隠蔽捜査
以下はWikipediaより引用
要約
『隠蔽捜査』(いんぺいそうさ)は、今野敏著の警察小説シリーズ。2005年から新潮社より刊行されている。既刊長編9作、短編集3作。
それまでの警察小説にありがちな、現場の刑事が活躍するものではなく、警察庁のキャリア官僚の活躍を描いている。
2007年にテレビ朝日にて、2014年にTBSにてテレビドラマ化。また、2011年に舞台化された。
シリーズ一覧
単行本、文庫本はすべて新潮社より刊行されている。
長編小説
隠蔽捜査
果断 隠蔽捜査2
疑心 隠蔽捜査3
転迷 隠蔽捜査4
宰領 隠蔽捜査5
去就 隠蔽捜査6
棲月 隠蔽捜査7
清明 隠蔽捜査8
探花 隠蔽捜査9
一夜 隠蔽捜査10
短編集
初陣 隠蔽捜査3.5
収録作品
初出
指揮
『小説新潮』2009年5月号
初陣
『小説新潮』2009年11月号
休暇
『小説新潮』2006年6月号
懲戒
『小説新潮』2007年10月号
病欠
『小説新潮』2008年1月号
冤罪
『小説新潮』2008年5月号
試練
『小説新潮』2008年7月号
静観
『小説新潮』2010年5月号
自覚 隠蔽捜査5.5
収録作品
初出
漏洩
『小説新潮』2011年7月号
訓練
『小説新潮』2012年1月号
人事
『小説新潮』2013年7月号
自覚
『小説新潮』2013年10月号
実地
『小説新潮』2014年1月号
検挙
『小説新潮』2014年4月号
送検
『小説新潮』2014年6月号
審議官 隠蔽捜査9.5
収録作品
初出
空席
『小説新潮』2019年9月号
内助
『惑―まどう― アンソロジー』2017年7月
荷物
『小説新潮』2018年7月号
選択
『小説新潮』2020年2月号
専門官
『小説新潮』2020年7月号
参事官
『小説新潮』2020年9月号
審議官
『小説新潮』2022年1月号
非違
『小説新潮』2022年2月号
信号
書き下ろし
短編
竜崎とST (BOOK☆WALKER セレクト)
あらすじ
隠蔽捜査
警察庁長官官房総務課長の竜崎伸也警視長は独特の信念とキャリアとしての矜持を持つ警察庁の官僚。ある時、暴力団員の殺人事件が発生。10年前の少年犯罪が関わっていたことを知った竜崎はその対応の遅さに怒り、同じくキャリア官僚で小学校からの同級生である警視庁刑事部長で本事案の捜査本部長を務めている伊丹俊太郎警視長や刑事局に詰め寄るが、暴力団の抗争が原因だからそんなに慌てることはないと聞く耳を持たない。しかし次々と起こる殺人事件に方針を変更、捜査のやり直しの過程で警察官が殺人に関わっているのではないかという疑念を抱く。そんな中、息子の邦彦が薬物を使用していることを知る。
果断 隠蔽捜査2
大森署(テレビ朝日版・大森中央署、TBS版・大森北署)に署長として飛ばされた竜崎。そこでも独自の持論を展開していた。それらを見ていた大森署の刑事や副署長たちは、少々戸惑いを覚えながらも竜崎とうまくやっていた。そんな折、区長と区議との会議に出かけようとしていた矢先に強盗犯逃走の緊急配備の連絡が入る。すぐさま署に戻り、副署長以下所轄幹部を署長室に詰めさせ「ミニ指揮本部」を設置する竜崎。結局のところ、機動捜査隊によって確保されるも、捜査途中で報告のあった開店前の小料理屋での怒鳴り声について結果報告を確認させるとその小料理屋で拳銃発砲事件が発生。警視庁は立て篭もり事件と認定し、大森署に指揮本部を設置。指揮本部長に刑事部長の伊丹が着任する。署長の竜崎は「船頭が増える」と現場に赴く。現場の小料理屋付近では捜査一課特殊班が、現場程近くの民家を間借し、前線本部を設置していた。署長の竜崎は大森署は特殊班の指揮下に入る旨を伝え、伊丹部長からも「お前が前線本部長をやってくれるのはありがたい」と言われたため、前線本部長に就く。前線本部を立ち上げ犯人との交渉を模索するSITと立て篭もり事件では強襲し早期解決と唱えるSATの扱いで混乱する状況が続いたが、犯人が交渉に応じないことから最終的に前線本部長として竜崎からSATへの突入及び発砲許可という、人質の確保・犯人の射殺で解決する。しかし犯人が所持していた拳銃に実弾が込められていなかったことを知り、無抵抗の犯人を射殺したのではないかと困惑する。
疑心 隠蔽捜査3
大森署では、警察の広報活動の一環でもある「アイドルの1日署長」のイベントが行われており、署内もどこか浮ついていた。アメリカ合衆国大統領の来日も近づいており署長の竜崎も困ったものだと思っていた。そして、大統領の来日日程も決まり、それに向けて警察庁をはじめ警視庁では警備計画の策定が始まる。その最中、竜崎の元に「第2方面警備本部本部長」を命ずる命令書が、警視庁本部より発せられた。本来なら、第2方面本部長が着任するはずだと思い、警視庁総務部や警備部長に掛け合うも、警察庁警備局の発令であるとしてやむなく着任することになった。警備本部は竜崎と警察庁との調整で大森署に設置。副本部長として、第2方面本部長の長谷川警視正が着任。その秘書官として、第2方面本部管理官の野間崎警視が来署した。そして、竜崎の秘書官として、かつて警察庁で広報室長時代に研修として一時期指導した、女性キャリアの畠山が現れた。再会した彼女に心騒ぐものを感じた竜崎ではあったが、その最中、合衆国大統領を標的とした「テロ計画」があるという情報が流れた。
初陣 隠蔽捜査3.5
本編の主人公竜崎の幼馴染で警視庁刑事部長伊丹俊太郎を主人公としたシリーズ初の短編番外集。 福島県警で3年間刑事部長を務めていたキャリアの伊丹に内示が出た。それは、警視庁刑事部長への内示だった。久しぶりに本庁で長官官房総務課広報室長に就いていた竜崎に連絡を取った。やはり竜崎にも新たな内示が出ておりそれは長官官房総務課長への昇進だった。「やはりこいつにはかなわないのか…」と、感じながらも異動の準備に入る伊丹だった。その矢先に殺人事件が発生。帳場が立ち、捜査本部長として、そして最後まで福島県警刑事部長として指揮を取ろうとしたが、引継ぎのため福島入りした後任のキャリアが不安を抱かせる人間だった。
転迷 隠蔽捜査4
竜崎が署長を務める大森署を含めた第2方面本部で3件の事件が発生した。内2件は、大森署管内でのひき逃げ事件。もう1件は放火事件。別の管内(東大井)の事件は、殺人事件だった。放火事件では、刑事課のベテラン戸高が、過去の事情から放火事件に専念。更にひき逃げ事件では、過失ではなく故意の可能性が高まり、殺人事件として大森署に捜査本部が設置された。竜崎も副本部長、警視庁本部から柿本交通部長が捜査本部長として、土門交通捜査課長が捜査主任として着任する。殺人事件として帳場が立ったため、刑事部捜査一課からも人員が派遣され、伊丹刑事部長も所管のため来署した。犠牲者は元外務省キャリア。更に東大井の被害者は現役キャリアで、ともに外務省の人間だった。更に、生安課課長が麻薬捜査で厚生省の麻薬取締部とトラブルがあったと報告。更には、竜崎の娘美紀が、交際相手の三村忠典が海外赴任先で連絡が取れなくなったから調べてほしいと、相談してきた。わずか数日でこれだけの難問が発生するも竜崎は、いつものように原則通りに、業務を進めようとしていた。
宰領 隠蔽捜査5
竜崎に刑事部長の伊丹から相談が持ちかけられる。それは、かつて竜崎と伊丹の3期後輩であり、今では議員秘書を務める元警察官僚・田切勇作からの依頼で、羽田空港から足取りが途絶えた衆議院議員・牛丸真造の内密での捜索依頼だった。伊丹にすれば自ら動くと内密にできなくなるため、竜崎に頼み込んできた格好だった。竜崎も当初は難色を示すものの伊丹に押し切られる形ではあったが、講堂を押さえた上で「内密での指揮本部態勢」を敷き、警備・刑事・交通各課長を詰めさせ「捜査」に乗り出す。その矢先、大森署管内の大森南5丁目から牛丸事務所の車が発見され、車内からは牛丸の運転手を務めていた平井進の他殺体が見つかった。議員の所在も確認できず、殺人及び議員誘拐事件として認定し、「内密での指揮本部態勢」から「正式な指揮本部」に移行された。伊丹も指揮本部長に、竜崎は副本部長として指揮を執った。だが、議員の足取り、犯人の逃走ルートが200人体制のローラー捜査をかけても不明だったが、竜崎の閃きでボートを使ったことが判明し、神奈川方面に逃走したことが分かる。
自覚 隠蔽捜査5.5
大森署署長竜崎を補佐する所轄幹部達を中心とした短編集。官僚として優秀ながらも、原理原則を押し通す上司竜崎署長を補佐する副署長の貝沼警視のもとに、大森署が扱った事案で誤認逮捕の可能性があると東日新聞にスクープされたと情報があがってきた。竜崎の期待に応えられているうちはいいものの、その信頼を裏切ることを恐怖した貝沼は隠蔽を考えるが、竜崎が隠蔽を嫌うことは大森署内では周知の事実。送検48時間のタイムリミットが近づくなか、貝沼は対応に苦慮する。
去就 隠蔽捜査6
大森署署長を務める竜崎はいつもの朝を迎えた。いつもと同じ時間に起床し、目覚めのコーヒーを飲み、新聞を読む。そして時間が来れば迎えの公用車で大森署に登庁する。儀式を繰り返すかのような日々だが、その日はいつもと違い妻・冴子から娘の美紀の交際について相談があるといわれるが、帰宅後に話を聞くと告げて登庁する。署長室に入ると斎藤警務課長からストーカー対策チーム編成について確認される。警察庁からの各都道府県警察本部を通じての通達で従来のストーカー相談窓口では対応不十分であるとして各警察署内に新設し、日夜発生するストーカー相談について機能的に対応していくというものだった。その編成に着手していなかった事から、生活安全課・刑事課・地域課の各課長にチーム編成のため人員をリストアップするように命じる。一息ついたその直後、大森署管内で略取・誘拐事案が発生した。しかも、その被害者は、大森署のストーカー相談窓口でストーカー相談に来ていたというものだった。早速竜崎は、結成したストーカー対策チームを投入する。
棲月 隠蔽捜査7
大森署署長を務める竜崎が大森署へ登庁すると、署員たちがいつもより少ないのを不審に思うと斉藤警務課長から私鉄の遅延が生じており、出勤に障害が出ていると報告され、更にとある銀行のメインシステムにも障害が発生していると報告があがる。同期の伊丹刑事部長に警視庁本部から捜査員を派遣しているか確認すると、私鉄・銀行共に派遣していないという。伊丹や本部は事件視していない様だが、確認の為捜査員を派遣すべきと判断した竜崎は大森署員を銀行の本店及び私鉄の本社へ急行させる。当然のことながら大森署を所管する第2方面本部長や警視庁本部の生安部長から抗議が来るもの捜査の必要性を説き、大森署員に捜査を続行させる。そして大森署管内で殺人事件が発生する。更に前作の終わりから持ち上がっていた竜崎の「人事異動」の話が「本格化」していることが、伊丹から告げられる。殺人事件の為に捜査本部が立ち上がり、竜崎も副本部長として指揮を執る。その最中、遂に警察庁より人事異動の通達がされる。異動先はかつて竜崎が事件解決の為に赴いた「神奈川県警」。拝命職務は「刑事部長」。かつて犯人護送の為に県警本部長と揉めたことが頭によぎるが、事件解決の為に、大森署への愛着に戸惑いながらも指揮にあたる竜崎。刑事部長として着任するまでに事件解決できるか。大森署長として最後の事件。
空席 隠蔽捜査シリーズ
警視庁大森署で署長として数々の難事件を解決した竜崎は、神奈川県警刑事部長に栄転が決定。貝沼副署長ら大森署の面々は着任していく竜崎を見送った。後任の署長は女性キャリアで、北海道警総務課長から異動してくるが、到着が遅れ、明日にならないと赴任しない。そんな「空白の一日」を、事件は待ってくれない。品川署管内で同一犯の仕業とみられるひったくりが連続して発生。方面本部からの要請で、大森署も緊急配備への出動を命じられる。ほぼ総動員で犯人の逃走経路に網を張るのだ。ところが、ほどなくして、今度は大森署管内でタクシー強盗事件が起きた。2件同時の「緊配」は不可能だ。署長不在の中、貝沼は苦渋の決断を迫られる。
清明 隠蔽捜査8
神奈川県警刑事部長編
大森署長の任が解かれ、神奈川県警刑事部長の職を拝命した竜崎。任を解かれた日も県警本部に着任報告するぎりぎりまで残務にあたっていた。書類の決裁しながら様々な来客を迎え、腹心・貝沼副署長から「そろそろ時間です」と告げられ、「後は後任に任せよう」と呟き、大森署を出る。そこには、制服姿の署員等が見送りのために整列をしており、あの、戸高巡査部長ですら制服に身を包み整列をしていた。セレモニーなど必要ないと斎藤警務課長に言っておいたのだが、この状態を見て「仕事はどうした。持ち場に戻れ」と命ずるも、貝沼から「らしいですね」とかえされる。彼らの心づくしに感傷しながら公用車に乗り大森署を去る。
大森署を去った足で、神奈川県警本部に向かう竜崎。本部に到着し、そのまま県警本部長に着任挨拶の為本部長室のある階にあがるが、刑事部長に着任予定の竜崎が連絡もなく総務課にあらわれるもので課員や総務課長がもたつくがなんとか佐藤本部長に着任報告することができた。佐藤からも「部長は偉いんだ。出迎えなきゃいけないしな。」と言われ、警視庁にも勝るとも劣らない「形式ぶり」に辟易する竜崎。だが、その佐藤から驚きの言葉が聞かされる。なんと竜崎を刑事部長に引っ張ったのは前任の本部長との事だ。かつて竜崎が前線副本部長として絡んだあの誘拐及び殺人事件で被疑者護送で揉めたあの本部長である。だが、その本部長は既に離任しており佐藤が後任本部長として着任したとのことだ。前任者も佐藤も懸案事項はただ一つ。神奈川県警の「不祥事」が多いことだ。建前・本音が当たり前にもかかわらず竜崎は総てが原理原則の一辺倒。そんな竜崎が神奈川県警を「変える」ことができる一歩ではないかと言われる竜崎。自分の仕事をするだけと返すが、そんな返しも本部長相手に普通はできないと言われる始末。
本部長への着任報告を終え、参事官・刑事総務課長の挨拶そして、誘拐及び殺人事件で前線本部長を務めた本郷警視長との再会と刑事部長の「引継ぎ」を受け、現在進行している捜査本部に顔出しすると、そこには板橋捜査一課長がいた。再会と着任の挨拶などで「着任日」を終える竜崎。
刑事部長の職務を開始し、当然ながら大森署長よりも多い決裁書類に辟易しているなか、同期である警視庁の伊丹刑事部長から連絡が来る。それは、警視庁と神奈川県警の管轄境で発生した「殺人事件」の連絡だった。
探花 隠蔽捜査9
神奈川県警察本部・刑事部長の竜崎伸也は、刑事部捜査一課長・板橋武と参事官の阿久津重人から、横須賀のヴェルニー公園で男性の遺体が発見されたという報告を受ける。遺体は刃物で刺されており、他殺と断定され、横須賀署に捜査本部が設置される。板橋たちは、もし米軍絡みの事件であればNCIS(海軍犯罪捜査局)が出てくる可能性があると懸念する。やがて現場から白人男性が逃走したという目撃情報を得たことから、米軍関係者が被疑者という可能性が強まる。竜崎はすぐに本部長案件とするよう指示を出す。
一方で竜崎は、本部長・佐藤実から新しい警務部長として八島圭介という人物が福岡県警察本部から異動してくることを聞かされる。八島は東大法学部卒のキャリア警察官で、竜崎や警視庁刑事部長の伊丹俊太郎とは同期だった。竜崎は阿久津から、八島は警察庁に1位の成績で入庁したと聞かされる。ちなみに竜崎の成績は3位、伊丹は2位だったことも明らかとなる。竜崎は「入庁時の成績が何位だったかは、何の意味もない。入庁してから何をできたか、何をしたかが重要なんだ」と気にも留めなかったが、伊丹が2位だったことがふと気になって電話をかける。伊丹は、八島から自身の入庁時の成績が2位であることを聞かされたと話す。また、八島については「トップで入庁したことを鼻にかけていた。色々とコンプレックスを持っているようだった」と語った上で、「黒い噂が絶えない男だ」と警告する。
そんな中、竜崎に衝撃の一報がもたらされる。ポーランドに留学中の息子・邦彦が現地で逮捕されたというのだ。
登場人物
主要人物
竜崎 伸也(りゅうざき しんや)
本作の主人公で階級は警視長。初登場時の年齢は46歳。一人称は「私」または「俺」で、当初は公私共に「私」を使うことが多かった。
第1弾では警察庁長官官房総務課課長。第2弾からは警視庁大森警察署署長へ異動。第8弾からは神奈川県警刑事部長に栄転する。外見は細身で、黒髪には白いものが混じっている。見た目は普通のおじさんであり、いつも颯爽としている伊丹には嫉妬している。
私利私欲とは無縁で、国家公務員としてあるべき姿を示し、原理原則に忠実な官僚。周囲からは「組織の犬」「変人」と陰口を叩かれているが、逆に「自分の為」というのが無く官僚としても優秀なため、部下からも上司からも信頼は厚いが、「どうせ3年で異動して別れる」という思いから部下に心を許すことはなかった。それどころか伊丹と比較して陰性の自分は嫌われ者だと思い込んでいた。自分のクビを賭けることは何とも思わないが、若葉マークの妻の車に乗るのは恐怖を感じるなど妙なところで臆病だったりする。またアニメなどのオタク文化にはかなり疎い。
若い頃は東北地方の所轄署で署長をしていた。その後、大阪府警警備部長として赴任していた際、府警本部長・三村の肝煎りで、三村の子息・忠典と彼自身の娘である美紀が見合いをしている。本部長や竜崎自身もこのお見合いを「上手くいって欲しい」と思っていた。だが竜崎の方はダメならダメでも構わないと考えており、飽くまで当人同士の意志に任せるつもりだった。しかし美樹に見合いについて訊かれた際に「二人の結婚は自分にもメリットがある」という部分を肯定してしまったため、政略結婚を強要しているように受け取られてしまった。
恋愛に対しては淡泊であり、「恋愛をくだらないとは思わないが、世の中で一番大切なのが恋愛と思うことはくだらない」と考えている。妻の冴子は最初に付き合った女性であり、そのまま結婚まで行った仲(前述の理由から他の女性は眼中になく結婚を迷うことはなかった模様)。妻には世間ズレしているところから「唐変木」「役所の仕事が務まっているのが不思議」と呆れられているが、竜崎自身は「俺はこの歳で警察庁の総務課長まで出世しているんだからお前が思っているよりずっと有能なんだ」と偉ぶっていて自覚すらしていない。
署長になってからは事件が起これば捜査本部に詰めることが多く、自宅に帰る機会が減るが、「どれだけ遅くなっても自宅に帰れるのはありがたい」と考え、帰れる時には必ず帰る。外食はせず、350ミリリットルの缶ビールを1缶だけ飲んでから妻が作った夕食を食べる。
小学校時代から優等生だったが、今と変わらず無愛想で人付き合いが苦手だった。伊丹とは同期で小学校時代の幼馴染だったが、伊丹にいじめられていたと思っていたため、幼馴染と言われるのを快く思っていない。だが、その時の悔しさが、勉強でさらに発奮され、東大法学部・キャリア試験現役合格と歩んでいる。警察組織でもいわゆる「東大閥」として出世コースを進んでおり、長官官房総務課長に就いた時、同期の伊丹も警視庁刑事部長になったが、所詮は「地方警察本部の部長」と見下していた。伊丹が人気取りのために「外面のいい人間」をしているのも見抜いているが、「それだけの人間なら、もう伊丹とのつき合いは断っている」と考えており、伊丹を「したたか」と評している。
第2弾『隠蔽捜査・果断』以降は大森署署長に就任している。前作の終わりで「組織の不正を是正し、明るみに出る事を防いだ活躍」と「家庭内での不祥事」のバランスをとって警察庁長官と官房長判断で、警視長階級のまま、都内大規模署である大森署署長として異動。竜崎自身正しいことをした認識はあるものの、警察庁と警視庁の方針に「逆らった」事から、降級・地方への左遷は止む得ないと思っていたため、この異動は「想像以上に良かった」と思っている(方針を策定したのは、官房長や長官官房参事官・刑事局刑事局長など、警視監階級のキャリアたち、いわば最高幹部等によって決められた)。
大森署署長就任以前は、所轄のとりわけノンキャリアの事を信用していなかったが、立て籠もり事件の再捜査以降、副署長の貝沼をはじめ所轄幹部や現場の刑事を見直すようになり、「信用していなかったのは自分の方だった」と反省する。所轄業務にも改革に乗り出しており、所轄内で事件が発生した際は、署長室に「ミニ指揮本部」を設置、副署長・各課長・通信係・事務要員・連絡要員を配置し事件対応の合理化を図っている。警視庁警備部長の藤本警視監からも「見所のあるヤツ」・「鍛え上げて警察のトップにしたい」と思われている。
第7弾で漸く、警察庁からも「署長として事件解決の為に振るった辣腕」を評され、神奈川県警刑事部長に抜擢される。第8弾からは警視庁と神奈川県警の対立という構図に巻き込まれ、伊丹からも妙にライバル視されたり下に見られたりするという状況になった。そのことを伊丹に注意したことで態度が改善され、最終的に警視庁も県警も関係なく事件解決に奔走した。
ミニ指揮本部…所轄の業務合理化を図った竜崎の発案。事件が発生し捜査を行った際、係長→課長→副署長そして署長への報告となる流れだが、竜崎は「それなら最初から署長室へ集約した方が早い」ということで設置したシステム。その際、副署長は署長の補佐的立場といわゆる捜査本部などで投入される管理官的立場に就く。
伊丹 俊太郎(いたみ しゅんたろう)
警視庁刑事部長。階級は警視長。前職は福島県警刑事部長・警視正。初登場時年齢46歳。『初陣 隠蔽捜査3.5』では主人公を務める。
容姿はスポーツマン風の筋肉質で、竜崎曰「颯爽としている」。
竜崎とは幼なじみであり同期。小学校時代、学業・スポーツともに優秀でクラス1の人気者だった。同じく小学校で1番の優等生だった竜崎と友人になりたかったが、無愛想だった竜崎と上手く友人関係になることができなかった。それを勘違いした伊丹の取巻きが竜崎を「いじめ」ていた。伊丹自身はいじめていた感覚は無かったので「記憶に無かった」が、第1弾の事件中に竜崎から指摘された。本人も「虐めたヤツは覚えていないもの」という竜崎の指摘をもっともだと受け入れている。同時に「もういいじゃないか。昔のことだ。俺は竜崎を恐れていた。お互い様だよ」と述べており、竜崎には「何がお互い様だ。怨みは忘れないぞ」と笑い出したい気分で返された。現在は、当時「友人」になることは出来なかったが、「今の関係」をこれからも大切にしたいと思っている。また、『初陣』所収の『静観』では悪夢にうなされるが、その夢の内容は小学校時代に自分の取り巻きが竜崎をいじめていたというもので、改めて「竜崎の言っていたいじめとは、このことだったのだ」と認識する。同時に、この頃から「竜崎には敵わない」と自覚していた。
キャリア官僚だが、東大閥の竜崎とは違い、一流大学で警察庁入庁時の成績も全体で2位という好成績ではあるものの、私大出であるため、警察組織内でも「非主流派」であり、出世も地方廻りが多かった。その分、事件が起きれば現場に足を運び、捜査本部長として現場主義を貫き、「現場寄り」「部下・マスコミに理解のあるキャリア」を演出している。伊丹によれば「組織内での処世術」。
竜崎は伊丹の事を「颯爽」としていると評している。容姿に関しては伊丹の方が秀でているので、中年の竜崎には羨ましく思われている。
大森署署長に異動した竜崎のことは、「事件が起きれば一緒にやれるな!」と喜んだが、普段のやり取りで「可愛げの無いヤツ」と評しているものの、第1弾で窮地に陥る寸前だったのを竜崎に助けてもらった事から恩義を感じており「頭が上がらない」と思っており、竜崎に「無礼な対応」をとられても「コイツなら良いんだよ」と明言している(階級は一緒でも、本部部長と所轄署長では上司部下の関係のため)。だが、指揮・特捜・捜査などの各本部設置についてや普段の捜査活動で改革案を提言してくる竜崎の事を、改革は必要でも「早急すぎる」と消極的な伊丹は「誰だ!コイツを所轄署長に移動させたヤツは!こういう奴はすぐに改革をやりたがる!警察庁に置いておけば大人しくしているのに…」と文句をぼやいていた。
竜崎家
竜崎 冴子(りゅうざき さえこ)
竜崎 美紀(りゅうざき みき)
竜崎 邦彦(りゅうざき くにひこ)
竜崎の息子。浪人生。有名私大に受かるも「省庁や企業にとって東大以外は大学じゃない」ことを知っていた父親の意向で大学浪人をさせられ、その後も東大受験に向けて塾などに通わされていた(竜崎は息子の将来を考え、少しでも条件が良くなるように東大行きを勧めていた)。「東大を強制されている」ことからストレス解消のためにドラッグを吸引する。このことを知った竜崎は「家族をないがしろにしていたつもりはなかった」と大いに悩むこととなった。その後、父に説得されて警察に自首。保護観察処分となる。
第2弾にて自分の進む道を決める。当初は東大進学を嫌がっていたが、父の真意を知り第1弾以降もぎくしゃくしていたが和解し、自ら東大進学を決意する。その後の進路は色々と悩むものの竜崎に伝え、「頑張れ! ただし、なるなら一流を目指せ!」と後押しされる。第一弾の時点ではジャーナリストを目指していたが、後にアニメが好きなので「監督になって面白いアニメを創りたい」という夢を抱くようになる。第七弾では勉強のため外国への留学を決意する。
警察庁
牛島 陽介(うしじま ようすけ)
警視監。長官官房参事官。50歳。第1弾に登場。
鹿児島出身・東大出。いわゆる東大閥で薩長閥という警察庁においては理想的なプロフィールの持ち主。
第1弾における竜崎の直属の上司。小柄だが鹿児島出身らしく短気な面がある。
第1弾では、坂上の口車に乗って隠蔽に加担しようとした最高幹部等の一人だが、竜崎の説得に耳を貸し思いとどまる。結果、伊丹と同じように竜崎のお陰で助けられたことから感謝を示し、竜崎の「助命嘆願」を官房長に上告する。しかし、邦彦のドラッグ問題は無視出来ないとされ、竜崎を大森署の署長に左遷させることとなった。そのことを「済まん」と詫び、竜崎には「キャリアに異動はつきもの。都内の大警察署なら御の字です」と返されるが、「そう言ってくれると、俺も気が楽になるがな……」と、最後まで竜崎の左遷を心苦しそうにしていた。
TBSドラマ版では、長官官房審議官で「警視長」に格下げされている。
坂上 栄太郎(さかがみ えいたろう)
警視長。刑事局捜査第一課長。第1弾に登場。のっぺりした顔に縁なしの眼鏡を掛けている。
京都大学出身の官僚。竜崎より二期上の先輩。竜崎から「こいつはダメだ」と見られるほど仕事に熱意がなくやる気がない。京大出身ということで出世をあきらめている模様。
第1弾の「現職警察官による連続殺人事件の迷宮入り指示」という《隠蔽計画》の発案者。実際のところ計画は成功寸前まで進んでいたが、それを福本からの電話で知った竜崎の行動ですべてはご破算となる。《隠蔽計画》を知った警察庁長官が激怒した事から、この行動が懲罰対象となった上、伊丹が隠蔽を指示したという責任まで一身に背負わされる形で更迭された。エピローグでは去り際に竜崎に「勝ったつもりでいるんだろうな。このままで済むと思うな。いつか必ずつぶしてやる」と怨み言を呟いたが、竜崎には「あんたの気が済むかどうかわからないが、私も早晩無事では済まない。またいずれどこかで会いましょう」と答えられ、まったく相手にされず怒りと敗北感を味わわされた。
劇中では竜崎と敵対した者は改心することが多かったが、彼だけは最後までそういった部分がなく「悪徳警官」として退場していった。
谷岡 裕也(たにおか ゆうや)
警視正。長官官房総務課長補佐兼広報室長。第一弾に登場。以後も物語の本筋に絡まない程度に登場している。
竜崎の直属の部下。兼ね役である広報室で職務に当たっている。竜崎の疑心性もあって一定の評価しか下されていなかったが、竜崎の「左遷」が決定された後も竜崎への尊敬を貫いており、官僚としての上下関係としか認識していなかった竜崎も驚いていた。
第1弾では真相が発覚後、竜崎と共に事態の沈静化に務める。終盤では長官の謝罪コメントの素案を素早く提出し、竜崎が満足する出来栄えだったことから優秀さが窺える。エピローグでは竜崎から自分の後釜(課長)に選ばれるかもしれないと告げられ、「私には課長の代わりは務まらない、課長ほど優秀な官僚ではありません」と言ったが「ならば優秀になれ」と後押しされ、去り行く竜崎に対して微笑で答えた。
第2弾では、課長補佐のみとなっており、広報室長の任は解かれた。課長補佐の専任となった為、元上司の竜崎としても「出世だな」と喜んだ。谷岡自身は、補佐職も元々兼ね役だった為、「事実上は平行移動」と謙遜していた。また今でも竜崎のことは「課長」と呼んでおり、再会できたことを喜んでいた。
TBSドラマ版では性別が女性に変更され、名前は「香織」になっている。役職は同じだが、階級は「警視」に格下げされている。
小田切 貞夫(おだぎり さだお)
長官官房首席監察官。警視監。前職は秋田県警察本部長。東大出身。
竜崎の評価では、頭の切れる「優秀な官僚」。第2弾『果断』で立て篭もり事件において、SATによる犯人射殺という事件解決が適切だったか、竜崎と伊丹を呼び出して詰問した。竜崎からは「一方的な解釈しかなされていない」と抗議され、処分前提の監査しかしていないと思われていた。だがその真意は、「噂の竜崎課長を試したかった」からで、事件解決後には竜崎に真意を語り和解し、「あなたは、いい仕事をなさいました」と立て篭もり事件における竜崎の仕事ぶりを高く評価する。しかしその一方で、人を見る目に対しては「まだまだといったところですか」と手厳しく評しており、竜崎は「自分より一枚上手だった」と認めざるを得ない思いを抱くこととなった。
大森署
貝沼 悦郎(かいぬま えつろう)
大森署副署長。警視。
竜崎は当初貝沼から「反目されている」と思っていたが、自省した竜崎からは「ホテルマンの様」「補佐役に徹している」と評価されるようになった。貝沼自身も「署長が変わればやり方に慣れなくてはいけない」と言上するも「所轄は運命共同体であることは、紛れも無い事実」と諫め、「所要の措置」という言葉を教えた。以降、竜崎にとって無くてはならない「右腕」となっている。
貝沼自身も竜崎の事を「左遷キャリア」「変人」と降格人事のことで色眼鏡に見ており、まったく期待していなかった。しかし「立て籠もり事件再捜査」以降、「正しい事を言える・行えるキャリア」と見直すことになる。だが、その分竜崎の有能ぶりに応えられる内はいいが、評価されなくなる事への恐れも抱いている。だが、ある事件がきっかけで「信用されている」と感じた事を嬉しく思っている。
戸高 善信(とだか よしのぶ)
大森署刑事組織犯罪対策課(刑事課)強行犯係。巡査部長。
優秀な刑事だが、世を斜に見るところがあり、上司の事を上司と思っていないところがある。更には、第1弾で大森署に来た竜崎を一般市民と間違え警察権力で恫喝したことを叱責されている。
第2弾『隠蔽捜査・果断』で不審点を竜崎に指摘。その不審な点をもっともだと思った竜崎の指示により立て籠もり事件再捜査が始まり、事件の全容を明らかにすることができた。以降、竜崎から優秀な刑事として評価されている。また周囲からも優秀と見られ能力的には信頼されている。
不遜なところもあるが、第3弾『隠蔽捜査・疑心』で本部部長達を前にある事件を一人で捜査した内容を報告した際は、ガチガチに緊張していた。
第4弾『転迷・隠蔽捜査』では、大森署管内で放火事件が発生し、「放火は金で買えない大切なもの全てを焼き尽くしてしまう。だから俺はアカイヌが許せないんです」と怒りを露わにした。
勤務中に競艇場に出かけることがあるため、そのことが署内で問題となったこともある。後に竜崎の指示でストーカー対策チームを兼務するようになり、その縁で根岸紅美の面倒を見ることになった。
今野の別作品では『カットバック 警視庁FCⅡ』にも登場。竜崎の後任である藍本新署長らと共に登場し、『安積班シリーズ』の登場人物である警視庁捜査一課の佐治基彦警部や、その部下である矢口雅士刑事らと共に、映画の撮影現場で発生した殺人事件の捜査を行う。矢口とコンビを組むが、聞き込みをした相手の気分を害したり、「自分で考えること」と「独断専行」の区別がつかない矢口に閉口し、「利口なだけで役に立たない」と吐き捨てた。矢口には「所轄のヒラ刑事にそんなことは言われたくない」と反論されるが、「所轄も本部も関係ない。要は自分で考える頭があるかどうかだ」と言い返している。
根岸 紅美(ねぎし くみ)
藍本 小百合(あいもと さゆり)
竜崎の後任として大森署署長に就任した女性キャリア。年齢は40歳で階級は警視正。スピンオフの電子書籍『空席』で初登場し、『署長シンドローム』では主人公を務める。
美貌の女性キャリアとして紹介されており、前職は北海道警総務課長。『空席』は、彼女が就任する前日の出来事が描かれる。
今野の別作品『カットバック 警視庁FCⅡ』では、大森署署長に赴任後という形で、戸高、貝沼らと共に登場する。『カットバック』では年齢については具体的には明かされなかったが、『審議官 隠蔽捜査9.5』所収の「非違」で彼女の年齢が判明する。署長に赴任したばかりで大森署のことが良く把握できていないことや、前任の署長であった竜崎に署員たちが心酔していたことから、その後任は少し荷が重いという本音を漏らしている。法医学の知識がある様子を伺わせており、同作で発生した殺人事件の現場で、被害者となった俳優の遺体を前にしても全く動じず、遺体の状況を冷静に分析している。また、エピローグでは「私もFC室に入れないかしら?」と、楠木の上司である長門達男警視に申し出たため、楠木たちを驚かせた。
多くの警察関係者が息をのむほどに美しい美貌の持ち主として紹介されており、所轄に対して高圧的な態度を取る方面本部の野間崎や弓削も、彼女の前では強気に出ることができないほどである。また、『カットバック』にゲスト出演した『安積班シリーズ』の登場人物で、警視庁捜査一課殺人犯捜査第五係の係長(警部)・佐治基彦とのやり取りにおいても、所轄署に居丈高な態度を取る佐治をしどろもどろにさせた。
警視庁
田端 守雄(たばた もりお)
下平 栄介(しもひら えいすけ)
野間崎 正嗣(のまざき まさつぐ)
第2方面本部管理官。警視。ノンキャリア。
人より上の立場にあろうとするため格下と見た相手には居丈高に振る舞う。そのため大森署でも嫌われ者となっている。
第2弾『隠蔽捜査・果断』で、金融強盗犯を取り逃がした大森署に怒鳴り込んで来たのが初出。その際、竜崎の経歴・伊丹との関係を知り、さらには職位と階級のねじれ現象を疎ましく思っている。
第3弾『疑心』では、第2方面警備本部副本部長についた長谷川警視正の秘書官を務めていたが、竜崎が第2方面警備本部長につくきっかけを画策した一人。
第4弾『転迷』において、二つの捜査本部の指揮を執る事となった竜崎を補佐する為、臨時の指揮所となった大森署署長室に詰める事となり、竜崎の姿勢と信念に圧倒されながらも竜崎を素直に認められるようになった。この時は竜崎の方が一時的に上の立場についていたため敬語は使われていない。
第5弾『宰領』で発生した誘拐事件の報告が遅いと大森署の竜崎に抗議しに来たが、竜崎から事情を聞き、その勢いは消えた。同じタイミングで伊丹刑事部長が来署したが、管理官不足もあり、そのまま誘拐事件指揮本部の管理官に就いた。
空席では竜崎がいなくなった後も相変わらずの振る舞いで大森署に訪れ、二つの事件の緊配を同時に行えと貝塚に文句を言いに来た。
藤本 実(ふじもと みのる)
長谷川 弘(はせがわ ひろし)
弓削 篤郎(ゆげ あつろう)
第2方面本部長。警視正。ノンキャリア。56歳。刑事・公安畑で歩んできた。
長谷川方面本部長の後任で第2方面に赴任した人物。第5.5弾『自覚』の「人事」で登場。
野間崎の評価では、いかにも「刑事」らしい物腰の人物。
赴任後、第2方面内の管理官たちから「レクチャー」を受け、野間崎から聞いた「竜崎署長」に興味を持つ。早速、竜崎を呼びつけようとするが、時を同じくして発生した「引ったくり事件」で竜崎が身動きが取れないため、態々大森署まで乗り込むという行動に出た人物。
第6弾では竜崎のやり方に疑問を感じ、周囲に敵を作るような指揮の仕方を正すためあえて問題提起して対立する。しかし竜崎には「小物から何を言われても気にも留めない」と相手にされなかった。第7弾では大森署を去る竜崎の元へ野崎管理官と共に現れ、「あなたからもっと色々教わりたかった」と尊崇の念を見せた。
神奈川県警
佐藤 実(さとう みのる)
作品の評価
そのクオリティの高さから文学賞に恵まれている作品で、第1弾で第27回吉川英治文学新人賞を、続く第2弾『果断』で第21回山本周五郎賞と第61回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。2017年にはシリーズ全体で第2回吉川英治文庫賞を受賞した。
受賞歴
- 第27回(2005年)吉川英治文学新人賞(『隠蔽捜査』)
- 第21回(2008年)山本周五郎賞(『果断 隠蔽捜査2』)
- 第61回(2008年)日本推理作家協会賞 長編及び連作短編集部門(『果断 隠蔽捜査2』)
- 第2回(2017年)吉川英治文庫賞(『隠蔽捜査』シリーズ)
テレビドラマ(テレビ朝日)
テレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で2007年3月10日と2008年10月4日に放送された。全2回。陣内孝則主演。原作は『隠蔽捜査』および『果断 隠蔽捜査2』。
テレビドラマ(TBS)
TBS系「月曜ミステリーシアター」枠で2014年1月13日から3月24日まで放送された。全11回。杉本哲太と古田新太のダブル主演。原作は『隠蔽捜査』から『宰領 隠蔽捜査5』。続編がTBS系「月曜名作劇場」で2019年3月11日に放送された。全1回。原作は『去就 隠蔽捜査6』。
舞台
- 隠蔽捜査&果断-隠蔽捜査2(2011年、THEATRE1010、新神戸オリエンタル劇場、京都南座、名鉄ホールにて上演。)
キャスト(舞台)
「隠蔽捜査」
「果断・隠蔽捜査2」
スタッフ(舞台)
- 脚本 - 笹部博司
- 演出 - 高橋いさを
DVD
- 発売元:キョードーファクトリー
- 「隠蔽捜査」2011年10月27日、シアター1010収録
- 【特典映像】1:トークショー 2:東京公演千秋楽
- 「果断・隠蔽捜査2」2011年10月27日、シアター1010収録
- 【特典映像】1:楽屋訪問 2:名古屋公演千秋楽
- 【特典映像】1:トークショー 2:東京公演千秋楽
- 【特典映像】1:楽屋訪問 2:名古屋公演千秋楽