蔵編」2004年3月23日第1刷発行、ISBN 4-06-364568-1
- 「寛永御前試合編(壱)」2004年4月23日第1刷発行、ISBN 4-06-364574-6
- 「寛永御前試合編(弐)」2004年5月21日第1刷発行、ISBN 4-06-364578-9
- 「風雲幕末編(壱)」2004年6月23日第1刷発行、ISBN 4-06-364581-9
- 「風雲幕末編(弐)」2004年7月23日第1刷発行、ISBN 4-06-364587-8
小説
- 『修羅の刻〈壱〉陸奥円明流外伝』マガジン・ノベルス、1995年9月18日発売、ISBN 4-06-324308-7
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